春の素晴しさを堪能 ― 桜を愛でながら温泉に浸かる「贅沢」

 春らしくなってきた。春は別れや出会いの季節であり、花も咲き、薫り、大好きな季節なのであるが、花粉症にかかって以来、春の到来が憂鬱になっていた。しかし、今年はクスリが体質に合ったのか、あまり花粉症に苦しまないで済んでいる。私はこのクスリを開発してくれた人に感謝している。なぜなら春の素晴らしさを久しぶりに堪能できているのだから。

 酒を愛した李白の『月下独酌』という詩が好きだ。

 「花が咲く木陰に酒壷を持ち出したものの、相伴してくれる友もなく、ひとり手酌で飲む。そこでふと見上げると月がいた。杯を挙げて、月を招き、自分の影も含め、三人で心いくまで春を楽しむ。自分が歌えば、月はそれに合わせて動き回る。自分が舞えば、影もゆらめく。楽しい時間だが、酔いつぶれてしまえば別れ別れになる。いつまでもこんな清らかな交遊を続け、いつか天の川で再会しよう」というような感じの詩だ。

 春は、花と酒が似合う。月もどこか朧気で、趣がある。花と言えば、桜だ。そして桜に合う酒は、やはり日本酒である。この春は美味しい日本酒を買って来て、たくさん飲み、桃色の花びらを杯に浮かべ、花に酔おうと思う。

 春の訪れを花に感じるが、都会の街角にも春を感じさせる瞬間がある。それは街を歩くOLたちが黒いロングコートから、春色のスプリングコートに着替えるころだ。

 昔、まだ私が大学生のころ、ある女性と知り合った。その人は私よりの一つか二つ年下だったが、会社勤めをしていたので私よりも随分オトナだった。学生の私は自堕落で、夕方ごろに目覚め、新宿で彼女と待ち合わせた。間抜けな格好をした私と、朝からしっかりと働いたあとの疲れ気味の彼女は、口開けのバーでビールやジンを飲んだ。しかし、彼女は社会人で、私は、友もいない夢想的な大学生。話はいつもあまり噛み合わなかった。それでも、私が誘えば、彼女は「いいよ」と仕事が終わると会ってくれた。顔はブスで、性格はねじ曲がっていたが、体つきがいやらしかったので、若い私は少し夢中になった。しかし、そのような関係も長くは続かず、最後に駅で別れたときの彼女の着ていた春コートが可愛らしかったことだけ、いつまでも鮮明に覚えている。春の思い出。不思議なものだ。

 旅先で花と触れ合う「フラワーツーリズム」という旅行スタイルもある。近年は、春の桜の開花に合わせ、外国人旅行者が多く訪れるようになっている。

 桜並木の下で繰り広げられる花見の宴会のさまに、外国人は驚くかもしれない。私は桜の下で、赤ら顔になって陽気にはしゃぐ光景が、能天気で、馬鹿に見えるがゆえに好きだ。あくまでも人間が中心で、桜が背景で楽しそうな人たちを盛り上げているような感じがいい。

 しかし、桜の名所と言われるところはどこも混雑している。喧騒を離れ、李白のように一人で静かに酒を飲みたい人には、自分だけのお気に入りの桜木があれば最高だ。露天風呂や客室から桜を眺められる宿は日本には数多くある。夜桜を独占的に愛でながら、温泉に浸かることは、「贅沢」の一言に尽きる。 

 風景とは、心が映し出すものであり、桜もさまざまな姿となって人の目に映る。同じ花でも毎年違って見える。不思議な花だ。

(編集長・増田 剛)

訪日入門書プレゼント、やまとごころ提供

やまとごころ

 やまとごころの村山慶輔代表が、インバウンドビジネスのノウハウをまとめた1冊「訪日外国人観光ビジネス 入門講座~沸騰するインバウンド市場攻略ガイド」(翔泳社)を、抽選で読者5人にプレゼントする。訪日外国人観光客の基本から施策まで網羅した図解入門書。

 希望者は住所、氏名、電話番号、会社名、タイトルには「インバウンド書籍希望」と明記のうえ、メール(support@yamatogokoro.jp)で応募する。

 応募締め切りは3月31日。
 
 

No.397 やまとごころ・村山社長に聞く、訪日客に宿はどう向き合うか

やまとごころ・村山社長に聞く
訪日客に宿はどう向き合うか

 2020年に訪日外国人観光客(インバウンド)2000万人達成を目指し、順調にインバウンドが増加している傍らで、インバウンドビジネスもまた活発化している。「株式会社やまとごころ」はインバウンドに特化した情報サイトやコンサルティングなどを展開するインバウンド事業のプロフェッショナル。代表取締役の村山慶輔氏に、インバウンドビジネスの現状や、訪日外国人旅行客を受け入れる宿泊施設の課題などを聞いた。

【丁田 徹也】

 
 
 

 ――貴社について教えてください。

 当社では訪日外国人旅行に関連する事業を複数展開しています。情報サイト「やまとごころ.jp」では、インバウンド事業に取り組む地域や商業施設、飲食業などさまざまな組織や企業、それを支えるプレイヤーの動きを発信しています。

 また、インバウンド求人情報サイト「やまとごころキャリア」では、外国人や外国語のできる日本人向けの求人情報を掲示しています。マーケット自体は非常に小さいのですが、インバウンドビジネスに絞り込んでいるため、ミスマッチが少ないことが大きな特徴です。

 ――どのような業種からの募集が多いですか。

 ホテルや旅館、ゲストハウスなど宿泊施設が多くなっています。とくに大きな宿泊施設になると接客での外国語対応だけでなく、海外での営業やインバウンド向けのインターネット宿泊予約など多くの業務があり、インバウンド関係の仕事で活躍できる機会も広がっています。

 ――求人登録をしている人の傾向を教えてください。

 旅行会社や宿泊業経験者が多いのですが、観光業に直接関係のないメーカーなど、異業種からの転職希望者も多いです。さまざまな企業がまさに今、訪日観光に目を向けているところですね。

 ちなみに、現在当社に登録している約800人の求職者のうち、3割ほどが外国人です。さらにその半分は中国の方です。

 ――外国人求職者に人気の職種はあるのでしょうか。

 当社では、…

 

※ 詳細は本紙1580号または3月26日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

佐賀県と早稲田大が連携、学生の目線で課題発掘

学生が課題や新ルートの提案などを行った
学生が課題や新ルートの提案などを行った

「駐車場不足」「旅館の役割大きい」

 佐賀県は早稲田大学と連携して、羽田や成田空港と結ぶ佐賀有明空港を活用した旅行需要の喚起と認知度アップを目指し、同大商学学術院商学研究科ビジネススクールの戸崎肇教授の講義を受講している学生を対象に、現地調査を実施した。大学生(若者)の視点から問題点の発掘と、新たなアイデアや提案をしてもらうことが狙いで、昨年11月に続いて今年の2月に、学生たちはLCCの春秋航空日本を利用して2泊3日の日程で佐賀県内を現地調査した。

 3月11日に早稲田大で行った最終報告会では、空港と各観光地を結ぶアクセスの課題や、実際に観光して感じた改善点などを、レンタカー班と、公共交通機関班に分かれて発表した。

 レンタカー班は、多くの観光名所で駐車場の整備や、観光地の表示看板の不足などを指摘。「慣れないクルマの運転で、カーナビを見ながら細い路地で駐車場を探すことが大変だった」などの感想を述べた。戸崎教授も「今の東京の学生は公共交通機関に慣れ、クルマを運転する機会は減っているので運転技術は未熟。佐賀県もレンタカーを利用した観光キャンペーンを展開されているが、安全・快適な旅への意識と整備が必要」と強調した。

 一方、公共交通機関班は、荷物を持っての移動を避けるため、リムジンタクシーによる移動のメリットを上げる一方で、「運行ルートをもっと柔軟に対応してほしい」などの意見が出された。

 また、意見交換の場では「学生の金銭感覚はシビアだが、こだわりのあるものにはお金を払うことを惜しまない」とし、「LCCを利用することで移動のお金が節約できた分、旅館に泊まり『プチ贅沢』の気分にも浸れた。学生旅行はメンバーと楽しむ時間と空間も必要で、旅館の役割は大きい」という声もあった。

 さらに、「旅の移動では、ガイドブックを活用した。学生はSNSから情報を得ると思われがちだが、SNSは情報が些末で、どれが重要なのか判断しづらい」とし、手っ取り早く必要な情報が手に入る観光情報雑誌(ガイドブック)の有用性を強調した。

 佐賀県からは、空港課の田中憲尚参事が「これまでさまざまな施策やキャンペーンなどを展開してきたが、『メニューは提示してきたがショーケースに飾っていただけ』という面があったかもしれない。学生たちの貴重なアイデアや提案を参考にしながら、もっと使いやすく工夫する必要性を感じた。首都圏の方々に佐賀有明空港から県内をもっと回っていただけるように改善していく」と話した。

 おもてなし課の中尾政幸課長は「有明海など自然に恵まれた佐賀は食で売って行こうと思っている。首都圏から来ていただくには何が必要なのか、学生の皆さんの提案を聞きながらメモしていると、問題点が20個くらい見つかった。一つずつ課題を潰していきたい」と語った。

 首都圏営業本部の光武香織副本部長は「たくさんの気づきをいただいた。地元の目線から『クルマがなければ県内の観光は難しい』と思い込んでいたが、公共交通を利用した旅も学生から概ね好評を得たのは予想外だった。県としてもリピートしてもらえるよう、積極的にPRしていきたい」と述べた。

第26回女将サミット、7月14日、ホテル日航金沢で

 全国旅館おかみの集い運営委員会(吉本加代子運営委員長=山中温泉・お花見久兵衛女将)はこのほど、第26回全国旅館おかみの集い(全国女将サミット2015石川)を7月14日、石川県金沢市のホテル日航金沢で開くことを決めた。

 北陸での開催は初めて。会議の席上、吉本委員長は「人のつながりの大切さを実感できる会を目指したい」とあいさつ。北陸の文化や伝統を取り入れたプログラム、懇親パーティーの演出について意見を交わした。

 今後の委員会で開催テーマやプログラムを決め、5月下旬(予定)に全国の女将あてに参加案内を発送する。

車イスから見える風景

 先日ユニバーサルデザインに関する取材先で、車イスに乗せていただく機会があった。一見バリアフリー仕様になっているスロープ。いざ車イスで上れば頂上は遥か遠く、安全のため後ろ向きで下れば、背後が見えぬ恐怖心で身動きが取れない。スロープがあれば誰にでも安心だと思い込んでいた自分を恥じた。

 自動販売機で飲み物を買うにも一苦労。上段のメニューは手が届きづらく、何とかボタンを押し、飲み物を取り出そうにも、車イスの機体が邪魔をしてボトルが掴めない。

 日常の行動なら徐々にコツが生まれるのかもしれない。が、これが旅先だったら。旅本来の目的以前に、外部の環境が旅人を遠ざけている可能性は高い。旅を楽しむことに不安や不便が勝らぬように。車イスに限った話ではない。

【森山 聡子】

5千人の送客目指す、15年全体は350万人目標

JATA、日韓50周年

 日本旅行業協会(JATA)は今年、日韓国交正常化50周年の節目にあたり、12月31日まで記念事業を展開している。「スポーツ」「地方」「青少年」「文化」をテーマに、50周年記念事業内では、イベントを盛り込んだ商品などで5千人の送客を目指す。今年全体の訪韓日本人旅行者の目標は350万人。

 同事業のプロジェクトリーダーはジャルパックの二宮秀生社長。メンバーは旅行会社がジャルパックとJTB、KNT―CTホールディングス、日本旅行、エイチ・アイ・エス(HIS)、阪急交通社、東武トラベル、読売旅行、名鉄観光サービス、ANAセールス。航空会社が日本航空と全日本空輸、大韓航空、アシアナ航空。韓国側は韓国観光公社と江原道庁、済州特別自治道が協力している。

 具体的な取り組みとしては、50周年ロゴを商品パンフレットなどに掲載し、広く50周年をPRしていくことと、5千人送客の核となる共通イベントの設定、50周年記念ホームページの作成など。イベントはテーマに沿った既存のものを中心に設定しているが、今年は日本人が参加しやすいような展開をはかるという。また、HPは3月12日からオープンしており、プロジェクトに参画する旅行会社の商品などをニュース&トピックとして紹介している。今後は、参加会社以外の商品なども掲載していく予定だ。

 3月12日の定例会見で海外旅行推進部の酒井秀則担当副部長は、13、14年度と日本から韓国への旅行者数は低迷しているなか、今年が重要なターニングポイントになると強調。「相互交流700万人に向け、50周年を契機に新しいステージに進んでいきたい」と語った。

東旅協 ムスリム受入セミナー開く

日本ASEANセンターの 神田瑞穂氏
日本ASEANセンターの
神田瑞穂氏

“できることから対応を”、情報開示し選択を委ねる

 東京都旅行業協会(駒井輝男会長)は3月10日、東京都内でASEANからの訪日客とムスリムの受け入れに関するセミナーを開き、会員45人を含む、約100人が集まった。講師の日本アセアンセンター観光交流部の神田瑞穂氏は、ムスリムの受け入れについて、可能な対応を情報開示し、相手に選択してもらうようアドバイス。さらに、受入対応を段階に分けて、できることから始めるよう説いた。
【伊集院 悟】

 今回のセミナーでは、会員旅行会社以外にも門戸を開き、ホテル・旅館や観光施設などの受入施設を中心に観光業界関係者約100人が集まった。駒井会長は冒頭のあいさつで「昨年の訪日外国人観光客数は1340万人となったが、そのうち160万人がASEANから来ている。ASEANにはムスリムも多く、ムスリムについてもう少し勉強しようと今回のセミナーを企画した」と同セミナーの意図を語った。

 14年のタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムからの訪日客総数は前年比39・4%増の160万2200人。ASEANからの訪日客増加の要因には、経済成長やLCCの普及、ビザ緩和、円安などがあげられる。神田氏によると、これまではASEANからの訪日客は中国系の華僑が中心だったが、LCCの普及によりムスリムも増加し、「初めて乗る飛行機がLCCという人も多い」という。

 イスラム教では豚と豚由来品、アルコールの禁忌が有名だが、ラード、乳化剤、ショートニング、ゼラチン、豚骨スープなども豚由来品にあたり、料理酒やみりんもアルコール分を含むため禁止されている。また、豚肉以外でも、資格を持った人がイスラム法に基づき食肉処理した「ハラール肉」しか食べない人や、さらにキッチン、調理器具、食器などをノンハラールと分けたハラール環境で調理されたものしか口にしない厳格な人もいる。神田氏は、「厳格さには個人差があり、ハラール認証はハードルが高いので、できることから対応していく」ことを勧める。

 神田氏は対応を3段階に分け、取り組みを紹介。まずは第1段階として、豚肉と豚由来品、アルコールを提供しないことと、食材が分かるよう「no pork」「no alcohol」などの英語表記や絵で表すピクトグラム入りのメニューを準備することをあげる。この場合、「ハラール肉」ではないので、誤ってハラールという言葉を使わないよう注意が必要だ。

 次に第2段階として、ハラール食材の使用と、モスクやハラールレストランの情報提供、礼拝用マット・コンパスの貸し出し、必要に応じてのツアー中のお祈りの時間と場所の確保などをあげる。メニュー表示は「ハラールメニュー」ではなく、あくまでも「ハラール食材の使用」と表現した方がよい。「ハラールメニュー」と言ってしまうと、ハラール環境で調理されたものだけを指すからだ。また、礼拝については通常は1日5回だが、昼間に行う2回目と3回目、日没以降に行う4回目と5回目をまとめて行う人もいるので、昼間に行う1回を想定しておくとよい。ただし、旅行中はお祈りをしない人もいるので、こちらから強要はせず、お祈りの時間と場所の確保については相談することを勧める。第3段階には、ムスリムの雇用や、ハラール環境に近づけるなど、ハラール認証の取得があげられる。

 神田氏は「旅行中は(イスラム教の仕来たりについて)穏健になる人もいるので、こちらで勝手に先回りしないほうがよい」とアドバイス。また、対応には幅があるので、「どの程度の対応が可能かを情報開示し、相手に選択してもらうのがよい」と説いた。

 そのほか、犬も不浄のものとされ、人形は偶像崇拝にあたるので好まれないことなども紹介した。キティちゃんなどデフォルメされたマスコットなどは問題ないという。

東旅協がムスリムの受入セミナーを開催
東旅協がムスリムの受入セミナーを開催

5割弱が成田・羽田から、14年の空港別入国数(法務省)

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 法務省の出入国管理統計によると、2014年の訪日外国人の空港別入国数の1位は成田空港で、入国数が493万1536人、構成比が34・9%となった。羽田空港の構成比12・4%を足すと、空路入国の47・3%が首都圏空港に集中していることが分かった。

 2位は関西空港で入国数が317万437人で構成比22・4%。次いで羽田空港が入国数175万1965人、福岡空港が入国数88万4139人で同6・2%、中部空港が入国数69万9153人で同4・9%、新千歳空港が入国数66万1771人で同4・7%、那覇空港が入国数65万2944人で同4・6%と続いた。そのほか、函館空港が7万9510人、富士山静岡空港が7万2681人、旭川空港が7万380人、小松空港が5万4401人、広島空港が5万4234人、鹿児島空港が5万215人、茨城空港が4万170人など。

マイナンバー制度対策セミナー、4月7日に緊急開催(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は4月7日、東京・霞ヶ関の全日通霞が関ビルで「マイナンバー制度対策セミナー」を開く。来年1月から開始される同制度は、今年の10月から個人番号の通知が始まるなど、企業にとっては施行前に取り組むべきことが多いため、緊急企画として実施する。

 セミナーでは、制度の概要や特定個人情報の取得・保管・利用方法、他業界での対応状況、旅券事務など施行から3年後の利用範囲拡大への状況などを説明する。

 申込みはURL(https://qooker.jp/Q/ja/20150407/mynbr)から。3月27日まで。