4社で約35億円投資、箱根の新たな魅力づくり

新日帰り温泉施設(イメージ画)
新日帰り温泉施設(イメージ画)

 小田急箱根ホールディングス(和田雅邦社長)は5月14日、東京都内のホテルで会見を開き、グループ内の4社で総額約35億円の設備投資をすると発表した。箱根のさらなる魅力向上をはかり、リピーターへ再訪を訴えるのが狙い。

 冒頭、和田社長は小田急電鉄が策定した箱根エリア戦略の「わかりやすい箱根」「まわりやすい箱根」の実現に向け、小田急箱根グループが2004年にHD体制を構築したことや、9年間で約120億円の投資を行ってきたことなどを説明。5つの重点課題を中心に取り組みを行った結果、周遊券の箱根フリーパス発売枚数は09年度に74万2千枚と過去最高を記録したという。今回の設備投資はその延長線上で、「箱根はすでに訪れている人が多いので、マンネリ化している部分もある。行政や地元と協力し、新しい魅力づけでリピーターを増やしたい。我われの血管を通じて、箱根全体にシャワー効果をもたらせたい」と強調した。

 今回、設備投資を行うのは、箱根観光船(渡辺浩司社長)と箱根ロープウェイ(齋藤康弘社長)、箱根施設開発(和田雅邦社長)、箱根登山鉄道(同)の4社。会見では、3人の社長が各案件の概要を説明した。

 それによると、箱根観光船は2013年3月、芦ノ湖に新型海賊船の就航を予定する。18世紀フランスの第一級戦艦「ロワイヤル・ルイ」をモデルにし、船内はバリアフリー化に対応し、アミューズメント性を向上させる。建造費は約10億円。

 また、箱根ロープウェイは、13年4月下旬に大涌谷の新駅舎を完成させる予定だ。風力発電装置やLED照明の導入など省エネ・自然環境の保護に配慮するほか、レストランの設備を大幅に拡充する。総工費は約10億円。

グループ会社の社長が発表
グループ会社の社長が発表

 一方、箱根施設開発は現在営業している日帰り温泉施設「ひめしゃらの湯」を大幅に拡充した、新しい日帰り入浴施設を13年3月にオープン予定。「里山 湯治村」をコンセプトに、貸切個室露天風呂は首都圏最大数の19室を用意する。総事業費は約7億円。

 さらに、箱根登山鉄道は、箱根登山電車の新型車両を17年ぶりに製造。運転開始は14年4月を予定する。既存の車両に連結し、3両編成ができるため、繁忙期の利便性が向上する。箱根の風景を存分に楽しめるよう、展望窓や側面ガラスの大型化などの車内レイアウトを目指すという。総製作費は約8億円。

 なお、箱根フリーパスの発売枚数は、11年度は震災の影響などで61万枚まで落ち込んだが、12年度は73万6千枚を目指し、13年度は投資効果の期待から75万6千枚を見込む。

取消料徴収の仕組みを、事後カード決済問題を協議

楽天トラベルと事後決済問題を協議
楽天トラベルと事後決済問題を協議

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)は5月8日、「事後オンラインカード決済サービス」導入によるキャンセル料の取扱いの問題で、楽天トラベル(岡武公士社長)と協議会を開き、楽天トラベル側から、事後決済サービスにおいても今後キャンセル料を徴収する仕組みを作る方針であるとの回答を得た。

 この問題は楽天トラベルが4月4日に宿泊予約サイトのシステムを変更し、「事後オンラインカード決済サービス」を開始したことに端を発した。従来は、カード決済であれば、予約の時点で決済する事前カード決済や現地宿泊施設でのカード決済だけであったが、新たにチェックアウト翌日に自動決済する事後カード決済を導入。これに対し、宿泊施設側はキャンセル料の徴収について反発した。事前のカード決済であれば、キャンセル料の決済も自動で行われていたが、事後カード決済では、宿泊施設側が予約者に対し直接請求しなければならず、キャンセル料の未回収という事態の多発や、消費者にキャンセル料徴収を免れる方法という印象を与えかねない懸念があった。

 全旅連では、楽天トラベルのカード決済システム変更後、青年部が主導して、事後決済サービス導入の延期や、ユーザー向け説明ページでの「キャンセル料発生対象日におけるキャンセル時にはキャンセル料が請求される」ことの明示などの要望を行っていた。

 5月8日の協議会には全旅連側からは、佐藤会長、大木正治会長代行、総務委員会の宮村耕資委員長、広報小委員会の永山久徳小委員長、伊藤真司委員、横山公大青年部長、利光伸彦特別対策担当副部長、内田宗一郎特別対策委員長、新山晃司財務担当副部長が出席し、楽天トラベル側からは岡武社長、齋藤克也常務執行役員、吉崎弘記国内営業部マネージャーが出席した。この席で楽天トラベルは「クレジットカードで決済(安心のチェックアウト後払い)」説明ページ内に、キャンセルの際はキャンセルポリシーに則りキャンセル料を支払うよう説明が記載されたリンク先のページへ誘導するような改善を行ったことを報告。さらに今後、事後決済サービスにおいてもユーザーの同意を得ることを前提にキャンセル料を徴収する機能の付加を進めている旨の説明があった。

リクルートとキャンセル対策を協議
リクルートとキャンセル対策を協議

 合わせて、楽天トラベルから、事後決済サービスのリリース後に見られるカード決済比率、キャンセル率等の傾向、ユーザー動向などを報告。クレジットカードの決済比率はリリース前よりも10%増加して30%程度となり、キャンセル率、キャンセル料の請求対象となる予約日3日前のキャンセル率は減少傾向にあるという。

 また、ユーザーが事後カード決済と現地でのカード決済を混同することがある点については4月16日に改善。領収書が即時に発行できない問題については、事前カード決済に誘導するよう改善していく説明があったという。

 一方、2大ネットエージェントとして楽天トラベルと双璧をなすリクルートとは、前日の5月7日に宿泊予約キャンセル対策について協議。リクルート側からは宮本賢一郎営業1部部長、満田修治営業2部部長、秋山純じゃらんnet編集長、事業推進部の青木貴洋氏が出席した。(1)オンラインカード決済の予約は現地決済より8%程度低い(2)宿泊日の2日前がキャンセル件数のピーク――というデータを紹介。キャンセル防止対策としては、キャンセルポリシーの設定による直前のキャンセル防止、キャンセルが発生した場合もキャンセル料の徴収が可能になる「オンラインカード決済専用プランの活用」が効果的と施設側に勧めた。

 また、4月にじゃらんnet内でキャンセル料請求について消費者に向けて注意喚起を強化したことや、今後もキャンセル料請求に関する啓蒙をはかっていくことが説明された。

No.311 一の湯グループ - 「人時生産制」で経営効率化

一の湯グループ
「人時生産制」で経営効率化

 お客様の強い支持を得て集客している旅館は、従業員の職場環境を整え、お客様に真摯に向かい合える仕組みができているのが特徴だ。「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第4弾は、神奈川県・箱根を中心に8軒のグループ旅館を展開している「一の湯」の小川晴也社長と、産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏が対談。従業員1人が1時間に稼ぐ粗利益を示す「人時生産性」(にんじせいさんせい)を用いて、バックヤードの効率化をはかった成功例について語り合った。

【増田 剛】

 

  

 【対談者】

「引き算」の経営を断行
産業技総合研究所サービス工学研究センター
副研究センター長(工学博士)
内藤

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作業の発生元から取る
一の湯代表取締役
小川

 

※ 詳細は本紙1463号または日経テレコン21でお読みいただけます。

東京スカイツリー開業 ― ふっきれた高さに敬意(6/1付)

  5月22日に開業した東京スカイツリーは、「希望の塔」なのかもしれない。近年、暗いニュースばかりが日本を覆っていた。いや、バブル経済が崩壊してから20年以上、日本は自信を喪失することの方が多かったが、久々に空を見上げ、明るい表情になったような気がする。

 エッフェル塔も東京タワーも、東京スカイツリーも、自立式電波塔としては誕生時に高さ世界一。賛否両論があっても、次第に愛されていくのだろう。

 小さな頃に読んだ本に、世界三大無用長物というのがあった。エジプトのピラミッドと、中国の万里の長城、そして日本の戦艦大和と書いてあったが、どれもその壮大なスケールが、今もドラマチックに魅了する。

 観光地は、それぞれが「オンリーワン」であるため、一つの舞台上で競争することはできない。しかし、「ナンバーワン」であることが、必然的に人気観光地になることが、今回の東京スカイツリー誕生を見て感じたことだった。世界一のものに対して、人々は、それが自然物であれ、人間の建造物であれ、敬意を示すものなのだ。

 たとえば、莫大な費用をかけて世界で2番目に早いスポーツカーを造るのなら、むしろ「オンリーワン」の車を造った方がいいだろう。世界で2、3番目に大きなサッカースタジアムを造るのなら、もう少し頑張って、世界最大のサッカースタジアムを造った方が絶対にいい。地方議会などでは、良識派の議員や首長が、あと一歩のところで思いとどまり、適正規模より中途半端にデカイものを造って大赤字を出してしまうケースが全国で散見される。だが、どうせデカイものを造るなら、思いっきりふっきれた方がいい。投資に対する見返りがきっと大きいはずだ。だからといって、陳腐な発想や、思いつき程度のハリボテではまったく意味がない。市民の血肉を注ぎ込んだ、歴史に耐え得るドラマチックな建造物でなければならない。

 東京スカイツリータウンの「開業5日間で来場者100万人突破」は恐るべき数字だ。仙台市と同規模の人口が、わずか5日間で訪れたことになる。この現象は当分続くだろう。来場者の多くは、両手いっぱいにお土産やグッズを買って帰る。浅草や隅田川周辺との新旧文化の対比も面白い。ぜひ世界の人々にも東京、日本の魅力を感じてほしい。

(編集長・増田 剛)

上高地開山祭に2000人、観光シーズンの幕開け

式典には2000人が集まった
式典には2000人が集まった

 冬季間、閉ざされていた長野県松本市の北アルプス・上高地(標高約1500㍍)で4月27日、本格的な登山、観光シーズンの幕開けを祝う恒例行事「第44回上高地開山祭」が梓川にかかる河童橋のたもとで開かれた。当日は穂高連峰がくっきりと姿をあらわす好天に恵まれた。登山者など約2千人が集まり、開式時間の午前11時には、河童橋のなかほどまでびっしりの人で埋まった。

 式典はアルプホルンとアコーディオンの演奏でスタート。アルプホルンは2㍍以上の長さの木製の管楽器。本場スイスの民族衣装に身を包んだ乗鞍アルプホルン愛好会が厳かな音色を響かせた。続いて山の安全とにぎわいを祈願する神事が行われた。

乗鞍アルプホルン愛好会
乗鞍アルプホルン愛好会

 開山祭実行委員長の青柳薫上高地町会長は「昨年、上高地は土石流被害で大変だったが現在、関係官庁の支援を受けて本格的な改修工事が進んでいる。私たちは素晴らしい自然の恵みをいただきながら営業している。お客様のためにこれからも防災関係などの対策を一生懸命やっていきたい」とあいさつした。菅谷昭松本市長は「私たちは山や自然から多くの恩恵を受けている。一方でここ上高地では、梓川の河床上昇や、山岳トイレ、登山道の維持管理、ニホンシカの侵入対策などさまざまな問題も抱えている。岳都松本の責務を果たすべく、こうした問題に真摯に向き合い解決の道を探っていきたい」と述べた。

 上高地は年間約150万人の観光客が訪れるが、昨年は震災の影響で20万人ほど減少。今年は観光客数の回復が期待されている。12年のイベントスケジュールは6月30日まで上高地ウォークラリーを開催。上高地を歩きスタンプを集めると施設の優待商品などがもらえる。6月2、3日は第66回ウェストン祭を開催。上高地や日本アルプスを世界に紹介した英国人宣教師ウォルター・ウェストンの功績をたたえる。9日は上高地音楽祭。10月8日は穂高神社奥宮例大祭。自然観察会(ガイドウォーク)はシーズン中受け付けている。そして11月15日の上高地閉山式で幕を閉じる。

北茨城のシンボル復活、五浦六角堂の再建が完了

再建された五浦六角堂
再建された五浦六角堂

 東日本大震災の津波により流出した茨城県・北茨城市のシンボル「五浦六角堂」の再建工事が完了し、4月28日から一般公開が再開された。復旧を記念して5月31日まで無料公開している。

 

 五浦六角堂は1905(明治38)年に岡倉天心が設計したもので「観瀾亭」と名付けられた赤い六角形の堂。五浦海岸の茨城大学五浦美術館研究所内にあり、天心が思想にふけった場所といわれる。

 ベンガラ彩色に板張りの床、中央には六角形の炉が切られ、約1世紀前に天心が自ら設計した当時の六角堂が太平洋の前に姿を現わした。創建時の姿を忠実に再現するため、写真や地域住民への聞き取りなどで図面を復元。窓の板ガラスは当時の製法を持つイギリスに発注し、小型の瓦も当時の手法を用いて特注するなど細部に渡って復元にこだわった。

 4月26日にはライトアップの点灯式が行われ、一般公開となった28日から新生六角堂が夜間ライトアップされている。また北側岩場には1・7㍍の「雪見灯ろう」も近く設置予定で、107年ぶりの風景復活となる。

 開館時間は4―10月は午前9時から午後5時、11―3月は午前9時から午後4時30分、休館日は毎週月曜(祝日の場合は翌日が休館日)と年末年始。観覧料300円予定、中学生以下は無料。

 近くには天心記念美術館があり、ゆかりの人々の作品も鑑賞できる。

 問い合わせ=茨城大学五浦美術研究所 電話:0293(46)0766。

箱根 ジオパーク申請へ、多様な動植物や温泉も魅力

 神奈川県と箱根町、小田原市、真鶴町、湯河原町などで組織する「箱根ジオパーク推進協議会」は4月20日、「箱根ジオパーク」の誕生を目指し、日本ジオパーク委員会へ申請を提出した。地域の自然や歴史などの資源に、地質的な視点を加えることで魅力を向上させ、地域住民に地域への関心を深めてもらうと同時に、観光や地域振興をはかることを目指す。

 ジオパーク認定を目指す「箱根ジオパーク」は、富士箱根伊豆国立公園に属する箱根火山を中心とする神奈川県西部の1市3町(箱根町、小田原市、真鶴町、湯河原町)で、フィリピン海プレートなど3つのプレートの境界上に位置し、多様な火山地形・堆積物が見られるのが特徴。温暖な相模湾に面し、高低差がある起伏に富んだ地形にさまざまな動植物が生息するほか、多様な泉質を誇る温泉、特色ある歴史・文化など多くのジオパークの魅力を持っているという。

 これらの地質を生かすため、県と1市3町は、2011年5月に観光・商工団体や民間企業、NPO、行政など64団体で構成する箱根ジオパーク推進協議会を設立し、協働・連携してPR活動やガイド育成講座、ジオツアーなど、さまざまな取り組みを実施してきた。ジオサイト(見どころ)を巡るコース例は、不動滝・長尾峠・大涌谷などを巡る「箱根火山の生い立ちにふれる道」や小田原城、石垣山一夜城などを巡る「歴史をめぐる道(古代から戦国時代まで)」などを企画する。

 今後の予定は6―9月に現地審査が実施され、認定されれば11月に高知県で開かれる、日本ジオパーク全国大会で認定式が行われる。

 なお、4月現在、日本ジオパークに認定されているのは全国で20地域。そのうち、5地域は世界ジオパークに認定されている。 

無秩序な地熱発電開発に反対、日本温泉協会が「声明文」発表

 日本温泉協会(廣川允彦会長)は4月27日、地熱発電が再生可能エネルギーの一つとして注目されるなか、同協会は「温泉地周辺の自然環境や既存の温泉源、温泉文化に悪影響を及ぼす恐れがあることから、無秩序な地熱発電開発に反対する」という内容の声明文を発表した。同声明文は廣川会長と、佐藤好億地熱対策特別委員長の連名で出された。

 環境省は3月29日、温泉資源の保護をはかりつつ地熱発電の促進に向けた「温泉資源保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」をまとめ、地方自治法にもとづく技術的助言として自然環境局長名で各都道府県知事宛に通知。また3月27日には、「国立・国定公園内における地熱開発の取り扱いについて」として、国立公園内の開発規制区域でも自然環境への影響を最小限にとどめるなどの条件つきで掘削を認める新基準を通知した。日本温泉協会は「福島県の磐梯朝日国立公園をはじめ新たな開発計画がもちあがるなか、報じるマスコミも開発側に立った論調がほとんど」という状況を受けて、以下の声明文を表明した。

【声明文】

 自然保護・温泉源保護・温泉文化保護の見地から「無秩序な地熱発電開発に反対」します。

 東日本大震災以降、再生可能エネルギーとして注目されはじめた地熱発電ですが、日本温泉協会では温泉地周辺の自然環境や既存の温泉源、温泉文化に悪影響を及ぼす恐れのある「無秩序な地熱発電開発に反対」しております。

 再生可能エネルギーの必要性を否定するものではありませんが、地熱発電の実態をより多くの人たちに知っていただきたく、ここに世論に訴えるべく声明を発します。

 「無秩序な地熱発電開発に反対」する無秩序とは、人間社会に悪影響(混乱)を及ぼすことです。開発にあたっては、電力確保と温泉資源保護の2つの公益が共存することが前提となります。無秩序な状況を回避するために次の5つを提案しています。

 (1)地元(行政や温泉事業者等)の合意

 (2)客観性が担保された相互の情報公開と第三者機関の創設

 (3)過剰採取防止の規制

 (4)継続的かつ広範囲にわたる環境モニタリングの徹底

 (5)被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化――。

 そもそも地熱発電は、地中から採取する高温、高圧の蒸気や熱水でタービンを回して発電するシステムです。エネルギー源である蒸気および熱水は、温泉法に定義された温泉そのものであり、膨大な量の資源を採取したあと、使用済みの熱水は再び地中に廃棄されます。

 地熱発電は純国産のクリーンな再生エネルギーである、というのが開発側の論理です。

 石油や石炭などの化石燃料を燃焼させるのと異なり、二酸化炭素の排出量が少なくクリーンであり、地球内部に貯えられた豊富な熱エネルギーは、半永久的ともいえる供給が可能で、太陽光や風力に比べ天候に左右されることも少なく、安定した持続可能なエネルギーである、といいことづくめの情報だけが流布されています。

 しかしながら、蒸気や熱水を汲み上げる生産井は経年変化により減衰し、数年おきに新たな補充井の掘削が必要となることはこれまでの実績からも明らかです。たとえ地球内部に貯えられた熱エネルギーが厖大であるとしても、発電システム自体は持続可能な再生可能エネルギーとはいいがたいものです。発電出力維持のため絶えず新たな掘削が繰り返されることから、周辺の「地形の改変」や「環境破壊」「温泉源への影響」が危惧されます。

 きわめて大量の熱水や蒸気(いずれも温泉)を汲み上げるため、周辺の温泉源では、その影響と思われる「湧出量の減少」「水位の低下」「泉温の低下」「成分の変化」「温泉の枯渇現象」などの事例が報告されています。

 発電後の蒸気や熱水は、高濃度の硫化水素やヒ素などを含むいわゆる産業廃棄物であり、河川等に排水することができないため、還元井から地下に廃棄することになります。しかも廃棄する際のスケール対策として硫酸などを添加するため、「土壌汚染」や「地下水汚染」などが危惧され、安全性は立証されていません。

 また、地下廃棄は、人為的に高い圧力で還元井から地層の割れ目などに戻すため(開発側の説明では人為的に圧力をかけることはなく自然浸透とのことですが)、「地滑り」「地盤沈下」「地震」「水蒸気爆発」などの発生も危惧されます。

 我が国には豊富な地熱資源がありながら、充分に活かしきれていないという意見も聞かれますが、すでに日本は「温泉」として最大限に利用している世界有数の地熱利用国です。

 温泉地には観光や健康保持や癒しを目的に、年間1億3千万人が宿泊に訪れています。我が国には1千年をはるかに超える温泉の歴史があり、世界に冠たる温泉文化を育んでいます。また、観光立国を目指す我が国の観光の重要な柱の一つが温泉であります。

 この温泉を無秩序な開発で失ってよいのでしょうか。

 このまま進めば将来に大きな負の遺産を残すことは明白です。

 温泉が存在することでその地域に人々が集い、産業が育ち、雇用も生まれます。日本の数多くの温泉地は国民共有のこの温泉を守り後世に伝えるため、日々最大限の努力をはらっていることをご理解いただき、開発にああたっては拙速を避け慎重な判断をお願いいたします。

 なお、本会では、地球温暖化防止が世界的な課題となるなか、二酸化炭素排出量削減を目的とする地産地消の温泉発電(バイナリー発電)やヒートポンプによる温泉熱利用など、既存の温泉の余熱は有効に活用すべきと考えております。 

新曲「木曽の翌檜」披露

瀬戸会長(左)と長山さん
瀬戸会長(左)と長山さん

 長野県の木曽観光連盟(瀬戸晋会長)は、木曽地方の魅力を全国に発信する木曽観光大使に就任した演歌歌手の長山洋子さんへの任命式を4月10日、木曽文化公園文化ホールで開いた。長山さんは任命のきっかけとなった木曽を題材にした新曲「木曽の翌檜(あすなろ)」を披露し、ご当地ソングで木曽を盛り上げることを約束した。

 任命式では観客約700人を前に、長山さんは木曽観光連盟会長の瀬戸普王滝村長から、あすなろとひのきの木材で制作した任命書が手渡された。

 瀬戸会長は「新曲がミリオンセラーになり、観光客も100万人が木曽へ来ることを期待します」と発言すると、長山さんは「絶対にヒットさせるという気持ちが燃え上がってきました。私は東京で生まれ育ったが、木曽を第2の故郷にしたい」と意気込みを語った。任命式の後に行われた新曲イベントでは、「木曽の翌檜」を含む4曲を熱唱し、観客を魅了した。

12年春の叙勲・褒章、須田氏が旭日大綬章

須田寬氏
須田寬氏

 政府は4月29日付で2012年春の叙勲・褒章受章者を発表した。本紙関連では、元東海旅客鉄道会長で日本観光振興協会中部支部長の須田寬氏が旭日大綬章を受章するなど、6人が受章した。

 国土交通省の大綬章・重光章の受章者は、5月8日に皇居において親授式および伝達式を実施。中綬章以下の受章者は、6月1日に東京プリンスホテルで、褒章受章者は6月6日に国土交通省10階共用大会議室で伝達式が行われる。

 本紙関連の叙勲・褒章受章者は次の各氏。

【叙勲】
旭日大綬章 須田寬(日本観光振興協会中部支部長)=元東海旅客鉄道会長 鉄道事業功労▽旭日重光章 松橋功=元日本交通公社社長、元日本旅行業協会会長 観光事業功労▽旭日中綬章 山本栄彦(要害温泉会長)=元山梨県知事、元山梨県旅館生活衛生同業組合理事長 地方自治功労▽旭日小綬章 村木敏雄(新四日市ホテル社長)=元全日本シティホテル連盟会長、元三重県旅館ホテル生活衛生同業組合副理事長 観光事業振興功労▽旭日双光章 小田桐竹治(ホテルニューやまと社長)=元青森県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長 生活衛生功労

【褒章】
黄綬褒章 齊藤源久(祥平館社長)=日本観光旅館連盟副会長 業務精励