「津田令子のにっぽん風土記(97)」縁の園で縁をつなぐ~ 東京・茗荷谷編 ~

2023年5月23日(火) 配信

曹洞宗林泉寺の「縛られ地蔵」
茗荷谷陵苑 縁の園所長 田尻和正さん

 東京メトロ丸ノ内線の茗荷谷駅から歩いてすぐの場所に「縛られ地蔵」でお馴染みの曹洞宗林泉寺が管理運営する茗荷谷陵苑「縁の園」はある。

 

 「最大の魅力は、駅近でありながら閑静な住宅地に囲まれた聖地としてふさわしい環境ではないでしょうか」。さらに「420年の歴史を持つ曹洞宗林泉寺が管理運営していることや、葬儀・法事・お墓の分野別に熟練スタッフが在中していることも特徴です」と話すのは所長の田尻和正さん。石材店に20年ほど従事していたというが、お墓も多様化する時代となり室内墓の魅力とは何かと興味を持ち、今の仕事に就かれた。縁の園という名称は「人は誰しも1人では生きていけない。他人との関りがあって自分が成り立っている。色々な方たちの縁をつないでいきたい」思いで名付けたらしい。

 

 御朱印集めなど旅の目的として全国の神社仏閣を訪れている方は右肩上がりだ。縛られ地蔵の林泉寺は興味深いネーミングも手伝って訪ねる人は多い。

 

 その由来は昔、呉服屋の千代がお地蔵様の前で休み、居眠りをしているうちに反物を盗まれてしまい奉行は石地蔵が怪しいと言い、地蔵を荒縄で縛り奉行所に運ぶことに。その際、許しもなく一緒に奉行所内に入ってしまった人々に、罰として3日以内に反物を持参させたところ、その中に盗品があり無事犯人を検挙できたというエピソードがあったという。

 

 この地蔵尊は大岡政談や銭形平次にも登場し江戸中期に著された「江戸砂子」に「小日向林泉寺の縛られ地蔵は大変有名である」とも書かれている。荒縄で縛ると盗難避けや厄除けにご利益があると言われ、年末には縄がほどかれ供養され、綺麗な地蔵尊が現れ新しい年を迎えるというわけだ。

 

 最近よく耳にする終活について「一見暗いイメージを持つ方もいますが、残された人生をどのように楽しむか充実させるかだと思います」。確かに終活の一端としてお墓を求める人は増えている。多くは生前にお墓をご用意される方(寿陵)とお墓のお引越しをなさる方(改葬)という。

 

 「歳を重ねることも考慮して自宅や最寄駅からの距離感と、お花やお線香不要でお墓参りができる気軽さ、葬儀や法要、会食ができる一貫した施設に満足されて縁の園をお選びいただいたようです」と田尻さん。「帰り際に『子供に負担を掛けず墓まで建てたので、あとは夫婦で温泉巡りでもしますよ』と話され、笑顔と出会う機会が多いです」と語る。

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

羽田空港第2ターミナル、7月19日(水)から供用再開 急激な旅客の回復に対応

2023年5月22日(月) 配信

羽田空港第2ターミナル(イメージ)

 日本空港ビルデングと東京国際空港ターミナルは7月19日(水)から、コロナ禍の影響で閉鎖していた第2ターミナルの供用を再開する。

 第2ターミナルは、従来国内線専用だったターミナルに国際線出発・到着フロアや免税店などを設置し、第3ターミナルの拡張とともに、国際線の増便に対応し、豊富な国内線ネットワークとの乗継機能の強化をはかっていた。

 コロナ禍の影響で2020年4月から閉鎖していたが、新型コロナの分類が5類に変更されたことを受け、旅客の急激な回復に対応するために、施設の供用再開を決定した。

 運用開始は7月19日(水)午前5時から。運用時間は午前5時~午後1時半まで。

フォーティーズ、わかやま日帰りバスツアー販売 高野山や精進料理堪能

2023年5月22日(月) 配信

料金は全国旅行支援を利用で6400円となる
 フォーティーズ(岡武史社長、大阪市鶴見区)はこのほど、同社のホームページで6月17日(土)に催行するわかやまリフレッシュプラン日帰りバスツアーの販売を始めた。
 
 同ツアーは、高野山の総本堂である「金堂」や高さ50㍍の多宝塔「根本大塔」などの建物が並ぶ高野山壇上伽藍和(和歌山県・高野町)に訪れる。その後、高野山の奥之院参道入口に位置する一の橋 天風(同)で精進柿の葉寿司や旬のお惣菜などの精進料理を堪能する。JA紀の里の直売所「めっけもん広場」(同紀の川市)にも立ち寄る。

 出発地は大阪駅。料金は全国旅行支援を利用した場合、6400円となる。地域クーポン1000円分が付く。最少催行人員は30人。

 

23年1~3月期、初めてコロナ前の水準上回る 国内旅行消費額速報値(観光庁)

2023年5月22日(月) 配信

観光庁の資料を基に編集部が作成

 観光庁はこのほど、「旅行・観光消費動向調査」の2023年1~3月期(速報)を発表した。日本人国内旅行消費額は、前年同期比80・2%増、19年同期比0・5%増の4兆2331億円となった。20年以降、初めてコロナ前の水準を上回る結果となった。このうち、宿泊旅行消費額は同87・3%増(19年同期比6・1%増)の3兆4469億円、日帰り旅行が同54・5%増(19年同期比18・3%減)の7862億円だった。

 日本人国内延べ旅行者数は、同55・2%増(19年同期比17・1%減)の1億13万人。うち宿泊旅行が同60・9%増(19年同期比9・4%減)の5802万人、日帰りが同48・1%増(19年同期比25・8%減)の4211万人となった。

 日本人国内旅行の1人1回当たりの旅行単価は、同16・1%増(19年同期比21・2%増)の4万2277円となった。宿泊旅行は同16・1%増(19年同期比17・1%増)5万9413円、日帰りが同4・3%増(19年同期比10・0%増)の1万8669円だった。

ON・ガス推進機構正会員の取り組み 「食」をテーマに認知度が低い地域への注目度を高める (ぐるなび)

2023年5月22日(月) 配信

西原史郎氏

 16の企業会員が参画するONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構。各会員企業は自社のもつコンテンツとONSEN・ガストロノミーツーリズムを掛け合わせ、同ツーリズムの普及と磨き上げを進めている。

 今回はぐるなびの取り組みについて、国内のガストロノミーツーリズムの展望と合わせ、食と観光企画部の西原史郎氏に話を聞いた。

 

◇  ◇
 

――ぐるなびは機構設立時から会員として参画されています。その狙いを教えてください。

 我われは「食でつなぐ。人を満たす」を企業の存在意義に掲げ、各地の地産品を地域固有の歴史・文化を背景に発信しています。

 一方で食に関する情報は有していますが、地域に埋もれている素材の掘り起こしとなると単独で行うのは難しい状況でした。そこで地域の方々や交通事業とも連携し、共に掘り起こし、広めていくことで、地方に人が訪れるきっかけをつくりたいと考え、機構への参画を決めました。

 ――これまでぐるなびはどのような活動をされてきましたか。

鹿児島の美味しい飲食店を紹介(出典「銭湯・ガストロノミーホッピングin鹿児島市リーフレット」)
ホッピング期間中に行われたモニターツアー(写真提供:ON・ガス推進機構)

 機構が観光庁の補助事業で2022年秋に実施した「銭湯・ガストロノミーホッピングin鹿児島市」において、企画に参加する飲食店を誘致。各メニュー情報を収集し、観光客に対して鹿児島の“食”の魅力を訴求することに取り組みました。

 ――観光業界の中でガストロノミーツーリズムへの注目度が増していますが、定着、活用をはかるうえで大切なことは。

 歴史や文化、季節などとその土地の食の関わりについて、受け入れる側も学び続けていくことが大切です。それでなければガストロノミーツーリズムが中身の伴わないモノになってしまうので、コンテンツやツアーなどを造成する側と地域が連携することが要になります。

 そのうえで、地域の子供たちへの食育や、シェフの育成をはかり地域文化を守り、育てるところまで取り組みを進められるのが理想です。

 ――今後の機構会員として挑戦していきたいことはありますか。

 地域での取り組みを進めるなかで、「食」をテーマにすることで、「認知度が低い地域への注目度を高められるのでは」という思いが強くなってきています。

 豊かな食のコンテンツを持つ地方に着目し、地方にある良い店に付加価値を付け、売り出していくこと。これによって、飲食業界の生産性の向上や地域の活性化に寄与することが、重要だということを強く感じています。そのためには富裕層への「食」のPRも重要だと思います。

ヘリで新たな食の感動体験を

  そこで我われは、22年に価値のある「おいしい」を提供する有料会員制サービス「PREMIUM GOURMET CLUB」を立ち上げ、そのなかで新たな食の感動体験としてヘリコプターを利用した特別体験ツアーも行っています。

 今後会員企業の皆様とは、高付加価値型のイベントの開催についても議論ができればと思っています。併せて、地域に点在する伝統食や野菜などの固有の財産をガストロノミーでつなぎ合わせる方法もともに考えていきたいです。

――ありがとうございました。

東武グループ 栃木市、國學院大と観光まちづくりで協定結ぶ

2023年5月22日(月) 配信

左から東武トップツアーズの竜江義玄取締役執行役員、大川秀子栃木市長、東武鉄道の本保芳明執行役員待遇、國學院大學観光まちづくり学部の西村幸夫学部長

 東武鉄道(根津嘉澄社長)と東武トップツアーズ(百木田康二社長)は5月16日(火)、栃木県栃木市(大川秀子市長)、國學院大學観光まちづくり学部(西村幸夫学部長)と「持続可能な観光まちづくりに関する協定書」を締結した。同日、栃木市役所で締結式を行った。

 各者はアフターコロナにおける栃木市の観光振興を考えるうえで、従来の日帰りを中心とした誘客に加え、持続可能な観光の視点を取り入れた街づくりが重要となると考えている。今回、産官学の連携による同協定の締結を機に、連携・協力して「持続可能な観光まちづくり」に向け、さらなる沿線価値向上に向けた施策に取り組む。

 連携によって、栃木市での現地調査やヒアリング調査の実施、観光まちづくりに関する現況把握をはじめ、他地域における事例調査の実施など、「持続可能な観光まちづくり」に関する調査研究を実施する方針だ。

 栃木市は、黒塗りの重厚な見世蔵や白壁の土蔵群などが今もなお残り、「蔵の街とちぎ」として歴史的風致と懐かしさを今に伝えている。「太平山」や「三毳(みかも)山」、ラムサール条約湿地に登録された「渡良瀬遊水地」などの豊かな自然があり、そのなかでのアクティビティや農産物など、多くの観光資源を有している。さらには、市内外から多くの観光客が訪れる祭りやイベントも開催され、多彩な魅力にあふれている。

高千穂峡の奥地巡るツアー開始 ゴムボートで幻の滝目指す (高千穂アドベンチャーツーリズム協議会)

2023年5月22日(月) 配信

ツアーのイメージ

 高千穂町旅館業組合や高千穂町企画観光課などで構成する高千穂アドベンチャーツーリズム協議会(福島優会長)はこのほど、宮崎県・高千穂峡の奥地を巡る完全プライベートのパックラフトツアーの提供を始めた。

 パックラフトは持ち運ぶことができ、空気で膨らますゴムボートで、カヤックなどを持って行けない自然の奥地で楽しむことができる。同プログラムでは高千穂峡の約5㌔上流部に位置し、奥高千穂峡と呼ばれる「尾橋渓谷」に位置する幻の滝を目指す。道中ではガイドが紹介する高千穂の歴史や暮らしを楽しみながら、阿蘇山の火砕流が流れる水で削られて形成した峡谷を冒険感覚で進むという。

 ツアーの料金は1万5000円(税込)。九州在住者が参加するグループには20%割り引く。定員は2~8人。午前9時にスタートし、午後零時ごろ解散する。申し込みは同協議会のホームページで受け付けている。

子供向け学習型ツアー「フレテミーナ」夏の10コース発売 JR東日本ら

2023年5月22日(月) 配信

一般非公開の青森空港の裏側を見学

 東日本旅客鉄道(JR東日本)とJR東日本びゅうツーリズム&セールスはこのほど、子供向け学習型ツアー「フレテミーナ」で夏の特別プランとして、10コースを売り出した。 一般には立ち入り禁止や公開していない場所を訪れるツアーもあり、「フレテミーナ」でしか体験できないプランを用意した。

 同企画は次世代を担う子供たちに向けて、「鉄道の旅」と「旅を通じたさまざまな本物の体験」を提供することで、子供たちの成長と家族の思い出づくりを応援する取り組みを行っている。なお、フレテミーナは小・中学生と大人の組み合わせで申し込む商品で、乳幼児は参加できない。

 例えば、7月8日からの1泊2日ツアー「一般公開していない『青森空港』裏側見学と『盛岡新幹線車両センター青森派出所』特別見学」は、飛行機も新幹線も楽しめる、乗り物好きにぴったりの企画。東京発の1日目は「青森ねぶた」の制作現場見学や、元機関ガイドさんによる八甲田丸の案内、のっけ丼の昼食と青森を満喫する。旅行代金は東京駅発が大人1人7万800~7万1800円、小学生が1人5万7800~5万8800円。

 このほか、「秘境の地『只見町』で自然散策と『フルーティアふくしま』でデザートタイム」は8月26日出発の1泊2日のツアー。今年で引退する「フルーティアふくしま」を貸し切り、車内でフルーツを楽しむ。また、専門ガイド同行で「癒しの森」トレッキングや、手漕ぎの船で只見川を巡る「霧幻峡の渡し」など只見を周遊する。代金は大人1人6万800~6万2800円、小学生1人5万4800~5万6800円。

【ANTA支部長から~届けメッセージ~】東京都支部 村山吉三郎支部長 「自社の存在価値をお客様に」

2023年5月22日(月) 配信

村山吉三郎支部長

 今号から全国旅行業協会(ANTA)の各都道府県支部長が本紙で提言やメッセージを発信する連載「ANTA支部長から届けメッセージ」がスタートする。第1回は、東京都支部の村山吉三郎支部長からの発信だ。

 2020年春から徐々に蔓延し始めた新型コロナウイルス。最初はこの流行も直ぐに終了すると考えていましたが、全世界へと広がりを見せ、異常な雰囲気のなか、あっという間に3年目になりました。我われの旅行業界も人の移動が禁止され、売上の減少が続きました。

 その間の流れを考えてみると、旅行に行くにあたりワクチンの予防接種3回以上の接種証明書が必要で、宿泊するのにも乗り物にも乗るのにもマスク着用が求められ、旅行に行く楽しさが制限されたのは事実です。

 今、旅行と言えば個人旅行が主体です。団体の旅行は未だ自粛ムードが続いています。

 団体旅行の代表格の社員旅行は、会社全体で行くのではなく、課やグループ単位での参加へと変化してきました。

 さらにコロナ過後は、社員旅行が「家族単位で参加する」といったように大きく変わりつつあります。

 原因はホテルの部屋に他人と入るよりも家族単位の方が、感染リスクが低いことも要因の1つかと思います。

 最近、個人旅行が多いのも社員旅行を中止して会社が旅行代金を家族旅行に充てているからだとの情報もあります。

 我われ旅行会社が、新たな企画とアイデアを見つけることができるかが大きな課題です。

 1泊2日のバス旅行にしても、家族が楽しめる施設の選択や、食事のスタイルなども考えなければなりません。これまでのような宴会形式だけではなく、ビュッフェスタイルの食事会場も必要になります。

 宿泊先までの行程では、途中にカラオケ大会やサロンルームを作って酒盛りも少なくなると感じています。

 このままではOTA(オンライン旅行会社)にどんどん顧客を取られる時代になります。防衛策としては、ホームページの作成など企業努力で個人客の集客にも力を入れる工夫も必要だと感じます。

 最後に、自社の存在価値をお客様に知っていただける努力が一番大事になるかと思います。

「観光人文学への遡航(35)」 秘密曼荼羅十住心論⑥空海と最澄とが決別した理由

2023年5月21日(日) 配信

 空海の「秘密曼荼羅十住心論」を第9住心まで見てきた。ここで、ざっとこの境地に至るまでの差異をおさらいしてみる。

 

 まず、第1住心は、動物と同じく欲望の赴くままに生きる様である。宗教以前の段階である。

 

 第2住心は、道徳心が生まれてくるが、一方で人からよく思われたい、人に認めてもらいたいといった子供じみた考えで、儒教はこの段階に位置づけられる。

 

 第3住心は、宗教心に目覚めてくるが、神様・仏様が守ってくれているから安心と思っている。道教やヒンドゥー教がこの段階である。現代的な癒し系とかスピリチュアルなことに興味を持っている人などはこの段階である。

 

 第4住心は、自分の存在を客観視できる状態であり、そうなると今までの幼かった自分を否定する。でも、やっぱり関心事は自分に留まっていて、自己の救済ばかりが目的化している。小乗仏教はこの段階である。

 

 第5住心も小乗仏教の段階で、己の無知を取り除くために修行をして涅槃を目指す行動を起こす。しかし、この段階でも、自己一身のためであり、人の役に立つという発想はない。

 

 これらの自己満足の段階から抜け出して、誰かのために自分を役立てたいという発想が生まれてきたら、それが大乗仏教である。

 

 第6住心は、どんな人にも差別なく愛する心を持つことを目指すようになる。しかし、それには厳しい修行と膨大な時間がかかる。そして、まだその境地に至っていない人々に対して見下し、区別してしまう。

 

 第7住心は、一切は空であり、差別や区別を越える段階である。また第4住心と同様、すべてを否定することになるのだが、ここでは虚無主義に陥りやすい。

 

 第8住心は、否定ではなくすべてを肯定する。あらゆる存在に仏性が宿ると考え、どんな人でもすべてに救われる可能性があるということを知る段階である。これが天台宗の教えである。

 

 そして、第9住心は、あらゆる対立を越える境地に至る。全体が一つになっているという感覚を知る。だから、極楽に行くということは究極ではなく、もし極楽にたどり着いたらまたすぐ現実世界に帰ってくることを求めている。それを往相と還相と言う。涅槃にとどまらず、生死の世界に戻って人々に教えを広める活動をしなければならない。この段階は華厳宗である。

 

 華厳宗は天台宗がまだ足りないものがあると言い、最澄は、次に解説する第10住心の密教と天台宗は同じくすると考えていた。それを空海は、天台宗を華厳宗の下の段階に置いた。こういうことからも、最澄と空海が決別に至った原因なのではなかろうか。

 

 では、その華厳宗でも見えていない密教の真理とはいかなるものか、それをいよいよ来月から解き明かしていく。

 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。