【ぐるなび執行役員・杉山尚美氏に聞く】 視座の高い使命感を

杉山 尚美氏
杉山 尚美氏

 情報通信技術(ICT)を活用し、飲食店の経営サポートに取り組んできたぐるなび(滝久雄会長)は近年、“LIVE JAPAN”や“ぐるたび”など、観光客を対象としたサービスにも尽力している。今回、インバウンド事業を中心に、同社執行役員の杉山尚美氏に話を聞いた。スピーディーかつ丁寧な事業展開に注目したい。
【謝 谷楓】

 ――力を入れているインバウンドについて、始めたキッカケや、ぐるなびの役割について教えてください。

 ぐるなびは、2013年にインバウンド室を創設し、本格的な活動をはじめました。一方、その前年には、ぐるなびの関連会社のぐるなび総研でインバウンド研究会を立ち上げており、知見を深めていました。13年は、富士山と和食がユネスコの文化遺産と無形文化遺産となり、オリンピック・パラリンピック東京大会が決定した年で、インバウンドブームよりも一足早く準備を進めることができました。
 ぐるなびの役割は、サポーターとして、加盟店をはじめとした飲食店の継続経営を手助けすることです。インバウンドの取り込みは、国内消費が減少しているなか、外食産業活性化のために必要不可欠だと考えています。
 インバウンド室を設立した年から、加盟店向けのインバウンドセミナーを行ってきました。当初は、「本当に必要なのか」といった声も上がりました。しかし今では、年間で331回(15年実績)のセミナーを開催するまでになりました。とくに昨年は、外食チェーン各社を含め、多くの加盟店が、「インバウンドの取り込みをやらなくてはならない」という意識を持つに至った、機運の年だったと思います。

 ――流れが大きく変わっていったのですね。具体的に行っている取り組みは。

 外国人が日本に来る大きな理由の1つに、日本の“食”があります。それを楽しめる環境を目指して、15年1月に、ぐるなび外国語版サイトをリニューアルしました。
 多言語での情報発信は、04年から行っていますが、これを機にメニュー名だけでなく、食材や調理方法、調味料、アルコールの度数などといったお酒の情報も多言語で発信できるようにしました。多言語化は、コース料理やメニュー数にもおよぶため、リニューアルしたWebサイトは、飲食店が発信する情報すべてを網羅したことになります。

 ――日々忙しい加盟店にとって、日本語のメニュー名を外国語に翻訳してもらえることは、とても便利で助かることだと思います。

 日本語のメニュー名はとても複雑なため、直訳しただけでは、外国人観光客に理解してもらえません。また、加盟店にとっても、自店のメニュー名がどのように翻訳されているのかということはとても気にかかることです。
 ぐるなびには、20年間培ってきたビッグデータがあり、それを活用することで、意味や言い回しが似たものを整理することができました。その結果、900万もあった日本語のメニュー名を、現在では2800の名で表現できるようになりました。翻訳をするうえで、担保となるメニュー名ができたのです。これは、加盟店であれば利用できるオリジナル辞書変換システムとして、Webサイトに搭載しています。加盟店が、日本語の操作だけで、自店のメニュー名から食材や調理方法、調味料などを多言語で情報発信できるインフラを整えたのです。

 ――多言語での情報発信は、どれくらいの加盟店で行われていますか。

 開始してから1年半経った現在、2万店以上の加盟店が行っています。

 ――取り組みのスピードがとても速いと思います。ビジネスにおいて、常にそのようなスピード感を重視しているのでしょうか。

 現在の状況は、私たちがぐるなびを立ち上げたときにとても良く似ています。1996年当時、インターネットはあまり普及しておらず、「なぜインターネットなのか」と考える飲食店も多くあり、そのような状況下で、活動していました。インバウンドの時代がすでにやって来た現在、19年のラグビーワールドカップや、20年のオリンピック・パラリンピック大会などを考えれば、一刻も早く準備をしていかなくてはなりません。スピードの速さは、加盟店をはじめとした飲食店の売上や利益につながるものを、どこよりも早くつくっていかなくてはならないという使命感の結果なのです。
 “食”が、外国人観光客にとって、日本を訪れる目的であるなか、飲食店自らが情報発信するすべを持たないことは、リピーター獲得の大きな機会を失うことを意味します。日本の、四季ごとの旬な食材を使ったメニューを各店からリアルタイムに発信できれば、自然と正しい情報が海外に伝わり、「今回は春に訪れたけど、次は秋に訪れてみよう」という“食”を通じたリピーターづくりが期待できます。また、全国の各地域に根付いた郷土料理を発信できれば、「今回は北海道で、次回は愛媛県に行こう」という“食”を通じた地方誘客もできるのです。

 ――ぐるなびは、加盟店自身が主体的に情報発信できる環境を用意しているのですね。環境を提供する側として、加盟店に求めることは。

 インバウンドで言えば、国籍でお客様を選ばず、“インバウンド、歓迎”の意識をつくってほしいという想いがあります。外国語を話せる以上に、受け入れる気持ちをしっかり持つことの方が重要なのです。あとは、ぐるなびのWebサイトを使った英語のメニューづくりや、よくあるトラブルの対応といった準備をすれば十分ではないでしょうか。

 ――13年当時、インバウンドへの関心は今ほど高くありませんでした。“食”を通じてインバウンドに取り組む発想の原点とは何ですか。

 03年にはビジット・ジャパン・キャンペーンが始まっており、06年の観光立国推進基本法制定や、それから2年後の観光庁設立というように、観光に対する政府の考え方は一貫しています。日本の産業が発展していくためには、観光が必要だということは既知の事実だったと思います。その当時から、外国人観光客の主な訪日目的は“食”にありましたから、先んじて準備をしていくという考え方がぐるなびにはありました。そのことが、発想の原点だと思います。

 ――スピーディーに情報をキャッチしているのですね。アジアなど積極的に展開していますが、今後の展望は。

 現在、ぐるなびはシンガポールと台湾、香港、上海の4地域に拠点を構えています。今後は、ぐるなびが海外レストランを組織化して、インバウンドの取り込みと食材輸出の促進に貢献できるのではないかと考えています。
 農林水産省の発表によれば、世界には9万店の和食レストランがあります。インバウンドの取り込みの点では、現地のレストランや料理人を組織化することで、レストランを媒体とした訪日プロモーションの可能性に注目しています。組織化はすでに行っており、例えば、10月18―31日間に、台湾で東北推進機構(清野智会長)と連携したイベントを開催する予定で、現地和食レストランを通して、東北食材のPRや東北へのインバウンド増加を促します。
 また、和食レストランにかぎらず、日本の食材に興味を持つ料理人は多いため、海外のレストランは、日本の食材の輸出先になると考えています。
 観光と食材の輸出は必ずつながっているものです。例えば、海外のレストランで東北の食材に興味を持った方は、東北にも訪れたいと思うはずですから、双方向でシナジーを生むことができるのです。

 ――加盟店と食材生産者をつなぐからこそできることだと思います。旅館など宿泊施設へのアドバイスがあれば教えてください。

 加盟店には、日本と地域の食文化を発信するのだという視座の高い使命感を持ってほしいということを伝えています。ぜひ宿泊施設にも、このような使命感を持ってほしいと思います。とくに旅館は、日本の文化や考え方、感じ方を伝えるといった使命も持っているのではないでしょうか。

 ――ぐるなびでは、“食”と旅行をつなぐサービスが充実しています。今後の活躍にも期待がかかります。ありがとうございました。

佐賀の夜は県庁で

 近年、全国各地でプロジェクションマッピングを使った演出やイベントが盛んだが、佐賀県では今年7月から、全国でも珍しい県庁の展望ホールを会場にしたプロジェクションマッピングを実施し、注目を集めている。

 佐賀県が、新たな夜の楽しみを創出しようと、東京駅やあべのハルカス、名古屋テレビ塔など、数々のプロジェクションマッピングを手がけてきたクリエーター集団「ネイキッド」とコラボして制作したもの。ガラス窓をスクリーンにして、太古から現在に至る佐賀の街の変遷を約10分の映像で映し出す。上映後は、佐賀市内のリアルな夜景が眼前に広がるという演出だ。

 入場は無料。来年3月31日まで、毎日午後6時30分から10時まで実施する(日・祝日は同9時まで)。佐賀に訪れた際はぜひ。

【塩野 俊誉】

予約からナビまで、ナビタイムトラベル開始

(左から)「スポットリスト」と「タイムライン」、地図が1つの画面のなかに並ぶ
(左から)「スポットリスト」と「タイムライン」、地図が1つの画面のなかに並ぶ

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 ナビタイムジャパン(大西啓介代表、東京都港区)は10月5日、Webサイト「NAVITIMEトラベル」をオープンした。航空券や宿泊施設の予約だけでなく、旅行プランの作成もできるのが魅力。予約からナビゲーションまで、ルート検索で培ってきた技術を活かした利便性の高いサービスとなっている。

 同サイトでは、地図と「スポットリスト」、「タイムライン」3つの要素を1つの画面上に併記。「スポットリスト」には地域の観光スポットが、「タイムライン」には時間帯が表示される。好みの時間帯に、行きたいスポットを選択してドロップすれば、オリジナルの旅行プランができるという仕組み。地図でルート情報を確認することもできる。

 「タイムライン」では移動にかかる時間を自動で計算するため、利用者は無理のない計画を立てることができる。営業時間外のスポットを、「タイムライン」にドロップできない仕様となっているため、利用者は検索の手間を省ける。また、総合ナビゲーションサービス「NAVITIME」の検索ログを用いたリコメンド機能も用意されている。

 第2種旅行業を取得しており、同サイトでは、国内ダイナミックパッケージの販売なども行う。全日本空輸(ANA)だけでなく、ジェットスター・ジャパンなどLCCにも対応。往復それぞれで異なる航空会社を選択することが可能だ。

 対応する航空会社は、国内旅行商品では12社、海外旅行商品では日本の空港に乗り入れる約200社となっている。

スカイダックが横浜に、受付所と待合所も開設(日の丸自動車)

満席の人気ぶり。記念品もプレゼントされた
満席の人気ぶり。記念品もプレゼントされた
富田浩安社長
富田浩安社長

 日の丸自動車興業(富田浩安社長)が運行する水陸両用バス「スカイダック」が10月3日、横浜港でグランドオープンの記念式典を行った。横浜・桜木町の日本丸メモリアルパーク、赤レンガパークにチケット受付所と待合所も開設。

 当日は全42席が完売し、一般の客らが約1時間の水陸運行を楽しんだ。

 スカイダックは横浜市が進める「~水・陸新発見!横浜みなとまちめぐりプロジェクト~」(構成法人=日の丸サンズ、シティアクセス)で、8月10日からプレオープンし準備を整えてきた。

 同プロジェクトは、街と海の観光をシームレスに結び、水辺空間に親しみ楽しめる環境を整備する。また、水辺周辺の賑わいの創出や活性化につなげることが目的。そのために、横浜港の景観を気軽に陸と海から楽しめる水陸両用バスを試験導入した。

 今後は官民一体で横浜の発展に寄与し、3年ほどかけて持続可能な事業かを判断していく。

 スカイダックは、アメリカやオーストラリア、ロンドン、パリなど世界各国の観光地で運行している。富田社長は「世界各国と同じように、横浜の観光名物としていろいろな人に乗ってもらいたい」と語った。

 来年の3月末まで運行し、料金は大人3500円、子供1700円。事前予約は不可で、運行時間の1時間前から先着順で発売する。

来年3月“維新博”、高知城歴史博物館も開館(高知県観光説明会)

尾﨑正直知事
尾﨑正直知事

 高知県は9月16日、大阪市内のホテルで旅行会社や報道関係者を集め、観光説明会を開いた。

 尾﨑正直知事が約30分のプレゼンテーションを行い、来年3月4日開幕の「志国高知幕末維新博」の概要やJRグループの四国DCに向けた準備などを紹介した。

 維新博は大政奉還150年を迎える来年に第1幕、明治維新150年を迎える2018年に第2幕を展開する。第1幕開幕日にはメイン会場となる県立高知城歴史博物館が、高知城追手門前にオープンする。博物館は3階建てで、「坂本龍馬書状」「大政奉還建白書写」など幕末・維新関連の資料約6万7千点を収蔵。最上階には高知城を一望できる展望ロビーなども備え、新たな観光拠点となる。

 開館時間午前9時から午後6時(日曜日は午前8時開館)。料金は常設展大人500円、企画展同700円。大型バスの乗降は可能。駐車は周辺有料駐車場利用。

 そのほか、高知駅前の「こうち旅広場」も3月4日リニューアル。龍馬の生家セットを展示する「龍馬伝幕末志士社中」が無料化になり、館内での飲食も可能にする。

 さらに、維新博第2幕となる18年春には県立坂本龍馬記念館の新館がオープン。博物館仕様となり、貴重な本物資料を数多く展示するという。

 維新博では高知市内のこれらメイン・サブ会場に加え、県内に20の地域会場を設定し、周遊観光を促す。

 尾﨑知事は「四国DCでは、ごめん・なはり線にトロッコ列車の特別運行や、4つの寺院の特別公開などがある。当然ながら、DCの素材と維新博の素材を組み合わせることができる。我われもそのように作っている」と述べ、維新博・四国DCを機会とした高知周遊観光を呼びかけた。

「100選」の中間集計

 第42回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の投票が今年も10月1日から始まった。締め切りは10月末日。全国の旅行会社からの投票に基づき、「ホテル・旅館100選」と「観光・食事、土産物施設100選」および「優良観光バス30選」をそれぞれ選出する。「ホテル・旅館100選」の中間集計の1回目を紹介する。
(順不同)

 【北海道】
 あかん遊久の里鶴雅・あかん湖鶴雅ウィングス▽登別石水亭▽知床第一ホテル▽知床グランドホテル北こぶし▽十勝川温泉第一ホテル▽第一滝本館▽観月苑▽ニュー阿寒ホテル▽知床プリンスホテル風なみ季▽ホテル鹿の湯花もみじ▽ザレイクビュー TOYA 乃の風リゾート▽洞爺サンパレスリゾート&スパ▽HAKODATE海峡の風

 【青森県】
 ホテルグランメール山海荘▽星野リゾート青森屋▽海扇閣▽南田温泉ホテルアップルランド

 【岩手県】
 結びの宿愛隣館▽ホテル森の風鶯宿▽ホテル紫苑▽浄土ヶ浜パークホテル▽ホテル志戸平▽瀬美温泉▽悠の湯風の季▽グリーンピア三陸みやこ▽ホテル対滝閣▽愛真館▽南部湯守の宿大観▽長栄館

 【宮城県】
 ホテル松島大観荘▽伝承千年の宿佐勘▽鷹泉閣岩松旅館▽松島一の坊▽篝火の湯緑水亭▽鳴子観光ホテル▽ホテルニュー水戸屋▽ホテルきよ水▽名湯の宿鳴子ホテル▽岩沼屋

 【秋田県】
 結いの宿別邸つばき▽ホテル鹿角▽秋田温泉さとみ▽妙の湯▽鶴の湯▽駒ヶ岳グランドホテル 

 【山形県】
 日本の宿古窯▽萬国屋▽蔵王国際ホテル▽天神の御湯あづま屋▽たちばなや▽八乙女▽月岡ホテル▽ほほえみの宿滝の湯▽河鹿荘▽仙峡の宿銀山荘▽游水亭いさごや▽蔵王四季のホテル▽深山荘高見屋▽おおみや旅館▽亀や▽高見屋別邸久遠

 【福島県】
 ホテル華の湯▽匠のこころ吉川屋▽八幡屋▽丸峰観光ホテル▽大川荘▽庄助の宿瀧の湯▽風望天流太子の湯山水荘▽スパリゾートハワイアンズ▽四季彩一力▽旅館玉子湯▽陽日の郷あづま館▽檪平ホテル

 【茨城県】
 五浦観光ホテル別館大観荘▽思い出浪漫館▽筑波山江戸屋▽大洗ホテル

 【栃木県】
 あさや▽花の宿松や▽鬼怒川グランドホテル夢の季▽鬼怒川温泉ホテル▽日光千姫物語▽ホテルエピナール那須▽ホテルサンバレー那須▽ホテルニュー塩原▽湯けむりの里柏屋

 【群馬県】
 草津白根観光ホテル櫻井▽四万やまぐち館▽源泉湯の宿松乃井▽舌切雀のお宿磯部ガーデン▽福一▽ホテル木暮▽旅館たにがわ▽万座温泉日進舘▽猿ヶ京ホテル▽別邸仙寿庵▽望雲▽草津ナウリゾートホテル▽奈良屋

 【千葉県】
 満ちてくる心の宿吉夢▽鴨川館▽鴨川ホテル三日月▽勝浦ホテル三日月▽鴨川グランドホテル▽宿中屋

 【東京都】
 水月ホテル鴎外荘

 【神奈川県】
 海石榴▽箱根吟遊▽強羅花壇▽ホテル河鹿荘▽強羅花扇

 【山梨県】
 銘石の宿かげつ▽ホテル鐘山苑▽ホテルふじ▽若草の宿丸栄▽全館源泉かけ流しの宿慶雲館▽湖山亭うぶや▽秀峰閣湖月▽下部ホテル▽華やぎの章慶山▽富士野屋夕亭

 【長野県】
 ホテル翔峰▽明神館▽旅館花屋▽上林ホテル仙壽閣▽藤井荘▽あぶらや燈千▽ホテル白樺荘▽立山プリンスホテル▽緑翠亭景水▽ホテルやまぶき▽ぬのはん▽白樺リゾート池の平ホテル▽RAKO華乃井ホテル▽白船グランドホテル▽昼神グランドホテル天心▽ユルイの宿恵山▽昼神の棲玄竹

 【新潟県】
 白玉の湯泉慶・華鳳▽ホテル清風苑▽水が織りなす越後の宿双葉▽夕映えの宿汐美荘▽風雅の宿長生館▽四季を彩る湯沢グランドホテル▽ゆもとや▽四季の宿みのや▽ホテル小柳▽ホテル摩周▽赤倉ホテル▽岬ひとひら▽大観荘せなみの湯

 【静岡県】
 稲取銀水荘▽堂ヶ島ニュー銀水▽いなとり荘▽季一遊▽ホテル九重▽ABBA RESORTS坐漁荘▽ホテルカターラRESORT&SPA▽柳生の庄▽観音温泉▽稲取東海ホテル湯苑▽桂川▽ホテル伊豆急▽ホテルサンハトヤ▽堂ヶ島温泉ホテル▽ホテルアンビア松風閣▽ホテルウェルシーズン浜名湖

 【愛知県】
 旬景浪漫銀波荘▽ホテル東海園▽ホテル竹島▽源氏香▽伊良湖シーパーク&スパ▽風の谷の庵

 【三重県】
 戸田家▽風待ちの湯福寿荘▽ホテル花水木▽サン浦島悠季の里▽鳥羽シーサイドホテル

 【岐阜県】
 水明館▽本陣平野屋花兆庵▽岐阜グランドホテル▽穂高荘山月▽ひだホテルプラザ▽ホテルくさかべアルメリア▽十八楼▽宝生閣

 【富山県】
 延楽▽金太郎温泉▽宇奈月国際ホテル▽ホテル立山▽延対寺荘▽宇奈月グランドホテル▽つるぎ恋月

 【石川県】
 加賀屋▽瑠璃光▽ゆのくに天祥▽日本の宿のと楽▽法師▽海游能登の庄▽辻のや花乃庄▽花紫▽お花見久兵衛▽ホテル高州園▽茶寮の宿あえの風▽花つばき▽たちばな四季亭▽みどりの宿萬松閣▽ゆ湯の宿白山菖蒲亭

 【福井県】
 まつや千千▽清風荘▽グランディア芳泉▽美松

 【滋賀県】
 びわ湖花街道▽里湯昔話雄山荘▽湯元舘▽琵琶湖グランドホテル京近江

 【京都府】
 松園荘保津川亭▽おもてなしの宿渓山閣

 【兵庫県】
 ホテルニューアワジ▽ホテル金波楼▽佳泉郷井づつや▽淡路インターナショナルホテルザ・サンプラザ▽西村屋ホテル招月庭▽有馬グランドホテル▽朝野家

 【奈良県】
 さこや

 【和歌山県】
 かつうら御苑▽ホテル中の島▽ホテル浦島▽白良荘グランドホテル▽紀州・白浜温泉むさし▽花いろどりの宿花游

 【鳥取県】
 皆生つるや▽華水亭▽依山楼岩崎▽皆生グランドホテル天水▽三朝薬師の湯万翆楼

 【島根県】
 玉造グランドホテル長生閣▽曲水の庭ホテル玉泉▽佳翠苑皆美▽白石家

 【岡山県】
 湯郷グランドホテル▽鷲羽ハイランドホテル▽八景▽清次郎の湯ゆのごう館▽ゆのごう美春閣

 【広島県】
 ホテル鴎風亭▽景勝館漣亭▽みやじまの宿岩惣

 【山口県】
 大谷山荘▽萩観光ホテル▽西の雅常盤▽錦帯橋温泉ホテルかんこう

 【香川県】
 湯元こんぴら温泉華の湯紅梅亭▽琴平グランドホテル桜の抄▽ことひら温泉琴参閣▽喜代美山荘花樹海

 【徳島県】
 和の宿ホテル祖谷温泉▽ホテルかずら橋

 【愛媛県】
 大和屋本店▽道後プリンスホテル▽宝荘ホテル▽ホテル椿館

 【高知県】
 土佐御苑▽城西館▽三翠園

 【福岡県】
 六峰館

 【佐賀県】
 和多屋別荘▽萬象閣敷島▽大正浪漫の宿京都屋▽大正屋▽和楽園

 【長崎県】
 東園▽ゆやど雲仙新湯▽雲仙宮崎旅館▽雲仙福田屋▽ホテル東洋館▽九州ホテル

 【熊本県】
 清流山水花あゆの里▽杖立観光ホテルひぜんや▽湯峡の響き優彩▽阿蘇の司ビラパークホテル&スパリゾート

 【大分県】
 九重悠々亭▽杉乃井ホテル▽ホテル白菊▽由布院玉の湯▽花菱ホテル 

 【宮崎県】
 酒泉の杜綾陽亭

 【鹿児島県】
 いぶすき秀水園▽指宿白水館▽指宿海上ホテル▽霧島国際ホテル▽指宿フェニックスホテル▽霧島いわさきホテル▽城山観光ホテル▽霧島ホテル
 
 【沖縄県】
 カヌチャベイ&リゾート▽ホテル日航アリビラ▽沖縄かりゆしビーチリゾート・オーシャンスパ▽ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾート

17年は116万人目指す、JTB国内旅行企画が担う(サンライズツアー)

大谷恭久社長
大谷恭久社長

 JTB国内旅行企画(大谷恭久社長)とJTBグローバルマーケティング&トラベル(JTBGMT、座間久徳社長)は9月13日、東京都内で「2017年サンライズツアー商品発表会」を開いた。これまでは、JTBGMTがサンライズツアーの企画、造成、販売までを一元的に行っていたが、今年から企画・造成機能を、JTB国内旅行企画が担う。なお、2017年の販売目標は、前年比260%増の116万人を目指す。

 また、訪日旅行者向け商品として現在、「サンライズツアー」と、アジアからのリピーター客向けに、リーズナブルな商品を展開する「エクスペリエンスジャパン」の2ブランドが併存している状態だったが、17年度からはサンライズツアーにブランド統合することを発表した。JTB国内旅行企画の大谷社長は、このほどの企画・造成の運営体制変更について「北海道から沖縄まで全国に拠点を持つ、JTB国内旅行企画が企画・造成を担うことで、日本全国を面で捉え、日本全国の商品ラインナップが可能となる」とし、地方分散に向けた取り組みを強化していくと述べた。

座間久徳社長
座間久徳社長

 17年の販売拡大に向けた取り組みとして、JTBGMTの座間社長は、(1)オンライン販売を強化(2)海外エージェンシー営業の拡大(3)日本到着後の予約取り込みの拡大――の3点を挙げ、「今後はツーリストインフォメーションセンターや、JTBの国内支店を利用し、対面販売も強化していく」と語った。

 17年のサンライズ商品は(1)マルチデーツアーズ(2)デートリップス(3)トレインパッケージ(4)フリー&イージー(5)エキストラス――の5つのカテゴリーを設定。英語・中国語の通訳案内士が付く、日帰りバスツアーの「デートリップス」では、ガイドとともに歩いて観光地を巡る「小江戸川越 古き良き日本の町並み散策(新宿発)」などを設定。宿泊付周遊型商品の「マルチデーツアーズ」では、日本航空の国内線を乗り継ぎ、北海道・青森・金沢・大分・沖縄・富士山など日本の主要観光地を14日間かけて巡る「JALで行く日本一周14日間の旅」を用意した。

 さらに今までのサンライズツアーにはなかったフリープラン商品の「フリー&イージー」は、FIT化が進むなか、リピーター客からの「もっと自由に旅行がしたい」という声を踏まえ、レンタカー+宿泊や、2次交通+宿泊などのセット型商品を提供する。そのほか「トレインパッケージ」は、新幹線を利用した東京・大阪・京都を発着地とした商品で、JR6社が提供するジャパン・レール・パスでは対象外となっている「のぞみ」を利用したパッケージツアーも多く取りそろえた。

 最後に素材型商品「エキストラス」では、オプショナルプランとして、外国人向けの夜のアクティビティの充実をはかるため、東京・日本橋の明治座で行われている「ナイトミュージカルショーSAKURA―JAPAN IN THE BOX」や、「ヘリコプター夜景観賞」などのナイトツアーも拡充させた。

 商品発表後には、エキストラスでオプショナルプランの1つになっている、和風マジック「手妻」が披露され、目の前で繰り広げられる所作の一つひとつに感嘆の声が上がった。

手妻を披露
手妻を披露

10年後の未来を議論、発足60周年記念シンポ開く(長野県・飯島町)

下平洋一町長
下平洋一町長

 長野県上伊那郡飯島町(下平洋一町長)は9月17日、飯島町文化会館大ホールで、発足60周年記念シンポジウム「つなごう未来へ」を開いた。飯島町は、NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)が2014年11月に、「第5号ふるさとオンリーワンのまち」に認定。この縁もあり、パネルディスカッションでは、同NPOのメンバーと、下平町長をはじめとする地元の代表者らが「10年後の飯島はこうなる!?」をテーマに、意見交換を行った。   

 下平町長は冒頭、「60周年といえば、還暦にあたり、本当の大人の感性、感覚が身についてきた年」とあいさつし、「現在さまざまな地域で消滅可能性の危惧もあるが、飯島町の特徴である農地を管理することは非常に大事なこと」と強調した。「2つのアルプスに囲まれた自然豊かな田園地帯は、今は稲が金色に実り、ソバの花が銀色に咲いている。この素晴らしい景観は、地域の人たちが守ってきた。地方創生へ、新しい町づくりに町民の皆さんとともに挑戦していきたい」と呼びかけた。

 さらに下平町長は「飯島町は10年後大きく変わる。その最大の要因は、リニア新幹線の駅が飯島町の近くにできる計画だ」と話し、「飯島町はリニア駅の奥座敷となるが、今から準備をしなければ都市部に住民が流れてしまうこともある。飯島町にはさまざまな魅力があり、それを発掘し、田舎の底力を見せるために、子供たちが誇れる、希望のあるまちに皆でしていこう」と住民の総参加を求めた。

 続いて、松下寿雄町議会議長は「シンポジウムの1部は飯島町の子供たちに未来を語っていただく。2部はNPO法人ふるさとオンリーワンのまちの方々を迎え、飯島町の将来を語り合う場になっている。未来へつながるアイデアを期待している」と述べた。

 子供たちの意見発表では、町内の小・中学生6人が「小さくても輝きのある街にしたい」など、未来の飯島町への想いや願いを発表。その後、小学生がアトラクションダンスを披露した。

パネルディスカッションのようす
パネルディスカッションのようす
津田令子理事長
津田令子理事長

 第2部のパネルディスカッション「10年後の飯島町はこうなる!?」では、NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長で、トラベルキャスターの津田令子氏が司会進行を務めた。パネリストには、飯島町から下平町長をはじめ、地域おこし協力隊員の竹馬慶宣氏、いいじま文化サロン会長の松村まゆみ氏、WAVE代表の片桐剛氏、KOUSEI代表の森光星氏ら、農業や文化、IT、建設業などさまざまな分野で活躍する地元の代表者が登壇。

 一方、NPO法人からは、秋山秀一氏(旅行作家)、竹村節子氏(温泉旅行作家)、古賀学氏(松陰大学教授)、増田剛氏(旬刊旅行新聞編集長)が出席した。

 秋山氏は「子供たちの意見発表でも語られた『小さくても輝きのあるまち』は、海外にはたくさんある。そこに住むお年寄りや子供たちも輝いている。この飯島町にもそのような輝きを感じる」と語った。

 竹村氏は「観光だけが人を集める手段ではない」と述べ、「周辺地域とは違う、ここにしかない財産は何かという部分にもう一度目を向けてほしい」と訴えた。また、「私の知り合いも飯島町に移住している。それだけ居心地の良さをもっている地域なのだなと思っている」と話した。

 古賀氏は「一つひとつの自然景観や農産物などは素晴らしいが、例えばユリの花と音楽など、さまざまな組み合わせる視点も大事」とアドバイスした。

 増田氏は「若い世代が旅をしないと言われているが、これからの飯島町を担う子供たちは東京や名古屋ばかりに目を向けるのではなく、世界を旅し、広い視点から自分たちのまちの将来を考えてほしい」と述べた。

 津田氏は「飯島町に20年間魅せられてきたが、今日子供たちの発表を聞きながら、また新たな感動を覚えた」と語り、「飯島町には3つの間(あいだ)がある。都会にはない、ゆったりとした『時間』、2つのアルプスに囲まれた自然豊かな『空間』、そして、人と人との距離感の『人間(じんかん)』が心地いい。この3つの間を守りながら、10年後の未来に期待している」と締めくくった。

シンポ後に記念撮影
シンポ後に記念撮影

アニメツーリズム協会設立、“聖地”軸に広域観光創出へ

トレードマーク
トレードマーク

 「アニメツーリズム協会」(富野由悠季理事長)が、9月16日設立された。今若い世代を中心にアニメや漫画の舞台を「聖地」と呼び、そこを巡る「聖地巡礼」が大きなブームになっている。このブームは、外国人が日本を訪れるきっかけになることもあり、観光地ではない地域にも多くの人が集まることで地域活性化につながる自治体もある。同協会は今後、アニメ聖地を88カ所選定し、それらをつないだ広域周遊観光ルートを官民一体となって造成する。
【後藤 文昭】

 同協会は、日本全国に点在する、アニメやコミックの聖地のプラットフォームとなり、広域周遊観光ルートを造成。海外・国内のジャパンコンテンツファンへ発信し、地域への観光客を増やす官民連携の推進母体としての役割を担う。「日本の知的財産と、世界中の観光客、地域(聖地)を束ね、アニメ聖地を軸にした観光資源の掘り起しと、広域観光ルートの創出」を使命とし、2020年には各地域に国内外から年間400万人の送客を目指す。

 アニメーション映画監督の富野由悠季氏が理事長に、日本動画協会の石川和子理事長とKADOKAWAの角川歴彦会長の2氏が副理事長に就任した。理事にはJTBの坪井泰博取締役と、成田国際空港の夏目誠社長、日本航空の藤田直志副社長、やまとごころの村山慶輔代表、大正大学地域構想研究所の清水愼一教授、KADOKAWAインバウンド推進部の森好文部長(事務局長兼任)らが名を連ねる。

(左から)上住氏、村山氏、夏目氏、角川氏、富野氏、坪井氏、藤田氏、森氏
(左から)上住氏、村山氏、夏目氏、角川氏、富野氏、坪井氏、藤田氏、森氏

 同協会はアニメ聖地を、(1)アニメや漫画の舞台やモデルになった地域や場所(2)作家ゆかりのまちや生家、記念館(3)作品などに関連する博物館と建造物、施設――と定義した。12月31日までアニメ雑誌「Newtype」の協力を得て、「おすすめのアニメ・マンガ聖地」を専用サイトで募集。同サイトは日本語と英語、中国語(繁体字・簡体字)、タイ語、マレー語に対応しており、これをもとに17年度中に88カ所を選定。日本全体を聖地でつなぐ「エンターテイメントパーク」にし、旅行前から旅行後までのすべての時間軸で観光客に日本ならではの「アニメパーク」体験を提供する。

 400万人の送客達成に重要なことは、「地域と、日本の知的財産や観光に関わる企業の密接な連携」に加え、「外国人観光客の目線を持つこと」が大前提になる。そのうえで同協会は、地域と企業、著作権者をつなぎ、その土地のコンテンツを活用したサービスや商品の提供を促進していく。同時に受入環境を整備することで、新たな経済効果を創出する。聖地とされる地域では、観光資源の発掘や観光客による消費増、広域連携による送客連携などの波及効果が見込め、地域活性化につなげていく。

 9月16日に東京都内で行われた会見で富野理事長は、立ち上げた経緯を「アニメから得たモチベーションを単に心に留めておく以上に、外に向かって発信して行くことで、体験にまで育てていきたいと考えた」と説明。ビジネスの成功が無ければ、文化への貢献が得られないとし、「アニメツーリズムを通じて21世紀の日本を広く海外に理解していただき、相互協力の花を咲かせてほしい」と語った。

 観光庁の田村明比古長官は、地方消費の拡大やリピーターにつながることなど協会の活動の観光面での利点について話した。また「典型的な観光地ではないところにスポットライトを当てる」面でも同協会の取り組みを評価した。

 聖地巡礼は、多くの観光客を集められる。アニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台となった茨城県・大洗町は、同作品の放送をきかっけに多くの観光客が訪れ、観光収入増にも貢献している。自治体でも聖地巡礼を観光に活かすため、箱根町観光協会が「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」とタイアップした観光パンフレットを作成するなど、取り組みの先行事例は多い。

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 一方で、聖地巡礼中の私有地への立ち入りや、コスプレをしての写真撮影、ゴミの放置などに対し、地域住民が不安になったり、苦情が出たりするケースも報告されている。

 森理事はこれらの問題について「成功している自治体の話を聞き、全体でどうするかを考えたい」と述べた。田村長官は「マナーの問題を乗り越えて、住民の方々と旅行者が共存できる社会になることが、観光先進国に向けて重要なステップだ」とコメントした。

 地域によっては、聖地巡礼に積極的ではない地域もある。また、聖地巡礼による効果を持続させ、続けられる自治体も少ない。成功した自治体のなかには地域住民の協力と理解を得て、住民参加型の聖地づくりを行っている。観光素材としてアニメ聖地が魅力的な場所となるために、地域住民も参加したくなる取り組みが生まれていくことにも期待したい。

【特集No.442】扉温泉・明神館時代のニーズに合った施設づくり

2016年10月1日(土) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第6回は、長野県松本市・扉温泉の明神館会長の齊藤茂行氏が登場。周辺の温泉旅館が大型化するなかで、「売上を伸ばしながら利益を確保するのが経営」との信念で、時代のニーズに合った施設づくりを続けてきた明神館の取り組みを語り合った。

【増田 剛】

 ――明神館の歴史から教えてください。

 齊藤:大正のころですが、私の祖父が入山辺村の村長だった時代に、農繁期が終われば温泉でゆったりとできる村営の宿泊施設を建てました。しかし赤字経営が続いたため、1931(昭和6)年に祖父が責任を取るかたちで、会社を作り、宿泊施設を買い取ったのが始まりです。その後、父の妹(叔母)たちが学校に通いながら、自炊湯治宿として切り盛りしていましたが、戦後になって父が経営を担いました。

 内藤:齊藤会長が宿に戻られたのはいつですか。

 齊藤:東京の大学を卒業した1970年ごろで、当時の宿は襖で仕切られた鍵のない部屋が11部屋ありました。
 私は父を説得し、1億5千万円を投資して手前の敷地に、新たに8部屋の宿を造りました。高度経済成長期のころで景気も良かったのですが、その後オイルショックが来ました。宿を新築したのは、第1次と第2次オイルショックの狭間でした。
 このため私は、営業に出て、名古屋、関西、東京の旅行会社を回りました。当時、冬期の閑散期対策として、京都の旅行会社に1泊3500円のバスプランを提案すると、この企画が大ヒットしました。宿の周辺から山菜やキノコなどを採って来て、天ぷらにして提供すると、京都から訪れたお客様は喜んでくれました。原価は1割以下でしたね。翌年には他社からも「5千円で受け入れてくれないか」といったオファーがあり、あっという間に1泊1万円まで上がっていきました。
 当館には作家や学者の方々も逗留されており、さまざまなメディアに発信されたことも、大きな宣伝になり、幸運だった部分もありました。料理は東京や京都で提供される食材ではなく、地元の山菜やコイ、イワナなどを使っていました。ある文化人の先生は、当館の家庭料理の延長線上にある「おふくろの料理」を美味しいと書いてくれました。のちに板前を入れましたが、「明神館は料理が美味しい」というイメージの浸透につながっていきました。また、女性誌などに当館が掲載されると、若い女性が多く訪れました。

 内藤:高度成長からオイルショックを経験し、その後バブル期を迎えますが、多くの宿は大型化に向かいました。この流れに対してどのような姿勢でしたか。

 齊藤:近隣の浅間温泉や美ヶ原温泉では、次から次に近代的な大型旅館が建ち始めていました。私も宿を大きくしようと考えた時期もありましたが、経営にとても慎重だった父は宿の新築に反対で、私と父は考え方がずっと対立していました。ですから、次に増築をするのに7年ほどかかりました。その後も5年ごとに現在まで計7回増改築を繰り返しています。
 そのなかで2万円の客室を新たにつくると、これまで1万円に設定していた客室も、少し改装するだけで1万5千円の料金でも来てくれるようになりました。
 宿に続く細い山道は、冬は雪崩が起こると商売ができません。雪かきなども大変でした。冬場はつらかったですが、5月の連休後から11月まではコンスタントにお客様が来てくださるように、さまざまな努力をしました。

 内藤:周辺の温泉地の旅館が大型化するなかで、小規模のままの明神館はどのように見られていたのですか。

 齊藤:周りの経営者からは「よくぞあんな小さな明神館に多くの宿泊客が訪れるね」と感心されていました。
 商売というのは、利益を出すことが最も大事です。いくら大型旅館を建てても、「経営者がきちんと報酬を得なければ、経営とはいえない」というのが、若い時からの私の持論です。
 私たちはお客様を喜ばせることによって利益を得る商売をしています。お客様を喜ばせるためには、利益や報酬を得ることが大事で、宿を大きくすることが最優先ではありません。大型化よりも、むしろ高級化することで利幅を大きくし、「売上を伸ばしながら利益を確保するのが経営」という信念でやってきました。
 そのためには、リピーターを作ることが大切です。どうしてお客様が当館に来てくださるのか、そこを考えなければなりません。単なる偶然でお客様が来るのではなく、アクセルを踏めば前に進み、ブレーキを踏めば止まる自動車のように、「こういう客室を、この金額で提供すると、このような客層に支持される」といったような具体的な想定を細かに考えながら商売をやってきました。また、息子(齊藤忠政・現社長)の経営判断で、松本城に面した松本丸の内ホテルを買収し、レストラン「ヒカリヤ」や「懐石花とびら」などを開業しました。そのほか、新浅間温泉にある20室ほどのホテルを改装して、社員寮にしました。

 内藤:無理に大型化せずに、その時代に合った設備投資を徐々にやっていくなかで、お客のニーズの変化に対応できていったということですか。

 齊藤:そうですね。数寄屋造りなど、その時代に合った施設をつくっていきました。マントルピースを備えたリゾート風の客室もありますが、最近畳とベッドの部屋に改装しました。時代によってお客様が宿に求めるものが変わっていきます。一度に大規模なものを造ってしまうと、装置産業の場合、動きが取れなくなります。今は高齢者のお客様が多いので、ベッドのある客室から先に予約が入っていきますので、ベッドルームを増やしています。連泊される場合でも、畳では横になりづらいですが、ベッドならゆっくりと休めます。
 70代にもなると夜中布団から起き上がって暗闇の中でトイレに行くのも大変です。また、一度部屋を明るくすると眠れなくなってしまうこともあります。このため、お客様が照明を調節できるように、客室に照明のコントローラーを付けました。
 料理も同じように、時代とともにニーズが変わっていきます。高度成長の時代は宿に「京料理」が求められていたので、京都から料理人を迎え入れました。今の時代は地産地消にこだわり、「この地で採れたものですよ」と説明しながらのメニューの方が喜ばれます。
 グループ会社が経営する静岡県伊豆・大滝温泉の「運龍」は、館名に“地魚の宿”を加えました。朝食に出すひものも、最近は1種類ではなく3種類出しています。このようにお客様のニーズに合わせて、食材やメニューを柔軟に対応していくことは、小型旅館の方がやりやすいですね。一方、大型旅館であっても、オープンキッチンでビュッフェスタイルなら、少量でも地元の食材を出しやすくなります。
 若い世代の所得が増えないなか、小さなお子さんがいる家族連れのお客様も、高級な御膳での提供よりも、ビュッフェスタイルで、好きな料理を取って食べられるスタイルの方が楽で、支持されます。

 内藤:明神館には立ち湯のお風呂もありますが、これも時代に合わせて造られたのですか。

 齊藤:息子の提案でバリのリゾートなどに行くと、ホテルにプールがあります。一方、日本の温泉地には大浴場があります。多くの日本旅館は、庭に鯉が泳ぐような露天風呂を造ってきましたが、私はもっとお洒落な方がいいと思い、直線でデザインした立ち湯を思いつきました。汗を流すお風呂に加え、心を癒す、リゾート風のお風呂も別に造ったのです。そのほかにも、リッツ・カールトンなどを参考に、客室2部屋を「クラブラウンジ」に変えました。

 内藤:明神館には和食だけでなく、フレンチのレストランもありますね。

 齊藤:息子が10年ほど前にアイデアを出し、取り入れました。お客様からは高い評価を得ています。

 内藤:レストラン業もやられていますが、旅館とレストランは、似て非なるものです。レストランは基本的に予約の無いところでのオペレーションが中心ですが、旅館の厨房は大型宴会など、予約のあるなかでのオペレーションが主です。旅館とはまったく異なるオペレーションのレストランを始めたのはどういう考え方からですか。

 齊藤:結局、旅館で板前を雇用すると、“予約ありき”の料理しか作らなくなります。一方、レストランは予約なしで10人くらい一度に来られることもありますが、満席でなければ基本的に来客を断る店はありません。レストランでは普通に対応している柔軟な対応力を、宿の厨房スタッフに知ってもらいたかったというのが大きな理由です。
 レストラン(ヒカリヤ・懐石花とびら)と、宿の厨房のスタッフが常に入れ替わり、レストランの感覚をつかむことで、前向きな解決策を探ってもらおうと考えました。

 内藤:従来の旅館のオペレーションに疑問を持たれ、レストランのオペレーションを旅館の中に入れたいと、意識的に行われたわけですね。
 今後の旅館業界をどう見られていますか。

 齊藤:お仕着せの1泊2食のサービスは難しくなるのではないかと思っています。1泊2食でも、提供する料理の3分の1はお客様が選べるように対応するのも一つだと思います。
 客室だけでも利益を得られる料金体系とし、一方、料理部門も「3品で5千円」といった設定を用意し、少しでも利益を得ていくようなかたちがいいのではないでしょうか。
 大事なのは、お客様に選択していただくことです。逆に言うなら基本をホテル型にして、オプションで「1泊2食」のパッケージプランを作ることも一案です。
 宿泊のみで1人1万5千円、2人なら3万円(スリーベッドまで可能)などと設定して、和食や洋食のレストランを用意する。そのうえで、宿泊客が予約なしでレストランに入っても対応できる厨房スタッフの習慣をつけていれば問題ないと思っています。
 朝食も、少人数の厨房スタッフで対応できる「ビュッフェスタイル」でいいと思っています。これからは、旅館は短時間で生産性をどうやって上げていくかが勝負だと思います。
 加えて、当館でも、宿の周辺の山で採れた食材の提供などは、これまでも取り組んでいましたが、せっかくある豊かな自然環境を、宿泊客の「癒し」として、もっと活用できると考えています。滞在中に少し歩いて、川で魚釣りができるように釣り竿を貸しています。お客様が喜んで魚を持って帰ってきたら、料理をしてあげればいいのです。電気自動車(EV)のレンタカーサービスも行っているので、バスで来られた宿泊客がクルマを借りて、松本市内や周辺の美しい山道をドライブできるような準備もしています。リゾートのアイテムをどうやって重ねていくかということが大事だと思っています。

 内藤:お仕着せではなく、宿にたくさんのアイテムがあって、お客が自分で選択し、自由に組み合わせができるようにしていくということですね。

 齊藤:そうです。お仕着せのものはすぐに飽きられると思います。団体客なら、お客様同士で楽しもうとされますが、夫婦や家族旅行では、周辺の環境や宿が、自分たちをどのように「非日常の世界」で楽しませてくれるのかを期待して来られます。
 目の前の川で魚釣りができる用意や、テラスで読書ができる空間づくりが大切になってきます。自然に囲まれたデッキや、テラスでくつろいでいるときに、お客様がドリンクやスイーツを求められたときに、すぐに提供できる商品づくりも必要です。

 内藤:明神館では随分早くから従業員に社会保険を完備されていました。多くの旅館はなんとなく家族主義的な部分が残りながら大きくなったため、企業的な経営が追いついていない印象を受けますが、これからの旅館の企業経営的な部分でお考えになっていることはありますか。

 齊藤:当館でスタッフを預かっている責任のなかに、一般企業で働いている人と同じ土俵に乗せて上げるということを考えています。ただでさえ、旅館は拘束時間が長いなかで、優秀な人材を育てていくという視点からも、社会保障をきちっと整備しなければならないと思っています。
 今年は新卒で11人が入社しました。何人かは辞めてしまうかもしれませんが、残ってくれたスタッフには、いずれ支配人や部長、課長などの幹部になってほしいと思っています。
 とくに若いスタッフには「ピープルビジネス」の素晴らしさを教えてあげることが大事です。残念ながら、これまでサービス産業には専門に勉強できる学校がなかった。私は青年部のころから「いずれ海外から多くの旅行者が日本を訪れ、大きなお金を落とすようになる」と言い続けていましたが、国はサービス産業を少し軽く見過ぎていたと、今でも感じています。

 内藤:サービス産業の人材育成の議論もずっとされていますが、なかなか進まないですね。

 齊藤:文部科学省の認可がいらない、大学校でもいいので、一刻も早くサービス産業の経営と現場を理論的に学ぶ場が必要です。旅館の経営者は従業員を雇うだけでなく、長期にわたって人生設計ができるだけの雇用環境をつくり、いかに幸せにするかを考えなければなりません。

 内藤:おっしゃる通り旅館、サービス業全体に企業経営という考え方を入れなければならない時期が迫ってきています。
 労務問題についてはどうお考えですか。

 齊藤:避けて通れない問題ですね。我われ旅館がきちんと雇用環境を守り、その積み重ねで気が付いたら旅館で働いていて良かったと思えるようにするには、やはり労務問題は避けて通れません。旅館はコンプライアンスのなかで仕事をしており、いい人材をつくるということにつながっていきます。
 宿にとって一番怖いのは、スタッフがすぐに退職して出入りすることです。ものすごく大きな損失です。「1年目は赤字、2年目はトントン、3年目に1年目の損した部分を返してもらい、4年目になってようやく自分は会社に貢献していると、胸を張ってほしい」と新卒で入社してくるスタッフには言っています。

 内藤:各社の労働時間のデータを見ていると、新人が入るとそれが大きく跳ね上がります。教える側も戦力にならなくなります。

 齊藤:新人スタッフには1カ月くらいきちっと勉強させて、それから現場に出すようにしないと、一昔前のように「見て覚えろ」なんてことは無理です。今は母親が台所で料理をしているそばで下ごしらえを手伝ったり、食卓の準備をしたりする子供はほとんどいません。旅館でお客様を迎え入れるには、まずは、そこから教育しなければならないのです。

 内藤:長く勤めてもらうためにどのような努力をされていますか。

 齊藤:さまざまな評価基準の中で、スタッフがランクを上げていくことも、モチベーションを上げる大きな動機となっています。

 ――時代の空気感を読み、その時代に合ったニーズを提供する嗅覚はどのように磨かれていますか。

 齊藤:それは、旅をすることです。旅をしてサプライズを受け、そのサプライズを自分のものにすることです。そして実行することです。旅をして感銘を受けたら、宿に帰って1つでも実行する。本を読んだら、すべてをやろうとするのではなく、1つでも実践してみる。そのようにして、お客様が感激したアイテムを1つずつ増やしていく。この積み重ねだと思います。

 内藤:経費を投資と捉え、どう回収していくか。経費なら減らせばいいが、経費を投資と判断するならば、どう回収するかという考え方ですね。

 齊藤:経費と捉えれば、どんどん削っていき、チープ化していきます。そうではなく、削らずにお客様が感動したり、喜んでくれたりして、また来てくれればいいのであって、100円をケチったために、1万円を得ることを逃すようなことはしない方がいいと思っています。

 内藤:10%を利益として取って、残りの90%をどうお客に返すかということを考える発想が大事で、多くの経営者はお金をどう取るかを考えがちです。労働生産性も同じで、1分、1秒かけた時間とお金を、どう回収するかという観点が要諦なのです。それを、「人件費は経費だから安くなればいい」などと思わないで、投資であり、どう回収するかという視点がとても大事だと思っています。

 齊藤:まったくおっしゃる通りですね。

 ――ありがとうございました。