【特集No.664】2025年新春インタビュー 井門隆夫氏に聞く 旅館業の未来を考える

2025年1月1日(水) 配信

 大企業や外資から資本投下される都市部のホテルと、地方の過疎地域にある旅館との労働生産性の格差が拡大するなか、旅館の未来をどのように描くか。最多人口世代「団塊の世代」のための旅館サービスを50年間続けてきたが、今、まさにこの世代特有の旅のスタイルが終焉を迎えようとしている。國學院大學観光まちづくり学部教授の井門隆夫氏は旧態依然とした考えから離れ、新たな発想による価値転換と、「地域社会とのつながり」の重要性を語る。

【本紙編集長・増田 剛】

 

宿は地域社会の維持・再生を

 ――旅館の現状についてどのように見ていますか。

 宿泊業の労働生産性は日本経済と歩調を合わせて1970年代ごろからずっと上がっていました。しかし、1993年の金融制度改革法施行以降、とりわけ大企業に外国資本が自由に入ることが可能になったことで、資本金5千万円以上の大企業と、ほとんどが5千万円未満の中小企業である旅館業の労働生産性の格差が拡大してきました。

 大企業や外資から資本が投下される「都市部の不動産価値の高いエリアのホテルは稼げる」が、「地方の過疎地域にある旅館は稼げない」構図が明確化しており、同じ宿泊業であっても別業態と考えた方がいい状況になっています。

 オーバーツーリズムが話題になっていますが、過疎地を切り捨てて、都市部にのみ集中して新規出店する不動産投資がこの現象を生んでおり、「株主利益の追求」に行き着いてしまいます。

 一方、中小企業の大部分はオーナー企業であり、株主=経営者です。同様に誰のために生産性を上げるかを突き詰めると、「経営者(自分)の利益のため」となります。

 このように考えると、旅館の労働生産性向上を最優先させることが果たして正しいのだろうか。生産性を上げて、株主のために利益を伸ばし続けることだけがすべてではないと考えるのであれば、「地域や従業員のために還元した方がいい」と割り切るのも1つの考え方です。

 過疎地域にある旅館も新たな視点によって、これまでになかった需要を取り込む大いなる可能性を秘めています。地域の行政や金融機関などが一体となって理解が進んでいる観光地や温泉地には、新しい旅のスタイルに合致する旅行者がどんどん訪れています。 

 城崎温泉(兵庫県)や、天童温泉(山形県)などは既存のお客にしばられることなく、若い世代が引っ張って新しい客層を呼び込んでいます。

 ――「既存のお客」とは。

 団塊の世代であり、現在75歳以上の後期高齢者の方々です。日本が国債を発行し始めた1970年代以降、現在1千兆円を超える国債(借金)があるのですが、統計上では75歳以上の個人預金に変わっただけです。こういった社会構造も大きく影響しています。

 これまでの旅館マーケットはこの「団塊の世代のための旅館」というスタイルが50年間続いてきました。今、まさにこの世代特有の旅のスタイルが終わろうとしています。

 しかし、残念なことに、未だに高齢の個人客に50年前から変わらない高カロリーな団体客向け宴会料理を提供し続ける宿もあります。

 ――新しい需要にもっと目を向けるべきだということですか。

 そうです。高齢者という客層は、おそらくこの先もずっと無くなることはありません。であるならば、後期高齢者の健康づくりを推進するような宿がもっとあってもいいのではないでしょうか。

 長野県・鹿教湯温泉の斎藤ホテルは75歳以上の高齢者を対象に明確なコンセプトを定めています。連泊すると大幅な割引プランを設定しているため、宿泊客が暮らすように滞在し、仲間づくりや歩くプールで健康づくりを楽しんでいます。

 滞在中に上高地や養命酒酒造、善光寺参りのツアーに参加され、食事はカロリー計算された地産地消の日替わりメニューをビュッフェスタイルで提供しているため、高齢者から高い支持を得ています。

 ――社会の価値観の変化を感じています。

 「人口減少」と「気候変動」が人類の2大リスクで、世界の潮流に大きな影響を与えています。

 地球温暖化により、これまで獲れていた海産物が獲れず、輸入食材を大量に仕入れて皿を数多く並べる料理を続けています。

 海外ではフードロスを出さない、サステナビリティ(持続可能性)を前面に出した観光スタイルを望む人たちが増えています。

 ところが日本の旅館が提供する料理はフードロスを大量に生みがちです。無料で提供するアメニティグッズの廃棄物など、1人当たりのゴミ排出量はとても多い。外国人旅行者が多く訪れるニセコや白馬などは、むしろ豪華なアメニティグッズの提供を抑制しています。世界的な価値観の大きな転換に早く気づいてゲームチェンジすることが必要です。

 ――地域と旅館の関係性は。

 地方の金融機関には、銀行法の改正で出資が可能になっていることもあり、古民家ばかりではなく、旅館にも出資や融資をしてほしいと思います。ただ金融機関にしてみれば、まだまだ古民家しかない状態です。

 地域と旅館は「一蓮托生」であるべきですが、旧態依然とした考え方に固執している旅館は、未来への投資対象にならないのです。

 現在のキーワードは、サステナビリティとコンサベーション(保護・保全)です。自然と文化を保護・保全することによって、欧米客を呼び込めるので、文化財や自然環境を活用したアドベンチャートラベルにお金を落としています。

 ある地銀は、アドベンチャーにぴったりの登山道を開拓した若者に出資しました。知る人ぞ知る山小屋と新しいルート開発によるアドベンチャートラベルに未来を感じ取っているのです。旅館も新しい発想が求められています。

 ――移住について。

 二地域居住や多地域居住、または短期移住や、ときどき移住など、「家に戻る」という感覚で旅館を利用することが、これからの新しい旅のスタイルになるのではないかと見ています。観光庁も「第2のふるさとづくり」を後押ししており、地域や旅館もそのような仕掛けをしていく必要があると思います。

 海外では働けば宿泊代が無料になる商習慣が根づいていますが、宿泊者が短期的に働ける仕組みづくりも大切です。

 國學院大學には「帰る旅学生サークル」というものがあり、毎月50人ほどが新潟県の雪国観光圏に「帰り」、現地では道普請や、古民家づくり、旅館の業務の手伝いなどをしています。

 交通費は自費で、働く時間は5時間が上限。報酬が出ない代わりに、宿泊料金は基本的に無料です。働いたあとの時間は現地の人との交流が大きな目的で、「人とのつながりが楽しい」と話しています。主に週末なので、学生は観光と思っているかもしれませんが、受ける側からすると短期労働者でもあり、双方にとって良い関係性ができています。

 ――離島に宿を開発することにも携わっていらっしゃいますね。

 世界各地でアドベンチャーツーリズムやサステナブルツーリズムが大きく伸び、適したロッジも数多く生まれています。今は高級ではなく「上質な」宿泊施設が求められているのです。

 例えば長崎県の対馬では、絶滅危惧種の「ツシマヤマネコ」が生存しており、それを保護・保全していかなければならないのですが、その原資がない。そこで観光の出番となります。

 夜にカエルを食べるためにツシマヤマネコが現れる田んぼのエリアに、エコツアーで訪れると、7割の確率で遭遇できます。市などが、ヤマネコが現れる休耕田を買って保全し、自然環境に配慮した高床式の上質なロッジを建てるとすれば、ヤマネコ観察ができる施設になります。

 このような付加価値のある宿が現れることで、世界中から対馬を訪れて固有の生態系を学ぶことができます。従来型の「海に面した高級宿」だけでは離島を訪れる理由にはなり得ません。富裕層こそ、そこでしか体験することができない固有動植物の生態や、自然の保全などに高い関心を持つ傾向にあります。

 世界的に新しい観光のカタチが芽生えています。これまでに気づかなかった巨大な潜在需要が足元にあるのです。海外に目を向ければ山ほど誕生している新たなマーケットに照準を合わせ、日本も取っていけばいいのです。

 従来型の観光地としてはそれほど脚光を浴びてこなかった宮城県の石巻市や気仙沼市、愛媛県の大洲市などのDMOは現在、海外のサステナブルツーリズムのエージェントの心をしっかりと掴み、ダイレクトで旅行者を受け入れています。発想を転換することで、あらゆるエリアが可能性を秘めていると思います。

 ――地域が活力を失うなか、旅館を核とした地域づくりを主張されています。

 宿がなければ、地域と地域外の人たちの交流拠点が無くなります。だから宿は社会資本なのです。災害時には避難施設にもなります。人類の歴史とともに宿は不可欠な産業なのです。

 まちに移住者を増やしていきたい自治体は多いですが、移住住宅がないところがほとんどです。経営が難しくなった温泉旅館に対して、自治体が買い受けて「移住住宅として客室を提供してくれないか」という提案をすべきだと思います。

 1泊2食の観光客だけを宿泊させるのではなく、移住予備軍が住居を探すために1週間滞在する拠点として、自治体が宿泊費を補助するなど、いくらでも地域に旅館を残すやり方はあると思っています。私が関わっている温泉地にも廃業する旅館がありますが、廃屋は一軒もありません。周りの旅館が買い受けて、地元の銀行も出資するという流れが正常で、健全な温泉地だと思います。

 若旦那世代が代替わりを機に、旅館のロビーを木造の風情のあるカウンター付きの居酒屋に変え、温泉街の人たちも自由に飲食できる「泊まれる居酒屋」にしました。

 地元の人たちとネットワークができ、未来を見据えた行動によって業態も変わり、銀行もお金を貸します。場合によっては投資もします。旅館は地域の社会資本として、地域社会の維持・再生を目的としていく投資を目指していった方が、旅館業らしい経営の仕方ができるのではないかと考えます。

 ――宿泊税導入が各地で議論されています。

 産官金学が上手くタッグを組むことが大切で、その中で鍵となるのが、官(自治体)です。民間だけでがんばっている地域はたくさんありますが、そういう地域ほど宿泊税の話が出てきています。

 自治体が民間企業とタッグを組んでDMOやDMCをつくり若手が牽引している地域は、新しい需要を生み出し、新しい消費を誘導できています。地域には消費が回り、観光でまちは潤っている。このため、宿泊税の話はあまり出てきません。

 官と民の間に、DMOという中間組織を作り、産官金学を上手くつなげることが必要で、その役割を果たす組織こそが、本来あるべき姿のDMOだと思っています。官と民だけのDMOだと、プロモーションに偏りがちですが、金融機関が入ることで投資によってまちが大きく変わる可能性を秘めています。

 宿泊業は「地域社会とつながっている」ことを忘れずに大事にしていてほしいと思っています。

 ――ありがとうございました。

【本紙1949号または1月7日(火)以降日経テレコン21でもお読みいただけます。】

〈旅行新聞1月1日号コラム〉――2025年の観光業界 「旅館の過ごし方」で新たな客層開拓を

2025年1月1日(水) 配信

 新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、2025年の幕が開けたが、観光業界はどのように進むのか。本紙は新年号で毎年恒例の「観光業界トップの年頭所感」を掲載している。旅行業や宿泊業をはじめ、幅広い観光業界のトップが年初に当たり、抱負や目標、立ち向かわなければならない課題、業界が進むべき方向性などが示されている。

 25年は大きな天災や、国際情勢の激変などがなければ、訪日外国人旅行者数は順調に増えていくだろう。昨年12月18日、観光庁の秡川直也長官は、24年の訪日外国人旅行者数が3500万人に到達する見通しを示した。過去最高だったコロナ禍前の19年の3188万人を大幅に上回る状況で、25年は4000万人の大台が視野に入ってきた。

 一方、出国日本人数は24年1~11月の累計は1182万人と、2000万人を超えた19年比では6―7割程度の回復状況だ。今年は多くの日本人が海外旅行に出掛けられるような、明るい状況になればと願う。

 そして国内に目を向けると、国内観光の中核的存在・旅館は大変革期にある。本紙1面特集では、國學院大學観光まちづくり学部教授の井門隆夫氏に「旅館の未来を考える」をテーマに新春インタビューを行った。

 最多人口世代「団塊の世代」のためのサービスを50年間続けてきた旅館の時代が終焉しつつあり、井門氏は新たな発想による価値転換と、地域社会とのつながりの重要性を語った。「新たな発想による価値転換とはなにか」について、わかりやすく説明されているので、ぜひ熟読していただければと思う。

 最近は、旅館で「オールインクルーシブの宿」が人気を集めている。クルーズ旅行でも見られるシステムだが、滞在中の飲食やサービスなどが料金に含まれるため、その都度、支払いを気にせずにゆったりと楽しめるメリットがある。

 宿泊料金がリーズナブルな宿であっても、夕食時に注文したビールや子供たちのジュースなども高めに料金設定されていると、せっかく楽しい家族旅行も気分は醒めていきがちだ。一方、ビュッフェスタイルはソフトドリンクなども飲み放題のため、安心して飲食が楽しめるという点が人気なのだろう。

 さらに大きな傾向として、旅行者は旅館滞在中の過ごし方をとても重要視している。

 夕方バスで宿に到着すると、客室でのんびりする暇もなく浴衣に着替えて大浴場に行く。喉が渇いた状態で豪華な夕食膳をアルコールとともに宴会気分で盛り上がり客室に戻る。すると、布かれた布団の上で寝転がると眠くなり、朝早く起きて眠気眼で朝食をとり、バスに乗って出ていく――という従来型の旅行スタイルでは旅館は、流れに沿って料理を出したり、布団を敷いたりすればよかったが、それももう少数派になっている。

 今は15時にチェックインし、翌11時まで20時間滞在するため、館内でも客室以外で楽しめる空間が必要になる。予約が入る旅館の経営者は「滞在中に宿でどのように過ごしてもらうか」をしっかりと考え抜き、あらゆるメニューをそろえている。

 オールインクルーシブというサービスは、「旅館の過ごし方」を深く掘り下げていくきっかけとなり、新たな客層を開拓していく可能性があるとみている。

(編集長・増田 剛)

「観光人文学への遡航(55)」 追悼 三尾博氏(2)

2024年12月31日(火) 配信

 先月から日本航空の三尾博氏の追悼記事を連載している。名営業マンとして辣腕を振るった三尾氏は、激動の90年代に名古屋支店で課長を務め、直属の部下として私は薫陶を受けた。

 94年に関西国際空港が開港し、需給バランスが崩れたことで関西マーケットから旅行商品の価格破壊が起こり、それが首都圏に飛び火した。どちらも際限のない安売り競争になってしまい、旅行会社の倒産も相次いだ。 

 その中間に位置する名古屋も大いに影響を受け、関西発、成田発の安いツアーがマーケットになだれ込んできた。当時は、「AB―ROAD」が台頭してきたころで、中小のエアオン(Air Only)エージェントがなりふり構わず安いエアオン商品を販売し始めた。既存の旅行会社としても安くしなければ売れないから、我慢しきれずに安い価格に流れていきそうになっていた。

 そのたびに、三尾課長は旅行会社の支店長や仕入れ担当に電話をし、安売りの弊害を説いた。関西マーケットが安くても名古屋のお客様は関空には行きたがらない。名古屋空港から発着したいから、絶対に値段を合わせなくても売れると伝え続けた。

 結局安売りというのは、営業マンが、お客様ではなく旅行会社の圧力に我慢できなくなって下げているだけなのだから、絶対にふんばれると三尾課長は見ていた。だから、ずっと「島川、踏ん張れ」と言われ続けていた記憶がある。

 途中、全日本空輸が名古屋ホノルル線に再参入し、外資よりも安い価格で卸して来ていたときもあった。それでも、三尾課長は「日本航空が全日空に価格を合わせたら、彼らは絶対にまた下げてくるから、俺たちが踏ん張らなければいけないんだ」と値段を合わせることを認めなかった。

 今の感覚からするとめちゃくちゃだが、安売りをした外資系航空会社に電話をしたり出向いたりして、安売りするなと申し入れたりもしていた。

 「値段を安くするだけしか能がないのなら営業マンなんかいらない」もう論理も何もなかったが、それでも、結局、名古屋マーケットだけは値崩れはしなかったし、安売りが続く関空にお客様は流れなかった。こんな状況だったにもかかわらず、名古屋支店が主要支店では唯一販売目標を継続して達成を続けることができたのは、安易な安売りに流れなかった三尾課長の判断の賜物である。

 
 90年代は、旅行会社と航空会社はお互いに真剣勝負の駆け引きがあった。それまでは、元値が高かったから、安売りも需要喚起で機能することも多かった。それが限界まで安くなってしまったことで、消耗戦になっていた。それを見越して、もうかつてのような営業マンの顔で安くすることの不毛さにいち早く気づいた三尾課長の先見性は特筆すべきものである。

 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(12・1月号)」

2024年12月30日(月) 配信

https://zoomjapon.info

特集&主な内容

 12月・1月の合併号では「大阪、万博の地」として、1970年にも大阪で開催された万博を踏まえ、2025年に開催される大阪万博を特集しました。終戦から25年の節目、高度成長期にあった日本で開催された状況から、さらに半世紀以上経って、衰退とはいえないまでも低迷し続ける現在の日本で開催される状況について、フランスの読者に解説しています。建築史家で大阪万博に深く関わっている大阪府立大学教授の橋爪紳也氏にも独占インタビューを行いました。1970年の大阪万博の唯一のレガシーといってもよい太陽の塔を取り上げたほか、2030年秋に万博の跡地で開業が予定されている日本初のカジノを含む統合型リゾート施設の問題についても解説しています。旅行ページでは、山形県の山伏と修験道を取り上げました。

〈フランスの様子〉フランスの寛容

「パリのノートルダム大聖堂の再開:過半数のフランス国民は入場料有料化に反対」仏版ハフポストのウェブサイトより

 パリのノートルダム大聖堂の再開、フランスではセレモニーが生中継で放映された。◆再開直前に話題になっていたのが、入場を有料にするという文化大臣の提案。将来的な修繕費や維持費に充てるというものだったが、カトリック教会側は「すべての人を受け入れる」という原則で反対した。◆今回の修復にかかった費用は7億ユーロと言われるが、世界中の34万の個人や団体から集まった寄付金は8億ユーロ以上。◆フランスの大富豪なども多額の寄付をしたが、大半はフランスのカトリック信者だといい、数十ユーロの寄付もあったそうだ。◆12月のフランスの街はお祭りムードになるが、この時期は寛容の季節でもあり、街に炊き出しがでたり、チャリティー番組があったり、さまざまな寄付も多くなる。◆クリスマスの家庭の食卓では、「貧者の席」とか「神の分」という追加の1人分を準備する習慣があり、実際に1人で過ごす人を招く家庭もある。◆日本のお正月は心を新たにするように、フランスの12月は人に優しくなる時期でもある。

ズーム・ジャポン日本窓口 
樫尾 岳-氏

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旅行新聞 編集部〉

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(240)」 すでに起きた未来・炭鉄港(北海道)

2024年12月29日(日) 配信

そらち炭鉱の記憶マネジメントセンター(岩見沢)

 12月初旬、北海道岩見沢を訪ねた。今年5年目となる日本遺産「本邦国策を北海道に観よ! ~北の産業革命『炭鉄港』~」のシンポジウムにお招きいただいた。会場には、空知の各市町や小樽、室蘭などからも関係者が多数集まった。

 この物語の発端は、遠く離れた薩摩(鹿児島)にある。島津氏第28代当主の島津斉彬公は、1851年に薩摩藩主に就任するや、「集成館事業」に着手する。反射炉から鉄をつくり、西洋列強に負けない近代造船を確立する近代的西洋式工場群のことである。1840年のアヘン戦争を契機とする西欧列強のアジア植民地化の危機への対応だ。

 集成館事業は、のちに近代日本の工業化に大きな影響を及ぼし、「明治日本の産業革命遺産~製鉄・製鋼、造船、石炭産業~」の世界遺産(2015年7月登録)につながっていく。全国8県11市に跨る広大なストーリーだが、ここには、集成館で学んだ薩摩藩士たちによる北海道開拓の歴史は含まれていない。

 北海道では、明治維新の翌年に開拓使が置かれ、初代長官に薩摩藩士の黒田清隆が着任した。10年後には幌内炭鉱が開坑、石炭は日本で3番目に敷設された幌内鉄道によって小樽港に運ばれた。

旧北炭夕張炭鉱模擬坑道(夕張石炭博物館)

 幌内鉄道はやがて北炭(北海道炭礦汽船)に払い下げられ、室蘭にも鉄道が敷設される。室蘭では1909年に輪西製鉄所の溶鉱炉が稼働、鉄の町室蘭の礎となった。

 やがて三井など財閥各社が進出、新たな大規模炭鉱開発も進められた。その後は戦時体制による増産と、戦後のエネルギー革命による合理化と衰退というドラスチックな変化を辿る。

 北海道は明治から昭和の高度成長期までの100年間に人口が100倍にもなる急成長を遂げた。この軌跡を描いたのが、空知の「炭鉱」、室蘭の「鉄鋼」、小樽の「港湾」、それらをつなぐ「鉄道」を舞台に繰り広げられた歴史、「北の産業革命」の物語である。

 事業を当初からリードしてきた友人の故吉岡宏高さん(炭鉱の記憶推進事業団元理事長)は、この物語の究極のモチーフを「すでに起きた未来」と語っていた。北海道の急速な発展と1960年代以降の凋落は、日本がこれから経験するであろう歴史を先取りする物語でもあると。

 故木村尚三郎先生(東京大学)は、ご著書「振り返れば未来」の中で、「自らの未来を拓くヒントは、その歴史の中にある」。だから、地域は固有の歴史を見失うと、自分たちの独自性やアイデンティティーを見失ってしまうと喝破された。

 社会が成熟し、ダイナミックな成長が止まった社会では、目先の違いに目を奪われ、未来への志向性が弱くなり、自らが歩んできた歴史を見失ってしまう。

 いまの日本もまさにそんな状況なのであろう。炭鉄港の物語は、そんな示唆に富んだ物語でもある。

(観光未来プランナー 丁野 朗)

〈観光最前線〉プロレススーパースター列伝

2024年12月28日(土) 配信

原田久仁信著「プロレススーパースター列伝」秘録(文藝春秋刊)

 文藝春秋から「『プロレススーパースター列伝』秘録」が発売された。当時日本で人気があったプロレスラーを題材に選んで描かれたプロレス漫画の金字塔的作品で、その当時の回顧録となる一冊。

 原作の梶原一騎と作画の原田久仁信とのエピソードが面白い。当時の2人は仕事上でほとんど会う機会もなく、毎週火曜日に送られてくる原稿だけを頼りに、ほぼ想像だけで描き進められていたというのには驚いた。子供のころ実話だと信じていた話が、実は梶原の創作だったという暴露話にも苦笑いするしかない。

 梶原一騎の逮捕により急遽連載打ち切りとなってしまった。続いていれば、次回作は「ジャンボ鶴田」編だった。梶原自身も「鶴田は日本人歴代最強のレスラー」と評価していたので、本当に残念で仕方がない。

【古沢 克昌】

石川県加賀市 「加賀から元気を」 大阪市内でPR会議

2024年12月27日(金)配信

宮元陸市長

 加賀温泉郷を有する石川県加賀市(宮元陸市長)は昨年12月2日、大阪府大阪市内のホテルで、関西圏の旅行会社やマスコミを招き「加賀温泉郷PR会議・感謝の集い」を開いた。

 感謝の集いには、台北駐大阪経済文化弁事処の洪英傑総領事や大阪観光局の溝畑宏理事長など、来賓を含め約80人が出席した。

 宮元市長は「(昨年)1月1日に能登半島地震、9月に能登地方の豪雨と災害が続いた。この大きな試練を乗り越えなければならない」とし、「3月16日には念願の北陸新幹線金沢―敦賀間が開業。先日(12月1日)、加賀温泉駅にぎわい交流施設『ゆのまち加賀』も誕生した。加賀が元気にならないと、能登も元気にならない。皆さんの力を借り、今後も、ひた走りに走っていきたい」とあいさつした。

 集いに先立って行われたPR会議では、地元高校生と巡る大聖寺城下町ツアーや加賀カニごはん、加賀パフェといったご当地グルメなど加賀温泉郷の魅力を紹介。山中温泉のアイスストリートや山代温泉で今秋開業予定の「あいうえおの杜」、片山津温泉の斜め打ち花火など、3温泉それぞれの話題もアピールした。

1月4日からホワイトタイガーの赤ちゃん一般公開 名前の投票も受け付け

2024年12月26日(木) 配信

(左写真)左・長男、右・次男(12月10日撮影)、展示場練習のようす(12月21日撮影)

 東武動物公園(石附栄一社長、埼玉県・宮代町)は2025年1月4日(土)から、11月7日に生まれたホワイトタイガーのオスの赤ちゃん2頭の一般公開を開始する。また、公開日から1月26日まで、現地投票用紙などで名前投票を実施する。

 同園でのホワイトタイガー誕生は2015年以来9年ぶり、3回目となる。母トラ「ソルティ」、父トラ「シュガー」ペアでの出産は初めて。誕生後、2頭の“ちびトラ”はバックスペースで飼育してきたが、体重も順調に増え、しっかり歩けるようになってきたという。12月19日から、従業員を観客役に展示練習を行っている。12月25日からは、当日の来園者を対象にWebで観客役を限定数募り、練習を重ねている。

 1月4日の一般公開は午後1~2時まで。なお、体調や天候により展示時間の変更や展示を中止する場合がある。

 名前の候補は①わさび・からし②クミン・シナモン③いちみ・しちみ④コタ・ハク⑤サンス・ベリア――の5ペア。

 さらに、ホワイトタイガーの誕生・一般公開を記念して、限定フードメニューやグッズの販売を開始する。東ゲート付近には特設ショップ「JAMBO(ジャンボ)」をオープンした。

利用者が2カ月で1万人突破 草津温泉・ホテル一井の新ビュッフェダイニング「湯雲」

2024年12月26日(木) 配信

別館最上階に「ビュッフェダイニング 湯雲」をリニューアルオープン

 群馬県・草津温泉の湯畑前に宿を構え、300余年の歴史を持つ「ホテル一井」に新たなメインダイニングとして2024年10月1日にオープンした「ビュッフェダイニング 湯雲(とううん)」が、オープンから2カ月で利用者1万人を突破した(※2024年10月1日~11月30日の2カ月間の夕食利用者数。日帰り・会食利用も含む)。

 新ビュッフェは別館棟の最上階にあった大宴会場をフルリニューアル。耐震補強工事も並行して実施し、座席数128席の広々としたスタイリッシュなビュッフェダイニングが誕生。中央には大きなライブキッチンを備え、上州牛ステーキ、上州牛ローストビーフ、天ぷら、握り寿司などの料理を目の前で調理して提供。目で・音で・香りで、五感で楽しんでもらえるビュッフェ会場にした。

 コンセプトは「ハレの日を楽しむビュッフェ」で、旅行はいつでも特別な日。日常を忘れ旅行という特別な日を楽しむ、祝う――。そんなかけがえのないひとときを楽しんでもらえるように料理、食材、食器、内装に至るまでこだわって作り上げた。

上州牛のローストビーフ、ステーキなど「ハレの日」を彩る豪華な料理

 料理は夕食が和・洋・中約100種。ライブキッチンで目の前で切り分ける「上州牛ローストビーフ」や、目の前の鉄板で1枚ずつ焼き上げる「上州牛ステーキ」をはじめ、一つひとつの食材にこだわり、「ハレの日」の食卓を彩る。個別鍋に好きな量の肉を盛り付け、各テーブルにて仕上げる「上州牛すき焼き」も用意。また、同館女将がハレの日に集まった親族に振る舞っていた「特製ミートローフ」を再現。女将のおもてなしの味が楽しめると評判だ。

 朝食は和・洋約50種。ライブキッチンで焼き上げるふわとろのオムレツや、群馬県内の複数産地で採れる味わいの違ったハチミツをかけて楽しむパンケーキやフレンチトーストなどの洋食をはじめ、選べるトッピングのお茶漬け、焼き魚などの定番の和食などを用意している。

サービス連合、25年春闘で6%賃金改善目指す 産業間の格差縮小はかる

2024年12月25日(水) 配信

 サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合、櫻田あすか会長)は12月12日(木)、中央執行委員会を開催し、2025春季生活闘争(春闘)で6.0%の賃金改善を目指す執行部案を取りまとめた。今後加盟組合で議論を行い、2025年1月17日(金)に開催する中央委員会で正式に春闘の方針を決める。

 24年春闘では、同連合の加盟組合における平均改善率が定期昇給を併せて5.28%と過去最高となった。一方、同連合は「産業間の賃金格差は縮小しておらず、人材獲得競争は激化する」とみている。このため、「誰もが働きたい、働き続けたいと思える産業の実現に向け、将来を見据えた真摯な協議が必要」との考えだ。