【特集 No.628】豊岡観光DX 予約情報共有で単価と稼働率向上

2023年2月21日(火) 配信

 豊岡観光DX推進協議会(会長=高宮浩之・山本屋社長、兵庫県豊岡市)は昨年6月、宿泊日や人数、利用客の居住地などの予約情報を城崎温泉街の加盟宿泊施設で共有するシステム「豊岡観光DX基盤」が動き出した。地域内の各旅館や全体のデータを参考にしながら、より緻密な需要を予測し、単価と稼働率を向上させる狙いだ。また、全旅連青年部の兵庫県城崎支部は第26回全国大会の褒賞に同システムを申請し、グランプリを受賞した。同協議会の中田翔真氏(きのさきの宿 緑風閣統括マネージャー)に詳しく聞いた。

【木下 裕斗】

需要に応じ、従業員を調整 城崎温泉から市全体の発展へ

 ――城崎温泉の歴史を教えてください。

 病気の人々を救おうと、僧侶である道智上人が720年、開湯しました。2020年には、湧出から1300年を迎えています。

 そのなかで、城崎温泉が経験した最大の危機は、1925(大正14)年に発生し、温泉街のほとんどが焼けてしまった北但大震災と言われています。

 震災のあと、これからの温泉街の在り方について議論されたとき、城崎温泉が選んだのは、当時の技術でコンクリートの建物を建てることも可能であるなか、「震災前の風情ある木造建築の町並みを取り戻すこと」でした。具体的には、宿泊客が浴衣で外湯や土産物店、飲食店など温泉街全体をそぞろ歩くことができるように再生しました。

 これは、街全体での繁栄を目指す共存共栄の精神を受け継ぐことでもあり、「街全体が1軒の旅館」という共通コンセプトとしても表現されています。

 ――豊岡観光DXを導入するまでの経緯は。

 城崎温泉では観光消費額の単価向上のほか、繁忙期や閑散期などの需要に応じた価格設定、人的資源の適切な配分・管理ができていないことが課題でした。

 2019年には、温泉街の若手経営者で構成される二世会が、DXを活用した地域課題解決に向けた意見交換を行い、50項目以上のアクションリストを作成し、市とDMOとで共有しました。両者にとっても「タイムリーな宿泊データの把握をしたい」という課題があり、DX事業の方向性が一致していることを確認しました。

 20年には新型コロナウイルスの感染拡大で、各旅館の経営維持が難しくなっていきました。各宿泊施設が大幅に減った観光需要に応じた価格を、勘と経験のマーケティングで設定していたなか、「共存共栄の精神のもと、正確なデータで単価を上げ、街全体でコロナに打ち勝ちたい」という認識が高まり、宿泊事業者にとって最上級の機密情報に当たる宿泊者情報の共有を決めました。市は決定を受けて、21年度予算にシステム導入の関連費用として約3400万円を計上しました。

 ――豊岡観光DXではどのようなデータを共有していますか。

 協議会に加盟する宿泊施設が稼働率と客単価のほか、朝食や夕食など宿で用意する食事区分、OTA(オンライン旅行会社)や直販などの予約経路、宿泊者居住地、宿泊人数をほかの宿と共有しています。なお、個人情報保護の観点から、旅行客が特定されるデータは除いています。また、宿泊施設の個々の売上もほかの施設に共有されることはありません。

 豊岡観光DXを運用する豊岡観光DX推進協議会には、二世会と豊岡市をはじめ、旅館組合や観光協会にも入会してもらいました。また、地域のDMOで観光地マーケティングを担う豊岡観光イノベーションが事務局を担い、城崎温泉全体でのDX導入を目指してきました。

 豊岡観光DXには23年2月現在、城崎温泉街にある宿75軒のうち、46軒が加入しています。客室数ベースでは6~7割ほどに達し、エリア全体の状況を網羅することができます。
 ――具体的な活用方法は。……

【全文は、本紙1894号または2月22日(水)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

〈観光最前線〉プレミアム付食事券で福岡満喫

2023年2月21日(火)配信

「うまかけん福岡」加盟店ステッカー

 福岡県内の飲食店で利用できるプレミアム付食事券「うまかけん福岡」が現在、全国のセブン―イレブン、ローソン、ファミリーマートで販売中だ。コロナ禍で厳しい経営環境にある飲食店を支援しようと福岡県が取り組む事業。JTBが運営する「うまかけん福岡」事務局が販売する。

 「うまかけん福岡」は、1万円分の食事券(1千円×10枚)が付いて料金は1セット8千円と2千円分もお得。現在、福岡県内の4千店舗以上の加盟店で利用できる。加盟店は順次追加中で、最新状況は公式HPにて確認できる。

 販売期間は4月15日まで。ただし予定販売数に達し次第、終了となる。1人1回2セットまで購入可能。福岡県へお出掛け予定の人はお早目に。

【塩野 俊誉】

5月8日(月)、業種別ガイドライン廃止 コロナ5類移行を受けて(和田観光庁長官)

2023年2月20日(月) 配信

観光庁の和田浩一長官は2月17日(金)、会見を開いた

 観光庁の和田浩一長官は2月17日(金)に開いた会見で、5月8日(月)に新型コロナの分類が5類に引き下げられることを受け、現在観光関連事業者の間で適用されている業種別ガイドラインや、観光庁から出されている新しい旅のエチケットなどを同日に廃止することを発表した。和田長官は、「観光庁としても、業界とよく意見交換をしながら、政府の全体方針を踏まえて対応を行っていきたい」と話した。

 政府の基本的対処方針分科会は2月10日(金)、新型コロナ対策としてのマスク着用の考え方の見直しを行った。現在では、基本的にマスクの着用を推奨しているところ、3月13日(月)からはマスクの着用を個人の判断に委ねるカタチとなる。

 観光関連団体では、3月13日(月)の新しいルール適用のために、業種別ガイドラインの改定を進めている。観光庁でも、新しい旅のエチケットの見直しを行っている。

 観光庁は、5月8日(月)の5類引き下げに伴い、業種別ガイドラインは廃止する。これに合わせて新しい旅のエチケットも廃止する方針。

 

新たな基本計画素案 質と持続可能を強調

 交通政策審議会観光分科会は2月9日(木)、新たな観光立国推進基本計画の素案を示した。2025年に向けた目標として、質の向上や持続可能な観光地域づくりの2点を強調した。

 訪日外国人旅行客1人当たりの消費額の目標を、19年から25%増の1人当たり20万円とする方針だ。また、世界的な旅行者の意識の変化やこれまでの課題も踏まえて、持続可能な観光に取り組む地域を全国で100地域にすることを目標に据えた。

 委員からは「単に数の達成に留まらず、本来の目的である旅行者の来訪が、地域経済や環境・文化の保全に好循環が生まれるのを目標に取り組みを進めるべきだ」という意見が寄せられたと報告した。

 和田長官は、「観光庁としては、委員の皆さんの意見を受け止めながらさらなる議論を深め、年度末までの策定に向けてしっかりと取り組む」と話した。

 

宿泊業高付加価値化 2月15日現在12件の申請

 観光庁は1月20日(金)、持続可能な稼げる産業の実現に向けて、宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン・登録制度を創設した。

 この登録制度は会計や労働環境改善、IT導入などの観点からの取り組みの実証登録要件とすることで、滞在価値向上による消費額増加や再訪促進を実現し、持続可能な稼げる産業への変革を目指すもの。

 2月1日(水)から受付を始め、15日(水)時点で12件の登録申請が寄せられた。

 今後、制度の周知を行い、登録事業者を補助事業などで積極的に支援する。高付加価値旅館への転換や、宿泊業の持続可能な稼げる産業への変革を目指していくため、積極的な登録を呼び掛けている。

草津白根観光ホテル櫻井 本客殿6階を一新 客室と廊下リニューアル

2023年2月20日(月)配信

草津白根観光ホテル櫻井外観

 群馬県・草津温泉の「草津白根観光ホテル櫻井」は、100%源泉掛け流しで約30㍍の草津温泉最大級の温泉大浴場とわたの湯源泉の露天風呂が自慢の宿。四季折々の会席や和洋折衷バイキング料理に、毎晩開催のホテルスタッフによる「湯もみショー&櫻太鼓ショー」も人気が高い。総客室数173室、最大収容人数933人。

 同館ではこのほど、本客殿6階フロアの客室と廊下の改装を実施した。

 2018年3月に「コンフォート和洋室」4室の改装を既に終えているが、今回は本客殿6階の残り5部屋を昨年12月25日にコンフォート和洋室に改装した。

客室「コンフォート和洋室」

 コンフォート和洋室は、シモンズ社製のセミダブルベッド2台の洋室に、ゆったり寛げる畳スペースを備えた広々とした和洋室。広さは約40平方㍍(フローリング+半帖畳)で、布団を追加することもでき、カップル客から4―5人の家族客まで幅広い利用が可能という。室内にはシャワーブース(浴槽なし)とトイレ(独立型)が付いており、加湿器付空気清浄機、ネスプレッソマシーン、ドライヤー(Panasonicナノケア)など、充実した客室備品でワンランク上の快適な滞在が楽しめると好評だ。全室禁煙、Wi―Fi完備。

客室「ハリウッドツインスーペリア」

 また、670号室(10畳1間)は「ハリウッドツインスーペリア」に改装した。自然と四季の移り変わりをコンセプトにした北欧スタイルの客室で、木の温もりを感じるインテリアが特徴。こちらにもシモンズ社製ベッドが採用されたほか、寛ぎのソファスペースやバーカウンターも設置されている。

本客殿6階廊下もリニューアルした

 予約・問い合わせ=ホテル櫻井予約センター ☎0279(88)1111(受付時間=午前10時―午後6時)。

【古沢 克昌】

レイヤマダさんライブ 3月に玉造温泉で

2023年2月20日(月)配信

レイヤマダさん(左)

 島根県と縁が深いシンガーソングライター、レイヤマダさんのライブが3月12日、同県松江市の玉造温泉にある温浴施設「玉造温泉ゆ~ゆ」内ホールで行われる。

 レイヤマダさんは東京生まれ。2013年にデビューし、島根でのライブを重ねるなか地元と関係を深め、15年に美保神社で奉納ライブを開催。ご縁をテーマに書き下ろした曲「えにしのうた」を初披露するなど喝采を受けた。

 17年には島根県での活動が評価され、島根県ふるさと親善大使「遣島使」および松江観光大使に就任した。

 今回のライブは、松江観光協会玉造温泉支部や松江市玉湯支所、「Ray Yamada Sanin CREW」などでつくる実行委員会が主催する。

 同日午後2時開演で前売り3千円。全席自由200席限定。島根県民会館オンラインチケット「シマチケ」ほかで販売する。残席がある場合は当日券3500円もある。

オンラインで旅程を作成・共有 札幌観光バスが新サービス

2023年2月20日(月)配信

「たびポス」トップページ(イメージ)

 札幌観光バス(福村泰司社長、北海道札幌市)は1月23日、旅の行程をオンラインで作成・共有できる旅行者向けWebサービス「たびポス」を公開した。旅行形態が個人主体へと変わるなか、国の事業再構築補助金を活用し、新規事業に乗り出す。

【鈴木 克範】

 「たびポス」のコンセプトは、「あなたの旅を、次の旅人へ」。投稿された旅程を自由に検索・閲覧してもらい、それをもとに独自の旅程を作ることができるサービスだ。利用は無料。旅行後に写真や感想を加えた新しい旅程を投稿してもらい、次の旅行者へつなげていく。

 経路検索には、ナビタイムジャパン(大西啓介社長、東京都)の広域観光促進支援ソリューション、「NAVITIME Travel Platform」が提供する「旅行プランニング」機能を採用した。経路検索に加え、900万件の施設データや5万超の観光情報、宿泊・チケット予約機能を有する仕組みだ。

 投稿された旅程は、訪問先や移動手段、季節に加え、1人旅や絶景などのタグからも検索が可能。「こんな旅がしたい」というニーズにも応えていく。サイト公開時は、「世界自然遺産知床 流氷SUP&ウォーク」や「大雪エリア―ガーデン巡り―」など、モデルコースとして50程度の旅程を掲載している。

 札幌観光バスでは、作成された旅程を基に、旅行者が交通機関や宿泊の予約決裁を行うことで、収益を見込むとともに、蓄積された旅程から旅行ニーズを探り、バスツアーの企画に役立てる。今後は、全国版への拡大やインバウンド向けに多言語対応も視野に入れる。

記念セミナーも開く

セミナーであいさつする福村泰司社長

 「たびポス」の利用は、一般旅行者に加え、さまざまな分野の専門家や観光産業関係者が「おすすめプラン」を投稿することも想定している。札幌観光バスは1月23日、札幌市内で道内の自治体や旅行会社、宿泊施設の担当者を招き、新サービスのリリースを記念したセミナーも開いた。

 あいさつに立った福村社長は「たびポス」を、「料理レシピの投稿・検索サイト(の仕組み)と似たサイト」と紹介。「貸切バス会社のデジタルを活用した新たな収益源確保の事例にしたい」と期待を込めた。

 「多様化する観光と北海道」と題したセミナーでは、北海道運輸局の水口猛観光部長と高速バスマーケティング研究所の成定竜一代表が基調講演の講師として登壇した。

 水口部長の演題は「もう一歩先へ、真の価値を伝えるこれからの北海道観光」。旅行先が道央圏に集中していることに触れ、「(地方に)魅力がない、あるいは交通手段がないのが理由だろうか」と問題提起した。アドベンチャートラベルを通じて実感した、道観光の可能性を伝えるとともに、「真の価値を知り、わざわざ行くだけの価値を伝えよう」と呼び掛けた。

 続いて登壇した成定代表は、「旅行の『多様化』『個人化』『着地型化』で注目される『旅程の提案力』」と題して講演した。Web化進展で、経路検索や宿泊手配が旅行者自身で行えるようになる一方、土地鑑や旅先の知識が乏しいため、「おおまかな旅程案を組み立てることがストレスになっている」と指摘。「それを支援する(「たびポス」のような)サービスが、ミッシングリンクを埋めることになる」と結んだ。

〈旬刊旅行新聞2月11・21日合併号コラム〉―― サイクルツーリズム  観光地の周遊を促し滞在を延ばす

2023年2月19日(日) 配信

 先日、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで、東急ホテルズセールス&マーケティング部顧問の西尾敏宏氏と、島根県安来市でサイクルツーリズムなどに関わる門脇修二氏、そして虎ノ門ヒルズをベースにサイクリング事業を行っているBREZZA代表の筬島洋敏氏と会食した。

 

 最近は、セルリアンタワー東急ホテルで観光イベントが多い。コロナ禍前から渋谷を訪れる機会はめっきり少なくなっていたが、セルリアンタワーには足繁く通っている。

 

 昼食時であったので、ホテル内の中国料理「スーツァン・レストラン陳」で少し辛めの本格四川料理の麻婆豆腐をいただきながら、最近の観光業界の動向など情報交換した。

 

 東急関連では、今年4月14日に「東急歌舞伎町タワー」が新宿歌舞伎町に開業する。ホテルや映画館、劇場、ライブホールなどのエンターテインメント施設などからなる、地上48階・地下5階・塔屋1階で、高さ約225㍍の超高層複合施設が現れる。

 

 3年間続いたコロナ禍から抜け出し、インバウンド観光客が多く押し寄せる時期に合わせたようなタイミングで、新宿歌舞伎町のランドマークとなるタワーが誕生する。個人的にも、とても楽しみにしている。

 

 

 さて、観光庁は新たに策定する「観光立国推進基本計画」で、2025年時点で、訪日外国人旅行者の1人当たりの消費額を20万円にする目標だという。コロナ禍前の19年は15・9万円だったので、大幅な消費拡大へと舵を切ることになる。

 

 これまではどちらかと言えば、訪日外国人旅行者数など量を追い求める傾向が強かったが、日本の観光政策も「量」から「質」へと大転換期を迎えた。

 

 

 渋谷で4人での会食中の主な話題は、サイクルツーリズムだった。筬島氏は、在日外国人を含む外国人観光客が自転車での観光を楽しむ傾向が年々強くなっており、ガイドとともに東京都内の裏道を走るツアーなども人気が高いという。

 

 私がしばしばオートバイで走る神奈川県の宮ヶ瀬湖に通じるロードにも、休日にはサイクリストたちでいっぱいだ。

 

 また、日本各地の観光地でもレンタサイクルを多く見掛けるようになった。沖縄の竹富島を訪れた時は、宿泊したホテルで自転車を借りて、島中を走り回り、浜辺の猫たちと戯れて遊んだ記憶がある。

 

 

 自転車とひと口に言っても、最近は電動自転車も増え、多種多様になった。徒歩だけでなく、自転車、あるいは電動自転車を活用することによって、行動範囲が飛躍的に拡大する。

 

 そういえば一昨年の秋に、石見銀山を訪れた。電動アシスト付き自転車の貸し出しを行っていたが、私は「徒歩でいく」と決心し、龍源寺間歩まで歩いて登っていったが、後から来る自転車にどんどん追い越され、「あぁ、自転車を借りればよかった」と何度も後悔した。

 

 自転車での観光が広がれば、観光地や温泉地での過ごし方が変わってくる。多くの観光地では「長く滞在してほしい」と願っていても、旅行者はあっという間に去ってしまう。自転車で周遊できるお洒落なカフェや、小さな美術館、地元の人しか知らない写真映えスポットなどを記した地図があれば、滞在を促すきっかけになるのではないかと思う。

(編集長・増田 剛)

環境保護と観光の共存へ 市と連携、環境学習に注力(保津川遊船)

2023年2月18日(土) 配信

豊田知八代表理事

 地域の自然環境を保護しながら、観光業を活性化させ、住民の暮らしも守る「サステナブルツーリズム(持続可能な観光)」に注目が集まっている。

 保津川の環境保護活動と環境学習への協力に注力する保津川遊船企業組合(京都府亀岡市)の豊田知八代表理事は、環境先進都市として高い注目を集める市とも連携しながら、同ツーリズムのあり方を模索している。豊田代表理事に、環境保護と観光の共存について話を聞いた。

 ――保津川の川下りの魅力を教えてください。

 約1300年1度も途切れることなく水運が続いているのは、日本の川では保津川(桂川)だけです。保津川は古くから輸送路としての役割を担っていて、長岡京・平安京の造営時には丹波の木材を流していたとも言われます。

 1606年には角倉了以が江戸幕府の許可を得て、世木から嵯峨までの水路を開きました。このとき、瀬戸内水軍の旗頭・来住一族が編み出した航海技術も京都に伝え、以後約400年、船頭が技を途絶えることなく継承し続けており、亀岡市指定の民俗無形文化財に登録されています。

 こうした歴史的、文化的価値は、世界にもPRできる観光資源であり、外国人の興味も引くことができると思います。

 ――豊田さんは保津川の環境の保護についてもお話をされています。

 環境保護の取り組みは今後、エコツーリズムやサステナブルツーリズムと絡め、亀岡市の色々なコンテンツと一緒に打ち出していきます。

 市は現在「世界に誇れる環境先進都市」を目指し、さまざまな取り組みを進めており、世界中から注目されています。また国内のさまざまな企業とパートナー連携・パートナーシップ協定を結び、環境保護に取り組んでいます。

 2020年には条例でプラスチック製レジ袋の提供が禁止されました。これは市が進める「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」によって定められたのですが、背景にあるのが保津川のごみ問題です。

 我われも環境学習に注力をしていて、昨年夏には「かめおか保津川エコツアー」を行いました。保津川を下りながら河川ごみの漂着実態を自分の目で見て、環境問題への学びにつなげるのが狙いです。また、亀岡に環境問題を学びに来る学校も増えています。

 ――環境問題と観光の関わりについては、いかがですか。

 大切なことは、持続的な産業として自然環境を守りながら観光コンテンツをつくることです。

 一方で、サステナブルツーリズムを実施するうえでは、訪れた人に自然や地域の良さを実感していただく、味わっていただけるメニューを提供することが一番大事ですが、地域がそのことによって収入を得て、持続しなければならないので、難しい旅行形態だとも感じています。地域が安定的に持続できる環境を、ツーリズムを通じカタチにすることがサステナブルツーリズムだと考えているので、できる地域は限られてくると思います。

 同時に、地域の伝統や自然を守りながら、そこに自然に存在しているものを発信できるところでしか本業として続けていけないのではないでしょうか。

 観光においては、「行きたい」と人が思うきっかけをいかに作り出せるかが非常に重要です。行きたいと思わせる「動機」づくりをどこまでできるか、その地域の魅力をどのようなカタチで伝えるか、そしてその動機に温泉や地域の食などの要素が入って初めて、人はその地域に出掛けるのではないでしょうか。

 ――保津川遊船は昨年、京都府が開業した「川の駅 亀岡水辺公園」の指定管理者になりました。その際、豊田さんは川の駅を環境問題や水運の歴史を学べる場にしたいとの考えを示しています。

 私は川の駅を保津川の「水運の歴史」を学ぶための核となる施設に育てていきたいと考えています。しかしながら「歴史」を前面に出してしまうと、訪れていただくためのハードルが上がってしまいます。この部分は今後、地域のさまざまな事業者と連携して考えていきたいと思っています。

保津川沿いのキャンプサイト

 今川の駅では、ラフティングやSUPなどさまざまな水辺のアクティビティを提供しているのですが、この水辺のアクティビティに意味をもたせることも重要だと考えています。

 こうしたなかで今考えているのが、川の持つ力でストレスを軽減する「川のセラピー」です。その際は、川のセラピーを単体のコンテンツメニューにするのではなく、地域のウェルネスツーリズムを構成する1要素とし、健康維持をする旅を提供したいですね。

 ――ありがとうございます。

佐世保鎮守府資産を活用 黒島と4市町巡る旅形成へ

2023年2月17日(金)配信

旧佐世保防備隊黒島東砲台施設

 黒島観光協会(長崎県佐世保市)は現在、日本遺産に認定された「佐世保鎮守府」の資産を活用した周遊観光の形成を進めている。

 高速道路を活用し、鎮守府の構成資産・戦争遺構が残る平戸市、西海市、川棚町と、世界遺産の島・黒島の周遊を促進。23年度は、広域周遊のスタンプラリーなどを計画する。

 同協会の進める「新たな歴史を学ぶ旅!!『佐世保鎮守府』を活用したフィールドミュージアム事業」についてまとめた。

 1889年、旧日本海軍が「佐世保鎮守府」を開庁、同鎮守府の開庁に合わせ佐世保は急速に近代都市として整備された。現在市内には、日本に残る唯一の長波通信施設「旧佐世保無線電信所(針尾送信所)施設」や、「旧佐世保鎮守府凱旋記念館(佐世保市民文化ホール)」など503の構成資産が点在している。

 一方で佐世保観光は「ハウステンボス」と「西海国立公園九十九島(くじゅうくしま)」には一定の集客効果があるが、周辺の観光資源の活用が不十分で、周遊型観光の形成ができていないことが課題として挙がっていたという。

 この課題に対し、黒島観光協会は新たな観光の目玉として「鎮守府」の資産と歴史に着目、国土計画協会の「高速道路利用・観光・地域連携推進プラン」の支援を受け、事業を展開。

石原岳堡塁跡(佐世保要塞)

 高速道路を活用することで西海市の「石原岳堡塁跡(佐世保要塞)」や川棚町の「魚雷発射試験場跡」、平戸市の「御崎の砲台跡」など、4市町に点在する鎮守府の構成資産・戦争遺構の周遊を促進し、「日帰り観光地」からの脱却を目指している。

 同事業は3年間で完結するもので、2022年度は4市町の魅力を紹介するオンラインツアーを実施、多くの参加者を集めた。

 23年度は、広域周遊のスタンプラリーなどを計画する。24年度に謎解きを楽しみながら佐世保鎮守府の近代化遺産を周遊する体験型観光プログラムを展開する。 

 黒島観光協会の山内一成理事長は、「世界文化遺産『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』を構成する黒島の集落と日本遺産『佐世保鎮守府』、両方を巡りに多くの人に来ていただきたい」とPR。

 そのうえで、「コース造成だけではなく、ガイドや宿泊の手配を1カ所でできる仕組みも整えたい。そして将来的には、横須賀、呉、佐世保、舞鶴の4鎮守府を周遊するコースの造成に発展させられれば」と展望を語る。

キリシタンと鎮守府2つの歴史に触れる島

 江戸時代後期、平戸藩が入植を認めた際、外海や生月島の潜伏キリシタンが多く移住した黒島。島内には1900年にマルマン神父と黒島の信徒が建設を開始し、2年後に完成させた黒島天主堂があり、今も島民の祈りの場となっている。
 同島にはキリシタン関連の歴史に触れられる場所に加え、旧海軍佐世保鎮守府の歴史に触れられる「旧佐世保防備隊黒島東砲台施設」や「旧佐世保海軍警備隊黒島名切砲台跡」などの遺構も点在している。

南蛮貿易の史実もとに平戸で新グルメ展開

 古くから西洋諸国との交流により発展してきたまち、平戸。同市では、南蛮貿易の史実をモチーフにした香辛料とイノシシ肉を組み合わせたご当地グルメ「平戸ジビエ南蛮カレー」を開発、市内4店舗がそれぞれのモチーフ(史実)を基にコンセプトと特徴付けしたオリジナルメニューを展開している。

平戸ジビエ南蛮カレー(シーサイドカフェ)

 平戸瀬戸市場内にあるレストラン「シーサイドカフェ」では、ポルトガルをテーマに、ジビエ粗挽き肉を使ったキーマカレーに、同国ゆかりの金平糖やオリーブオイル(唐辛子入り)、海鮮天ぷら、干しブドウを組み合わせたセットが楽しめる。

佐世保で楽しむ海軍と自衛隊グルメ

 佐世保を訪れた際には、旧海軍や自衛隊にちなんだグルメも見逃せない。

 旧海軍にちなんだグルメ「海軍さんのビーフシチュー」は、明治時代の海軍レシピ本「海軍割烹術参考書」にある「シチュードビーフ」をもとに、1951年創業のレストラン蜂の家などがそれぞれアレンジを加え提供する。

 一方、「させぼ自衛隊グルメ」は海上自衛隊、陸上自衛隊、佐世保海上保安部の部隊の監修を経て秘伝のカレーを再現、トマトの酸味が特徴的な「護衛艦あきづきトマトチキンカレー(ドリーマー グリル&カフェ)」など市内22店舗で提供する。

 このほかにも、1950年ごろアメリカ海軍から直接レシピを聞いて作り始めたのがその起源といわれる「佐世保バーガー」や、旧日本海軍にちなんだスイーツ「海軍さんの入港ぜんざい」も味わえる。

伊東ロケーションサービス より一層のロケ誘致に注力 ロケハンの際の案内やロケの対応などに対応するチームを「伊東ロケ こらっシェルジュ」に

2023年2月17日(金) 配信

ユニフォームも作成

 伊東ロケーションサービス(静岡県)はこのほど、ロケハンの際の案内やロケの対応などに対応するチームの名称を「伊東ロケ こらっシェルジュ」とし、より一層のロケ誘致に注力すると発表した。

 こらっシェルジュは、伊豆の方言で「おいで」や「来てね」を意味するこらっしぇと、案内人を指すコンシェルジュを組み合わせた造語。名称を付けたことでロケ隊や市民への認知度の向上をはかり、民間事業者の参画の推進を目指す。

 伊東ロケーションサービスは、映画やテレビ番組などのロケの積極的な誘致と支援により、制作される映像作品などを通し市の持つ魅力を広く発信し誘客をはかり、ロケを受け入れることによる地域への経済効果や映像資産の活用による波及効果による地域の活性化を目指し、2020年に発足。

 併せて、自分たちの住んでいる地域が作品に取り上げられることで、多くの人に注目され、その価値を再認識することによるシビックプライドの醸成も目的に掲げている。