全旅連シルバースター部会 新部会長に渡邊幾雄氏(やまの宿 下藤屋) 加盟するメリット明確に会員拡大へ

2021年7月5日(月) 配信

(左から)中村前部会長、渡邊新部会長、多田計介全旅連会長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長)のシルバースター部会(中村実彦部会長、登録692軒)は7月2日(金)、東京都内で2021年度総代会を開いた。任期満了に伴う役員改選では、副部長の渡邊幾雄氏(やまの宿 下藤屋/栃木県・奥塩原新湯温泉)が新たな部会長に就任した。

 今年度は、シルバースター部会に加盟するメリットをより明確にし、登録軒数の拡大に努めていくことを確認した。

 全旅連の多田会長は冒頭、「シルバースターは長い歴史を有した部会。さらなる発展を願っている」とあいさつした。

 中村部会長は、「昨年はコロナ禍で皆さんにお会いできなかったので、今日を楽しみにしていた」とあいさつ。「会員の経営環境が明るくなるように、有益な情報を提供することに努めてきた」と2期4年間の活動を振り返った。

渡邊幾雄部会長

 渡邊新部会長は「多田会長、大木正治副会長をはじめ、歴代の全旅連を代表する方々が部会長を務めており、大変プレッシャーを感じている。コロナ禍の厳しい時期だが、会員の皆様の要望に応えながら、力に変えていきたい」と語った。

 さらに、「集客や情報提供など、登録施設にメリットを与えることで、シルバースター部会をより強固なものにしていきたい」と決意を述べた。

 また、会員数がピーク時の1000軒超から減少傾向にあることに触れ、「各都道府県で会員拡大に向けて力を貸してほしい」と協力を呼び掛けた。一方、「登録申請書を簡略化することで、少しでも心理的なハードルを低くする」ことも検討していく構え。

 今年度も引き続き、登録施設の販促ツールを作成・配布するほか、シルバースター登録制度のPRも強化する。インタネット集客事業の推進や、共同購入の研究などにも取り組む。

 総代会終了後には、全旅連アドバイザーで、「はたらく堂」社長の羽室文博氏が「宿泊施設とデジタルマーケティング」について講演した。

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その3- 池上本門寺とお堂めぐり(東京都大田区) 小さな修行で「除災招福」 心身を整える歩行禅

2021年7月4日(日) 配信

 
 コロナ禍のなか、ストレスケアとして、ぜひ行っていただきたいのが「歩行禅」です。歩行禅とは、仏教の立派な修行の一つでもあり、お坊さんも行っている行。これは、ただひたすら黙って歩くことであり、歩きながら座禅をしているのと同じです。

 
 巡礼というのは、長い道でも短い道であっても、一旦死んだようにその道に入り、生まれ変わって、生き直すことでもあると思います。その巡礼のなかで、反省すべきこと、感謝すべきこと、今後の人生プランなどを思い巡らすことで、人生の不調を好調に変えていくことになるでしょう。

 
 ストレスが溜まったら、近場の巡礼地でもいいので、歩行禅を行うようにしていくと、心が晴れやかになり、生きる力も湧いてきます。

 
 神社仏閣めぐりというのは、小さな修行であるともいいます。小さな修行の積み重ねが、ご自身の中の精神性に磨きがかかり、いつの間にか、災いをはねのけて福を招くという「除災招福」を手にするのでしょう。

 
 さて、今回は東京都大田区の池上本門寺とお堂めぐり。池上本門寺は、日蓮宗の大本山であり、日蓮聖人入滅の霊場。命日の10月に行われるお会式には、全国から参拝者が訪れます。日蓮聖人は、あの世での幸福よりも、今現在、この世での人々の幸福を重んじました。法華経を信じることにより、神々のご加護をいただいて、現世利益を受け取るというのです。

 
 日蓮聖人の教えは、コロナ禍の厳しい時代のなかで、困難を乗り越えて、安穏な境地へと導く知恵を授けてくれるのではないでしょうか。

 

池上本門寺 仁王門

 その日蓮聖人の精神性や思想に触れることができる場所が、池上本門寺。東急池上線・池上駅から徒歩10分程度で到着。池上駅を下車して、池上本門寺通りを歩くと、雲山堂という仏具屋さんと出会えます。そこはかとなく漂う上品なお線香の香りに、引き寄せられます。「先祖供養」「南無妙法蓮華経」などの文字が出てくるお線香が販売されているので、お土産にもおすすめ。近くには、お洒落なカフェや、くず餅のある甘味処もあり、参拝後のお楽しみに最適です。

 
 さて、江戸の元禄年間に建造されて、歌川広重の「江戸百景」にも描かれた趣がある総門に入ると、豊かな緑に囲まれた、加藤清正が寄進したという96段の此経難持坂という石段の坂を上ります。仁王門をくぐると、なんともいえない清澄な空気感が漂う、静謐な心地良い大堂にて、まずお参りします。

 
 そして、お堂めぐりの開始。まず、大堂近くの日朝聖人像を奉安している日朝堂へ。眼病治癒や学力向上に良いとのこと。仁王門を出て、長栄堂へ。池上本門寺の守護神として「長栄大威徳天」を奉安。池上本門寺には、神仏習合の形として18におよぶ神々が勧請されています。

 
 長栄堂の近くには、加藤清正の供養塔、力道山、市川雷蔵、狩野探幽、幸田露伴、紀州徳川家に縁のある人々など有名人のお墓もあります。

 

池上本門寺 妙見堂

 そのお墓を通り抜けていくと、妙見菩薩が奉安されている妙見堂へ。妙見菩薩とは、北斗七星を神格化した菩薩であり、災難を除去し、人の寿命を延ばす福徳があるそうです。日蓮宗や密教系のお寺で祀られることが多いとのこと。あの葛飾北斎も、熱心な妙見信仰信者であったといわれ、才能強化の力が授かるよう、祈られたのでしょう。

 
 旅の最後は、総門近くに戻り、観音堂と鬼子母神堂へ。慈悲深い観音堂にて、思いやりある心を磨けるようお祈りすると、自分自身が穏やかな境地に。そして、鬼子母神堂では、子授け・安産・子育てにご利益があるので、母性愛を育めるよう祈願するといいでしょう。

 
 七福神めぐりもできるので、別の機会にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

 

旅人・執筆 石井 亜由美
東洋大学国際観光学部講師、カラーセラピスト。精神性の高い観光研究部会メンバー。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。

 

津田令子の「味のある街」「エビフライ」――ときわ食堂(東京都豊島区)

2021年7月3日(土) 配信

ときわ食堂「エビフライ」850円▽豊島区巣鴨3-14-20▽☎03(3917)7617。

 
 梅雨の晴れ間に、巣鴨(東京都)を訪ねた。駅から10分弱ぐらいの場所にある染井霊園の案内所からまっすぐに墓地の中を歩いてゆく。なだらかな坂を下りると慈眼寺の正門があるのだが、その左手にこの寺の墓地がある。近年、著名人のお墓を拝礼する人のことを「ハカマイラー」と呼ぶとか。

 我われ一行は今回、芥川龍之介の眠るこの寺の界隈を歩くことにした。彼が生前に座していた五七桐紋が描かれた座布団が天辺にそのままデザインされている、とてもユニークな形態なのだ。ファンが手向けたのか、いつ訪ねても赤い花が供えられている。この寺院の歴史については、芥川の「本所両国」で触れているので興味のある方はぜひそちらを。

 表通りに出て通りを渡れば巣鴨地蔵通り商店街に出る。

 
 今回紹介するときわ食堂は、商店街の中ほどにある。地域の方々の活力の源でありたいと地元に根差した人気の食堂だ。 お母さんが家族を思う気持ちのように、お客様に温かみのある料理を提供していくというのがモットーだ。

 店主自ら毎日河岸に行き、「お客様に満足していただける素材」を選び、ご飯は炊き立てにこだわる。お漬物は、ぬか床を300回かきまわすこだわりよう。仕入れた食材を、その日のうちに調理し出来立てを提供してくれる。メニューも価格も、庶民的だ。アジフライにエビフライ、鯖の塩焼きに魚の煮付け。お刺身の三点盛りもある。ニラレバ炒めにポテトサラダと何でもありなのである。

 
 さて、今回は、お店自慢の長さ20㌢はある大きなエビフライを紹介しよう。お皿にたっぷりのキャベツ。その隣に例のものがど~んと2本のっている。「わぁ、なんという大きさだろう。食べきれるだろうか」と瞬間的に思った。あつあつの揚げ立てのそれを口に入れた途端、「今までに食べたことのない衣のサクサク具合が絶妙なエ・ビ・フ・ラ・イ」と思った。「美味しい。いや美味しすぎる」。

 「ソースをかけるかそのままか」などと自問しながら、あっという間に2本、ペロリと平らげてしまった。庶民的かつ日本一美味しいエビフライの登場だ。

 

(トラベルキャスター)

 

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

「街のデッサン(243)」もう、五大湖灯台ツアーの企画を 古着から生まれた、コロナ後の旅の構想

2021年7月3日(土) 配信

スエットにたくさんの美しい灯台の作画が

 「灯台」という言葉には、何か惹かれるものがある。故郷の羽衣伝説のある三保の松原にも、さして大きくもない灯台があった。名所の天女の舞った松原からは離れていて、観光客も来ない半島の先にぽつんと立っていたが、高校生だった夏の終わりに1人で訪ねてみた。

 三保に暮らす同級生の一家が「海の家」を経営していて、仲間が集まって海水浴を楽しんだが、桟敷からは遠く離れて灯台が見えていた。真っ青な海原に浮くように建って見える灯台が心に残された。浜辺に秋風が吹くころ、訪ねた瀟洒な灯台の周りに咲き遅れた浜昼顔が控えめに顔を出し、誰もいない塔の風景は高校生の感傷に打って付けだった。砂浜に座って、鍵が掛かって登れない施設をしばらく眺め、埋もれた桜貝を何枚か拾った。青春の残滓は長い間、ポケットに眠っていた。

 つい最近、パソコンで古着の通販をチェックして、不思議なスエットに出会った。さまざまな灯台の建物がプリントされているトレーナーだ。塔と建物が美しくデザインされた作画がトレーナーの表にも裏にもたくさん描かれていている。その数の多さがうるさい気がしたが、何やら欲しくなって購入の手続きをした。

 届いたのはアメリカ生まれのスエットで、湖らしき名前に付随してオールド・ミション・ポイントなどとあるのは、それぞれ灯台の名前だろうか。湖の名前はミシガン、スペリオル、ヒューロン、エリーとあり、そうだこれは五大湖ではないかと気が付いた。名前の中でオンタリオ湖だけが無く、この一番小さな湖にこれといった建築がないのかもしれない。なぜこんなたくさんの灯台を載せたスエットが存在するのか不思議だったが、ひょっとすると灯台観光マニアが大勢いて五大湖巡りのツアーがあり、その参加者がおそろいで着て、船やバスで巡るのかもしれないと想像した。着ているトレーナーに、巡る灯台が載っていてガイドマップを兼ねているのだ。

 このツアーの醍醐味は、朝方は朝日に輝く波頭の中の灯台、昼間は海辺と建築の美しい環境を楽しむ施設観賞、夜は夜で灯台の本来の機能である光を海洋に投射する煌めく夜景と、船舶だけでなく地球環境を守る灯台の存在意味にある。

 丁度、旅行新聞の4月1日号に、不動まゆうさんの「愛しの灯台100」の新刊紹介があって、取り寄せると日本でも美しい灯台が目白押し。件の清水灯台もあって、コロナ後の国内旅行の一番手。しかも思いも寄らず「五大湖灯台ツアー」が人生の楽しみに浮上したのが私には嬉しい。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

沖縄地方に夏到来 平年より11日遅い梅雨明け 

2021年7月2日(金) 配信

梅雨明けした石垣島・川平集落からの眺め(画像提供:石垣市民)

 沖縄気象台は7月2日(金)午前11時、沖縄地方が梅雨明けしたとみられると発表した。平年の6月21日と比べ11日遅く、昨年より20日遅い梅雨明けとなった。

 2日の最高気温(午後3時現在)は、沖縄県那覇市那覇で30.3度、宮古島市鏡原で32.9度、石垣市伊原間で32.1度、竹富町波照間島で33.0度。

 沖縄地方は、太平洋高気圧に覆われ、向こう1週間も晴れる日が多い見込みとなっている。

強い日差しが降り注ぐ石垣市内(画像提供:石垣市民)

 今年の梅雨期間(5月5日~7月1日)の降水量(速報値)は、沖縄本島地方の那覇で平年比106%増、大東島地方で同57%増と、複数の地点で降水量が同50%以上増加した。また、離島の石垣島では同10%増、宮古島は同1%減、久米島は同22%減だった。

クラツー、「500系新幹線」貸切の旅を販売 往路は博多南まで直通運転

2021年7月2日(金) 配信

クラブツーリズムが500系新幹線の貸切ツアーを実施する

 クラブツーリズム(酒井博社長)は9月18・19日の2日間、西日本旅客鉄道(JR西日本、長谷川一明社長)の協力を得て、500系新幹線の貸切運行を行う。通常、山陽新幹線の「こだま」で運行している同新幹線が、ツアーでは博多南駅まで直通運転するなど、複数の乗車プランを売り出している。

 ツアーは、9月18日(土)出発と9月19日(日)出発の2本で、いずれも日帰りとなる。9月18日(土)の往路は、新大阪駅を午前10時20分ごろ出発し、博多南駅に午後1時20分ごろ到着する。新大阪から博多間を2時間45分で運転し、扉開放のないまま博多南駅まで直通運転する。

 9月19日(日)の復路は、博多駅出発が午前9時20分ごろ、新大阪駅到着が午後12時12分ごろの予定で、2時間52分で走行する。

 出発日によってプランは若干異なるが、両出発日とも1人2席プランと1人3席プラン、以前グリーン車として使われていた6号車乗車プランがある。全参加者にクラブツーリズムオリジナル仕様の乗車記念硬券が付く。

 旅行代金は、9月18日(土)出発が1人2万6000円~4万2000円、9月19日(日)出発が1人2万6000円~3万2000円。募集人員は各300人となる。

 1997年にデビューした500系新幹線は、先端の丸いフォルムと明るめの灰色の車両が特徴で、近未来的なデザインが鉄道ファンを魅了した。デビューから四半世紀を迎える現在も幅広い世代に人気の新幹線となっている。

 なお、9月18日(土)出発はすべてのコースでキャンセル待ちだが、9月19日(日)出発は一部コースに空席がある(7月2日午前時点)。

ブッキング・ドットコム、SNSで「旅館旅」妄想を募集 旅館宿泊10万円の2組にプレゼント

2021年7月2日(金)配信

ハッシュタグ「#ブッキングドットコム」で応募

 ブッキング・ドットコム・ジャパン(東京都港区)は7月8日(木)まで、日本応援プロジェクト「#ブッキングドットコムで夢の旅館旅」を実施している。今一番行きたい「夢の旅館旅」のエピソードを投稿した人の中から抽選で2人に、それぞれ10万円分の宿泊をブッキング・ドットコムで手配し、プレゼントする。

 同社は、現在新型コロナウイルス感染症の影響で、海外旅行だけでなく、国内旅行も簡単に行くことができず、卒業旅行や家族旅行、新婚旅行など、さまざまな「行きたかった旅行」や、叶えてみたい「夢の旅」がある人も大勢いると推測。そこでそのような旅行を叶えるべく、「誰と、どのような旅館に泊まって、何をしたいか」という、「夢の旅館旅」のエピソードをSNS上で募集している。

 参加条件は、まずインスタグラムかツイッターからBookingcom_jpの公式アカウントをフォローする必要がある。このうえで、「誰と、どのような旅館に泊まって、何をしたいか」を、指定ハッシュタグ「#ブッキングドットコムで夢の旅館旅」とともに、フォローしたSNS上へ投稿すれば完了となる。

 応募期間は6月24日(木)~7月8日(木)23:59まで。応募期間終了後、厳正な抽選のうえ、当選者にダイレクトメッセージで直接連絡が届く。送付は7月末を予定。

HIS、本社を325億円で売却 財務基盤の強化へ

2021年7月2日(金) 配信

 エイチ・アイ・エス(HIS、澤田秀雄会長兼社長)は6月30日(水)、本社オフィスを置く東京都港区の神谷町トラストタワー4、5階フロアを、不動産関連会社「SMFLみらいパートナーズ」(寺田達朗社長)に7月30日付で売却すると発表した。売却額は325億円で、今後は賃貸契約を結んで入居する。

 HISの2021年度第2四半期(20年11月~21年4月)連結決算は新型コロナウイルスの影響を大きく受け、売上高は前年同期比80・4%減の676億5100万円、当期純損失は232億600万円(前年同期は34億5900万円の損失)と厳しい状況にある。

 同社は「新型コロナによる業績への影響を克服すべく、コスト削減の徹底、保有資産の売却などによる手元資金の充実をはかる」としており、財務基盤の安定化に努めていく考えだ。

 HISは20年6月22日、本社を東京都新宿区から現住所に移転していた。

リョケン、経営改善計画を支援 オンラインセミナー開く

2021年7月2日(金)配信

支援事業を説明するセミナーのようす

 リョケン(佐野洋一社長)は6月18日(金)、「経営改善計画策定」のオンラインセミナーを開いた。国の経営改善計画策定支援事業の内容や制度について、リョケンが計画策定を支援した企業の事例を交えながら、コロナ禍で業況の改善や課題を抱える参加者に説明した。

 経営改善計画策定支援事業とは、国が認める専門家の支援を受けて経営改善計画を策定する場合に、専門家(認定支援機関)の支払い費用の3分の2(上限200万円)を国が補助するもの。認定支援機関を活用して金融機関の返済条件などを変更することで、資金繰りを安定させながら業況の改善や金融支援の更改など、中長期的な経営戦略を再構築できる。

 認定支援機関であるリョケンの岩城雅郁研究員は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経営環境の悪化状況や、経営者が抱えている悩みなどの調査結果を紹介。認定支援機関の中でリョケンを介する利点について、岩城氏は「旅館・ホテル業界の経営や業務運営改善支援で数多くの実績がある。数多くの成功事例から、お客様の状況に応じた最適な改善策を提案できる」と強調。「経営上の課題を経営者とともに検討し、対応策の実施に向けて支援する。将来の方向性をともに考え、中長期経営計画の立案をサポートする」と意気込んだ。

 最後に同社の支援事例の一例として、客室数100室で平均基本宿泊単価1万円の大規模旅館での事例を紹介した。

 リョケンは、同旅館からコロナ禍で主力だった団体客の減少で売上も減少傾向となり、コストの上昇や債務超過などの相談を受けたと説明。そこで経営改善計画の策定を協力し、経営ビジョン、月ごとの販促やコスト管理のための活動を明確化した。これにより、金融機関の信頼が得られ、金融スキームの変更が受けられたほか、計画策定時は各部門長の意見を反映したため、責任意識が醸成されたなど、業況の改善や課題解決に向けて進展した成果を披露した。

「観光革命」地球規模の構造的変化(236) 自由で開かれたインド太平洋

2021年7月2日(金) 配信

 G7サミット(先進7カ国首脳会議)が英国で2年ぶりに開催された。米国第一主義のトランプ前大統領は欧州勢と対立したが、国際協調主義を標榜するバイデン大統領の登場でG7がどのように変化するか注目された。

 今回のG7で最大の焦点になったのは中国問題であった。米英日は中国の覇権主義に厳しく対峙する姿勢を示したが、独仏伊は中国との経済関係を良好に保ちたいために両陣営の間の温度差が明瞭になった。

 しかし、G7は民主主義や人権尊重を重視しているために首脳宣言では中国に厳しい意見が盛り込まれた。新疆ウイグル自治区や香港での人権尊重、東・南シナ海の現状への深刻な懸念、台湾海峡の平和の重要性を強調、両岸問題の平和的解決など踏み込んだ意向が組み込まれた。

 今回、中国の覇権主義を牽制するために「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の重要性が首脳宣言で明記された。議長国の英国は豪印韓南アの4カ国を特別招待して、FOIPの重要性を演出した。さらに中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗して、発展途上国に対するインフラ整備のための投資に言及した点も注目されている。

 中国はG7の首脳宣言で人権問題だけでなく、台湾問題やFOIPが強調されたことに対して強い遺憾の意を表明しており、今後の中国の出方が注目される。中国を牽制しつつ、深刻な紛争が生じないように最大限に尽力するのは日本の役割になるが、日本の外交力は万全であろうか。

 G7の首脳宣言で「香港での人権尊重」が明記されて間もなく、中国共産党への批判的姿勢で知られる香港紙「蘋果日報(リンゴ日報)」の幹部が逮捕され廃刊に追い込まれた。中国の習近平指導部はG7による批判にも拘らず、香港で人権抑圧を強化している。

 コロナ禍についてはワクチン接種の進展で数年の内に沈静化が可能であるが、中国共産党政権による覇権主義はより強化される可能性が大である。ポストコロナにおける国際観光復興に向けて最大の不安定要因は中国の覇権主義であり、FOIPによる抑止力が重要になる。日米同盟を基調にしつつ、FOIPとの関係を援用し、なおかつ日中関係を良好に維持する困難さを抱えながら、日本は未来を無事に切り拓いていけるだろうか。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。