新「いしかり」を披露、東京港でセレモニー

新船「いしかり」船内で
新船「いしかり」船内で

 太平洋フェリーは3月11日、東京港晴海ふ頭で新船「いしかり」の初入港歓迎セレモニーや船内見学会を開いた。

 船内のシアターラウンジ「ミコノス」で開いたセレモニーでは東京都東京港管理事務所の小幡和輝所長と東京ポートガイドの堀池真由美さんから、山田成宏船長、佐藤仁機関長に入港記念楯と花束が贈呈された。渡邊哲郎社長は、定期航路で寄港しない東京港で新船披露できたことの喜びを伝えるとともに、「高速道優遇政策や燃料高など、厳しい経営環境のなかにあるが、モーダルシフト(輸送転換)の担い手として、社会的使命を全うしたい」と就航へ意欲を見せた。

 新船は現在運航している「いしかり」に代わるもので、船名はそのまま引き継いだ。「エーゲ海の輝き」を統一コンセプトに、内装は白と青を基調とした。個室を2倍の147室としたほか、女性専用室も設けた。防振対策も施し、乗り心地も改善した。全長は約200メートル、全幅27メートル、総トン数は約1万6千トン。旅客定員は777人で、トラック184台、乗用車は100台を積める。同社11隻目の船で、05年1月に就航した「きそ」以来、6年ぶりの新船となる。

◇ ◇

【地震で当面欠航に】

 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響で3月31日までの出港便は全便欠航する。同社は4月以降の運航についても未定とし、新規の予約受付は停止している。(3月19現在)

霧島の安全を現地確認、東京・大阪の旅行会社など

白煙だけで穏やかな新燃岳(3月4日撮影)
白煙だけで穏やかな新燃岳(3月4日撮影)

 霧島連山・新燃岳の噴火活動に伴う風評被害などで、宿泊キャンセルや観光客の減少が続く霧島地区の現状を正確に把握してもらおうと、鹿児島県は東京、大阪地区の旅行会社、マスコミ関係者20人を3月4日から2日間の日程で霧島に招き、現地視察と地元観光関係者との情報交換会などを行った。

 今年1月26日に突然噴火した新燃岳は、宮崎県・都城市を中心に降灰などによる被害をもたらしたが、霧島地区では2月1日の空震による一部施設の窓ガラス破損以外は、降灰もほとんど無く、温泉街のホテル・旅館や飲食店などは平常通り営業している。

温泉街は平常
温泉街は平常

 新燃岳も視察当日は、テレビなどで流れる爆発噴火が嘘のように、水蒸気らしき白煙が山頂から昇るだけで、穏やかなようすを見せていた。

 鹿児島空港で合流した一行は、空港近くの酒匠工房GEN「バレル・バレー」で昼食後に霧島温泉へ向かい、まず霧島いわさきホテルを視察。出迎えた福山重人副支配人が館内を案内した。

 敷地内には、薩摩藩家老の小松帯刀が病気療養し、龍馬も訪れた栄之尾(えのお)温泉があり、現在、露天風呂「緑渓湯苑」として営業している。福山さんは「火山灰や空震の被害もない。地元も頑張っており、安心安全な霧島をお客様に伝えていただきたい」と訴えた。

 このあと、新燃岳と高千穂峰を一望する神話の里公園を訪れ、標高700㍍の展望台から、新燃岳を間近に望んだ。直線距離で6㌔という展望台は、立ち入り禁止4㌔圏外で、南を向くと錦江湾と桜島、その先に開聞岳という風景がパノラマで展開する。

 山の変化では高千穂峰山頂が灰色に覆われている程度で、新燃岳は青く澄んだ空に向かって呼吸するように、時折白煙を吐出していた。

 霧島国際ホテルで行われた情報交換会では、地元関係者約40人近くが出席。宿泊キャンセルによるダメージを報告した。霧島市の前田終止市長は「大河ドラマ・龍馬伝のロケ誘致成功や100万人キャンペーンなど商品券を発券して伸びていたが、噴火による風評被害で3万人のキャンセルが発生し、本当に困っている」と窮状を訴え協力を要請。「再生に向けて新燃岳の一日も早い終息を願い、新幹線開業、春秋のシーズンに向けて頑張っていきたい」と決意を述べた。

 なお、霧島市観光協会では3月12日から6月30日まで宿泊、観光個所でスタンプをもらい、抽選で豪華賞品が当たる「かごっま旅スタンプラリー」も実施。3月31日までは体験型の博覧会も開催中だ。

九州新幹線 3月12日全線開業

【新大阪から“直通1番列車”出発、鹿児島中央まで最速3時間45分】

鹿児島に向けて山陽・九州新幹線1番列車が出発(新大阪)
鹿児島に向けて山陽・九州新幹線1番列車が出発(新大阪)

 九州新幹線(鹿児島ルート)が3月12日、全線開通した。新大阪駅からは、鹿児島中央まで直通運転する山陽・九州新幹線「みずほ601号」が、午前6時に多くの報道陣がカメラを向けるなか、ゆっくりとホームを離れた。

 新大阪駅をはじめ新幹線沿線の各駅では出発、到着に合わせた式典が予定されていたが、11日の東北地方太平洋沖地震で甚大な被害が出たことから、すべての式典や記念行事を中止。静かな新幹線全線開業となった。

 列車は最速の「みずほ」が新大阪―熊本を2時間59分、鹿児島中央まで3時間45分で結び、関西圏と九州が一気に近くなる。

石川県で統一商品、KNTと日本旅行がコラボ

3月10日の会見後、KNTの野中雅彦氏(左)と日本旅行の木村陽一氏
3月10日の会見後、
KNTの野中雅彦氏(左)と日本旅行の木村陽一氏

 近畿日本ツーリスト(KNT)と日本旅行は、石川県にスポットを当てた企画商品を共同で造成し、販売する「日本の旅 き・ら・り いしかわ」を展開する。期間は4月1日から9月30日まで。国内旅行2、3位の両社が、価格まで統一した企画商品を直営、提携販売店、ネット販売も一体となって実施するのは初めての試み。

 石川県観光連盟とJR西日本金沢支社も協力し、期間中の送客目標は、両社計で前年同期比10%増の11万人に設定している。

 今回新たに展開するプランは、能登半島最先端の秘境パワースポット「珠洲岬(聖域の岬)」など、個人では行きにくい地域を周遊するバスプランを設定したほか、1泊2食に能登丼など「いしかわランチ」を味わう「1泊3食付プラン」を展開し新たな旅のスタイルを提案する。

 KNT取締役兼執行役員個人旅行事業本部カンパニー長の野中雅彦氏は「赤い風船は今年40周年、メイトは来年40周年を迎える。両社の長年のノウハウを結集して地域観光の宝を見つめ直し、地域を元気にしていきたい」と述べた。

 日本旅行取締役兼常務執行役員営業企画本部副本部長の木村陽一氏は「両社が一体となって展開することで、新たな需要を生み出すことを目指す。一過性ではなく、プロジェクトを成功させ、継続的に実施していきたい」と語った。

 KNT旅連石川支部(79社)の山岸繁樹支部長は「石川に特化した企画で、旅連としては大変ありがたい。大きな期待をしている」。

 日旅連石川支部(70社)の吉田眞啓支部長は「石川県は金沢に代表される歴史・文化、食の魅力があり、能登には温泉の魅力がある。人に優しい石川県のホスピタリティを全面に出して全国の皆さんをお迎えしたい」と述べた。

 両社コラボ企画「地域を元気にするプロジェクト」は石川県を第1弾とし、今後は他地域での展開や、地元旅行会社や異業種とのコラボ企画も視野に入れている。

ANA、東北へ支援金1億円、物資輸送や救援者の渡航協力も

 全日本空輸(ANA)はこのほど、東北地方太平洋沖地震を受け、被災者の救援や被災地の復興のため、1億円の支援を決定。ANAグループでは、役職員による義援金の募集も行っている。

 また、日本政府と地方自治体の要請に応じて、救援物資の無償輸送協力、救援支援者への無償の座席提供を行っている。期間は4月15日まで、問合せ先03-6735-1000(平日の午前9-12時、午後1―5時)。ANAマイレージクラブ会員には、マイル寄付相当額を復興支援の義援金としてANAホームページ(http://www.ana.co.jp)から1000マイルを一口として受付している。

予備費1500万円を被災者へ、日本ホテル協会が総会で決定

 日本ホテル協会(小川矩良会長)は3月17日、東京都港区のホテルオークラ東京で2011年度春季通常総会を開き、今年度予算の予備費1500万円を東北地方太平洋沖地震の被災者への義援金と、被災した会員ホテルへの見舞金にあてることを決めた。
 また、今後は会員ホテルの協力のもと、会員ホテル従業員やホテル利用者を対象に募金活動を行っていく予定。

No.274 東日本大震災 特別紙面 - 復旧に向け、協力体制を

東日本大震災 特別紙面
復旧に向け、協力体制を

 3月11日午後2時46分ごろ、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の地震により、東日本大震災が発生した。震災から1週間が経過しても、被災地との連絡がつかない地域が多くあり、情報収集が困難な状況にある。本紙は18日現在、東北地方エリアの主な宿泊施設の営業状況を調べた。東北運輸局ではホームページでホテル・旅館の営業状況を発表している(16面に掲載)。業界内では、一日も早い復旧に向け義援金による支援や、協力体制づくりが始まっている。

【本紙取材班】

【被災者受入れの動きも】

 観光庁は17日現在、登録ホテル・旅館について「重大な人的被害の報告は入っていない」と発表。14日時点で日本旅行業協会(JATA)の報告によると、震災地域を訪れていた旅行者は約4100人。うち、安否確認済みが約1600人、安否確認中が約2500人と公表したが、17日現在、安否確認中は約60人。

 訪日外国人旅行者については、日本政府観光局(JNTO)がインフォメーションセンター(TIC)で電話問い合わせに24時間対応している。

 福島県・穴原温泉の「匠のこころ吉川屋」では、地震発生後、水道管に亀裂が生じコンベンションホールが水浸しになった。電気・水道・ガスが使えなくなり、浴場のタイルが剥がれ落ちるなどの被害があった。当日は200人ほどが宿泊していたが、フロント職員が宿泊客を安全に誘導。翌12日には個人客を中心にバスを手配し東京まで無事に送ったという。吉川屋は4月1日から営業再開する予定だ。

 宮城県・松島海岸の松島ホテル大観荘は、ガラスの割れなど軽微な被害があったが、電気は3月15日の夜に復旧した。ガスも復旧済みで水道は4月3日ごろの復旧予定。電話、FAX、インターネットは3月20日に復旧、4月中旬の営業再開に向け準備中という。

 自治体や温泉地では、群馬県みなかみ町のように被災者を受け入れる動きも出てきている。

被災地の主な宿の営業状況

 

※ 詳細は本紙1414号または日経テレコン21でお読みいただけます。

【宿泊・観光施設様】震災関連 状況・被災者受入・融資関連リンク(3/29更新)

旅館・ホテル、観光・食事、土産物施設のみなさまへ。

東日本大震災に関連し、周辺の震災状況把握や被災者受け入れ、融資、雇用に関する情報リンクを下にまとめました。必要に応じてご参照ください。

被災状況

■東北地方太平洋沖地震に伴う東北運輸局管内の公共交通機関の運行(航)状況、主なホテル・旅館の状況について(東北運輸局)
wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/saigai110311.htm

宿泊施設の被災者受け入れ

■【観光庁プレスリリース(平成23年3月25日)】宿泊施設における県域を越えた被災者の受入体制について
www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000092.html
観光庁は厚生労働省等の関係省庁と連携し、旅館・ホテルにおいて県境を越えた被災者の受入れを支援することとしました。具体的には、
[1] 災害救助法の制度を活用し、観光庁において、関係団体や自治体の協力を得つつ受入先となる旅館・ホテルを確保することにより、被災自治体が避難所を他県に求める際の助けとなるよう尽力します。この際、移動手段の確保についても支援します。
[2] 被災された方々に宿泊及び移動に関する負担は生じません。避難所を要請した県が負担した上で、国が必要な財政措置を講じます。

■各県、旅行業者等による被災者向け支援に関する情報(観光庁)
www.mlit.go.jp/kankocho/topics06_000025.html
こちらは上記の災害救助法に基づく支援措置ではなく、善意の情報提供をまとめたもの。具体的な宿泊施設の利用条件等は申込者が確認する。

融資関連

■【政府系金融機関の融資についてのお問い合わせ】平成23年東北地方太平洋沖地震を受け、日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、商工組合中央金庫において、融資についての相談窓口を設置しています。(財務省)
www.mof.go.jp/20110311tohoku_jisin/sk230311.htm

■【中小企業者の方へ】災害復旧貸付の実施、特別相談窓口の設置など被災された中小企業の皆様に対し、必要な情報を提供します。(中小企業庁)
www.chusho.meti.go.jp/earthquake2011/index.html

雇用関係

■平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A等(厚生労働省)
www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016exl.html

 

遅れのお詫び

お知らせ

 東日本大震災の影響で、印刷所とのスケジュール変更、道路事情による配送の遅れなどによって、本紙1414号(3月21日付)のお届けが一部地域で大幅に遅れることが予想されます。お詫び申し上げます。