〈旬刊旅行新聞7月11日号コラム〉リゾートホテルでゆったり過ごす――「滞在型」の温泉旅館も増えてほしい

2022年7月9日(土) 配信

 バイクのツーリング旅も好きだが、リゾートホテルでゆったり過ごす旅も、年に数回は必要だと感じている。

 

 昨冬のクリスマスは、沖縄で過ごした。まだ暗い早朝、神奈川の家から羽田空港までの高速道路を走っていると、FMからテイラー・スウィフトの魅力的な歌声で「ラスト・クリスマス」が流れ、近年コロナ禍で薄らいでいたクリスマスムードを一気に盛り上げた。

 

 クリスマスの沖縄は風が強く、寒かった。季節外れ感がたまらなく良かった。この旅では、あちこち移動するのではなく、ホテルで4日間、オリオンビールを飲みながら、のんびり過ごすことを目的にしていた。

 

 宿泊したのは、恩納村の「ホテルムーンビーチ」。沖縄のリゾートホテルの草分け的な存在だ。予約が間際だったので、気がかりはオーシャンビューではないことだった。4日間、沖縄を訪れていながら、海の見えない客室で過ごすことを考えると、「少し退屈するのではないか」とわずかな不安もあった。

 

 

 ホテルムーンビーチの館内は広い。南国情緒あふれる植物に囲まれた空間で、到着早々オリオンビールを飲みながら、滞在中の旅の計画を立てた。あらかじめ調べておいた本部町の美味しい沖縄そばの店や、北部のコーヒー農園「ヒロ・コーヒーファーム」、アンティークショップの店を訪れるほかは何も予定がないなかで、疲労していた心身が少しずつリラックスしていくのを感じた。

 

 客室の入口にはクリスマスらしい装飾がなされていた。センスの良い室内に満足感が高まっていった。広めのバルコニーがあり、チェアに座ると、目の前には亜熱帯植物が生い茂っていた。少し肌寒さはあったが、上着を着て、バルコニーでのんびりと過ごした。

 

 

 風は海側から吹いていたので、反対側はそれほど寒さを感じなかった。

 

 これまで私は海辺の観光地に宿泊する場合、海が眺められる客室にこだわっていた。沖縄やハワイに行くなら「オーシャンビュー」という固定観念にしばられていたことを反省した。

 

 窓の外から見る海は綺麗だが、長時間眺めていると最初の感動は続かない。それに日が暮れると、真っ黒で何も見えなくなる。

 

 一方、バルコニーから見える植物は、客室の灯りやホテルのライトアップの効果もあり、さまざまな表情を見せてくれる。夜には南国の植物特有の妖しい、甘美な香りも漂い癒されていった。よく考えると、昼間にはドライブしたり、歩いたりするなかで1日中海ばかりを見ていることにも気づいた。

 

 ホテルムーンビーチの周辺には、居酒屋やレストランも散在している。滞在中、何軒かの飲食店に入り、大好きなソーメンチャンプルや、ジーマーミ豆腐、海ぶどうなどを堪能して、終わりゆく2021年の年末を楽しんだ。

 

 

 リゾートホテルの良い部分は、滞在中に退屈せずに過ごせるところだ。館内には幾つものショップやレストランがあり、その日の気分で利用できる。ビーチや庭園にもチェアがあり、好きな場所でくつろぐことができる。最近は沖縄のリゾートホテルにも温泉があり、滞在メニューが一層バラエティ豊かになった。温泉旅館も「滞在型」がもっと増えればいいと思っている。

 

(編集長・増田 剛)

農協観光、当期純損失の赤字縮小 経営基盤の確立に取り組む

2022年7月8日(火)配信

22年度株主総会であいさつする櫻井宏会長

 農協観光(清水清男社長、東京都千代田区)が6月28日(火)に発表した第33期(2021年4月1日~22年3月31日)決算によると、当期純損失は16億7029万円(前期は51億2136万円の損失)を計上し、昨年度から赤字幅を縮小した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、引き続き旅行需要が激減。これを受けて、昨年策定して2年目を迎えた「経営再生計画」を見直し、生き残りに向けた「事業継続計画」として、経営基盤の確立に取り組むとした。

 取扱高は前年同期比5.4%増の84億9802万円、営業収益は同13.5%増の13億6347万円、経常損失は23億7029万円(前期は44億4616万円の損失)と、前期実績を上回ったものの厳しい結果となった。

 事業概況としては、旅行事業を補完する取り組みとして「農業人材活用事業部」を設置。労働力不足解消のための支援を行う「労働力応援事業」と農業と障害者就労をつなぎ、企業が後押しする「農福連携事業」を始めた。また、全国の支店では、全国の名産品などの「物品販売」や、ワクチンの職域接種の運営受託などにも取り組んだ。

 一方で、「経営再生計画」(21年4月~24年3月)で事業継続をはかるべく、従業員、店舗の削減や役員報酬、給与の見直しをはじめとした費用の大幅削減に取り組んだ。事業資金の調達のため、東京都千代田区と新潟県長岡市に所有していたビルを売却し、全国農協観光協会からの長期借入などを行った。このほか、財務体質の強化を目的に、18億円の資本金を今年3月1日付で1億円への減資を実行したが、旅行事業の激減を補完することができなかった。

2期連続の債務超過、経営再生計画を見直し

 農協観光は、新型コロナウイルス感染拡大の長期化により非旅行事業の取り組みを進め、固定費の削減、事業資金の調達に努めてきた。しかし、旅行需要の激減が大きく影響し、当期純損失の計上により2期連続の債務超過。これを受けて同社は、2年目を迎える「経営再生計画」を見直し、生き残りに向けた「事業継続計画」(22年4月~24年3月の2カ年)として、経営基盤の確立に取り組むと発表した。

 他社にはない専門性、特異性を発揮し、「食と農」に特化した事業運営を行い、旅行業に限定しない新たなビジネスの構築を進める。旅行事業では、個人需要に対応すべくWeb宿泊販売システムの導入や、SNS(交流サイト)発信の強化などに取り組む。さらに、この事業展開を効果的に促進するため、事業体制を見直し、JAの各種活動に貢献する「JA活動支援事業」や、食と農を基軸として地域活性化に貢献する「地域共創事業」に特化し、支店の後方支援を行うとした。

全取締役が任期満了、櫻井宏会長が再任へ

 なお、同日に東京都千代田のJAビルで22年度株主総会を開き、取締役20人全員が任期満了による役員改選を行った。農協観光会長の櫻井宏氏(全国農協観光協会代表理事会長)をはじめ計18人を再任。新任は、青森農業協同組合代表理事組合長の雪田徹氏、全国農協青年組織協議会参与の柿嶌洋一氏が就いた。

 冒頭、櫻井会長は「経営面における喫緊の課題である債務超過の解消に向け、固定費の削減や資金流出の抑制、代金の事前回収の徹底などに取り組み、事業継続に向けた各種支援要請を行っていく」と明かした。

全旅連青年部、違法民泊の指標作成へ パリで開催のフォーラム参加

2022年7月8日(金) 配信

今回は30カ国から60人が出席し、宿泊業界の現状や課題、中⻑期対策を共有した

 全国旅館ホテル⽣活衛⽣同業組合連合会⻘年部(星永重部⻑)は5月22⽇(日)〜24⽇(火)、フランス・パリで開催されたGlobal ReformBnBフォーラムに参加した。世界の宿泊事業者や団体が違法⺠泊に関して議論し、共通ガイドラインの作成を目指す同フォーラムは今回、宿泊業界の現状や課題、中⻑期対策を共有したほか、統⼀ガイドライン制定に向けた話し合いなどを行った。30カ国から約60人が集った。

 全旅連青年部からは10人が出席。⼤沼孝晶副部⻑が登壇し、日本の観光事情やコロナ禍の状況、全旅連⻘年部の活動内容について紹介した。

 星部⻑は会の最後に、およそ6カ月に1回実施する同フォーラムを日本に誘致するプレゼンテーションを行った。その結果、12⽉に京都府で開催することが決まった。

【特集No.614】あぶらや燈千(長野県) 「より良く」へ常に細かく改善

2022年7月8日(金) 配信 

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の11回目は、長野県・湯田中温泉「あぶらや燈千」社長の湯本孝之氏が登場。「より良くしたい」という強い思いから、常に細かく改善し続ける姿勢や、風俗営業免許の返納など「やめる」勇気についても内藤氏と語り合った。

【増田 剛】

 湯本:1961(昭和36)年に創業し、私は3代目になります。
 元々は油屋として、この地で菜種油や小麦などを売る雑貨店を営んでいました。そのうち商売も難しくなったため、祖父が借金をして温泉を掘り、温泉旅館業を始めました。長い歴史のある宿が多い湯田中温泉では、後発中の後発でした。
 最初は3階建ての小さな木造旅館でしたが、その後観光ブームもあって66年には5階建て鉄筋コンクリート造に建て替えています。
 団体客が主流で最も客室数が多かった時期は50室以上ありました。02年に個人客に対応するため露天風呂付客室専用の棟を新築で建てたり、大浴場や個室食事処を備えたり、5億円ほど投資して全館フルリニューアルしました。そのタイミングで「ホテルあぶらや」から「あぶらや燈千」に名称を変えました。現在は32室です。

 内藤:ご両親は個人化への変化に対して先見性があったのですね。

 湯本:鉄筋コンクリート造にしたのも早かったですし、露天風呂付客室も当時はほとんどありませんでしたので、メディアの取材もたくさん来ました。

 ――湯本さんが宿に戻ったのはいつですか。

 湯本:リニューアルしてスタートした直後です。
 私は東京の大学を卒業後、1年間ホテル学校に通いました。その後、2年ほど実際に都内のホテルで修業というかたちで勤務させていただきましたが、そのホテルが倒産していく様を見ていたことがきっかけとなり、そこから私の旅館業人生が始まりました。
 就職したホテルでは、オーナーと社員がもめていて、私が入社して1週間ほどでフロントスタッフが全員一斉に辞めてしまいました。たった1人残った社員と私で立て直しをやらなければならない状態でした。
 支配人は場外馬券場に行くし、レストランスタッフは冷蔵庫から食材を出して宴会をするなど崩れ落ちていく様を目の当たりにしました。そのような職場で2年間働いていました。

 内藤:当時、何を感じていましたか。

 湯本:ホテル学校に通ったのも「東京にもう少しいたかった」という理由で、旅館を継ぐという考えは持っていませんでした。両親からも「継いでほしい」と言われたこともなかったのですが、東京であまりにひどいホテルの環境にいたため、実家の旅館のことが心配になってきました。
 1998年に長野冬季オリンピックが開催され、周囲の旅館もリニューアルラッシュを迎えました。そのタイミングで両親は改修をしなかったので、次第に集客が難しくなってきました。売上自体はそこまで厳しくはなかったらしいのですが、「取り残された」という危機感もあり、建築費も下がった02年に大改装を行いました。

 内藤:一般的にお金が入ると、時代の流行に沿った新館を建てたり、大規模リニューアルをしたりして、そのまま手つかずになっている施設が多くあります。一方で、外壁の塗装や、ロビーの設えなど、地道に小さな部分に手を入れている施設に私は共感します。
 五輪ブームのときに改装せず、建材費が下がった時期に改修するというのは、やはり先代の嗅覚があったのかもしれませんね。

 湯本:嗅覚があったのかもしれませんし、必要に迫られてだったのかもしれません。宿泊単価は1万円ちょっとだったのが、露天風呂付客室を作ったことによって、当時2万5千円レベルの客層に変化しました。
 従来の団体客と新しい露天風呂付客室の個人客も混在していましたので、ロビーでバッティングすると、「団体のチェックインが騒がしい」など、個人客からクレームも多く、個人客の専用ラウンジを作りました。

 内藤:あとから振り返るとそのような説明になりますが、それでも何も対応できない施設がほとんどです。
 例えば、個人化しているのに宴会をやめられないなど、必要に迫られていても軸足を移すのではなく、「二兎を追ってしまう」というのが一般的です。

 湯本:内藤先生の助言もあり、風俗営業許可証を返納しようとしたところ、両親に「売上が落ちる」と大反対されました。
 2年ほど経ってですが、ようやくコンパニオンを廃止し、風俗営業許可証を返納しました。

 内藤:旅館業界は風俗営業免許の不満を口にしますが、売上が減ることを考えると、足踏みして風俗営業の維持を選んでしまいます。
 しかし、あまり旅館業の方々は理解していないのですが、通常の接客を行うコンパニオンは風俗営業免許を取得する必要がなく、売上への影響がありません。

 湯本:コンパニオンを廃止したことで団体客が減り、初年度は多少売上が下がりましたが、年々とそれを高単価の顧客でカバーすることができるようになり、さらに顧客満足も高まり、本当によかったと思います。

 内藤:昔ある経営者から「息を吐かないと新しい空気は吸えない」と言われ、なるほど「新しいことは何かを手放さないとできない」と感心したことを思い出します。 

 湯本:両親や私自身も「どうやって売れる商品を作るのですか」「どのようにマーケティングをしているのですか」と聞かれることがあるのですが、単純に「いいと思ったから、次にこれをやりたい」とアイデアを実行しているだけです。
 ただ、「お客様に喜んでもらいたい」という思いが根底にあるのかもしれません。そのうえで、「より良くしたい」という強い改善の思いが行動に移っているのだと思います。

 内藤:生産性の観点でいえば、「より良くし続けていかなければ悪くなる」という捉え方です。

 湯本:02年に露天風呂付き客室を作ったあと、岩盤浴、食事処の個室を増築し、エステルーム、その後新しい客室を作りました。
 さらに、朝食バイキング会場をフルリニューアルし、16年には屋上にルーフトップバーを新設しました。18年にはロビー、20年には大浴場をリニューアルし、21年8月には部屋食の露天風呂付客室を新たにオープンしました。

 内藤:継続的な設備投資の計画はどのように考えられていたのですか。

 湯本:緻密にやっていたわけではなく、投資した分が良い方向にいっていたので、危機感を持って投資していたわけでもありませんでした。「常に細かく改善しよう」という意志の根底には、お客様と同じ目線があるのかなとは思います。
 例えば、本屋に行って1時間くらい女性誌をはじめ、片っ端から「旬」の情報を定期的に収集しています。おそらくこれがマーケティング力につながっているのだと思います。

 内藤:科学の根底には常に具体的な根拠を持つ「客観性」があり、それを漢字で「客が観る」と書きます。客の目線になれるというのはすごく大事だと思っています。

 ――2002年に宿に入られた時、どのような状態でしたか。

 湯本:28歳で宿に戻ったとき、私は最年少でした。両親と父の弟夫婦、姉夫婦の湯本家6人を中心とした家業でした。
 最初は年上の社員たちとスノーボードや、飲みに行ったりして楽しかったのですが、次第に社員の不満を耳にするようになり、会社の問題点が浮き彫りになっていきました。
 女将(母)がトップダウンで指示を矢継ぎ早に出していたので、社員も窮屈に感じ、乖離していた状態でした。
 今は新卒採用をしていますが、当時は中途採用と派遣スタッフばかりだったので、会社に理念もなく、営業のやり方もばらばらでした。ただ、お客様に対しては皆、一生懸命に対応していましたので、顧客満足度は低くはありませんでした。
 改革が急務な状況にありましたが、父は元来家業の人だったので、聞く耳をもってもらえず、若い私は、社員と父との間で板挟み状態でした。31歳の時に強引に支配人になりましたが、このような状態が5年ほど続きました。

 内藤:具体的にどのような改革をされたのですか。

 湯本:支配人になって最初に取り組んだのは、新卒採用を始めたことです。会社の理念や方針など目指す方向性を作り、社員全員に共有しながら入退社を繰り返すうちに新卒社員比率が変わっていきました。

 内藤:離職率はどうですか。

 湯本:今も離職率は高いので、そこが課題になっています。
 私のやり方が良くなかったのかもしれませんが、ゼロからスタートする新卒を採用して、3―5年間しっかりと育てれば「人材が育ち、組織が安定化していくのではないか」と一生懸命やってきました。その結果、気づけば20代の若手ばかりになり、若い人材を育てる30―40代が手薄になっていました。
 若いスタッフは入社後3年ほど経つと、「将来自分は誰を目指して働いていけばいいのだろう」と不安になったり、急に管理職に就いたときに模範となる先輩がいないため、どうしていいかわからないという状態が続いていました。

 内藤:オーナーとパート社員だけという会社も多くありますが、しっかりした会社は課長クラスなど中間層の人材の厚さを感じます。

 湯本:そうですね。中間層がいなかったのでトップの私と、その他社員全員というような構図でした。
 現場に張り付いていた支配人の後半ぐらいから段々見切れなくなっていき、17年に社長に就任すると、対外的な業務も増え、これまで以上に私1人では全員を見ることができない状態になりました。

 内藤:中途採用者は以前のクセが出てきますし、一から育てるには相当な時間とエネルギーが必要です。どこの会社も悩ましい問題です。
 ほとんどの旅館は民宿から始め、規模が大きくなっても民宿のやり方を続けて、ムリが生じています。
 人口も、客も増えているときは対応できたが、お客も働き手も減り始めたときに、これまでのやり方が対応できなくなってきます。中間層がしっかりとしている会社は、就業規則で透明化され、賃金体系もしっかり明記されていたり、休日を十分に与えていたり、企業経営的に移行しています。
 従業員が辞めるときの理由は大きく2つしかないと思っています。1つは人間関係、もう一つは5―10年後の「先が見えない」ことです。将来的な賃金体系が明記されていることも、大事なことです。

 湯本:私は当初から企業化へと移行したかったので、新卒を積極的に採用し、パートさんまで理念の共有をはかり、おっしゃるように賃金体系や評価制度も定めました。組織化することに大きな時間とエネルギーを注いできました。

 内藤:現在、社員数はどのくらいですか。

 湯本:パートさんを含め、45人ほどです。

 内藤:よく言われるのが30人を超えると一人ひとりが何をしているか分からなくなり、管理方法が変わる。100人を超えると顔と名前が一致しなくなります。

 湯本:まさに組織の管理手法を変えていかなければならない時期だと感じています。最近は方針転換をし、中途採用にも力を入れています。19年の秋に妻が旅館に入ったのも、組織改革への一つの大きなきっかけとなりました。
 内藤先生と知り合ってから生産性向上が必要な考え方だと腑に落ちた瞬間があり、最近ではタブレットチェックインやPOSシステムなども取り組んできました。
 コロナ禍では一昨年5月は1日も営業ができなかったので、どれくらいエネルギーコストがかかっているか館内設備を一つずつ点検していきました。付け足し、付け足しで3棟あるので、重複する設備もたくさんありました。お客様にクレームを出さないように空調機も設置していましたが、ムダなものを削っていくと電気料金が大幅に下がりしました。ラインワークスを使っての情報共有や、Wi―Fiインカムも導入しました。
 また、コロナ禍で、契約が満了した派遣スタッフが大幅に減りました。少ない人数で現場をマルチタスクで回し、平日の稼働に合わせた人員配置にしたため、ピークの山を崩すことができました。これにより、週末は満室にできなくしました。その分固定費が下がったので、赤字になりづらい体質になりました。満室にする必要がないのだったら、単価を上げようと思い、それでも支持してもらえるお客様に来ていただければいいという考えになりました。

 内藤:生産性管理の常識なのですが、稼働変動の幅が大きくなればなるほど固定費が高くなり利益が出にくくなるので、稼働のピークとなる山をいかに崩すかが大事です。だから製造業の生産性向上の一丁目一番地は需要の平準化です。オーソドックスなことをきちんとやられているということですね。

 湯本:余った客室は正午から午後6時まで、1人4千円で日帰り入浴と、食事もオプションで提供するデイユースや日帰り客などで使用するようにしました。10回ほどリピートするお客様もいて新しい市場開拓にもなりました。固定費は増えていないので、利益率は飛躍的に改善しました。
 料理のテイクアウトサービスも始め、売上の新たな柱を作っていきました。昨年8月に露天風呂付客室がオープンしたこともありますが、コロナ前から単価が4千円ほどアップし2万8千円を超えました。稼働の山を崩して作業負荷の平準化による固定費圧縮とともに、設備投資と合わせて単価アップの両面で生産性向上につながっています。

 内藤:自社集客も工夫されていますか。

 湯本:満室になることが予想される日は、自社と楽天トラベル、じゃらんに絞っています。

 内藤:2社を残したのはどうしてですか。

 湯本:楽天トラベル、じゃらんは検索結果表示で1位表示にならないとお客様がたくさん流入して来ない。さまざまな会社に分散していたものを集約することによって上位表示を確保しながら、自社集客も上がってきたことで、数百万円の手数料率は下がりました。
 接客に特化したマルチタスクもやりました。

 内藤:接客とバックヤードを分けた理由は。

 湯本:接客を希望してきた新卒には、あまり多くの労力をバックヤードで費やしてほしくないという思いはありました。

 内藤:その思いは理解できますが、一長一短あって、清掃もやることによって中抜けがなくなり朝6時に出勤して昼過ぎに退社できるというシフトが可能になります。
 多様な働き方のなかで、「決めないことを決める」ことにより柔軟性がもっとも高められ、それが一番いいと思います。「こうあるべきだ」という考えを捨て、場当たり的にやっていくのがいいと思います。

 湯本:清掃を除いたマルチタスクなので、苦戦します。2交代制の昼の時間の仕事として何をやればいいのか。試行錯誤しているときにコロナ禍になり、現在は中抜けに戻っています。

 内藤:逆に、表に出ることができるバックヤードのスタッフをいかに雇うか、というのも課題です。

 湯本:昼の売上を上げるために、現在宿の横に事業再構築補助金で新しい事業をやろうとしています。そこを上手く活用して、中抜けなしの早番と遅番の2交代制にシフトしていきたいと考えています。

 内藤:新しい事業とは何ですか。

 湯本:観光型複合施設です。見学型のクラフトビール工場、ご当地バーガーとスパイスカレーのレストラン、観光センター、チョコレートショップ、ワーケーションスペース、足湯などの施設を今年10月からオープンを目指しています。パティシエやビール醸造士を雇って、テナントを入れず、すべて直営でやります。

 内藤:楽しみですね。期待しています。

 ――ありがとうございました。

JTB、九州観光機構、セールスフォース 観光DXで協定結ぶ

2022年7月7日(木)配信

左からJTBの山北社長、九州観光機構の唐池会長、セールスフォース・ジャパンの小出会長兼社長

 JTB(山北栄二郎社長)と九州観光機構(唐池恒二会長)、セールスフォース・ジャパン(小出伸一会長兼社長)の3者は6月20日(月)、九州域内の観光DXに関する包括連携協定を結んだ。九州観光プラットフォーム「地域共創基盤」を新たに構築し、地域事業者のデジタルビジネス支援や九州ファンの獲得、リピーター化に向けた仕組みづくりの実現をはかる。

 3者は昨年6~12月まで、観光DX推進ミーティングを全6回実施。デジタル化に関する知識の習得と組織課題の顕在化をはかるとともに、対応策を協議してきた。これら協議をもとに、プロモーションや市場分析、会員サービス、事業運営などの効率化と観光ビジネスの進化を目指す。

 今年度は、JTBとセールスフォースは地域DMOや自治体、観光事業者との情報連携を効率的に行うほか、九州観光機構の会員企業との相互利用可能なシステム環境を整備。各地域の観光DXのモデルとなる「九州観光プラットフォーム」を構築する。その後、同機構は保有する各種事業データを収集、九州観光プラットフォームに蓄積する。並行して、DXの推進体制作りや学習支援、専門家派遣、観光庁事業の取り組み、会員組織との連携を進めていく。

 3者は同日、東京都品川区のJTB本社で調印式を開いた。九州観光機構の唐池会長は「新規は毎年一定のもの。この新規客を積み重ねていくことで売上や観光客の増加につながる」と、新規のリピーター化の重要性を伝え、今回の連携で課題だった九州ファンの獲得やリピーター化の解決をはかっていくと語った。

富士山静岡空港 滑走路横の制限区域内をバスで 7月22日から「スカイバスで巡る!! 島田市内周遊ツアー」

2022年7月7日(木)配信

空港内を走るスカイバス

 富士山静岡空港と大井川鐵道、日の丸自動車は7月22日(金)から、「スカイバスで巡る‼ 島田市内周遊ツアー」を行う。

 同ツアーは静岡県島田市からの事業委託により「富士山静岡空港を活用したマイクロツーリズム事業」の一環として行われるもので、2階建てオープンバスで島田市内を周遊する。

 富士山静岡空港では特別な許可が必要な滑走路横の制限区域内、場周道路約7㌔をスカイバスで走行し、航空機が離発着する瞬間を間近で見学できる。また、消防庁舎では化学消防車の見学も楽しめる。

 ツアーではこのほかに、新金谷車両区 整備工場見学(大井川鐵道)や、世界一の長さを誇る木造歩道橋「蓬莱橋」などを巡る。

 実施日は7月が22日から25日と29日から31日、8月は5日から15日と19日から21日。旅行代金は中学生以上が9800円、小学生8800円、1才児から未就学児6800円。

渋沢栄一にゆかりある5地域が出店 「2022渋沢栄一ゆかりの地 地域特産物産展」開催中

2022年7月7日(木)配信

開場ともに賑わう会場

 東京商工会議所(三村明夫会頭)は7月8 日(金)まで、東京商工会議所1階多目的スペースで「2022渋沢栄一ゆかりの地 地域特産物産展」を行っている。

 3回目となる今回は「茨城県水戸商工会議所」が初出店。笠間産の栗を使ったモンブランや、水戸の銘菓吉原殿中などを販売する。

 会場には「茨城県水戸商工会議所」のほかに、北海道・十勝清水町、埼玉県深谷市(道の駅おかべ)、長野県上田商工会議所、岡山県井原市がブースを出展、各ブースでは農産品や食品、雑貨、渋沢栄一関連商品の販売に加え、渋沢との関係を紹介するパネルも展示。

 深谷市は今年6月に発生した雹被害により収穫前の農作物や農業施設が甚大な被害を受けたことから、「がんばるベェー『フカヤヤサイ農家応援』」と銘打ち、野菜の応援販売を行う。

ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構 22年度は41のイベント開催を予定

2022年7月7日(木)配信

ON・ガス ロゴ

 ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構(小川正人理事長)は7月6日(水)、社員総会を開いた。2021年度は官公庁の補助を受けてのイベントを含め、31のイベントを開催。22年度は41のイベント開催を予定している。

 22年7月時点の企業会員数は1社退会があったが、新たに第一生命ホールディングスが入会し、16社。賛助会員は10社。

 県で入会している自治体会員数は6カ所、市町村での入会は71カ所。市町村で入会している自治体会員には、台湾台中市も含まれる。同機構の個人会員組織「ONSEN騎士団」は新たに249人増え、3880人となった。

夏の風物詩「百物語(怪談)」を想起 ホテル雅叙園東京で「和のあかり×百段階段 2022〜光と影・百物語〜」

2022年7月7日(木)配信

草丘の間(テーマ=情念のあかり)

 ホテル雅叙園東京(東京都目黒区)は9月25日(日)まで、館内「百段階段」で「和のあかり×百段階段 2022〜光と影・百物語〜」を行っている。

 各部屋を、アートのような影を映し出す照明演出や放置竹林を再利用したサステナブルな竹あかり、怪談芝居を表現した歌舞伎のあかりなど、さまざまなコンセプトのあかりとオリジナルのサウンドで演出。

 それぞれに、創業200年以上の歴史を誇る伊藤権次郎商店(福岡県八女市)の「妖怪提灯」や、絵巻や浮世絵の伝統的な要素に現代アートを交えた愉快な“モノノ怪”の絵画など夏の風物詩「百物語(怪談)」を想起させる展示を行う。

創業200年以上の歴史を誇る伊藤権次郎商店の「妖怪提灯」

 担当者は「今回初めて『百物語』というストーリーテーマを入れて、あかりと一緒に怪談の要素を楽しめる点がおすすめのポイント。部部屋ごとに展示に合わせたBGMによる音響と照明も合わせ、五感で体感していただきたい展覧会です」と語る。

 また、おすすめの部屋に松竹衣装と歌舞伎座舞台が手掛けた草丘の間を挙げ、「『牡丹灯籠』や『六条御息所』など女性の恋心と怪談交えたしっとりとした部屋。照明も和傘など写真映えするつくりになっているので、ぜひご覧ください」とPRした。

  展覧会に合わせ同ホテルでは、8月 31日まで伊勢型紙や和傘の行灯など、やさしく揺らめく和のあかりに囲まれたコンセプトルームに宿泊できるプランも展開している。1日1室限定で、料金は1室 2人で7万3000円。同企画展の入場券もセットになっている。

日本観光施設協会「会員増強で組織力高める」 幾世代表理事は留任

2022年7月7日(木) 配信

幾世英夫代表理事

 日本観光施設協会(幾世英夫代表理事、123会員)は7月6日(水)、東京都内で2022年度定時総会を開き、任期満了に伴う役員改選では、幾世代表理事の留任を決めた。今年度は厳しい環境のなか、会員増強による組織力アップで発言力を高めていく考えだ。

 コロナ禍で、過去2年間は書面決議だったが、3年ぶりにリアルでの総会となった。

 幾世代表理事は「近い将来インバウンドの受け入れが再開されると、我われの業界はさらに重要な位置づけとなる」との認識を示し、「全国の観光施設が1社でも多く入会していただき、より良い組織づくりに向けて力を高め、前進していきたい」と意気込みを語った。

 今年度は、協会が2013年に名称を変更してから10年近くが経過し、マーケットの変化や世代交代も進んでいることから、旧来の組織運営を抜本的に見直し、IT化も進める。各種課題を抱える他業種とも連携し、国や自治体、メディアにも要望や問題点を伝えていくことを確認した。

柿沼宏明観光産業課長

 総会に先立ち、観光庁観光産業課の柿沼宏明課長が「観光産業の課題と解決の方向性」をテーマに講演した。「観光地が点ではなく、面で観光地経営を行い、しっかりと利益を上げることが重要」と語り、高付加価値化推進事業など補助制度についても会員と意見交換した。