富士山、世界遺産に決定

世界遺産になった富士山(やまなし観光推進機構提供)

 文化庁は6月22日、カンボジアのプノンペンで開かれた第37回ユネスコ世界遺産委員会で、「富士山」の世界文化遺産一覧表への記載が決定されたと発表した。当初、ユネスコの諮問機関が除外すべきとしていた静岡県・三保松原を含むかたちで、記載名称は「Fujisan,sacred place and source of artistic inspiration(富士山―信仰の対象と芸術の源泉)」となった。

 結果を受けて、文化庁の近藤誠一長官は「古くからさまざまな信仰の対象で、傑出した芸術の源泉として日本人の心の中に特別の位置を占めてきた富士山の価値をユネスコが認めてくれたということは、すなわち日本人のこれまでの生き方が、世界に肯定的に受け入れられたことにほかならない」と喜びを述べた。

 また、静岡県の川勝平太知事は「世界遺産として認められた富士山を、人類共通の財産として、誇りと責任を持って後世に継承していく」とコメント。山梨県の横内正明知事も喜びを述べる一方で、「いくつかの課題が提示されている。課題を確実に解決し、次の世代へ富士山の価値を継承するため、思いを新たにして、国や静岡県、関係市町村、地元関係者と緊密な連携をはかりながら、全力で取り組んでいく」と決意を表明した。

功労者12人を表彰、13年度観光振興事業功労者(日観振)

 日本観光振興協会は6月12日に開いた今年度通常総会で、「2013年度観光振興事業功労者」の表彰式を開き、功労者12人を表彰した。

 功労者は次の各氏。

 【北海道支部】渡邊幸治(えんがる町観光協会顧問)「太陽の丘えんがる公園」のコスモス園の整備に尽力し、道内でも有数の観光資源に育てた【東北支部】寺田春一(五所川原市観光協会会長)「五所川原立佞武多」の80年振りの復活に尽力したほか、青森DCなどで観光リーダーとして誘客に努めた【関東支部】新井勝行(久喜市観光協会副会長)220年の伝統と歴史ある「久喜提橙祭り」の維持発展などに尽力した▽髙橋正(新潟県観光協会会長)新潟県中越大震災復興基金理事として観光関連産業の復興と再生に尽力▽赤尾十五郎(東伊豆観光協会相談役)稲取温泉の環境整備や「大川温泉竹ケ沢公園ホテル鑑賞の夕べ」の開催など東伊豆温泉郷の一体感の醸成に努めた【中部支部】渋谷利雄(羽咋市文化財保護審議会委員、石川県スペシャルガイド)能登半島の歳時記、原風景の撮影指導など、写真を通じて地域の観光振興の発展に貢献した【関西支部】矢田正則(菰野町観光協会会長)湯ノ山温泉の湯巡り「わくわく温泉チケット」の開発や地元食材のマコモを使ったメニュー開発などで地域の観光振興に貢献した▽正木明(福知山観光協会元会長)福知山にふさわしい土産品を推奨する推奨土産品制度の創設やスイーツマップなどの発行で観光振興に貢献した【中国支部】門脇惠美子(日本庭園由志園取締役)園内に1年中牡丹を鑑賞できる館などを作り、島根県ならではの日本庭園を完成させた【四国支部】川田梓(日本旅館協会高知県支部高知駅宿泊案内所会長)永年にわたり高知駅構内旅館案内所の健全な運営に尽力した【九州支部】佐久間進(北九州市観光協会顧問)「百万にこにこホスピタリティ運動」を立ち上げるなど地域の観光振興の発展に貢献した▽和田晧(日南市観光協会副会長)芸術文化の継承と観光客誘致を目的とする「シャンシャン馬道中唄全国大会」実行委員長などの要職を歴任し、地域の観光振興の発展に貢献した

韓国・タイ・LCCを分析、LCCは20代女性が多い(観光庁)

滞在中の情報源 スマホが急増

 観光庁はこのほど、13年1―3月期の訪日外国人消費者動向調査(既報済み)のなかで、(1)今期増えた客層と旅行支出の特徴(2)LCC利用観光客の分析――の詳細について発表した。これによると、観光・レジャー目的の訪日が前年同期の1・6倍に増えた韓国は女性客が回復し、同じく1・6倍に増えたタイは、訪日リピーターが増えたことが分かった。また、滞在中の情報源はスマホが急増。LCCを利用した訪日観光客は20代女性が多く、訪問地は就航地周辺に集中している。

 同期間の訪日外客数を国籍・地域別にみると、韓国が前年同期比37%増、台湾が同34%増、タイが同50%増、香港が同29%増、オーストラリアが同28%増と高い伸びを示している。なかでも、韓国とタイは観光・レジャー目的の訪日客が1・6倍と大きく増加した。

 同期間の韓国の訪日観光客層をみると、「女性客」の割合は前年の46%から53%に増え、「パッケージツアーを利用した個人旅行」の割合も13%から22%に増加している。一方、「自分ひとり」での訪日観光や、「個別手配の個人旅行」の割合は前年同期に比べて減少。滞在日数では前年同期に「3日間以内」の割合が増加したが、今期も「3日間以内」が3割を占めた。日本滞在中に役立った情報源では、スマートフォンの割合が11年11%、12年24%、13年38%と年々増加している。

 タイの訪日観光客層をみると、前年同期に比べ、訪日リピーターや「職場の同僚」との観光旅行、「個別手配の個人旅行」の割合が増加。滞在期間は「4―6日間」が11年の38%から12年に65%と大きく増加し、今期も引き続き65%を占めている。日本滞在中に役立った情報源ではパソコンの割合が減少し、スマートフォンの割合が増加した。

 LCCでは、複数社が日本との間を運航している韓国と台湾を分析。LCC利用客とその他航空会社利用客の航空運賃は韓国・台湾ともにLCC利用客の方が1万円程度低い。LCC利用客の来訪目的は「観光・レジャー」が7割以上だ。

 韓国の観光客をみると、LCC利用観光客は「女性20代」の割合が多く、男女とも「40歳以上」の割合が少ない。訪日回数は「1回目」の割合が4割近くと多い。LCC利用観光客はその他航空会社利用の観光客に比べ団体ツアーの割合が少なく、初来訪の観光客でも個人旅行の割合が7割を超える。訪問地は、LCCが就航する大阪府や福岡県への訪問率が高い。旅行満足度は「大変満足」「満足」で8割を占め、LCCとその他の航空会社との間に大差はない。

 個別手配観光客の1人当たり旅行中支出額は、LCC利用客で平均5・8万円、その他航空会社利用の観光客で平均8・2万円と、2万5千円近くの差が出た。費目別にみると宿泊費や飲食代、買物代などすべての費目でLCC利用観光客の方が低い。とくに買物代で差が大きく、その他航空会社利用観光客に比べ、1・0万円低い。

 台湾は、LCC利用観光客は30代以下の女性の割合が多く、全体の5割を超える。LCC利用観光客は団体ツアーの割合が1割未満と非常に低い。初来訪でもLCC利用観光客の96%が個人旅行。訪問地は、東京都、京都府、大阪府とその周辺都道府県に集中。個別手配観光客の1人当たり旅行中支出額は、LCC利用客で平均9・3万円、その他航空会社利用の観光客で平均11・6万円。費目別にみると宿泊費や飲食代、交通費ではLCC利用客とその他航空会社利用客で大きな差はないが、買物代で1・7万円の差が出ている。

山本考伸氏が新社長、楽天が年内に吸収合併(楽天トラベル)

山本考伸社長

 楽天トラベルの代表取締役社長に6月27日付で、山本考伸氏が新任した。岡武公士氏は顧問に就任。

 楽天は、楽天トラベルとのシナジーをより発揮するため、年内を目途に完全子会社である楽天トラベルを吸収合併することを検討している。

 山本 考伸氏(やまもと・たかのぶ)。1975年愛媛県生まれ。99年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。同年エヌ・ティ・ティ・ドコモ関西(現エヌ・ティ・ティ・ドコモ)入社、ユビキタスサービス部門担当プロダクトマネージャー。05年スタンフォード大学経営学大学院経営学修士(MBA)修了。06年オーバーチュア(現ヤフーYahooリスティング)入社、パートナープロフェッショナルサービス担当アソシエイトディレクター。同年エクスペディア入社、08年トリップアドバイザー(現TripAdvisorInc.)異動、日本地域担当プロダクトマーケティングディレクター。12年日本、韓国およびアジアパシフィックマーケットデベロプメント担当、バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー。13年3月楽天入社、楽天トラベル常務執行役員、4月楽天執行役員、6月楽天トラベル社長に就任。

耐震診断の支援要望、温泉所在都市協議会

 「温泉所在都市協議会」(会長=浜田博別府市長)はこのほど、改正耐震改修促進法が5月22日に成立したことを受けて、国に対して、旅館・ホテルの建築物の耐震化を迅速かつ円滑に推進するために、予算の確保や金融支援の充実など、必要な財政支援の強化を要望した。耐震診断結果の公表時期の弾力化などの配慮も求めている。

 今国会で改正耐震改修促進法が成立したため、対象となる旅館・ホテルは、2015年末までに建築物の耐震診断を受け、所管行政庁に結果を報告することが義務づけられた。耐震診断には多額の費用を要するため、国と地方公共団体からの補助制度もあるが、地域ごとに対応に温度差があるのも事実。このため、32道府県・82都市が加盟する温泉所在地都市協議会は、国と、地方公共団体に耐震診断に対する財政支援の向上と、財源確保を求めている。

 6月18日には、全国温泉振興議員連盟会長代理の二階俊博衆議院議員や、国土交通省の梶山弘志副大臣らに要望書を提出した。また、温泉所在都市に対する税財源措置および施策に関する要望も行った。【14面に詳細】 

7月に東南アジアビザ緩和、「観光立国アクション・プログラム」始動

井手長官「訪日1000万人へ2割増継続必要」

 7月にも東南アジアのビザ緩和実施へ――。

 観光立国推進閣僚会議が6月11日、ビザ要件の緩和や、日本ブランドの発信などに取り組む「観光立国に向けたアクション・プログラム」を策定。今年はビジット・ジャパン事業がスタートして10周年を迎え、初の訪日外国人客1千万人達成を目指し始動した。今後訪日外客数2千万人を迎え入れるためには政府一丸となって取り組みを強化する必要があることから、今年3月、同閣僚会議を立ち上げ、観光立国ワーキングチームが中心となって有識者会議での議論を経て、このほどアクション・プログラムを取りまとめた。

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 観光立国実現に向けては、(1)日本ブランドの作り上げと発信(2)ビザ要件の緩和等による訪日旅行の促進(3)外国人旅行者の受け入れの改善(4)国際会議等(MICE)の誘致や投資の促進――を重点項目としている。

 観光庁の井手憲文長官は6月20日に開いた会見で、13年の訪日外客数が1―5月までの累計で、前年同期比20・9%増の405万3500人という数値に対して、「(1千万人達成は)2割増の継続が必要。この好調を息切れすることなく維持していかなければならない」と述べた。また、アクション・プログラムについて、「ビジット・ジャパン事業、クールジャパン事業をオールジャパンで取り組むため、観光庁が音頭を取って、さまざまなイベントなどに各省庁が相乗りできるようカレンダーを作り、スケジュールを調整していく」と語った。

 ビザ緩和については、7月中にもタイとマレーシアはビザ免除、ベトナムとフィリピンは数次ビザ化、インドネシアは数次ビザに係る滞在期間の延長を実施する予定だ。

 井手長官は「ビザ要件が緩和されると間違いなく増加要因となる。ASEAN加盟国の観光担当者との会合でも日本のビザ緩和策を報告すると、ツーウェイツーリズムの促進につながると歓迎された」と述べた。韓国はすでに、日本が7月に予定するビザ緩和の同等レベルにあり、12年実績で日韓を比べると、タイは日本に26万人、韓国に39万人、マレーシアは日本に13万人、韓国には18万人と約1・5倍が韓国を訪れている。フィリピンは日本に9万人、韓国に33万人と約3倍。ベトナムは日本に6万人、韓国に11万人で約2倍と、1・5―3倍のギャップがあり、井手長官は「ビザ要件の問題だけが要因ではないが、緩和措置によって今後大きな期待が持てる」と語った。次のステップとして、ミャンマーやラオス、カンボジアなどの他のASEAN加盟国に加え、インド、ロシアも検討対象とした。

 そのほか、外国人向けのホテル・旅館など宿泊施設の情報提供については、夏までに検討会を設置し、外国語のできるスタッフがいるか、どの国の通貨の両替ができるかなど、情報発信する項目も含め、年内、または年度内に枠組みを決める予定だ。 

No.344 里海邸 大洗金波楼本邸 - 「本当にくつろげる宿」を求めて

里海邸 大洗金波楼本邸
「本当にくつろげる宿」を求めて

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している旅館がある。なぜ支持されるのか、その理由を探っていく「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第13弾は、茨城県・大洗町で「あたらしいふるさと」をコンセプトに、保養を目的とした宿「里海邸 大洗金波楼本邸」の主人・石井盛志氏が登場。工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏との対談で、「本当にくつろげる宿」について語り合った。

【増田 剛】

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトシリーズ(12)〉
 里海邸 大洗金波楼本邸

≪徐々に稼働高める工夫 ― 内藤氏≫
≪保養と癒しの別荘宿に ― 石井氏≫

■内藤:里海邸はもともと保養所からのスタートですよね。

■石井:里海邸の前身の金波楼ができたのは、1888(明治21)年のころです。明治の文明開化後期に海水浴ブームが起きて、茨城にも海水浴場を作ろうという動きがありました。当時の海水浴場は「潮湯治」というもので、体に良い刺激を与えるために波の荒いところを選定して、医師もビーチにいて予防医学的な活動を行ったのです。文献によると、当時は「海水浴客」ではなく、「患者さん」という呼び方をしていたみたいですね。それが次第に現代のようなレジャーに変わっていきました。

 

※ 詳細は本紙1507号または7月5日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

進まぬ温泉地の長期滞在 ― 文化の薫りと憩いの空間

 温泉地における長期滞在が進んでいない。逆に日帰り化が加速している。滞在時間が短いというのは、温泉地自体や各旅館に、旅行者が「連泊しよう」という気分を湧き起こさせない何らかの障壁があるのではないか。夕方遅く到着して朝早く去っていく周遊型団体観光客を除けば、個人客はもっと温泉地に長期滞在してもいいはずだ。そもそも「温泉」にはゆったりと長期滞在客を受け入れる素地を充分に備え持っているのだから。

 しかしながら、旅館も長期滞在客の扱いを持て余している。その象徴的なものは料理だ。一般的な大型旅館では、量が多く、見た目は豪華という、画一的な料理が提供される。そもそも長期滞在の客を前提にして作られていないし、「長期滞在されると、3日目には出す料理に困る」という悩みをよく耳にする。しかし、宿の都合をお客に押しつけるスタイルはもはや支持されない。1泊客とは別に、連泊客には体に負担にならない、ヘルシーで心のこもったメニューの研究や開発など、柔軟な対応が求められる。

 温泉地では、旅行者がくつろげる空間をたくさん作ってあげることも重要である。シンボル的な共同湯の周りや、土産物店が並ぶ温泉街、川べりなど静かな自然空間には、雰囲気の良いベンチを設置し、自分の好きな憩いの空間を作ってあげることが大切だ。四阿やベンチはいくらあっても多すぎることはない。そのうちに景観への美意識も高まり、地元の青年部などがゴミを清掃したり、寂びた看板などを撤去していくだろう。

 そして、温泉地には、小さな図書館があればいい。大規模な必要はない。長期滞在に取り組む大分県の長湯温泉には旅行作家・野口冬人氏が蒐集した山岳書を収めた「小さな図書館」が林の中にひっそりと在り、長湯温泉全体の文化度を高めている。洋の東西を問わず、温泉地は文化人に愛されてきた。文化の薫りのしない温泉地は、人を惹きつける力が弱い。私も「ここはいい旅館だな」と感じる宿には趣のある図書室や、本棚がさりげなくある。宿主のセンスが感じられる知的な空間を備えている。1面に登場した里海邸の石井盛志氏が築く「保養の宿」にも、そのような空間があり共感した。里海邸のようにリピーターが頻繁に訪れるというのも、一つの長期滞在のあり方だろう。

(編集長・増田 剛) 

今年度300会員目指す、今秋にも日本観光施設協会へ(日本ドライブイン協会)

西山健司会長

 日本ドライブイン協会(西山健司会長、230会員)は6月4日、京都府京都市のリーガロイヤルホテル京都で2013年度通常総会を開いた。今秋にも一般社団法人日本観光施設協会への移行を目指しており、新組織のスタートと合わせて、今年度は会員増強に取り組む。目標会員数を300会員に設定した。

 西山会長は「今年度は、内閣府直属の一般社団法人日本観光施設協会としての発足を目指している。事業の拡大をはかりながら社会貢献にも取り組んでいきたい。そのためには、多くの仲間が必要。会員増強への協力をお願いしたい」と語った。また、会員数が12年4月1日時点で90会員だったのが230会員に増加したことを受け、年会費を従来の店舗の売上高別の4ランクの会費から一律1万2千円に改定した。今年度は会員拡大運動に加え、高齢者・身体弱者に適応した施設改善としてバリアフリー化や、AEDの設置推進に取り組む。防災訓練も実施する。

 役員選任では、新組織移行を見据えた体制を整えた。

 主な役員は次の各氏。

 【顧問】鈴木克彦(ザ・フィッシュ)【代表理事会長】西山健司(西の屋グループ)【業務執行理事副会長】中村健治(喜撰茶屋)▽市川忠幸(水戸ドライブイン水戸インター店)【業務執行専務理事】中野吉貫(ナカノヤグループ)【業務執行常務理事】井上喜昭(万寿庵)▽佐藤正男(ゴールドハウス目黒)

取引の改善に努力を、「勇気ある行動」呼び掛け(OTOA)

三役と事務局(中央が大畑会長)

 日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA、大畑貴彦会長、142会員)は6月5日、東京都内で2013年度通常総会を開いた。そのなかで、大畑会長は、4月下旬に公正取引委員会が下請法違反で大手旅行会社に勧告を出した件に触れ、旅行会社との取引の改善に向けて、地道に努力を続けることを強調した。

 同件は、公正取引委員会が4月26日、日本旅行に対し、下請法違反で社名を公表して再発防止を勧告したもの。公正取引委員会によると、同社は海外旅行で宿泊施設や交通機関、食事などの手配を委託している下請事業者18社に対し、11年2月―12年8月までに計約3千万円を負担させていた。なお、同社は昨年11月に減額した金額を返還しているという。

 大畑会長は「会社名を公表しての旅行会社への勧告は業界初で、前代未聞のことだが、この件に関する業界からの反応はほとんどない」と厳しく言及。「社名こそ公表されていないが、何度か行政指導を受けたケースもある。これは氷山の一角に過ぎないことは我われが一番よく知っている」と語り、旅行会社から理不尽な要求があった場合は、公正取引委員会や中小企業庁に相談するなど、「勇気ある行動を」と会員に呼び掛けた。

 総会では、一般社団法人移行1年目の今年度の事業として、新たに訪日旅行事業の取り組みを開始することを確認。すでに、6月1日にインバウンド委員会を設置しており、訪日事業を行っている会員や意向のある会員のニーズを把握することから取り組みを開始する。昨年の勉強会で要望の多かったインバウンド保険の開発は、OTOAサービス保険参画損保会社と検討を始めており、先行して進めていく。

 また、任期満了にともなう役員改選では大畑会長を再任した。副会長は立身政廣氏と荒金孝光氏。専務理事は引き続き速水邦勝氏が務める。なお、6月1日付で事務局次長の岩崎宏幸氏が事務局長に就任したことも合わせて報告した。