「ラビスタ熱海テラス」が3月31日に開業 共立メンテナンス

2026年4月1日(水) 配信

ホテル外観

 共立メンテナンス(中村幸治社長、東京都千代田区)は3月31日(火)、静岡県熱海市に大型リゾートホテル「ラビスタ熱海テラス」(静岡県熱海市東海岸町8―19)を開業した。3月5日(木)のプレオープンを経て、本格始動した。

 同ホテルは東京駅から新幹線で約40分の熱海駅から、徒歩約10分の熱海サンビーチ前に建つ。コンセプトは「眺望という名のホテル」。熱海特有の高台・傾斜地の地形を生かし、館内のあらゆる場所から相模湾を一望できる「熱海の特等席」として建設された。

 同社は開発の背景について、熱海は「昭和レトロ」と「現代」が融合した観光地として幅広い世代から再評価され、“上質なリゾート地”として街全体が変化していくなか、高付加価値型ホテルの需要が高まっていると確信。「熱海の新たなランドマークとなるべくオープンした」と語った。

展望露天風呂

 客室は上層階の露天風呂付など多種多様なタイプを用意し、国内外の幅広い層をターゲットにする。客室数は全239室。温泉は、湯浴み着を着用して男女一緒に絶景を楽しめる「展望露天風呂」や予約不要・24時間無料で利用できる4つの貸切風呂などを完備し、湯めぐりが楽しめる。

 食事は「バイキング」と「和会席」の2種を用意。旅の目的に合わせて食事を選べる多様性を提供する。また、無料サービスで共立リゾート名物の醤油ラーメン「夜鳴きそば」も味わえる。

 今後同ホテルは、従来の温泉街のイメージを守りながら、新しいリゾートの風を感じられる施設を目指す。「国内外のあらゆる世代のお客様に、自由で上質な滞在体験を提供し、再開発が加速する熱海のさらなる観光発展と地域活性化に貢献していく」と意気込む。

HIS、大阪・夢洲でのIRや宇宙事業の専門部署を新設 事業多角化の一環で

2026年4月1日(水) 配信 

 エイチ・アイ・エス(HIS、澤田秀太社長)は4月1日(水)付で、2030年秋に予定されている大阪・夢洲でのIR開業を見据え、観光振興や地域社会への経済貢献を目的とした「IR事業共創推進室」と、宇宙ビジネス領域における新規事業の企画・推進を担う「宇宙事業強化推進室」を立ち上げた。既存の旅行事業の枠を超えた多角的な事業創造に取り組む一環として、発足を決めた。

 このうち、IR事業共創推進室は取締役会直下の組織として、大阪・関西万博の運営経験や海外ネットワークを活用し、世界中から集客した来訪者を日本各地へ送り出す仕組みの構築を支援し、滞在型観光モデルの確立に寄与する。さらに、ギャンブル依存症対策や地域共生など、海外の先行事例や最新テクノロジーを調査し、持続可能な運営の在り方を提案していく。

 将来的には、事業会社や合弁会社の立ち上げを視野に入れ、積極的な投資やM&Aを検討。地域産品の活用や地方自治体との連携を通じ、IRの経済効果を日本全国へ波及させる「地域共創」の実現のほか、旅行事業などのHISグループを横断した連携も目指す。室長は関西法人事業部の高比良哲次長が兼任し、担当役員は澤田社長が務める。

 宇宙事業強化推進室は、宇宙産業をテクノロジーの飛躍的進歩により、世界的に急速な発展を遂げる「大きな可能性を秘めた成長市場」と位置付け、「次世代にこそ真の価値をもたらす事業」を創出する目的で設立。既存の旅行事業で培ったネットワークやノウハウを再定義し、社外、異業界、グローバルな外部パートナーとの連携を通じて視座を拡張することで、未知の領域における事業創造をゼロから一貫して行う。

 具体的には、宇宙旅行、宇宙空間の利活用、地上での宇宙体験など、広範な宇宙ビジネス領域を精査。HISグループの強みを最大化できる注力テーマを特定し、持続可能なビジネスモデルの仮説構築と、中長期的な事業成長ロードマップを策定する。

 将来構想として、事業の独立性を高め、意思決定を迅速化させるための新たな事業会社や合弁会社の立ち上げを推進するほか、関連分野への投資やM&Aも積極的に検討していく。旅行事業などHISグループとの連携も目指す。室長は海津誠之新規事業統括本部長が、担当役員は澤田社長が務める。

JALUX、札幌に「北海道支社準備室」設立へ 支社昇格見据えた重要拠点

2026年4月1日(水) 配信

 JALグループの商社、JALUX(河西敏章社長、東京都港区)はこのほど、北海道の戦略的拠点として2026年4月、札幌市に「北海道支社準備室」を開設すると発表した。支社への昇格を見据えた重要拠点として、現地での体制整備を加速する。

 同社は、新千歳空港での「JAL PLAZA」の運営をはじめ、道内企業・自治体との連携による商品開発、「JALふるさと納税」事業を通じた地域創生の推進、空輸を活用した北海道産品の高鮮度輸送など、北海道での取り組みを進めてきた。25年4月には北海道の美味しいものを紹介するタッチポイントとして全国に「北海道うまいもの館」を展開する北海道フードフロンティアを子会社化した。

 同社は北海道は「日本を代表する食の供給拠点であり、圧倒的な地域ブランドを有している」とし、北海道に新たに拠点を構えることで「持続可能な未来を築き上げるパートナーとして、共に地域課題に向き合い、より深くコミットしていく」としている。

 今後、支社設立に向けて①道内での一貫体制構築とJALグループのネットワークの活用②地域資源の有効活用と新たな商流づくり③道内企業・自治体との協業強化④若手主体のイノベーション創出――を柱に取り組む。

【国土交通省】人事異動(4月1日付)

2026年4月1日(水) 配信

 国土交通省は4月1日付の人事異動を発令した。

 〈任命〉

 海技教育機構理事長 佐々明

 航空大学校理事長 横山勝雄

 自動車技術総合機構理事長 杉山徹

 水資源機構理事長 岡村次郎

 空港周辺整備機構理事長 今吉伸一

 日本高速道路保有・債務返済機構理事長 沢田聡

4月から解体工事 再出発に向け始動 加賀屋

2026年4月1日(水) 配信

清祓には役員や社員、元従業員ら約200人が参加

 石川県・和倉温泉の加賀屋(渡辺崇嗣社長)は3月26日(木)、能登半島地震により被災した加賀屋の雪月花・能登渚亭・能登客殿・能登本陣の4棟からなる建物の公費解体工事に先立ち、工事の安全と無事を祈願する儀式「解体清祓」を執り行った。

 加賀屋の正面玄関前で行われた儀式には、役員や社員のほか、かつて加賀屋で働いていた元従業員など関係者約200人が出席。参加者らは、長年お世話になった建物に感謝を捧げるとともに、愛着ある職場の最後の姿を目に焼き付け、別れを惜しんだ。

 渡辺社長は「震災以降、一度も館内に明かりを灯すことなく解体することには、悔しい思いがあるが、ここからあらためて復興、そして加賀屋グループの未来に向けた再出発になる」と未来への想いを述べた。加賀屋の解体工事は4月上旬から始まり、2031年春までの約5年間を予定する。

当日は「能登渚亭」1階部分を報道陣に公開。 吹き抜け部分に散乱したガラスや大理石の破片が当時の揺れの激しさを物語る。

 加賀屋グループはこれまで、和倉温泉に加賀屋のほか、「あえの風」「虹と海」「松乃碧」と4つの旅館を展開していたが、今後は3旅館に集約し、リブランディング。加賀屋と松乃碧は解体し、松乃碧の跡地と隣接する遊休地を合わせた場所に、加賀屋を継承する新旅館を建設する。

 また、「あえの風」は、被害の大きかった旧館「西の風」を解体し、新たに玄関、調理場、レストランを建設。「東の風」客室とコンベンション、花舞茶寮を中心に営業する。「虹と海」は、旧館の玄関側を解体し、本館の建物を中心に営業再開する予定。

 なお、各館の営業再開時期については、昨年8月に発表した復興計画以降、社会情勢が目まぐるしく変化し、建築資材の価格などにも影響が出ていることから現在、見直しをはかっており、目途が立ち次第、あらためて発表するとしている。

〈旅行新聞4月1日号コラム〉――旅や生活 年齢や経験の度合いで習慣も変わりゆく

2026年4月1日(水) 配信

 リビングの窓辺に太陽の日差しが差し込んでくる。ハイバックのソファに座って、睡魔に負けるのが休日の贅沢な楽しみの一つである。足元には我が家に来て6年目となる家族の大切な一員、ヒガシヘルマンリクガメの「亀吉」クンが陽だまり中でいつの間にか寄り添ってくる。

 リクガメを飼い始めてから生活のリズムがゆっくりと流れるようになった。仕事から帰ると古代生物的なフォルムの丸い甲羅を撫でながら、床に寝そべって静かに読書をするのが習慣となった。

 最近はディケンズの「二都物語」や、バルザックの「ゴリオ爺さん」、壺井栄の「二十四の瞳」、林芙美子の「放浪記」、トーマス・マンの「魔の山」などを丁寧に読んだ。

 文字ばかりが印刷されている紙のページをめくるごとに、古典文学の香気漂う深い世界へ没入していく。使い慣れた白い琺瑯のカップに入った、冷めた苦いコーヒーを飲みながらリクガメの横で「時空を超える旅」を楽しむ夜は、ささくれがちな心も、知らず識らずのうちに満ち足りた気分になれる。

 他人の習慣を聞くのは面白い。以前、台湾関係の女性が「台湾に行く飛行機の中では映画を一本観ることが習慣になっている」と言うのを聞いて、当時の私は「海外に行く途中にあまり映画を観る気分にはならないな」と思っていたが、最近は商用ではない機内では、映画を観るのが習慣となった。

 数時間に及ぶフライト中に観る映画を選ぶのも楽しい。客室乗務員や機長のアナウンスで中断することは避けられないが、機内食を食べながら集中して観ることができる。映画が終わるころに目的地に到着するのも悪くない、と思うようになった。

 先日は那覇行きの日本航空(JAL)の機内で、往路は木村拓哉主演の「TOKYOタクシー」、復路は短編映画「松坂さん」を選んだ。どちらの作品も楽しめた。話は逸れるが、山小屋の弁当や、雲上の機内食など厳しいサービス条件の中で提供される食事が、なぜか美味しく感じる派である。

 年齢や経験の度合いによって興味や関心、生活習慣や旅の習慣も変わりゆくのだなと、感じることが多くなった。自分でも驚くのだが、最近は小鳥が可愛くて仕方がない。花鳥風月という言葉があるが、ついに人生の最終段階とも言われる「小鳥を愛でる」境地まで来てしまった。「末期の眼」に近づきつつあるということだろうか。

 昨年、韓国の清州に1人旅をしたとき、古いホテルでとくにすることもなかったので、市場で買ったキンパとチャミスルを飲みながらテレビを見ていた。韓国は面白いドキュメンタリーものが多いので、ホテルでテレビを見るのも楽しみの一つだ。

 すると、雀に懐かれた中年の男の生活を克明に描いた番組に指が止まった。自営業の男の仕事場に住む小さな雀は男から離れない。男が道路に面したベンチに座ると、雀は男の膝の上で遊ぶ。それを観ながら「この世で一番素敵な男とは、雀に好かれる男ではないか」と身を乗り出して感じ入ったものだった。

 休みの日には単車に乗る。これも習慣だ。そして、この単車で日本中を旅したいとの想いもあって、体の機能を一つずつ点検し、最低限のメンテナンスをするようになった。我ながら悪い習慣ではないな、と思っている。

(編集長・増田 剛)

 

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(3-4月号)」

2026年4月1日(水)配信

https://zoomjapon.info

特集&主な内容

 47都道府県を紹介する3月号は、山形県特集です。創刊150周年を迎える山形新聞社を訪ね、松田直樹編集局長からは、地元に根ざした「在野」としての誇りと責任についてお話を伺いました。任期5期目を務める吉村美栄子山形県知事への独占インタビューでは、出羽三山や農業、鶴岡サイエンスパークの取り組み、さらには高齢化問題や観光まで、多岐にわたるテーマを語っていただいています。また、日本唯一の草履専門会社となった「軽部草履」のルポルタージュや、庄内地方に500年前から伝わる「黒川能」も取材しました。グルメページでは、ラ・フランスやサクランボ、米など、フランス人読者にとっても魅力的な山形の食材を特集。旅行ページでは、羽黒山や慈恩寺、山寺といった、日本の精神文化と自然が融合する場所を紹介しています。

〈フランスの様子〉フランスでもHANAMI、入場制限するほどの人気

「ヌイイ・シュル・マルヌの2026 HANAMI:今週末に早まった桜の開花」3月4日付。パリ情報ウェブサイトsortiraparis.comより

 フランスは、世界で最も早くさまざまな日本文化を受容する国だろう。最近、日本通のみならず一般層にまで浸透しているのが「HANAMI」だ。◆数十年前から在仏日本人の間では、国内の花見スポットは知られており、小規模な集まりが催されていた。◆ところが、数年前からは開花時期に合わせた日本関連行事や、自治体のPR活動が活発化。一般のフランス人にもHANAMIとして定着してきている。◆今年に入ると、一般メディアでもフランス語で「le Hanami」という表現が頻繁に見られる。◆仏有数の桜の名所、パリ近郊のソー公園は、広さ33㌶(東京ドーム約7個分)を誇り、昨年は花見客56万人が訪れたという。◆今年は、さらなる混雑が予想されるため、樹木や園内環境の保護を目的に、管理自治体は予約制を導入。1日3500人に制限した。◆ただし、これは公園の一部のみの措置で、他のエリアでは通常通りピクニックを楽しめる。この公園以外にも、仏各地に花見の名所は点在しており、フランスでも春の風物詩として定着しそうだ。

ズーム・ジャポン日本窓口 
樫尾 岳-氏

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旅行新聞 編集部〉

【特集 No.678】和多屋別荘 嬉野の「本来価値」創る実験場に

2026年4月1日(水)配信

 和多屋別荘(小原嘉元社長、佐賀県嬉野市)は、旅行新聞新社が取材活動などを通じて見聞きした観光業界の取り組みのなかから、創意工夫の見られるものを独自に選び表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2025」(2025年12月1日号発表)のグランプリを受賞した。和多屋別荘の2万坪の敷地には多種多様な企業が入居し、目に見えない嬉野の歴史的伝統文化(地域OS)を再価値化し、“本来価値”として提供していく「生きた実験場」となっている。小原社長にインタビュー取材した。

【本紙編集長・増田 剛】

“2万坪の敷地の管理人”

 ――和多屋別荘では、旅館の常識を覆す挑戦が行われています。

 2020年3月5日、新型コロナの本格化により宿の休館を検討するタイミングで、企業のイノベーション創出や地方創生事業を手掛ける「イノベーションパートナーズ」(本田晋一郎社長)が入居しました。

 「東京の企業が和多屋別荘内にオフィスを構え、社員は温泉に入りたい放題」と、あらゆるメディアから発信され、大きな話題となりました。それから6年間、取材や視察などが途切れることがありません。

 全130室のうち30室を「オフィスの場」として改修している最中で、入居企業は現在18社まで増えました。各企業から月額20―120万円の家賃をいただいています。将来的には40社ほどを見込んでいます。

 和多屋別荘の2万坪の敷地内に、上場企業や食、農、エネルギー、ヘルスケアなど多種多様な企業が入居しており、嬉野の歴史的伝統文化の再価値化を探求する「生きた実証実験の場」となっています。

 実験場の拠点は、当社とイノベーションパートナーズが共同運営する「温泉インキュベーションセンター」(OIC)です。OICが推進する新プロジェクト「URESHINO LIVING LAB(嬉野リビングラボ)」が今年2月から本格始動しました。業種や領域がまったく異なる入居企業のスタッフ同士が、館内の温泉や食堂で一緒になることもあり、家族の一歩手前のような親しい関係性が生まれているのが大きな特徴です。

 21年には館内にパティスリーブランド「ピエール・エルメ・パリ」や日本香堂など7店舗が同時オープンしました。同年11月には蔵書数1万1千冊の書店「BOOKS&TEA 三服」が開業し、テナント数は23店舗まで増えました。

 出店には嬉野が有する「1300年の温泉」、「500年のうれしの茶」、「400年の肥前吉田焼」といった唯一無二の文化資本(地域OS)への関心や理解、リスペクトが絶対条件です。

 和多屋別荘には年間5万5千人の宿泊客と、10万人の日帰り客を合わせて約15万人が訪れます。サテライトオフィスの18社とテナント23店舗の企業群は、この実験場で我われが介在しなくても、脳神経がつながり合うように日夜、新たな共創ビジネスが生まれています。

 館内には嬉野を代表する茶農家のセレクトショップやレストラン、ティーカウンターをはじめ、JR東日本「Suica(スイカ)」のペンギンをデザインした坂崎千春氏のミュージアムや、「フレグランスバックを作る」などさまざまな体験プログラムも用意しています。

 1階フロアはターミナル駅のような感覚で、地元の人たちと、宿泊のお客様が訪れるエリアとなっています。将来的には美術館や劇場の開設も視野に入れています。

 旅館のフロントにある空間「ポップアップストア」では、月替わりでショップの出店やコラボ企画が展開されています。ナショナルブランドのアウトドアメーカーなどは3年先の春秋シーズンを押さえています。企業経営者を中心に館内視察に訪れますが、視察ツアー中にさまざまな契約を交わすケースも多くあります。

 ――視察ツアーは小原社長が説明されるのですか。

 2020年から、2時間―2時間半のコースで私が館内をプレゼンしながら案内します。サテライトオフィスやティーツーリズムに関わる視察が増えて、年間1千人超が申し込まれます。大部分が経営者で、新しい発想やつながり、ビジネスが生まれてきました。

 6年間無償でやっていましたが、2月1日からは1人1万5千円に設定し、さらに質の高い視察ツアーとなっています。

 4月1日には、日本の旅館で初めて調剤薬局が館内に開業します。お抱えの薬剤師がいることになり、薬剤師と調理人が健康寿命を延ばす薬膳料理や、茶師と薬剤師による薬膳のお茶の提供、調香師と薬剤師と料理人によるガストロノミーのイベントなど、さまざまな可能性の広がりが期待できます。

 薬剤師だけでなく、お抱えの大工さんもいます。客室をサテライトオフィスへ改修するために、敷地内に大きな大工小屋を作り、高齢の大工さんを雇用しています。

 このため1部屋の改修費も相場の5分の1に抑えることができました。また、必要なものを紙で書くと理解してすぐに作ってくれます。アフタヌーンティーの備品なども、大工さんの時給とホームセンターでの材料費でできてしまうのです。建物の維持や修復だけでなく、新たな事業を育むためにしっかりと機能しているところが面白いと思います。

 このほかにも、入居企業のイノベーションパートナーズにホームページの運用もお願いしているため、当社の広報スタッフとの打ち合わせや発信もスピーディーに進められる利点があります。さまざまな企業から家賃をいただきながら必要経費を支払うかたちで、これまでになかった画期的な事業も次から次に生まれています。

 昨年4月には、日本で初めて外国人(高度人材)の日本語学校を旅館内に開校しました。「ICA国際会話学院 嬉野校」は、1学年定員50人の2学年制で、今年4月から計100人が在籍することになります。

 中央アジアや欧州などから現地の4年制大学や工科大学を卒業し、銀行などで勤務した人が中心で、公用語は英語です。いずれ嬉野の酒蔵や茶農家のDX化やアグリテックなどの分野で彼らの知識や技術を生かしていければと思っています。

 ――自らを「2万坪の管理人」と呼んでいます。

 2013年1月1日に36歳で事業承継した当時は、前途多難な状況にあり、愚痴も漏らしていました。しかし、嬉野が持つ文化の深さに畏敬の念を感じ始めてから、自分自身の価値観が大きく変わっていきました。

 たまたま祖父の時代から宿をやっているだけで、自分を旅館経営者と思ったことはなく、職種は「2万坪の敷地の管理人」と思っています。そこから生み出したのが三層ストラクチャー(構造)です。

 三層の土台には、普遍的な価値である「温泉」「うれしの茶」「肥前吉田焼」などの地域OSが存在します。その上の第二層には、和多屋別荘の2万坪の豊かな土地があり、最上層の第三層にはサテライトオフィスやテナントなどが生み出す共創ビジネスがあります。

 この構造は「2万坪を1泊2食の旅館業だけで使っていくのはもったいない。もっと可能性のあるビジネスに利用した方がいい」という考え方を明確に示しています。

 和多屋別荘はもともと団体客も、個人客も受け入れる総合デパート的な旅館でした。高級グレードから、学習塾や修学旅行の1泊3食8千円まで、すべてを受け入れていました。皆の努力で一定の売上と利益が出ていたため、これらニーズを否定することは難しい。しかしこれを続けている限り、宿の高付加価値化はできない。そこから早く脱出したいと思っていました。

 私は、ずっと以前から「1泊2食」という旅のスタイルに甚だ疑問を感じていました。10年間朝ごはんを食べる習慣が無いと話す宿泊客に対して、150種類のバイキングメニューを平気で薦めていました。それであるならば、着物を着た人が嬉野茶を提供した方が、よほど価値が高いだろうと感じていました。

 当社スタッフをはじめ、館内のワーカー、テナント入居スタッフの方々も含めて250―300人を「2万坪の小宇宙」と捉え、地域で生きる経済的な価値を徹底して求めながら、豊かな心と未来のある生活が描けるのであれば、嬉野市まで広げていきたい。自分がこのまちで生まれた恩返しになりたいと本気で考えています。「2万坪の敷地内GDP100億円の創造」という大きな目標へ邁進しています。

 和多屋別荘の売上は約13億円。これを20億円まで成長させる計画です。一方、入居する18企業の嬉野に関わる事業の売上は約4・5億円ですが、数年で和多屋別荘の売上と匹敵する規模まで育っていきます。近い将来、残りの80億円は、地域OSとの掛け算による新たな事業を生み出す企業群が創出していくと考えています。

 これまでの「旅館に泊まる」や、「通う旅館」など、旅館が主語の時代が終わり、これからは、サテライトオフィスや学校などの事業や商品も加わり、「地域課題の解決」や、「次代の嬉野を創る」といったことが主語となる段階へと、少しずつシフトしています。

 ――「文化資本の本来価値を大切にしたい」と話されています。  

 旅館では基本的にお茶は99%無料です。私たちも恥ずかしいことに10年前は無料でした。しかし今は、館内では試飲用のお茶以外はすべて有料です。

 嬉野市内で約200人のお茶農家さんが栽培をした生葉の全収入は、約12億円です。昨年、当館は液体のお茶だけで3300万円を売り上げました。旅館内では1杯800円が限界だったので、茶畑という空間で1杯1万円まで価値を高めています。

 数百年の時間を経て創り上げて先行投資された“目に見えない地域資本”を、地元の人が「本来価値」で販売すべきだと考えます。

 この考えに基づいたティーツーリズムによる茶空間体験で3千万円を稼ぎ出すようになりました。大切にしていることは、「背伸びしない日常に価値がある」ということです。背伸びした瞬間にイベント化します。

 茶農家は、子供のころから触れている肥前吉田焼で、「今年八十八夜に摘んだお茶をどうぞ」と言っているだけです。コックコートを着るくらいのデザイン性は持たせますが、あくまで背伸びをしない。これこそが「本来価値」であり、訪れる人には、最も価値が高いものだと確信しています。

【本紙1969号または4月7日(火)以降日経テレコン21でもお読みいただけます。】

【対談】観光庁観光資源課 矢吹周平課長×跡見学園女子大学 篠原靖准教授 地方誘客で観光需要の平準化へ

2026年4月1日(水) 配信

 観光庁は、持続的な地方誘客により観光需要の平準化につなげるため、2026年度事業を拡充する。地域資源を活用した観光まちづくりを推進するための施設整備や、観光需要分散に向けたコンテンツ化を支援する新事業に取り組む。同事業を担当する観光庁観光地域振興部観光資源課の矢吹周平課長と、内閣府地域活性化伝道師・跡見学園女子大学観光コミュニティ学部の篠原靖准教授が対談し、支援事業の方向性や地域への期待を語り合った。

観光資源のコンテンツ化支援、面的活用に向けて事業対象拡充へ

 篠原 矢吹課長は25年夏から観光資源課長に就任されましたが、これまでの期間を振り返り、日本の観光に関する所感をお聞かせください。

 矢吹 着任して半年ぐらいですが、色々な現場を見させてもらい、「地域を元気にしたい」という強い思いを皆さん持たれていました。文化財や工芸品など、地域資源を活用して観光客を呼び込みたい。地域に経済活動が生まれることを期待されている一方で、「自分の地元が誇れる地域だ」と力を込めて言っていきたい気持ちを非常に強く感じました。

 地域に国内外から訪れていただき、「良いところだった」と感じながら帰られることは、地域の人にとっても嬉しいことです。そうした思いを観光庁として支えることができればと、着任してからより強く感じました。

 篠原 観光には経済的な効果のほか、シビックプライドを育てて地域愛を持ってもらい、自分たちのまちを次世代に継承できるようにする効果、役割があるのではないでしょうか。

 矢吹 その通りです。観光だけでできるとも限らないですが、観光は有効なツールになることは間違いないと思います。地域を次世代につないでいくことが非常に大事であると考えています。

 篠原 今年は観光立国推進基本計画も新しく改定されますが、日本の観光の在り方が大きく変わっていくのでしょうか。

 矢吹 25年は訪日外国人旅行者数が初めて4千万人を超えて過去最高を記録し、訪日外国人旅行消費額が約9・5兆円と10兆円に届く勢いとなりました。観光は国全体でみると外貨を多く稼ぐ産業になっており、これからも成長分野であると考えています。今後も国の成長戦略として、大きく期待されていると感じています。

 篠原 新たな観光立国推進基本計画の数値目標を達成するため取り組むことがベースにありますが、観光消費額の向上と地方への需要分散が課題と認識しています。

 矢吹 観光立国推進基本計画の目標数値は、地方への需要分散が進んでいるかの指標でもあります。地域に経済活動が生まれるためには、どれだけの人が足を運んでいるのか、どのくらい消費をしているのか複眼的に数字を見ていくことが、課題に対してさらに必要になると考えています。

 篠原 昔と比べて観光客の価値観が変わってきていますから、地域の中で稼ぐような仕組みをしっかりと地域側がつくらなければ、国が補助事業を実施しても消費額はなかなか上がりません。

 矢吹 「戦略は細部に宿る」という言葉がありますが、細かい工夫の積み重ねが観光消費につながると考えています。例えば、お土産を小分けにしてお洒落な包装にするなど、細かい工夫も大事で、そういった地域の工夫を積み上げていくと良い方向につながっていくと思います。お客さんのニーズに合わせた商品設計や、売り方の設計を追求するということです。

 篠原 観光消費額を上げることに加え、地産地消の観点が重要です。道の駅でみると、流通に載せられない規格外のイチゴを買い取り、ソフトクリームに加工して売っています。地域の中で経済が回るような仕組みも含め、観光客が地域にお金を落としていただくものにつなげられるか、考えなければなりません。

 矢吹 観光客は見学や宿泊、飲食をして帰るだけでも楽しかったと感じてもらえますが、地域側は回遊してもらうための観光資源をどれだけ積み重ねできるかが重要となります。地域の産品であれば、農業体験や生産者見学などの一次産業や、加工業とも結びつけられます。これまで点であった観光資源を結びつき、束ねていくことで、地方分散の促進や、地域の活性化につながります。このような観光資源を結びつけて「線」にして、「線」をつないで「面」にしていくことが大事ではないかと考えています。

 篠原 現在は観光の形態が団体型の周遊旅行から、体験・滞在・交流の3つを重視する傾向に進んでいます。地域との交流で密着度が高められれば、「第2のふるさとづくり」を推進する観光庁の施策にもつながり、それから関係人口として心の中に残れば、ふるさと納税にもつながります。

 そのため、国の方針として「稼ぐ観光」を推進する支援事業に力を入れていますが、観光庁では地域にもう一度見直してやれるべきことを発掘してもらい、応援していくという図式でしょうか。

 矢吹 地域の魅力を発掘していき、体験や交流といったコンテンツを埋め込んでいかなければ、消費に結びつかないのが現状です。体験・滞在・交流の3つをこれから重視していくことが必要と感じています。

 篠原 観光の現状の中でも、依然として都市部や一部地域への一極集中が続いており、オーバーツーリズムの問題もさまざまで、インバウンドの受け入れと住民生活の質の確保を両立していけるのか大きな問題です。地方への需要分散には、日本中からさまざまな観光資源を拾い上げ、そして磨き上げていくことが、何よりも大切になることは間違いないです。

 26年度に向けた観光庁事業の方針について、お話いただけますか。

 矢吹 観光資源の磨き上げに向けて、方針としては前年度まで取り組んできた調査事業や補助事業の拡充が、大きなテーマの一つとなります。

 これまでは城や社寺、古民家などの宿泊・滞在型コンテンツを軸に、周辺の歴史的資源を面的に活用した観光コンテンツの造成を支援する「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進事業」を行ってきました。26年度は幅を広げ、歴史的資源のほか、食や自然、文化分野の観光資源も対象にした「地域の観光資源充実のための環境整備推進事業」(26年度予算40億円)に取り組みます。

 例えば、酒蔵に体験の拠点となる施設整備の支援を行うことで、コト消費につなげていく。一個一個の点であった観光資源を地域のストーリーとしてつなぎ、面的かつ一体的な観光まちづくりを推進し、観光の磨き上げを支援していきます。

 篠原 地域資源を活用した観光コンテンツの造成や効果的な磨き上げ、情報発信、販路の拡大といった事業に人気が集まる傾向があります。

 昨年度は、観光コンテンツの造成を中心に支援する「地域観光魅力向上事業」が行われ、全国で約600件の事業が展開されました。後継事業の「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業」(25年度補正予算49億円)は、どのようなお考えですか。

 矢吹 「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業」は、地方誘客を進めるため、地域ならではの観光コンテンツの供給促進を目的としています。多様な地域資源を活用した観光コンテンツの造成や情報発信のほか、販路開拓が中心となる取り組みなどを総合的に支援する補助事業となります。

 インバウンドの地理的・時間的な需要分散が観光の平準化につながり、地域への滞在を促すためのコト消費を生み出す取り組みです。

 篠原 これまでも国の政策として、地方への需要分散やオーバーツーリズム対策を推進してきましたが、さらに具体化した事業になります。

 また、日本の伝統工芸品の分野に関しても、職人たちが廃業に至ってしまい、脈々と引き継がれてきた伝統的な産業がどんどんと衰退しているのが実情です。今回の取り組みのように、特別な体験、滞在、交流の3つをセットすることで、隠れた観光資源でもある伝統工芸品が世界に向けて、クローズアップができるのではないでしょうか。

 矢吹 日本は長い歴史と文化があり、地域に根付いている多様な文化を感じられる伝統工芸品は、強い観光資源になりうると思います。とくに海外の富裕層には、伝統工芸品そのものの素晴らしさに加えて、その生産者が持つ技術や、費やした時間も尊敬の対象となるでしょう。

 したがって、既に完成したものを買うだけではなく、職人の方がどれだけの技術と時間をかけて、細部まで丁寧につくっているのか。それを体験したり、交流を通じて感じてもらうことが重要ではないでしょうか。

 職人さんへの尊敬や、応援する気持ちがお土産の購入や口コミで広がり、リピーターや新しいお客さんが訪れてくる。当然、職人さん自身はつくることが仕事ですから、観光側の工夫でコンビネーションを取って、観光資源にしていくことが、これからの大事な視点ではないでしょうか。

 地域の伝統産業だけではなく、観光資源をどう次世代につないでいくのか、大きな課題と認識しています。課題解決の一助として、観光をきっかけに販路を伸ばし、次世代につながっていくモデルを描いていきたいと考えています。

 篠原 地域内で精神性を含めた職人の魂を伝えられるような関係性ができると、伝統工芸品が観光資源として、さらに深くつながります。

 矢吹 そうしていきたいです。伝統工芸品がない地域もあるかもしれませんが、独自の食文化があるはずです。日本酒も非常に評価が高い。それら地域文化にストーリー性を持たせることで、良質な日本を感じられる一つのコンテンツになります。今回の事業を通じて、これらを見つけていきたいというのが、私たちの願いとなります。

 篠原 観光資源のさまざまな専門的な分野ごとの掘り下げのチャンスを提供されています。観光資源課の補助事業を地域の皆さんに知っていただけたらと思います。

 矢吹 私は多様性が好きなので、日本には多様な価値のある観光商品があり、地域には人を惹きつける魅力あるコンテンツがあふれ、それを追求すべきではないかと思っています。我われも多様なアイデアを発見し、感動するものが見つけられると良いなと思います。

 篠原 これから日本の観光が大きく変わる1年になると思いますので、地域の皆さん、日本中の観光を目指す皆さんに対して、矢吹課長からコメントいただけますか。

 矢吹 観光資源課が行う仕事は、地域で感動をつくっていく仕事だと思っています。私たちの地域が良いところであると発信する仕事であり、観光庁として一緒に頑張っていければと思います。

日本生産性本部、第2回生産性白書を発表 「AI時代では人が価値創出の先導を」

2026年3月31日(火) 配信

小林喜光会長

 日本生産性本部(小林喜光会長)は3月30日(月)、「第2回生産性白書『人口減少社会の生産性改革~人とAIの共生~』」を発表した。「人口減少による労働力不足が深刻な日本でAIは労働力を補完する。人は人間らしい仕事をし、価値創出を先導する経済社会を構想しなければならない」と生産性改革の実践を提言した。

 同白書では冒頭、人口減少による国際競争力の低下に抗うには投資の拡大を通じた1人当たりの付加価値の増大が不可欠と指摘。こうしたなか、AIが驚異的なスピードで進化を遂げ、日本ではAIの活用によって労働力不足による供給制約を克服することが期待できるとの見方を示した。

 「AIは言語力・計算力などで人間を凌駕しつつあり、社会構造の変革を迫っている」との認識を示し、「人間はAIをパートナーとして、心や感性で新しいアイデアを創造し、新たな価値と豊かさを生み出すことが必要になる」と提言している。

 さらに今後、事務的業務の一部やロボティクスの普及で、現場作業に求められるスキルが変化せざるを得ないと指摘。AIを使いこなす学び直しに向けた人材への投資と、生産性向上の好循環を生み出すべきで、実質賃金の継続的な上昇を実現し、労働者の生活安定と企業発展を両立させることが重要となるとの考えを示した。

 最後に「人とAIの協働・共生により、人間の価値と能力を高める仕事の創出が求められる」とまとめた。

 同日に開いた記者会見で、小林会長は日本での人材投資が他国と比べて少ないことに言及し、「(投資による)経済成長の基本は、いかに日本市場の魅力を高めるかにある」として、AIとの共生による社会の在り方の変革を促した。