パソナ・加藤副部長に聞く シェアリングワークと観光

2018年4月23日(月) 配信

ソーシャルイノベーション部 加藤遼副部長

6月の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行を控え、シェアリングエコノミーを活用した「シェアリングワーク」に注目が集まっている。総合人材サービス業を行うパソナ(佐藤司代表取締役社長COO)は、阿波踊り期間中のイベント民泊実施や「シェアリングワークカレッジ」などを通じ、定着に注力している。事業の中核を担うソーシャルイノベーション部の加藤遼副部長に、個人の活躍が観光業をどう変えるのか、育成はどこまで進んでいるかを聞いた。

  ――日本で「シェアリングワーク」の環境はどこまで整えられていますか。

 住宅宿泊事業法や、改正通訳案内士法の施行など法整備が進み、個人が自身の知識やスキル、資産を生かした「シェアリングワーク」に参入できる環境は整いつつあります。しかし、サポート体制が充実しているとは言い難い状況です。今後、個人で事業を行ううえで必要な教育研修や、業務支援などのメニューをまとめて提供していくことが求められるでしょう。パソナは人材サービス会社として、新しい働き方を推進するセミナー「シェアリングワークカレッジ」を開催しています。

 ――以前から「シェアリングエコノミーは、個人が主役」と強調されてきました。個人は育っていますか。

 シェリングエコノミーは本来、個人から発信されるべきトレンドです。一方、これまでは、マッチングを仲介するインターネットサイト会社などから発信されるケースがほとんどでした。主役である個人の育成・活躍が今後の課題といえます。

 ――なぜ育たなかったのでしょうか。

 サービスが先行して広まり、チャレンジしたい個人の発掘、安心安全に働けるような教育研修、業務支援といった本来先行すべき部分ができなかったのではと感じています。とくに、〝シェアリングワークへのチャレンジ意欲醸成〟は早急に取り組むべき課題です。

 地域住民やコミュニティとすでに信頼関係を構築している自治体や地域団体と連携した情報の発信が必要です。挑戦して「楽しかった、よかった」という個人の体験を語らうことも有効なので、好事例をたくさん作る必要がありますね。

 ――興味があれば挑戦し、楽しさを実感することも必要ですね。

 その通りです。地域のお祭りやイベントなど、ある一定時期に宿泊施設などが足りなくなると予想される際に行う「イベント民泊」は、利用者が来ることが見通せるので、挑戦のきっかけとして取り入れる自治体も出てきました。とくに地域住民に愛されているイベントは「楽しんでほしい」「自分もなにか貢献したい」という気持ちがあるため、シェアリングワークに携わるきっかけになりやすいです。

 ――民泊など、観光分野に関わることも多いです。今後「シェアリングワーク」は、観光をどう変えるのでしょうか。

 個人で観光サービスを提供する人、個人が提供する観光サービスを求める人、双方が増えていくでしょう。「人との交流やつながりを構築するのが旅の醍醐味」と考える人や、旅先でつながった人と新しい活動をする人が増えています。旅人と地域住民が交流する「人に会いに行く旅」を提供するのが観光事業になると考えています。今後は、これにあわせた観光業界なりのサービスをどう作るかが大事になります。 

 ――観光面では、「人が最大の観光資源」と話されています。これもシェアリングワークにつながっていますね。

 既存の観光資源は、人を加えることで輝きを増します。有名な文化財なども地元の人の説明が無ければよく分からず帰ってしまうことが多いですが、説明が加わると違って見えてきます。

 ――一方で、旅先で人と出会うのはむずかしいようにも感じます。

 観光案内所が、地域の魅力的な人を紹介することも必要だと思います。地域紹介ができるのは職員だけではないので、住民全員が観光協会の職員になるイメージです。魅力的な人がどんどん可視化され、旅行者は、彼らが提供するガイドやホームシェアを活用し、より深い情報が得られるという循環が生まれると面白いですね。

 ――ありがとうございました。

高さ6㍍の「ペヤングタワー」 東名・足柄SAに7月1日まで

2018年4月23日(月) 配信

高さ6㍍のぺヤングタワーが登場

中日本エクシス(青山忠司社長、名古屋市中区)は2018年7月1日(日)まで、E1東名高速道路「EXPASA足柄(下り線)」内でカップ焼きそばの「ペヤング」を満喫できる期間限定イベントを開催している。

 即席ラーメン・スナック麺の製造販売大手のまるか食品(群馬県伊勢崎市)製品の「ペヤング」が、EXPASA足柄(下り線)を丸ごとジャックすることによって、来場者に「面白い」「インスタ映え」「拡散」といったキーワードで満足してもらえることを目的とする。

 イベントの目玉は、ビル2階分に相当する高さ6㍍の富士山型「ペヤングタワー」。圧倒的な存在感で来場者の足を留めさせるとともに、SNS拡散という「体験」を自然に演出する。

イベント概要

日程:2018年4月14日(土)~2018年7月1日(日)

会場:E1東名高速道路 EXPASA足柄(下り線)

住所:〒410-1315 静岡県駿東郡小山町桑木603-18

主なイベント紹介

▼ペヤングタワー

 高さ6㍍の富士山型のペヤングタワーを設置し、来場者の注目を集める。さらに、SNS拡散での認知拡大を目指す。

▼ペヤング匂いゲート

 やきそばの香りのゲートでお客様に“コト”づくりを提供し、SNS投稿を促進する。

▼ペヤングフォトスポット

 思わずシャッターを押したくなる「インスタ映え」スポット。見た人みんながビックリする、面白写真が撮影できる。

公式サイト:

問い合わせ

イベント運営事務局

tel03-5500-6075(受付時間 午前10:00~午後6:00)

「女将のこえ209」山口 由紀さん、グランディア芳泉(福井県あわら温泉)

2018年4月22日(日) 配信

 

山口由紀さん グランディア芳泉

3世代が笑顔で活躍

 大女将の君子さん、女将の由紀さん、若女将の良子さん。3世代が活躍する旅館は意外と珍しい。3人そろって取材にお付き合いいただいたのだが、互いを敬う、世代を超えた人間関係の良さが伝わってきた。
 

 毎日、3世代家族そろって賑やかに夕食を取るそうだ。君子さんは、由紀さんを実の娘より可愛いと言い、良子さんを実の孫より可愛いと言う。目上の人間から先に人を可愛がるのは、伸びる組織の共通点である。
 

 グランディア芳泉は、初期の頃は町の中心部で営んでいたが、庭と駐車場のあるゆったりした宿にしたいと願い、1972年に少し離れた田んぼの真ん中に引っ越した。
 

 同時に、女性より男性風呂が広いのが当たり前の時代に、同じ大きさの大浴場を併設。後に、全国に先駆けて露天風呂付き客室を12室設け、連日満室にした(現在は同33室)。「まずやってみる」という柔軟性と先見性を持つ旅館だ。
  

 今では115の客室と、コンベンションホール、昨年リニューアルした大浴場「天上のSPA」、別邸「個止吹気(ことぶき)亭」、離れ「ゆとろぎ亭」などを有し、団体客、個人客、カジュアル、高級と、多様なニーズに対応する。
 

 由紀さんは旅行代理店で働いた後、22歳で嫁いだ。夜遅くまで働く定休日のない生活に驚くも、次第に由紀さんを訪ねて来館する顧客も増え、張り合いの一つになった。
 

 そして、息子の高澄(たかずみ)さんが望んで自館に入社し、数年後に嫁の良子さんを迎えたとき、さらには孫が生まれたとき、由紀さんのスイッチは明らかに切り替わったという。「それまではお嫁さん的な意識がどこかにありましたが、『よりよい形でバトンタッチを』と当事者意識になりました」。
 

 その一つとして、2年前から生産性向上活動にも力を入れている。例えば夕食時、レストランは2部制を止め、好きな時間に来てもらうようにした。派生して料理やシフトも見直す。これで毎日2時間を要したテーブルセッティングが不要となり、社員と顧客の満足が高まった。
 

 「新しい感覚に付いていくのは社員だけではなく私も大変でした。でも、社長である主人がみんなの意見を吸い上げる人なので活性化しますし、この半年で『今までと違う』と、成長を実感できるようになりました」。
 

 次世代の良子さんは、20代の若さで「この日本文化をつなげていきたい」と語る。由紀さんが将来目指す「よりよい形のバトンタッチ」は、やりがいと希望で縁取られているようだ。

(ジャーナリスト 瀬戸川 礼子)

山口 由紀さん

福井県
あわら温泉グランディア芳泉(ほうせん)

住所:福井県あわら市舟津43-26▽電話:0776-77-2555▽客室数:115室(700人収容)、一人利用可▽創業:1964(昭和39)年▽料金:1泊2食付1万8千円~(税別)▽温泉:ナトリウム泉▽由紀さんが会長を務める「あわら温泉女将会」のオリジナル日本酒「女将」は販売4年目。今月末にはyoutubeで動画もアップされる。

コラムニスト紹介

ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(159)」富山売薬と産業ストーリー(富山県富山市)

2018年4月22日(日) 配信

富山「産業観光図鑑」は、産業観光施設の一覧図鑑として毎年編集

 例年より1週間以上も早い桜の開花。3月末の富山市内松川べりは、満開の桜に沸き返っていた。その松川べりの県民会館で、今年で14回目を迎える「富山産業観光フォーラム」が開催され、参加させていただいた。

 富山は「世界で最も美しい湾」に認定された1千㍍級の深海富山湾と、背後に聳える3千㍍級の立山連峰が見事なコントラスを描く「海のあるスイス」を標榜している。その立山は、古来よりの信仰の山。立山宗徒たちは、布教のためのお守り札とともに、草木からつくった薬を全国に持ち歩いた。これが「富山売薬」のルーツである。現金の乏しい時代、薬を配置して翌年の訪問時に代金を回収するという「先用後利」のビジネスモデルの原点も、この宗徒衆にあると言われる。

 薬の富山(薬都)が有名になったのは、後の富山藩2代藩主、前田正甫公である。加賀百万石に対して、僅か10万石の分藩富山の殖産興業策として薬が注目された。良薬「反魂丹」は瞬く間に全国に広まった。

「越中反魂丹」の肩板が目印の池田安兵衛商店(富山市TOYAMA NETより)

 こうして富山の薬は、原料を扱う薬種商と、これらを全国に販売する売薬商、いわゆる「売薬さん」たちが活躍する全国一の薬都となった。北陸街道沿いには、金岡邸に代表されるような大きな薬種商の豪勢な建物が残り、今も観光の目玉の1つとなっている。薬種の確保には北前船も大いに活躍したが、中国産薬種の確保には、長崎貿易以外の薩摩の裏ルートを通じて中国にも広く展開した。この密貿易ルートは、今年のNHK大河ドラマ「西郷どん」に登場する薩摩藩の財政難解消の大きな資金源にもなった。

 富山は、今日、日本海側屈指の工業集積を誇るが、その背景には、明治以降、こうした薬産業から派生した製紙、紡績、印刷などの発展がある。さらに昭和に入って、機械、金属、化学、プラスチック、近年は電子機器やアパレルなどの多様な産業を展開させてきた。こうした産業クラスターの源流にあるのが、まさに薬産業である。

 今年のフォーラムでは、こうした富山の「産業ストーリー(物語)」をテーマに、富山国際大学長尾教授とも対談させていただいた。産業観光は、第1世代の1960年代の工場開放の時代から90年前後の大衆化の第2世代、それ以降の、産業観光事業自体が収益を生む第3世代まで発展してきた。すでに食品、飲料、繊維などの最終製品をもつ企業では、年間数10万人の観光客と数10億円の売上を稼ぐ企業もざらになってきた。産業観光の参加者は年間7千人を超え、ニューツーリズムの旗手にもなっている。

 今後は、産業観光をMICEなどインバウンド観光の切り札とすること、観光を通じた地域産業や技術の再生・リノベーションをどのように進めていくのか。つまり地域ブランディングとしての「第4世代」ともいうべき事業手法が求められている。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(4月号)

2018年4月21日(土) 配信

http://zoomjapon.info
クロード編集長

〈巻頭言〉

 フランスでは3月22日、政府が掲げる公務員改革に抗議するストライキが全国で決行され、推定約32万人がデモ行進に参加しました。1968年の同じ日、パリでは大学紛争が始まり、全国的な反体制運動「五月革命」の発端となりました。その頃、日本も激動の時代を迎えています。今月号の特集では、当時の大きな騒乱の舞台となった新宿に焦点を当て、この街が歩んだ50年を振り返りました。時事ページには、立憲民主党代表・枝野幸男氏の独占インタビューを掲載、旅行ページではこの季節の風物詩、日本のお花見事情を紹介しています。

(編集長 クロード・ルブラン)

特集 「新宿1968―2018」

磯崎新氏が設計したアトリエで横尾忠則さんにお話しを聞いた(2018年3月)

 1968年、世界のあちこちで学生たちの反乱が起きた。日本の学生や労働者による反体制運動も活発化し、10月21日、東京では「新宿騒乱」と呼ばれる事件が起こった。国際反戦デーのこの日、ベトナム反戦を訴える左派学生たちは角材を手に武装し、新宿駅を占拠。彼らデモ隊に2万人ともいわれる野次馬も加わり、駅は破壊され、大混乱となった。この出来事からちょうど50年たった現在、新宿駅は日本有数の巨大ターミナルに発展し、かつて駅西口方面にあった広大な浄水場には高層ビル群がそびえ、戦後の面影を残すゴールデン街には外国人観光客が集まるようなった。あの激動の時代、新宿は何を生み出し、何を失い、そして今の日本に何を残したのか。あの時代のキーマンたちに聞いてみた。■当時15歳だった四方田犬彦氏が目の当たりにした1968年の新宿、そして思想と文化。■街と時代を映し出す映画。「殺しの刻印」(1967年/鈴木清順監督)、「新宿泥棒日記」(1969年/大島渚監督)、「新宿マッド」(1970年/若松孝二監督)など、新宿は前衛作品の舞台として映画人たちを支えた。■前衛映画の先駆者、足立正生監督はあの時代をどう生きたのか。■飯塚俊男監督が語る三里塚闘争を撮り続けた小川紳介監督との思い出。■横尾忠則氏が走り抜けた新宿。大島渚、唐十郎、寺山修司、三島由紀夫など、同時代の巨匠たちとの交流と数々のポスターデザイン誕生の背景。

〈ZOOM・JAPON 編集部発 最新レポート〉国鉄ストライキの影響

SNCF職員が大規模なストライキ中

 政府の労働改革に抗議する仏国鉄SNCFは、今月から大規模なストライキを決行中です。6月末まで続行予定の大幅な間引き運転は、通勤・通学者や旅行客の足に影響を及ぼし、とくに高速列車TGV頼みの地方の観光業者には大打撃。この先、春休みや祝日が続く時期も間近に控え、今の状況のままでは倒産に追い込まれるという経営者も。そんな混乱の中で需要が伸びているのが、2015年に市場が自由化された長距離バスの格安サービスと、BlaBlaCarなどで知られる自動車の相乗りシステム。今後、地方を守るのは移動手段の多様化か、それとも鉄道の公共サービスか、注目です。

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

 

「トラベルスクエア」ホテルでもブライダルできるの?

2018年4月21日(日) 配信 

ホテルでのブライダルを知らない世代も

 宿泊業論という大学1、2年生向きの授業を受け持っている。宿泊業が対象の講座ゆえ、ホテル業と旅館業、その両方について基礎の基礎みたいなことを教えている。

 第1回は軽くホテル業って何を売るところ? という設問でスタート。

 当然、寝るところ、という返事は返ってくるのだけれど、他にどんなことができる? と再度問いかけてもはかばかしい返事がない。

 そこでホテルは泊まるためにお部屋を準備する宿泊部門と、レストランなど外食産業部門、それに集会や宴会などを売るバンケット部門というのがあって、皆さんが大好きなブライダル部門なんていうのも、この中にあるんだよ、と教えたりするわけだ。

 授業後、コメントシートを回収すると、びっくりするような回答が混じっている。たとえば、「ブライダルってホテルでもやれるんですか~」とか「ホテルにブライダルコーディネーターさんがいるなんて初めて知りました」というような。

 プロの方々には信じられないかもしれないが、高校生から上がってきたばかりの大学1、2年生などは、その程度の認識なのである。こういう感想が十枚どころじゃきかないことを知らせたい。

 彼女たちにとって、ブライダルはどこかの専門会館、ハウスで挙げるもので、ホテルなんて関係ないみたいに思い込んでいるふしがある。

 結構、こういうのって、ホテル業にとって大問題ではないかと思う。僕たち、ホテルに長く親しんでいる者にはホテルブライダルが常識だが、若い層にその認識が浸透していない。というより、単純に知らないのである。

 ホテル業も旅館業も、どうもティーンズマーケットへのアプローチが足りなさすぎると思う。ホテルは値段が高くて別世界のものという感じになって、すごく縁遠い存在になってきている。

 ホテルに憧れてもらおうと思っても、ロビーにすら一歩も踏み入れたことがない、というのでは話にならない。

 シティホテルの年間ブライダル獲得組数が年々、下降線を辿っているが、これは婚礼予備軍の絶対的人口不足のせいだけではないと思う。ホテルそのものの存在意義を若い層に知らしめる努力不足の結果ではないかと思う。

 商売は3つの「せ」で成り立っている。「知らせ」「来させ」「使わせ」だ。このうちのいちばん最初の「知らせ」が最重要だ。だって、どんなにいいものを作っても知ってもらわなければ買っていただくことなどできないのだから。だからこそ、これからのホテルマーケティングはティーンズに対しても「知らせ」「来させ」までしっかり企画をたてて誘客することが必要と痛感する。「使わせ」はその次にくる課題だ。

(跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健)

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年から跡見学園女子大学教授、現職。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

〈旬刊旅行新聞4月21日号コラム〉フラワーツーリズム 1年を通じ旅行動向の主流を形成

2018年4月20日(金)配信 

四季を通じて花を求める旅は続く

 先日、長野県伊那市の高遠城址公園の桜を見に行った。日本屈指の桜の名所として知られるが、なかなか訪れる機会がなかったが、ようやく長年の念願が叶った。

 日本列島は南北に長いので、3月下旬から5月上旬まで桜前線の北上に沿って旅をすれば、儚い桜の満開を再び愛でる機会が残されている。

 東京ではすでに散ってしまった時期に、仕事で東北を訪れた折、予期せず満開の桜と再会し、心動かされたことも思い出す。東北の桜は美しい。厳しい冬を過ごした人々の、長い待ちわびた春への強い想いが薄紅色の桜に投影されるからだろうか。近い将来、弘前城(青森県)の満開の桜を見てみたいという気持ちが強まってきている。高遠の桜を見たあと、南信州・阿智村の昼神温泉を訪れた。こちらも阿智川沿いに桜が満開であった。朝市広場を中心とした温泉街や桜並木には多くの観光客でにぎわっていた。これからの時期は、南信州に花桃が咲き誇り、全国から多くの人が訪れるだろう。

 花の名所は、全国各地に存在する。例えば、早春には静岡県・伊豆半島は河津桜を目当てに大型観光バスが列をなして向かう。菜の花とともに、伊豆の春の風物詩である。4―5月には埼玉県の秩父での芝桜も人気だ。富山県砺波市のチューリップフェアは国内最大級の花の祭典として有名である。福岡県北九州市の河内藤園の藤棚も根強い人気を持つ。6月の梅雨景色には首都圏近郊の箱根や、鎌倉では紫陽花が美しく彩り、観光客が押し寄せる。夏を迎えるころ、北海道では富良野のラベンダー畑を訪れるツアーが多数設定される。

 真夏は黄色いひまわり畑が壮観である。神奈川県座間市もひまわりが咲き乱れる。秋には秋の風情を求めて、箱根仙石原に広がるススキを、あるいは、日光のいろは坂など紅葉の名所を目指して、人々は大移動する。1年を通じて、フラワーツーリズムが旅行動向のメインストリームを形成している。花は、どうしてこんなに人々の心を魅了するのだろうか。きっとそれぞれの季節を最も全身全霊を込めて体現しているからかもしれない。

 大切な客人が訪れるとき、玄関先に花を飾る。客は花によって歓迎されている気持ちになる。レストランでも、旅館やホテル、個人の家でもそうである。希少な高級花であっても、人知れず野に咲く花を摘んで来て飾られていても、客をもてなす人の心が客に伝わってくることには変わりない。

 観光地の入り口に花が植えられていると、旅人は無意識のうちに親しみを感じるものだ。高遠は町に入った途端に、たくさんの桜が目に入って来た。千葉県房総半島の南端のまち・館山市もそうだ。道路脇に、町中に花が揺れている。沖縄を訪れると必ず心を奪われる風景がある。それは、青い空の下に咲く赤いハイビスカスの花だ。沖縄を離れた後も、赤いハイビスカスが旅人である自分を取り巻く現実を、夢の世界のように鮮やかにしてくれていた印象をいつまでも残す。流れる季節を麗しく体現する花を探しに、各地へ旅に出ようと思う。

(編集長・増田 剛)

観光白書(案)を議論 公表は6月上旬を見通す

2018年4月20日(金) 配信 

会の冒頭、田村明比古長官(左手)があいさつ

 

 観光庁は4月20日(金)に、2018年度版の観光白書(案)などを議論する交通政策審議会観光分科会(第34回)を開いた。観光白書は「17年度観光の動向」「テーマ章」「17年度に講じた施策」「18年度に講じようとする施策」の4部で構成。今回はテーマ章内で、観光と経済に関する話題を取り上げる。公表は6月上旬を予定する。

 田村明比古観光庁長官は会の冒頭、「観光が経済に与えるさまざまな影響を幅広く分析している。これまでなかなか目に見えにくかったことも少しずつ分かってきた」と話した。このほか白書には、住宅宿泊事業法(民法新法)や国際観光旅客税(出国税)などについても盛り込む。

 竹内健蔵分科会長は「観光白書は我が国の観光がさらなる高み目指すために作成する重要なものだ」と委員らに呼び掛けた。

 委員は次の各氏。

【委員】秋池玲子(ボストンコンサルティンググループシニア・パートナー&マネージングディレクター)▽木場弘子(キャスター、千葉大学客員教授)▽篠原文也(政治解説者、ジャーナリスト)▽竹内健蔵(東京女子大学現代教養学部国際社会学科教授)▽伊達美和子(森トラスト・ホテルズ&リゾーツ社長)▽田中里沙(事業構想大学院大学学長、宣伝会議取締役)▽野田由美子(ヴェオリア・ジャパン社長)▽屋井鉄雄(東京工業大学 副学長 環境・社会理工学院教授)▽矢ヶ崎紀子(東洋大学国際観光学部国際観光学科教授)

【臨時委員】秋田正紀(経済同友会 地域産業のイノベーション委員会委員長、松屋社長)▽大橋弘(東京大学大学院経済学研究科教授)▽奥直子(日本政策投資銀行企業金融第6部課長)▽恩藏直人(早稲田大学 理事・商学学術院教授)▽冨田哲郎(日本経済団体連合会審議員会副議長、観光委員長)▽マリクリスティーヌ(異文化コミュニケーター)▽山内弘隆(一橋大学大学院商学研究科教授)

ビッグデータから戦略練る 「テクノロジー通して革命を」 【エクスペディアHD 販売促進部長・森 美月氏に聞く】

2018年4月20日(金) 配信 

森美月販売促進部部長

世界の旅行者の3分の1が旅先を決める検討段階で、OTA(オンライン旅行会社)を利用している――。エクスペディアホールディングスはこのほど、OTAや旅行者に関する各種調査をとりまとめた。OTAは旅行者に浸透し、役割も変化している。一方、膨大な利用者のビッグデータを分析して、宿泊施設へ貴重な情報を提供。宿泊施設はこれらから戦略を練ることができる。今回、調査結果や取り組みについて、販売促進部の森美月部長に聞いた。【平綿 裕一】

 OTAはその規模を増している。エクスペディアグループをみると、17年の予約総額は16年比で13%増の10兆円となった。総予約室数は同16%増えた。現在、全世界で59万施設の取り扱いがあり、17年は同69%も伸びた。

 もともと同社は米国・マイクロソフト社の一部門として始まった。これまで米国に特化していたが、近年は欧州やアジア市場の開拓も進む。「日本は15年と比べ、17年は宿泊施設と営業部隊の数は3倍に増やしている」(森部長)と日本市場に力を入れる。

 このほか、技術開発への投資を成長戦略の柱に据える。17年は16年よりも200億円多い、1500億円を投資した。宿泊施設・利用者の両面のプラットフォームの改善を日々進めている。

 旅行者側の利用も増え、毎月のアクセス数は17年で6億7500万回(同12・5%増)にまで伸びている。

 「我われが目指しているものは、テクノロジーを通して旅行業界に革命を起こすこと。宿泊施設と旅行者のニーズを取り込みながら、進化を続けていきたい」。

OTAの役割の変化3分の1が検討時に

 一方、OTAが普及していくなかで、役割が変わってきた。世界の旅行者の3分の1が、検討段階でOTAを活用していることが同社の調べで分かった。

 「4、5年前には宿泊施設を予約するだけだった。今は、旅先を選ぶツールとしての役割が大きくなっている。旅行者は膨大な情報源から、上手く検索して自分に合うコンテンツを探している」という。

 国内市場も変化の兆しがみられる。「日本も海外OTAを国内で利用する人が多くなってきた。年々、OTA自体の概念が変わってきたと感じている」と振り返る。

OTAの役割も変化

写真でCVRが11%増

 旅行者は計画段階で、施設の掲載写真に対して関心を示す。「施設でどのように過ごせるか」をイメージするためだ。最低20枚以上であれば、転換率(CVR)が上がるといったデータもある。同社の調査によれば、写真の閲覧枚数はモバイルが平均35枚で、タブレットでは倍以上の平均75枚だった。

 米国旅行者の35%は、45日間で旅行サイトに平均140回アクセスして予約に至るという。予約まで毎日3回以上 見ている計算になる。

 写真タイプ別では、バスルームやレストラン、部屋などの重要度が高い。レストランや食事処は、口コミの10件に1件の割合で書かれている。「旅行者が期待しているポイントの1つ」だと分析する。  

 他方、1つの部屋タイプに複数の写真を掲載すれば、転換率は約11%上昇するといったデータもある。「さまざまなアングルやアメニティのほか、細かな部分も載せたほうがいい」とする。

口コミが予約動向を左右6―12件をチェック

 計画段階においては、口コミが予約動向を左右することが増えている。「旅行者からすると、掲載写真や料金体系などと同じぐらい必要なコンテンツになった」。

 調査では約半数の旅行者が、口コミの無い宿泊施設には予約をしないとの回答があった。旅行者は、平均して6~12 件ほどの口コミをみる。およそ画面1ページに表示されているものは、一通り目を通しているのだ。

 口コミへの対応も欠かせない。調査では6割以上の旅行者が、口コミに返信する宿泊施設を「予約したいと思う」と応えている。

 否定的な口コミに対しての返信も手は抜けない。評価の低い口コミに適切な返信をしていると、好印象になると回答した旅行者は約9割(87%)にまで上る。

満足度向上でリピート率40%向上

 同社によれば、満足度の高い旅行者は施設へのリピート率が40%向上する。宿泊前から滞在中にかけて、満足度が高い施設は、消費額が約1万円以上変わってくるという。「通常の平均消費額は457㌦だったが、満足度が高い旅行者は588㌦も消費している」。

 満足度向上には、利用者との交流がカギとなる。同社では旅マエから旅アトまで一貫したサービスで支援する。

 旅マエでは「EPC Conversations」を提供。すでに施設と利用者で600万件の会話、980万件ものメッセージのやり取りがある。

 旅ナカでは「EPC Real‐time Feedback」を用意。チェックインが良いか悪いかなどの単純なアンケートを送り、利用者が感じた問題を、その場で改善できるようにしている。

 その後、口コミの投稿依頼も行う。「旅マエから旅ナカ、旅アトまでサポートしている。すべての段階が大事だと認識してほしい」と呼び掛けた。

日本特有の課題も 約2割の旅行者失う

 2017年の訪日外国人旅行者は2869万人を超え、今年に入ってからも好調だ。20年の東京五輪を目前に、数はさらに増えることが見込まれている。ただ、日本特有の課題もある。「在庫出しの期間は、世界基準で1年以上前となっているが、日本は未だ6カ月前といった商慣習が残っている」と指摘。

 世界には半年前から予約する旅行者が、約13―20%いる。在庫出しをしていないことで、世界の旅行者全体の約2割を失っていることになる。この分が他のアジア圏へ流れる可能性もある。インバウンド増加の流れにも水を差しかねない。

 「今は世界各国がライバルだということ。この意識を浸透させることが、我われの課題の1つ」と語った。

森  美月  販売促進部  部長

森美月販売促進部部長

2013年  エクスペディアホールディングス入社。15年までアソシエイトマーケットマネージャーを務めた後、同年10月に東京地区のマーケットマネージャーに就任。16年10月からシニアマーケットマネージャーとして名古屋地区を中心に営業戦略策定や新規顧客獲得などを担う。ザ・ホリー・クロス大学卒業。英語が堪能。

岡山・牛窓オリーブ園に絶景カフェ開業!

2018年4月20日(金) 配信

オリーブ栽培とオリーブの木、食品、化粧品の製造販売を手掛ける日本オリーブ(岡山県瀬戸内市)は、同社が運営する牛窓オリーブ園に2018年4月17日(火)、コーヒー専門カフェ「山の上のロースタリ」を開業した。専門店のこだわりの1杯とともに、「日本のエーゲ海」ともいわれる牛窓の美しい景色が楽しめる。

 店内はあえて照明をつけず、季節や時間、天候や潮の満ち引きが織り成す瀬戸内海の自然の表情そのままを体感できるようにしたという。瀬戸内市をはじめ、岡山市、備前市で4店のカフェを経営する珈琲専門店「キノシタショウテン」が出店した。

 同店のオーナー・木下尚之さんは、地元の人に美味しいコーヒーをご自宅で飲んでもらいたいと、自家焙煎の工房からスタートした。現在は岡山市内はじめ各所から出店依頼が続くなか「オリーブ園に是非出店したい」と声を掛けたことから、絶景カフェの開店が実現した。

 コーヒー豆の種類・産地をオーナー自ら厳選するのみならず、店内で焙煎し、お客はドリップだけでなくフレンチプレス、エアロプレスやエスプレッソなど、好みで淹れ方をカスタマイズでき、コーヒー本来の味を味わえるように工夫している。

「山の上のロースタリ」 概要

店内は照明をつけず、自然の表情を楽しめる設計だ。

住所  :〒701-4302  岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓412−1 牛窓オリーブ園内

TEL  :0869-34-2370(牛窓オリーブ園のショップにつながる)

営業時間  :午前10:00~午後5:00

席数  :24席

「キノシタショウテン」とは

 自家焙煎のコーヒが人気のカフェ。コンセプトは「ふつうのことをふつうに、あたりまえのことをあたりまえに」。

 2010年6月に牛窓の玄関口である瀬戸内市邑久町に焙煎工房にカフェを併設する形で1号店をオープン以来、岡山市や備前市で計4店舗を展開している。

 店内では買い付けたコーヒー豆を焙煎し、販売を行うほかエスプレッソマシンや、コーヒー豆を挽くミル、コーヒーを抽出するドリッパー等、コーヒーに関わる機器の販売も手掛けている。

オーナー木下尚之さん プロフィール

 高校卒業後、イギリス留学を経てコーヒー生豆事業を展開する商社に入社。カフェ店長として働く。2010年、地元岡山でコーヒー専門店「キノシタショウテン」をオープン。その後、「THE COFFEE BAR」「THE COFFEE HOUSE」もオープンさせ、岡山のコーヒー文化を豊かにしている。「オカヤマアワード2016 グルメ部門賞受賞」。

日本オリーブ 

 牛窓オリーブ園で収穫されたオリーブオイルやオリーブ果汁に代表される化粧品原料を使用した化粧品、食品を販売する。1949年の創業以来、自社スペイン農園の取得、オリーブマノンブランド等自然派化粧品の展開を、日本だけでなく中国やシンガポール、マレーシアなどにもおこなっている。