初のインバウンド商談会、送客15社が参加

タイラー委員長
タイラー委員長

 長野県旅館ホテル組合会青年部(宮坂好俊部長)は6月25日、長野県松本市内で同部のインバウンド委員会(タイラー・リンチ委員長)を中心に、「インバウンドで売り上げアップ!」商談会を開いた。初めての試みだが、楽天トラベル・インバウンドやExpedia.com、Booking.comなどインバウンド送客業者15社が参加。親会を含め、会員も多数集まった。

 

 宮坂部長は「昨年は知事のトップセールスへの同行やインバウンド研修会を行った。今期はそれに続く形で、インバウンド委員会を立ち上げた。セールスだけではなく、実際にお客様を呼び込める実りのある会にしていきたい。長野県の外国人宿泊者数は今年37万人を見込んでいるが、我われの取り組みで倍以上の80万人を目指していきたい」と意気込みを語った。

 商談会の前にはインバウンド委員会のタイラー委員長が講演会「欧米人が求めるおもてなし」を行ったほか、メディアネット委員会がスマートフォンに関する研究発表などを行った。

商談会のようす
商談会のようす

 このなかで、タイラー委員長は欧米人が日本に抱くイメージに大きく影響するのは「SAYURI」や「ラストサムライ」などのハリウッド映画だとし、「欧米にない内面的な奥深さに憧れる。米国で発売される日本のガイドブックの表紙の多くは芸者」と紹介。ニューヨークでは茶道がストレス発散の方法として人気を集めていることや、松本市内の観光では松本城や日本浮世絵博物館が喜ばれることも語った。

 一方、おもてなしの部分では「日本のインバウンド向けの宿では、欧米人に対して『何もサービスをしないのがおもてなし』といわれることもあるが、それは少し違う。荷物を自分で運ぶのは『自分より小さいおじさんに荷物を運ばせるのはかわいそう』ぐらいの気持ち」と笑いを混ぜながら話し、「友達に提供するようなフレンドリーサービスが喜ばれる。日本に来て、日本の普通の生活に触れ合いたいと思っている」と強調した。

 また、外国人客が何に興味を持って、どういうルートで来るのか知るために有効な手段として、「ヤフージャパンではなく、現地のヤフーを開いてそこから検索してみれば、どういったものを参考にしているのか分かる」とアドバイスした。

 商談会は各社のテーブルに会員が集まり、会員が移動するかたちで3回に分けて実施。その後は個別相談の時間も設け、熱心に商談を行った。

佐藤義正氏ら9人表彰、第31回温泉関係功労者

9人が表彰を受ける。中央は横光克彦環境副大臣
9人が表彰を受ける。中央は横光克彦環境副大臣

 環境省は7月10日、第31回温泉関係功労者表彰を行い、日本温泉協会常務理事で国際観光旅館連盟会長の佐藤義正氏ら9人が表彰された。

 横光克彦環境副大臣は「日本は世界屈指の温泉国。延べ温泉宿泊客は1億2千万人を超え、国民全員が年に1回は温泉地を訪れ宿泊している計算になる。温泉は日本文化の重要な要素であり、自然資源であり、観光資源でもある。温泉の魅力を充分に生かしながら、後世に残していくことが大切。また、震災以降は再生可能エネルギーとしての期待もあり、温泉が果たす役割がますます重要になっている」と語った。

 受賞した佐藤氏は日本温泉協会で97年から温泉資源の保護と適正利用に関する広報普及活動の推進に努めたことや、95年から13年間岩手県自然環境保全審議会と環境審議会の温泉部会委員、部会長を歴任し、温泉資源の保護と温泉行政の推進に貢献したことが高く評価された。佐藤氏は本紙の取材に対し「表彰は予想していなかったので驚いたが、震災後に避難者を受入れ、一生懸命対応したことなども評価されたのかなと思う。岩手県では温泉部会長を長年務め、皆で自然環境保護に取り組んできた」と振り返った。

 同表彰は温泉の保護や温泉の採取等にともない発生する可燃性天然ガスによる災害の防止、温泉の適正利用に関し、とくに顕著な功績のあった人を讃えるために、1982年から環境大臣表彰を行っている。

 表彰者は次の各氏。

 岡村眞(高知大学理学部応用理学科災害科学講座教授、高知県環境審議会温泉部会委員)▽加藤尚之(東邦大学医学部准教授)▽葛谷昌之(岐阜薬科大学名誉教授、中部学院大学短期大学部副学長人間福祉学部教授、岐阜県自然環境保全審議会会長兼温泉部会長)▽齊藤勝彌(熊本県温泉協会顧問、熊本県温泉協会山鹿植木支部顧問)▽佐藤義正(日本温泉協会常務理事、ホテル大観社長、つなぎ温泉観光協会会長、国際観光旅館連盟会長、日本観光振興協会副会長、岩手県観光協会理事長)▽野田徹郎(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門顧問、茨城県自然環境保全審議会委員、日本温泉科学会評議員、理事、将来委員会委員長)▽波田重熙(神戸女子大学学長、兵庫県環境審議会委員)▽神奈川県温泉地学研究所(所長 吉田明夫)▽長野市開発公社(理事長 鷲澤正一)

ピンクリボンのお宿ネットワーク発足、7月10日設立総会開く

設立発起人で会長に就任した畠ひで子・吉川屋女将
設立発起人で会長に就任した畠ひで子・吉川屋女将

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(設立発起人代表=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将)が7月10日、東京都内で設立総会を開き、正式に発足した。乳がんにより、毎年約5万人の女性が胸の切除や温存手術を受け、8割以上の方が回復されている一方で、そのことを気にして温泉旅行を諦めている人にも旅をしてもらおうと、全国各地の宿のネットワークづくりが始まった。全国500の主要病院と連携し、厚生労働省や国土交通省・観光庁といった行政、関連企業、団体などへも輪が広がりつつある。

 設立総会までに参画した宿(正会員)は、42施設。湯谷温泉おかみ会などの団体会員や、企業など賛助会員を加えると、50会員を超える。当面は全国100施設のネットワークを目指す。

三日月大造氏
三日月大造氏

 総会では、同ネットワークの設立発起人代表の匠のこころ吉川屋女将の畠ひで子氏が会長に就任し、副会長には旅行新聞新社代表取締役の石井貞徳氏、池山メディカルジャパン代表取締役の池山紀之氏のほか、夕映えの宿汐美荘代表取締役の浅野謙一氏、ふもと旅館女将の松﨑久美子氏、斎藤ホテル支配人の中尾徹也氏、愛隣館代表取締役専務の清水隆太郎氏が就任。監事は観光ビジネスコンサツタンツ代表取締役の西川丈次氏、ホテル秀水園代表取締役の湯通堂温氏が就任。事務局は「Tourism For All」をテーマにすべての人が等しく旅を楽しめる環境づくりに取り組む旅行新聞新社内に置き、有島誠取締役関西支社長が事務局長に就任した。

 主な事業として、会員相互の交流や意見交換、全国の病院など広く知ってもらうための冊子発行、Webでの発信、啓蒙事業としてセミナーや勉強会なども行う予定。

 

西村智奈美氏
西村智奈美氏

 総会には、衆議院議員で元国土交通副大臣の三日月大造氏、衆議院議員・厚生労働副大臣の西村智奈美氏、厚生労働省健康局がん対策・健康増進課主査の吉本雅世氏、国際観光旅館連盟専務理事の小関政男氏、市立四日市病院形成外科部長の武石明精氏が来賓として出席し、会の発展を願い、それぞれの立場から祝辞を述べた。総会終了後には、乳がん患者の立場から、CSRプロジェクト理事の桜井なおみさんが講演。懇親会も開いた。

 問い合わせ=事務局(旅行新聞新社) 電話:03(3834)2718。

 
 
 
 
 

武石明精氏

吉本雅世氏

小関政男氏

 

 

 

 

 

 

 

 

≪正会員、団体会員、賛助会員≫

 12年7月8日現在の正会員、団体会員、賛助会員は次の通り。

 【正会員】

結びの宿 愛隣館(岩手県新鉛温泉)▽ホテル森の風鶯宿(岩手県鶯宿温泉)▽鷹泉閣岩松旅館(宮城県作並温泉)▽名湯秘湯うなぎ湯の宿 琢琇(宮城県鳴子温泉)▽日本の宿古窯(山形県かみのやま温泉)▽ホテル八乙女(山形県由良温泉)▽仙渓園 月岡ホテル(山形県かみのやま温泉)▽匠のこころ吉川屋(福島県穴原温泉)▽五浦観光ホテル(茨城県五浦温泉)▽あさや(栃木県鬼怒川温泉)▽源泉湯の宿松乃井(群馬県水上温泉)▽湯の宿 山ばと(群馬県四万温泉)▽ホテル松本楼(群馬県伊香保温泉)▽鴨川ヒルズリゾートホテル(千葉県小湊温泉)▽水が織りなす越後の宿 ホテル双葉(新潟県越後湯沢温泉)▽夕映えの宿汐美荘(新潟県瀬波温泉)▽加賀屋(石川県和倉温泉)▽若草の宿丸栄(山梨県富士河口湖温泉郷)▽富士野屋夕亭(山梨県石和温泉)▽ユルイの宿 恵山(長野県昼神温泉)▽ホテル亀屋本店(長野県戸倉上山田温泉)▽RAKO華乃井ホテル(長野県上諏訪温泉)▽斎藤ホテル(長野県鹿教湯温泉)▽湯本旅館(長野県渋温泉)▽明神館(長野県扉温泉)▽水明館(岐阜県下呂温泉)▽ホテルくさかべアルメリア(岐阜県下呂温泉)▽吉泉館(岐阜県下呂温泉)▽熱川プリンスホテル(静岡県熱川温泉)▽サン浦島悠季の里(三重県本浦温泉)▽風待ちの湯 福寿荘(三重県磯部わたかの温泉)▽淡路インターナショナルホテル ザ・サンプラザ(兵庫県洲本温泉)▽三朝館(鳥取県三朝温泉)▽皆生つるや(鳥取県皆生温泉)▽八景(岡山県湯原温泉)▽湯元ことひら温泉琴参閣(香川県こんぴら温泉郷)▽大正浪漫の宿 京都屋(佐賀県武雄温泉)▽東園(長崎県雲仙温泉)▽阿蘇の司ビラパークホテル(熊本県阿蘇温泉)▽ふもと旅館(熊本県黒川温泉)▽ホテル秀水園(鹿児島県指宿温泉)

 【団体会員】

湯谷温泉おかみ会(愛知県湯谷温泉)

 【正会員(企業)】

旅行新聞新社(東京都)▽サンプラネット(東京都)▽一般社団法人国際・風水協会(東京都)▽QOL総合研究所(東京都)▽池山メディカルジャパン(愛知県)▽観光ビジネスコンサルタンツ(大阪府)

 【賛助会員】

ミサワホーム(東京都)▽五十川裕高〈東京海上日動あんしん生命保険〉(愛知県)

旅行新聞新社・石井貞徳社長が
乾杯のあいさつ

池山紀之氏

桜井なおみさん

No.316 天空の森 - 地域経済の循環を創り出せ

天空の森
地域経済の循環を創り出せ

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している旅館がある。なぜ支持されるのか。その理由を探っていく「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第5弾は、鹿児島県霧島市の「天空の森」「忘れの里雅叙苑」「湯治の宿田島本館」のご主人・田島健夫氏が登場。産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏と、「理想的な宿づくり」へのプロセスや、地域文化産業である旅館のあり方など、観光産業の本質に迫る対談となった(11面に続く)。

【増田 剛】

 

≪「いい旅館にしよう!」プロジェクト≫ シリーズ(5) 
天空の森

【対談者】

田島 健夫(たじま・たてお)氏
天空の森 主人
×
内藤 耕(ないとう・こう)氏
産業技総合研究所サービス工学研究センター副研究センター長(工学博士)

 

■田島:終戦の年、昭和20年生まれの私の世代は高度経済成長期になると、入学試験も就職試験も定員割れで、受験勉強もなにもしなかったですね。私は次男でしたから、本来宿を継ぐ立場にはありませんでした。中学1年生のときに父親が亡くなり、私自身は寿司屋の小僧になるつもりでしたが、母に大学まで行かせてもらいました…。

 

※ 詳細は本紙1469号または日経テレコン21でお読みいただけます。

ピンクリボンのお宿ネットワーク発足 ― 高い社会的関心に驚き(7/21付)

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」が7月10日、設立された。会長に就任した福島県・穴原温泉の畠ひで子氏(匠のこころ吉川屋女将)は、「高齢者や障害を持たれた方などさまざまなお客様を受け入れる宿にとってピンクリボンのお客様も一つのお客様。誰もが旅を楽しめる環境づくりに賛同される全国の宿泊施設や観光関係団体、企業さんとともに、全国500の主要病院、看護師会、患者さん団体とネットワークをつくりましょう」とあいさつした。実際、規模の大小に関わらず、岩手県から鹿児島県まで全国の40軒を超える旅館が参画してくれた。設立総会後にも一般紙に大きく取り上げられた影響もあり、事務局を務める旅行新聞新社には一時、一般の方々からの問い合わせや、参加方法を知りたいという宿泊施設からの電話が「鳴りっぱなし」という状態になった。これほどまでに社会的な関心が高いとは思わなかった。

 設立総会には、乳がん患者を代表して、CSRプロジェクト理事の桜井なおみさんが講演した。桜井さんは「温泉の脱衣所では、胸を隠せる壁際を選びます。洗い場では目の前に鏡があると後ろから見られているのではないかと気にしてしまうので、仕切り板などがあるところはすごく助かります。入浴着もありますが、私たちは、自ら(乳がん患者だと)手を挙げているようでなかなか着れないのです。それよりもむしろ、脱衣所にタオルが積み重ねてあり、『体を洗う時、拭く時にご自由にお使い下さい』とさりげなくメッセージが添えてあるだけで私たち十分なのです」と話した。講演後には会場の女将さんや経営者からさまざまな質問が桜井さんに寄せられた。

 乳房再建手術の第一人者といわれる市立四日市病院形成外科部長の武石明精氏も設立総会に出席した。武石氏は「私たちも一生懸命にやっていますが、年間約5万人の患者さんのうち、乳房再建手術を受けられる患者はせいぜい2千人。乳がん患者さんの生存率は80―90%と非常に高く、何十万人の方が乳房がないままです。乳房を再建した人だけが温泉に行ければいいのかという問題ではないし、病気だけ直せばいいというのは一昔前の医療。このネットワークによって、乳房再建ができない方々も温泉に行けるようになってほしい」という言葉が胸に刺さった。

(編集長・増田 剛) 

今年度は22地域目指す、ジャパン・オンパク総会

ジャパン・オンパク総会にて記念撮影
ジャパン・オンパク総会にて記念撮影

 一般社団法人ジャパン・オンパク(鶴田浩一郎代表理事)は5月30日、東京都内で2012年度ジャパン・オンパク総会を開いた。

 11年度の事業報告では、「構成する会員数は7地域増加し、全体で17地域となった。社団が運営を支援している全国のオンパク実施地域は5地域増加して全体で35地域となった。構成する17地域では、これまでに4522種のプログラムが企画・運営され、地域の資源・人の発掘を行った。そのプログラムには延べ9万2516人が参加し、プログラムの定員稼働率は62・2%となった。2011年度は1210種のプログラムが企画・運営され、2万2150人が参加し、定員稼働率は55%だった」と発表した。

 役員改選では、NPO法人ハットウ・オンパクの鶴田浩一郎氏が代表理事に再任したほか、川北秀人理事、里見喜生理事、小松俊昭監事が再任、牧田正浩監事が新任で承認された。

 新体制のもと、社団の運営力・支援力の向上とネットワーク強化をはかる目的で、理事会を補佐する機関として3幹事会が新設された。幹事会は(1)普及拡大部会(北澤勝己幹事長兼部会長)(2)育成支援部会(末田加良子部会長)(3)基盤強化部会(市来広一郎部会長)で構成される。

 新年度の事業計画は、「構成する会員数を5地域増やし全体で22地域を目標とする。オンパク手法の導入地域は前年度末の35地域から7地域増やして42地域を目標とする」とした。研修事業に関しては研修助成制度を新設し、全国の4地域での初級研修の開催を目指す。会員を対象としたマネジメント研修は7月に岡山県総社市、来年2月に静岡県熱海市で開催する。オンパク立ち上げの支援は、「企画運営支援として4地域、立ち上げ前の研修事業として2地域、講演などの事業を5地域程度目標とする」と発表された。

 また、システム事業に関しては「旧システムから新システム(オンパククラウドASPシステム)への移管を進め、システムは全体の利用地域を現行の10地域から5地域増やして、新旧全体で15地域を目標」とする。

 なお来年度のジャパン・オンパク総会も5月末に東京都内で開催する予定という。

ジャパン・オンパク 会員リスト(2012年5月末現在)

とうきょうスカイツリー駅でアクセスの良さをPR(日光市女将の会)

26人の女将らが夏の日光の魅力をPRした
26人の女将らが夏の日光の魅力をPRした

 日光観光協会と東武鉄道は6月22日、とうきょうスカイツリー駅(東京都墨田区)で観光PRキャンペーンを行った。東京スカイツリー開業から1カ月を迎えたこの日、改めて東京スカイツリーや浅草から日光市へのアクセスの良さをアピールすることを目的に、日光市女将の会から女将ら26人を含む約40人が参加。同駅を利用する観光客らへパンフレットやうちわを配り、夏の行楽シーズンに向け魅力をPRした。

 日光市女将の会は日光・鬼怒川をはじめ川治・奥日光湯元・湯西川・今市のホテル旅館の女将らにより構成される。同会の臼井静枝会長(鬼怒川温泉「花の宿 松や」女将)は「スカイツリー観光と合わせて、木々の緑や花々が美しい季節を迎える日光市へお越しいただきたい。そして女将一同、皆様の思い出づくりのお手伝いができれば」と意気込みを語った。

 また日光地区観光協会連合会の新井俊一会長は、鬼怒川・川治の「龍王祭」(7月20―22日)や湯西川の「竹の宵まつり」(8月5日まで)など夏のイベントや、スカイツリー開業にちなみ特別公開している日光東照宮五重塔など見どころを紹介した。「奥日光は夏の涼しさも自慢のひとつ。この夏は魅力溢れるエリアが集まる日光市に、東京スカイツリーとともにぜひ足を運んでいただきたい」とアピールした。

コース内で乗降車自由、スカイホップバス運行開始

富田浩安社長
富田浩安社長

 日の丸自動車興業(東京都文京区)は、6月30日から2階建てオープンデッキの「スカイホップバス」の運行を開始した。コース内の停留所を自由に乗り降りできるのが特徴だ。これまではバスで走りながら景色を楽しむのみの周遊型観光バスであったが、乗客の「実際に降りて散策したい」との要望に答えるかたちで「スカイホップバス」が誕生した。「ホップ」は乗り降り自由を意味するHop on Hop offに由来する。同社は年間利用者を6万人と見込んでいる。

 運行に先立ち開かれた会見では、来賓で登場した神谷俊広国土交通省関東運輸局長が「国は観光立国を成長の柱の一つにしている。スカイホップバスは意義深いものだ。首都東京の名所を乗り継いで見れることと4カ国語に対応しているので海外客にもいい」とあいさつした。

 富田浩安社長は「スカイバスの都市観光で東京にもっと人が訪れてくれる。主要都市では観光に欠かせないものになっている。自由に楽しく快適に東京の観光を楽しんでもらいたい」と運行開始の動機を話した。コースは3つ、「六本木・東京タワーコース」、「浅草・東京スカイツリーコース」、「お台場コース」が運行している。「乗り継げばスカイツリー、六本木、東京タワーにも行ける。丸の内に行けばどこにも行ける」と同社長は利便性を強調する。

東京スカイツリーも間近に
東京スカイツリーも間近に

 バスは屋根のない2階建てオープンデッキバス、幌付きオープンデッキバス、屋根がガラス張りになっている新型のスケルトンタイプバスの3タイプで運行する。雨に濡れたくない人でも安心して乗車できる。

 3コースターミナルは丸の内三菱ビルで、3コースのどれかに乗り換えられるのはこのターミナルのみになる。東京タワー停留所は六本木・東京タワーコースとお台場コースが乗り換えられる。浅草・東京スカイツリーコースの停留所は、丸の内三菱ビル、日本橋三井記念館、秋葉原(末広町)、上野駅前(9月予定)、東本願寺前、とうきょうスカイツリー駅前、駒形、上野松坂屋など。

 六本木・東京タワーコースは、丸の内三菱ビル、ホテルニューオータニ、東京ミッドタウン、六本木ヒルズ、東京タワー。

 お台場コースは、東京タワー、フジテレビ、アクアシティお台場、ヴィーナスフォート、東京ベイ有明ワシントンホテル、豊洲(ららぽーと豊洲)、築地銀座。バスガイドによる観光案内も付く。各コースとも1時間おきの運行となる。スカイホップバス公式ガイドブック(オフィスR―reco制作)が名所なども網羅している。

 料金は時間制を採用し、1日券(1800円・子供900円)と2日券(2500円・子供1200円)をそろえる。たとえば夕方からの利用開始時間であれば翌日にまたいで使用できるのが特徴だ。午前10時から午後8時まで運行する。

 問い合わせ=電話:03(3215)0008。

知ってもらうことが、環境保全の第一歩

小笠原村観光局主任 根岸 康弘氏
小笠原村観光局
主任 根岸 康弘氏

 小笠原諸島が昨年、ユネスコ世界自然遺産に登録されてから1年が経った。世界遺産登録後に出てくるのが、屋久島などに代表される、観光客急増による環境破壊の問題だ。観光振興と自然環境保護、一見相反する2つの取り組みのバランスをどう取るべきか。登録から1年を経た小笠原諸島の観光の現状と自然環境保全の取り組みを、小笠原村観光局の根岸康弘主任にうかがった。

【伊集院 悟】

≪自主ルールで自然環境の保全≫

 世界遺産登録前の小笠原は、観光客数が年1万2、3千人くらいで、若者層やリピーターなどが多く、ダイビングやホエールウォッチングなど目的性の高い人がほとんどでした。

 自然環境の保全については、世界自然遺産登録を目指す前からすでに意識を高く持ち実跡しており、幹はできていたので、登録前後に慌てることはなかったです。エコツーリズムという言葉がまだなかった1988年のホエールウォッチング開始時から、持続可能な利用に取り組みました。ホエールウォッチングに関しては、国内での統一ルールなどはないので、野生のクジラにストレスを与えないように、一度にアプローチできる船の数や、船がクジラに近づける距離を制限するなど、自主ルールを決めています。

 固有種を守るために、山へ入る際には外来種の種子や動物を持ちこまないよう靴底洗浄を徹底しています。また、登録前後から、島民の意識もそれまで以上に非常に高くなっています。小笠原は移住者が多い島。島を気に入って移住してきて、後世にもこの宝を残したいという思いが強い。ビーチなどは、島民による自主的な活動によって常にキレイに保たれています。

 登録後は、定期船での観光客はこれまでの1・7倍。400―500人乗れるクルーズ船での入島も含めると2倍ぐらいになります。閑散期に増えたことや、クルーズ船客はあまり森へ深入りしないことから、心配される自然破壊は起きていません。小笠原の場合は、他の世界遺産地と違い、ボトルネックが細い。入島は基本的には6日に1便の定期船によるもので、今後も便数が増える予定はないので、観光客数は物理的に絞られてきます。

 また、入島方法も船からだけなので、管理がしやすい。今では靴底洗浄を入島、入林時だけでなく、竹芝桟橋の乗船時点で行うなど、より徹底させています。

 登録後はトレッキング目的の観光客も増えました。冬のシーズンは日本列島の多くの山は閉山しますが、小笠原はトレッキングに最も適した季節なので、それを目的とした方達が小笠原に来られています。通常、トレッキングシューズは何足も持っているものではないので、前の週に別の山に登られた方が、その山の種子などを靴底につけたまま小笠原に来られることもあります。

 環境保全において一番重要なことは、観光客に取り組みを知ってもらうことです。観光客の協力なしには自然環境の保全はできません。協力してもらうために、取り組みの意義を意識してもらえるよう、靴底洗浄などを実施しています。

≪観光客の質が変化、旅行会社へ丁寧なレクチャーを≫

 登録後の観光客の動向は、量の増加にくわえ、質の変化も見られます。それまでのダイビングやホエールウォッチング目的のお客様に加え、中高年のトレッキング客や、小笠原に来るというよりは「世界遺産の島」に来るという物見遊山的な添乗員つきのツアーが増えました。これによるミスマッチが起きているのが現在の課題です。

 添乗員つきのツアーはこれまでほとんどなかったので、添乗員の方も小笠原のことをよく知りません。また、トレッキングのお客様は「○○山に登る」などある程度行程や山の特徴を頭に入れて来られるので、ギャップやミスマッチが起きにくいのですが、物見遊山的なお客様の場合は、小笠原諸島がどういう所なのかということを知らずに来られる場合が多いです。島に来た時点で半分目的を達成し、初めて観光協会の窓をたたき、「小笠原では何ができますか」と尋ねられる方もいらっしゃるようです。

 とくに多いのが、「小笠原=南の島=リゾート」という思い込み。リゾートをイメージして来られるお客様も多いですが、実際の小笠原はリゾートとはかけ離れています。父島の南西にある「南島」という無人島は絵的にキレイなので、多くのメディアで使われますが、写真や映像は一部を映しているだけなので、誤解されやすいです。多くのお客様が抱くイメージは「大きな遊覧船で行って桟橋に降りる」というもので、ハイヒールを履いた方や杖をついた方が来られたりもします。しかし、南島の現実は、桟橋などの人工物は一切なく、10人乗りくらいの小さいボートで近づき、舳先から尖った岩場に飛び移り、そのまま3㍍ほどの岩壁をよじ登らないといけません。残念ながら、杖をついた方やハイヒールの方では難しいのです。

 これらの情報は、旅行会社やパンフレット、観光協会などでも案内しているのですが、お客様の意識には残らない。そういったお客様が小笠原に来られてからイメージと現実とのギャップにガッカリされるのは、迎える私達も非常に残念です。このミスマッチを無くすため、マスコミに向けたPRよりも、お客様一人ひとりへの丁寧な説明はもちろん、旅行会社のツアー造成者やカウンター業務者、添乗員などへのレクチャーに力を入れています。「小笠原はリゾートじゃない」「南島ツアーは比較的ハード」「自分の足で歩かないといけない」ということを理解してもらい、ギャップを埋めるよう努めています。

≪旅館のサービスなど受け入れ体制の充実も≫

 今後は、今実施している自然環境保全への取り組みを一層強化していくことと、その取り組みを知ってもらう活動により力を入れていきたいです。また、多様なニーズに対応できる受け入れ体制を作ることも考えています。宿のスタイルは、今までは、風呂・トイレ共同の相部屋が中心でしたが、これからは、風呂・トイレ付個室や、お客様が自由に組立てられる食事サービスの提供なども必要かもしれません。さらに、現在の小笠原観光は「歩く、動く」などのアクティビティ中心ですが、中高年層向けにあまり体力を使わずに周遊できるライトアクティビティも必要かもしれない。小笠原らしさはきちんと残しつつ、多様なニーズにもある程度応えられるよう、選択肢を増やしていければと考えています。

阿蘇ダイエットプログラム、標高差利用の運動、美味しく食べて痩せる

標高差利用の運動プログラム
標高差利用の運動プログラム

 熊本県阿蘇市の阿蘇温泉観光旅館協同組合が、阿蘇の標高差や温泉を活かしたダイエットプログラムを開発。今年度から本格的な商品化に向けて動き出した。

 事業は経済産業省の地域資源活用促進法の認定・支援を受け、今年度から4カ年で、モニターツアー実施や健康コーディネーター、インストラクターの養成、専用予約サイトの開設、情報発信、大手企業健保組合や旅行会社などへの販路開拓などを進める。

 開発したのは「阿蘇高原滞在型ダイエットプログラム」で、25軒の旅館が加盟する旅館協同組合が主体となって取り組む。地域一体の本格的なダイエットプログラムとしては、全国初という。

 プログラムは2010年から、7軒の旅館・ホテルが中心になり2泊3日のダイエットプログラム開発に着手。その実効性を確認して、今回組合全体の本格事業として乗り出した。プログラムの特徴は5つ。最大の売りが「血糖コントロール理論」に基づいた「楽しく痩せて、美味しく痩せる」ダイエットプログラムと、500―1500メートルの標高差を活かした運動プログラム。

食事のカロリー制限はなし
食事のカロリー制限はなし

 血糖コンロール理論は、日本ダイエット協会会長で慶応大学講師の戸田晴実氏が提唱。糖質量を調整して、タンパク質と繊維質を多く摂取する。炭水化物の含有量を調整し、血液中の糖分濃度を抑えるという、食物エネルギーではない、血糖値を基準にした理論。

 一般的なダイエット法と比べ、糖質をコントロールした食事内容になるため、カロリー制限もなく、美味しいものを食べながら痩せられる。食事制限のストレスが少ないのが大きな特徴だ。

 もう1つのポイントは、標高差利用の運動プログラム。東海大学スポーツ医学研究所が発表したデータでは、1時間歩いたエネルギー消費量が平地の33キロカロリーに対し、1500メートル高地では39キロカロリーと18%も増加。脂肪推定消費量も21キロカロリーから27キロカロリーと28%増加するという。

 阿蘇では旭化成などの実業団や大学・高校・中学の陸上チームが合宿に毎年訪れるなど、すでにその高地トレーニング成果は実証されている。

 旅館ホテルが集中する内牧温泉街の標高は500メートル。外輪山の展望所・大観峰が1千メートル、中岳火口は1500メートルで標高差利用の運動には最適地といえ、高地運動と血糖コントロールの相乗効果で、短期間での体質改善効果も期待できる。

 さらに阿蘇の温泉はリチウムを含み、これがストレス解消に効果があるという。健康プログラムの指導やアドバイスを行う専門スタッフも配置して、強力にサポートする。

 プログラムは2泊3日が基本だが、4泊5日も予定。糖質量をコントロールした食事と、標高差を利用してのゴルフや乗馬、クロスカントリー、ウォーキング、トレッキングなどの運動メニューを実践し、温泉療法などのプログラムをこなす。

 過去に実施のモニターでは参加者の体重が、実施後平均2キロ減少する結果も出ている。

 主要ターゲットは20―50代の女性。ある調査ではこのうち7割以上がダイエットに高い関心を持つといわれ、市場規模は1兆6600億円以上と推計される。さらに2400万人以上といわれるメタボ予備軍も市場と見込む。

 料金は2泊3日が4万9800円、4泊5日は6万1800円を予定する。売り上げは3年後に2千万円、4年後に倍を目指す。