パーク ハイアット 京都、老舗料亭「山荘 京大和」の敷地内にオープン

11月1日(金) 配信

パーク ハイアット 京都の客室「ビューデラックスキング」

 ハイアット ホテルズ コーポレーションは10月30日(水)、日本で25年ぶり2軒目となる「パーク ハイアット」ブランドホテル「パーク ハイアット 京都」をオープンした。ホテルは、老舗料亭「山荘 京大和」の敷地内にあり、同日「山荘 京大和」もリニューアルオープンした。

 ホテルはスイートを含む全70の客室と、料飲施設4カ所、宴会場1カ所、スパ、フィットネスセンターを完備。運営するハイアット、アジアパシフィック担当グループプレジデントのデイビッド・ユデル氏は、「お客様には京都の素晴らしい文化に浸り、洗練された日本のおもてなしを体験し、インスピレーションを感じていただけたら幸いです」とコメントした。

 「山荘 京大和」の敷地内には、江戸時代から続く茶室「送陽亭」などが残されている。運営する京大和は今回のホテルの開業に合わせ、建物を保存、復元する形で耐震補修を実施。阪口順子代表取締役は、「先人の遺したかけがえのないものを受け継ぎつつ、新たなこころみを加えてみな様をお迎えしいです」と語った。

幕末の頃、桂小五郎、井上馨、久坂玄端らが集まり会合を開いたと伝わる山荘 京大和の保護建造物「送陽亭」

 なお、ホテルと料亭の開発は竹中工務店が担当した。

NearMe、成田空港と都内を結ぶ定額シャトル 15区に拡大

2019年11月1日(金)配信

サービス内容イメージ

 NearMe(髙原幸一郎社長、東京都千代田区)は2019年10月30日(水)、成田空港~都内間を送迎する旅行者向けシャトルバスサービスの対象エリアを拡大した。これまでの新宿区、渋谷区、世田谷区、港区、台東区、墨田区、千代田区、中央区、文京区の9区に加え、江東区、品川区、目黒区、大田区、豊島区、江戸川区の6区を発着する相乗りサービスとなった。料金は利用1回につき定額3,980円。

 今回エリアを拡大した「エアポートシャトル」は、独自のAIを利用し搭乗する飛行機に合わせて、都内の希望場所からの最短ルートでの乗車が可能となる。乗車人数は最大9人。既存の交通機関を補完し、バスより小回りが利き、1人でタクシーを利用するよりお得に空港から都内間の送迎を行える。空港~都内間の交通網での混雑解消はもちろん、楽しく快適な移動体験の提供を心掛けている。

サービス利用画面イメージ

次世代のスマートシャトル「エアポートシャトル」概要

 成田空港~都内15区を、ドアtoドアで結ぶ「エアポートシャトル」。独自AIを活用し、最も適したルートで最大9人をピックアップする。空港~ホテル間の移動を大型バスでなく、1人乗りのタクシーでもない新しい形を取り入れ、時間やお金を掛けず、ストレスレスで快適な移動体験の提供をはかる。車内はWi-fiも完備する。

利用方法:オンラインによる事前予約制(予約は2日前まで)

 ※QRコードを読み込んで申込みが可能

 ※多言語対応(現状日本語と英語、今後は5カ国語対応予定)

 ※オンライン決済が可能でチケット不要、飛行機遅延に伴う料金請求はなし

発着点:成田空港第1、第2、第3ターミナル

 千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、豊島区、江戸川区内の指定場所

 ※ホテル→空港便の場合、希望のホテルからピックアップする

費用:1回3,980円/人(税込) ※乗車場所や区間問わず定額

関連サイトURL

エアポートシャトルURL:

NearMe WEBサイト(タクシー相乗りアプリ「nearMe.」):

トラベルコ、海外航空券でTRAVELIST by CROOZと連携 予約サイト・価格の選択肢が拡大

2019年11月1日(金) 配信

海外航空券比較 検索結果一覧ページの一例

 トラベルコを運営するオープンドア(関根大介社長、東京都港区)はこのほど、海外航空券比較サービスで、CROOZ TRAVEL( 福元健之社長、東京都渋谷区)の運営する旅行サイト「TRAVELIST by CROOZ」との連携を始めた。

 これにより、同社が扱う海外航空券をトラベルコ内で検索・比較できるようなり、掲載する予約サイトが増加した。利用者は予約先サイトや価格面で、これまでより多くの選択肢から海外航空券を選ぶことができるようになった。

TRAVELIST by CROOZとは

 ファストファッション通販サイト「SHOPLIST.com by CROOZ」の運営など幅広い事業を手がける東証JASDAQ上場のクルーズの連結子会社であるCROOZ TRAVELが運営している。「手軽で分かり易く、簡単に」をコンセプトにした格安航空券の比較・購入が可能なオンライン販売サイトとなっている。

トリプラ、多言語AIサービスを「氣多大社」に提供 石川県

2019年11月1日(金)配信

左:公式ホームページ右下にアイコン設置、右:「triplaチャットボット」利用画面(英語)

 旅行業界向けIT・AIサービスを展開するtripla(トリプラ、東京都中央区)は2019年10月31日(木)、開発・展開する多言語AIサービス「triplaチャットボット」を、能登國一之宮 氣多大社(石川県羽咋市)の公式ホームページに提供した。同社が神社・仏閣へサービスを展開する事例は初めて。増加傾向だった訪日外国人観光客の問い合わせに、5言語で対応できるようになった。

神事を公式HPやSNSなどで発信し、外国人観光客が増加

 氣多大社は創建2100年を越える神社で、縁結びの神様を祀る恋愛成就の社として知られている。毎月1日開催の縁結び祈願「ついたち結び」や能登伝統の「平国祭」、氣多大社を崇敬した加賀藩主・前田利家と妻・まつにちなんだ「結婚式」など、1年を通じてさまざまな神事が実施される。そのようすは公式ホームページやSNSなどで発信しており、近年、外国人観光客の参拝が増えているという。

 ユニークな取り組みを行う氣多大社に対して、IT・AIを活用したサービス品質向上を目的に、トリプラが同神社の公式ホームページに「triplaチャットボット」を提供。外国人観光客はAIとのチャットを通じ、由緒や年中祭事のスケジュール、参拝方法、外国人も申し込める婚礼案内などの情報を、日本語や英語、韓国語、中国繁体字、中国簡体字の5言語で問い合わせができるようになった。

 トリプラは「triplaチャットボット」を通じ、氣多大社と外国人観光客の円滑なコミュニケーションを担い、氣多大社の業務効率化と顧客満足度向上に貢献すると同時に外国人観光客のさらなる誘致のサポートをはかるとする。

「能登國一之宮 氣多大社」概要

所在地:石川県羽咋市寺家町ク1-1

HIS、日本産の「食」 世界へ 商社事業開始 売上げ8千億円目指す

2019年11月1日(金) 配信

10月31日に開かれた締結式のようす。(左から3番目)澤田会長兼社長と(同4番目)鈴木知事

 エイチ・アイ・エス(HIS)は国内の農林水産物などを、世界の食市場に売り込む新たな商社事業を始めた。HISが持つ海外約270拠点を生かし、現地国での販路開拓や拡大、販売などを進める。

 第一歩として10月31日、三重県と「食の海外展開に係る戦略的連携協定」を結んだ。同県の「茶」をアゼルバイジャンの大手製菓メーカーが作る抹茶チョコレートの原料用に輸出する。初年度の売り上げは8千億円を目指す。

 世界の食関連市場は伸びている。農林水産省によると、世界の飲食料市場規模は2015年に890兆円だったが、30年に1・5倍の1360兆円になるという。海外における日本食レストラン数は10年から17年までで、3・8倍に伸びた。日本食への関心も高まっている。

 「我われにとっても大きなビジネスチャンス」。HISの澤田秀雄会長兼社長は同日に開かれた会見で、取り組みに期待を込めた。「日本の素晴らしい食材を、全世界に送れるようにしたい」――。1年目は3品目を3カ国に、5年後には10品目、30カ国に売り出す見通し。

 まずは三重県との連携に力を入れる。「伊勢茶」と「みかん」を戦略商材に設定。共通のロゴマークも策定し、海外でのブランド力向上もはかる。

三重県産のお茶

 茶に関してはすでに販路がある。アゼルバイジャンで100%日本産抹茶チョコレートを製造。ロシア・CIS諸国、トルコなど10数カ国に転送販売していく。健康食品などを扱う現地メーカーでは、日本茶の商品が売り出される。

 みかんは、今後、「みかんの木グローバルオーナー制度」を計画している。海外の個人・法人向けに、収穫される果実やその加工品を提供する。制度により、一定の収穫量に対して売り上げを保証し、みかん農園を支援していく。

三重県産のみかん

 鈴木英敬三重県知事は会見で、「お茶とみかんは県で輸出に取り組んでいる重要品目になる。産地の人々も意欲をもって挑戦している。(HISの)現地のネットワークによって、スピード感を持って量的にも拡大できる」と語った。

 一方、HISが取り組むのは世界の食市場に日本産の食材を売り込むためだけではない。

 国内の農林水産物の生産や加工、販売体制は現状、構造上の課題がある。生産人口の高齢化や減少が進んでいるが、根っこの流通システムは「国内向け」に偏っているという。

 輸出先の求める規模での生産や価格設定を行うことが難しい状況にある。そもそもグローバル展開に関するノウハウを持つ担い手が不足している。

 HISでは、本業の旅行業で培った独自のネットワークを世界各地で確立している。世界69カ国164都市264拠点(31日時点)の海外店舗網があり、現地のレストランやホテルなどはもちろん、さまざまな業種との接点がある。

 これら独自のネットワークを生かし、販路開拓や営業、ニーズ調査、マーケティング、販売などを担っていく。世界市場を見据えた国内の生産・加工・出荷を可能にすることで、現行のシステムを変えていく狙い。「腕の見せどころ」(HIS)。

 このほか、輸出国などで食から日本自体に興味を持った人に対し、訪日旅行ツアーを提供するなど、循環的な仕組みづくりも進めていく。

〈旬刊旅行新聞11月1日号コラム〉壊すのは「一瞬」でできる 大切に守り続ける文化に敬意を表す

2019年11月1日(金) 配信

変革しなければならないもの」と、「大切に守り続けなければならないもの」の見極めが大事(写真はイメージ)

 天皇陛下の即位を国内外に宣明する即位礼正殿の儀が10月22日、皇居内で行われた。世界中の皇族や国家元首らが参列し、海外メディアも高い関心を持って今回の即位礼を報じた。

 
 私もテレビの前で中継を見ていたが、神武天皇から今上天皇まで126代続いてきた歴史の重さを改めて深く心に思った。
 
 アメリカ合衆国の建国は1776年で、まだ243年である。中華人民共和国も長い歴史を持ちながら、今年建国70周年を迎えたばかりだ。
 
 レベッカの名曲「MOON」の歌詞に、「壊してしまうのは一瞬でできるから大切に生きて……」という部分があるが、まさにその通りである。「大切にする」のは難しいが、壊してしまうのは、「一瞬」でできるのだ。「いくらお金があっても買えないものは歴史」としばしば語られる。日本は長い間、文化を大切に守り、今も現在進行形で継続している。世界中の賓客がそのことを深く理解し、敬意を表していただいたことに誇りを感じた。
 
 日常生活でも歴史の重さに触れる機会は多い。道路を〝我が物顔〟で走る最新型で、ハイスペックの高級車はカッコイイ。しかし、50年、70年、100年の年輪を刻んだ現役のクラシックカーの前では、“ピッカピカの1年生”に過ぎない存在であることが明白になる。歴史を刻んだ現役は貴いのだ。
 
 旅先でも、歴史ある建造物やホテルなどは、旅人から大きな敬意を受ける。さまざまな困難が続く歴史の中で、簡単には壊さずに、「生命」を守り抜くことの大変さを、人は無意識のうちにも知っているからだ。
 
 人間関係でも同じだ。苦労を共に乗り越え長年連れ添った夫婦や、友人、師弟関係にも歴史を感じることがある。昨日や、今日知り合った人には存在しない見えない絆がある。生身であるから、良好な人間関係を維持していくには、計り知れない努力が必要である。飲食店や旅館・ホテルも、まっさらな“一見さん”よりも、昔からの良質な関係を築いてきた、信頼ある客を大切し、優先させる。
 
 ただ古いものが何でも素晴らしいと言っているわけではない。古くさい慣習をやめて現代に合ったものに変えていくことは、とても大切なことである。
 
 例えば、今後本格的に議論される「憲法」などもそうである。古い条文に縛られて、新しい時代に対応したくても雁字搦めで身動きができないことほど、バカげたものはない。
 
 時代は常に進化し続けている。自分たちの価値観に合うものに常にアップデートし続けていく努力を惜しんではいけない。これこそ真の革新である。
 
 「変えなければならないもの」と、「大切に守り続けなければならないもの(本質)」の見極めが大事である。ここを見誤ると、せっかく育み刻んできた大切な文化や、歴史が無残に寸断されてしまう。
 
 今号の1面特集「いい旅館にしよう!」プロジェクトは、「お客様への接客を大切にする」という本質を一貫して守るために、「バックヤード部分の負担軽減へ、改革し続ける」宿の取り組みを探るシリーズだ。
 
 これとは反対に、バックヤードの悪しき慣習に手を付ける努力を怠りながら、企画やプランなど表層だけ常に新しいものに変え続ければ、宿文化の一貫性を失い、顧客も相手にしなくなる。
 (編集長・増田 剛)

〈観光最前線〉熊本市が首都圏でプロモ

2019年11月1日(金) 配信

コラボレーションショップを開設する「H.I.S.旅と本と珈琲とOmotesando」

 熊本市は、復旧が進む熊本城の特別公開が10月5日から始まったことにあわせ、同日から来年3月末まで、首都圏向けプロモーション「熊本市つながるTOKYO」を実施している。

 プロモ第1弾は、東京・表参道にある「H.I.S旅と本と珈琲とOmotesando」に12月15日まで、コラボレーションショップを開設。熊本市の地元雑誌や観光専門誌などを並べるほか、熊本城の大型タペストリーを展示する。

 熊本城の特別公開は日曜日と祝日に実施中(女子ハンドボール世界選手権大会期間中は土曜日も)。午前9時―午後5時まで。入園料は高校生以上500円、小・中学生200円、未就学児無料。

 なお、今回の公開では天守閣の内部に入ることはできない。

【土橋 孝秀】

ドーミーイン最大の客室数を備えた「ドーミーイン川崎」をオープン(株式会社共立メンテナンス)

2019年10月31日(木)配信

ドーミーイン川崎(外観)

 全国にビジネスホテル 「ドーミーイン」やリゾートホテル「共立リゾート」を運営する共立メンテナンス(本社:東京都千代田区)は、神奈川県川崎市に「天然温泉 扇浜(おうぎはま)の湯 ドーミーイン川崎」を2019年11月1日(金)にオープンする。

黒湯の天然温泉大浴場

 ドーミーインチェーン国内外85棟目となる「ドーミーイン川崎」は客室数全386室を完備しており、ドーミーイン最大の大型ビジネスホテルになる。川崎駅より徒歩圏内の好立地にあり、出張での利用のみならず東京や横浜エリアへの観光にも適している。また、川崎駅前のホテルでは唯一(※1)自家源泉(※2)を引いており、ミネラル成分豊富で美肌効果が期待できる‘黒湯’の天然温泉が楽しめる。
(※1:同社調べ、※2:敷地内で所有する源泉)

「ドーミーイン川崎」の特長

・ドーミーイン最大の客室数 全386室を有する大型ビジネスホテル
・川崎駅前のホテルでは唯一、自家源泉(黒湯)の天然温泉大浴場を完備
・川崎駅まで徒歩約7分(川崎駅から品川駅まで約8分、羽田空港まで最短約15分の好アクセス)
・朝食には名物料理‘担担麺’などを取り入れた約50品目の和洋食バイキングを提供

客室イメージ

 全室にシモンズ社製ベッドを完備。また、夜食としてドーミーイン名物のあっさり醤油ラーメン「夜鳴きそば」を無料提供することで、お客様をおもてなしする。
共立メンテナンスは、「今後もドーミーインを含むすべてのホテルブランドにおいて、一層お客様にご満足いただけるようサービスの向上に努める」という。

<ドーミーインとは>

 寮事業のノウハウから続く我が家のような寛ぎと快適性を備えたビジネスホテルチェーン。スタンダードなビジネスホテルのみならず、カプセルホテルの合理性とドーミーインの快適性を融合したキャビンタイプホテル「global cabin」や、ドーミーインの和風プレミアムブランド「御宿 野乃」などのブランドを展開。ドーミーイン川崎を含め、国内83ヵ所、海外2ヵ所、計85ヵ所展開。

【施設概要】

正式名称:天然温泉 扇浜(おうぎはま)の湯 ドーミーイン川崎
オープン:2019年11月1日(金)
住  所:〒210-0005 神奈川県川崎市川崎区東田町9-3
電話番号:044-230-5489
アクセス:JR東海道線「川崎駅」より徒歩約7分/京急本線「京急川崎駅」より徒歩約7分
駐 車 場:80台(1,800円/泊)
客 室 数:全386室(ダブル84室、クイーン196室、ツイン46室、ハリウッドツイン56室、ハンディルーム4室)
建  物:地上15階建
源  泉:黒湯温泉(自家源泉)
泉  質:神経痛、関節痛などの効能があるナトリウム一塩化物冷鉱泉
開業記念価格:朝食付1名8千円、2名1万円(税込)~(※2019年11月1日~2020年1月31日まで)

 

【特集No.538】一の坊グループ 厨房スタッフ全員が表に出る

2019年10月31日(木) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう!」プロジェクトⅢの3回目は、一の坊(髙橋弘行社長)グループ4宿のゼネラルマネージャーと料理長が登場した。団体型から個人型の旅館へ大きく舵を切るなか、「出来立て料理の提供」を目標に改革を進め、厨房スタッフ全員が表に出て“ライブ感を演出する試み”が宿泊客に高い評価を得ている。

【増田 剛】

■仕込みをする姿を見てもらう

 内藤:一の坊グループは、団体型から個人型の旅館に大きく舵を切ってきました。この改革に着手し始めたのが2016年夏ごろからで、そういう意味では、つい最近のことです。
 作並温泉の「ゆづくしSalon一の坊」では、そのころの印象はどうでしたか。

 柏原:以前は団体と個人の両方のお客様を受け入れていました。当時は団体客の方が多かったので、調理場の作業としては仕込みを早い時間帯からやっておかなければ間に合わない状況でした。
 さらに、食事会場は献立がすべて異なっていたので、盛り付けたものを各食事会場に分別するなど、作業的には大変でした。

 内藤:団体と個人客の割合は。

 小野寺:団体が5割強、残りの個人は和食が2割、ビュッフェが3割といった感じでした。

 柏原:当時はまだ宴会も同時にあったので、仕事に集中することができませんでしたが、今はビュッフェ一本に絞り、当日の宿泊人数に合わせた出来立て料理に集中すればいいため、前準備がほとんどなくなりました。作業的にはとてもラクです。

 小野寺:今のビュッフェは、小ロットで出来立ての料理をお客様の食べるスピードに合わせて繰り返し提供するように変えました。

 内藤:「料理の種類を絞った方が効率的」という常識的な意見とは反対に「種類を増やしていく」ことも行いました。

 柏原:最初は抵抗を感じましたが、お客様から見れば、ビュッフェにはたくさんの種類があった方がいい。料理の種類が多いと、欠品になってもお客様の目が他に向き、スタッフは補充に慌てることもありません。今はメニューを増やす方向で進めています。
 ビュッフェも演出コーナーを、「お客様のオーダーを聞いてから作り、出来立てをお出しする」というのが売りになるよう切り替えました。これを大事にしながら、盛り込み料理は季節感を出しながら、小ロットで数多く提供しています。

 内藤:演出コーナーは、何カ所ですか。

 柏原:6カ所です。スタートしたころはまだ天ぷらも揚げ置きがありました。今はオーダーを聞いてから目の前で揚げるので、お客様は「温かいものは温かく」、「冷たいものは冷たく」食べられ、満足度が上がっているのだと思います。お客様は並びますが、少々待っても「美味しかった」と喜んでいただけるようになりました。

 内藤:オーダーを聞いて作るようになったから、お客様はより待つようになったわけですね。だけどクレームはほとんどない。

 柏原:ステーキも前もって5枚焼いてお皿に盛り付けて提供していました。それをお客様に何枚必要かを演出コーナーで聞いてから焼くように変えました。そうすると、ステーキは平均3枚ほどしか出ない。「お客様は意外と食べない」ということが分かりました。

 小野寺:買ったばかりだったチェーフィングディッシュ(金属皿の下に湯せんなどの熱源がある保温器具)も、すべて捨ててから改善がスタートしました。出来立ての料理にこだわることで、お客様から高い評価をいただけるようになりました。スタッフも仕事の楽しさを感じられていると思います。
 振り返ると、当時はチェーフィングディッシュを使うのが普通で、何も疑問を持っていませんでした。ずっと温め続けることで料理の良さは失われるので、以前のようには戻りたくないですね。

 内藤:以前はレストラン営業中にメイン厨房(裏側)にはたくさんスタッフがいました。

 小野寺:今は厨房スタッフ全員が表に出ています。

 柏原:おそらく調理場だけでなく、サービススタッフも含めて、自信を持っているのだと思います。「出来立て料理の提供」という1つの目標を達成するために、皆が色々な試行錯誤をしてきました。まだ100%達成ではないですが、目指すべき目標が見えてきているからだと思います。

 内藤:厨房スタッフも積極的にお客の前に出て声を掛けていますね。

 柏原:慣れだと思います。表で作業、演出、提供していますので、厨房スタッフの意識は本当に変わってきているのを感じています。

 内藤:料理の仕込み作業はどのようにやられていますか。

 柏原:魚の水洗いや柵取り、野菜のカットなど下準備だけは裏のメイン厨房でやり、その後の作業は午後4時ごろからオープンするまで表のビュッフェ会場で準備します。

 小野寺:このように料理の提供方法を変えたことで、じゃらんのお客様が選ぶ夕食部門で、東北エリアのトップレベルまで評価されるようになりました。
 以前は売上だけを目標にしていましたが、今はお客様と、スタッフの満足度向上を目指す視点に変わりました。

 内藤:表に出ると、お客から「おいしい」と言われますよね。

 柏原:そうですね。お客様の声を直接聞けるのが大きなメリットですし、お客様との会話が増え、皆がコミュニケーションを取れるようになってきましたので、そういった部分でとても進化したと感じています。皆のモチベーションも上がっています。

 内藤:食器洗浄機も変えました。

 柏原:今はダイニング会場の小さな洗浄コーナーで、すべて洗いきっています。バッシング(テーブルの上を片付ける)したサービススタッフがそのまま食洗器に入れ、乾いた皿をダイニング会場に戻す流れができています。
 改革前は、宴会もやっていたので、専属スタッフが複数人いて、午後11時ごろまでかかり、それでも終わらないときは、翌日洗っていました。今は、午後9時に閉店し、10時には洗浄は終わっています。

 内藤:遠刈田温泉の「ゆと森倶楽部」はどんな感じですか。

 斎藤:「品数と仕込み重視」の仕事から、「ライブキッチンと1皿ごとの料理の提供」に切り替えました。以前は表と厨房の間に壁があり、人やモノの移動で30分くらいの時間のロスがありました。今年の3月にZAOダイニングとしてケヤキ食堂をリニューアルオープンして、壁を撤去してオープンキッチンになり、働き方も大きく変わりました。
 仕込みは最低限の下処理だけをして、午後3時に食事会場をオープンさせてお客様がそこに自由に出入りできるようにし、それに合わせて調理人が出勤します。調理する姿もお客様に見てもらいながら、そこで同時に野菜をカットしたものを提供したり、ドリンクを飲んでもらったりしています。調理している場面をお客様に見てもらえるので、料理への安心感も生まれると思います。

 内藤:午後3時のオープン時に料理はすべて出すのですか。

 斎藤:いえ。ピクルスやチーズなどのちょっとした軽食を出しながら、仕込みをする姿をお客様に見てもらっています。

 内藤:仕込みをするところを見せるのは斬新ですね。

 斎藤:お客様に見られていることで意識が変わり、仕事がより丁寧になっています。事前の仕込みが減った分、アスパラやオクラなど、採れたて野菜の素材を重視して、カットして生で提供しています。調理人の労働時間も短縮しています。

 内藤:このように見ると、必要な「仕込み」と「作り置き」は違いがよくわかります。

 三浦:色々と議論したうえで、大きく変えていったのは作業時間の短縮と、「ラップの使い過ぎ」の改善です。
 朝食が終わってから、すぐに夕食の仕込みに入り、ある程度完成させて、ラップをかけて冷蔵庫に仕舞う。それを夕方の5時半になったら提供する方式を続けていました。これを作並の「ゆづくしSalon一の坊」と同じように、ライブ感、その場で出来立ての料理を提供するステージをどんどん増やしていくようにしました。スタートした時は正直なところ料理の評価が落ちました。それでもやり続けて、ライブ感のあるステージを増やしていくうちに、OTA(オンライン旅行会社)の評価も高くなってきました。
 裏で作業をしていたころは、それは「調理人」としての仕事ではなく、ただの「作業員」としての仕事になっていました。ライブ感のあるステージを用意してあげると、スタッフの笑顔が出るようになり、社内でも会話が増えるようになりました。そういったところがお客様の評価が高くなっていった要因だと思います。

 内藤:片付けの時に、台車を使うかどうかで大議論をしたのを覚えています。
 台車を表に置いておくと、お客が勝手にお皿を置いていくのでラクだという議論もありました。

 三浦:お客様の協力も必要という考えもあったので、そのようなやり方もしていました。しかし、生産性の議論を積み上げていくなかで、最終的に、「お客様がいるところにスタッフを増やしたほうが、生産性が上がる」ことが理解できました。お客様が自ら台車に皿を片付けるのではなく、スタッフが動くことで、バッシングが大きく変わりました。
 洗浄コーナーも、台車を使っていると、時間が経ってお皿が乾いて汚れが落ちづらくなっていたので、事前の手洗いもしていました。そのような作業が完全になくなり、労働時間もかなり短縮しました。
 お客様との会話が増え、「お皿を下げてもらえるタイミングが良かった」といった声もいただけるようになってきました。

 三浦:たしかにこれまでの台車を使うやり方のほうが一見ラクなように見えます。しかし、実際にどこかで食器が溜まってしまうので、食器の渋滞のリスクを負うのであれば、スタッフが食事会場を動いて回って、食器を溜めないほうが生産性が上がることがよくわかりました。色々やってみて、最終的に「足で稼いでお客様の満足度を上げていく」ほうを選びました。

 内藤:「だいこんの花」も大議論をしたのを覚えています。

 :以前はお客様を分散させるために、食事の開始時間を30分ごとに固定していました。これをフリーにすることで、一度にまとまって来られることがなくなり、上手くいくようになりました。
 料理も以前はその時間に合わせて作り置き調理していましたが、今はそれもせずに来場されてから調理しています。
 朝食も時間をフリーにしたので、以前はオーブンでその時間に合わせて焼いていたものを、お客様のようすを見て焼き物もやっています。

 内藤:「食事の時間をお客に聞かない」やり方は抵抗がありましたか。

 :最初は不安でした。調理場は3―4人でやっているので、一気に来られた場合、対応できるのか心配でした。しかし実際にやってみると、「できるものだな」と思いました。
 魚は大きなスチームコンベクションオーブンでまとめて焼くのではなく、 魚を串刺しにして焼き台を使ってお客様に合わせて焼くようにしましたので、お客様に美味しいと褒められます。
 だし巻きたまごもお客様がテーブルに着いてから焼き始め、それと合わせて他の料理もそれから出すようにしています。以前は多くの料理をお膳でまとめて先に出していました。

 内藤:出来立てを提供するようになってから接客するスタッフにも変化があったと聞きました。

 佐竹:サービススタッフも夕食は1品出しをしているのに、朝食はお膳、魚、だし巻きたまごなど、セットで持っていかなければならないという感覚がありました。何回も席に入らずに、1回で持っていくというスタイルでした。それが大きく変わり、お客様がいらっしゃってから、焼き魚やだし巻きたまごができ上がったらすぐに持って行く。「出来立てを提供するためにお客様の席に何回行ってもいいのだ」という感覚に変わってきました。
 かつて、チェックインのときに、「夕食の時間を何時にしますか」「〇×時は混み合っています」といった会話をしていました。これを止めて、食事の時間をお客様に聞かないフリーに変えるときは、調理場と同じでサービス側もやはりすごく怖かったですね。
 当館は一の坊グループの中でも宿泊価格が高いので、お客様が求めていることも高いはずで、「待たせるなんてありえない」という意識もありました。しかし、実際にやってみると、「待たされた」と不満を持たれるお客様はほとんど印象にないくらいです。今となっては以前のやり方には戻りたくないですね。

 内藤:旅館はお客を待たせることをとても怖がりますが、そのために料理を作り置きするということは、「不味くてもいい」と言っていることと同じだということです。「待たせてはいけない。だから作り置きをするのだ」というのは、言葉を変えると、「待たせないために、不味いものを提供しても良い」ということなのです。
 「待たせない」ことと、「美味しさ」のどちらが大切かを突き詰めていくと、できたものから小まめに提供すると、お客は来たものから食べるので、結局は待たせていないことになります。
 それから、当時は、お客が夕食を食べ終わったらダイニングの営業を終了していましたね。

 佐竹:かつては夕食の時間をお客様に聞いていたため、1組でもゆっくりとお酒を飲まれていたらダイニングは営業をして、スタッフは帰ることができませんでした。今は食事の時間をフリーにしたことで、逆にダイニングの営業時間を設定することができました。
 それで、「ダイニングは夜9時まで」と決めました。コース料理の最後のデザートをダイニングで提供していましたが、ロビーに場所を移してケーキの種類も増やしてお客様に選んでもらえるようにしました。これによってサービス係も「このあとはロビーでデザートをゆっくり楽しんでください」と、お客様に声を掛けやすくなり、1日の仕事の終わりの時間を明確に定めることができるようになりました。

 内藤:「デザートの種類を増やしてお客に好きに選んでもらったらいい」と言うと、必ず「原価が上がります」と答えます。実際どうですか。

 :食べないお客様もいらっしゃいますし、そんなに変わらないと思います。

 内藤:そうだと思います。全員に同量だと、食べたくないお客にも押し付けている面もあるということです。逆にもっと食べたいお客に我慢を強いているのです。むしろお客に委ねた方がいい。種類が増えれば好きなものを選べるので、原価が上がらず満足度だけが上がります。無くなったら、「無くなりました」と言えばいい話です。

 佐竹:当初は色々ムダを省いて、「省いた分だけ早く帰ろう」という部分に一生懸命でした。そのうちに、ムダを省いた分を、違うところで「支持されるサービスをやろう」という意識に変わっていきました。
 具体的には、デザートの種類を増やしました。また、朝食の後は、セルフサービスのコーヒーマシーンをお客様が自分でボタンを押していましたが、ハンドドリップで淹れるように変えました。
 このようなことを始めたからこそ、宿泊単価を上げることも可能になりました。若いスタッフも多く、フランクにお客様と「接点が持てる場所」を増やしています。
 お客様との接点が増えることで、滞在中にお客様の不満も聞きだすことができるので、滞在中に解決できるケースが増えてきました。「(この行為は)お客様に評価されるのか」がそれぞれのスタッフの考えの根底にあります。

 内藤:マーケティングの視点から見て、変化はありますか。

 吉川:これまでは「お客様が宿に来られてから楽しんでもらう」というスタイルでしたが、今は来られる前にお客様へさまざまな情報を発信しています。
 「私たちはこういう風に取り組んでいます」と、SNS(交流サイト)なども活用して、現場の情報をすべて外に発信しています。
 お客様も親近感を感じていただき、ファンの方も増えてきました。単価が高いため、少し敷居が高い印象を与えていた面もありましたが、今はお客様の声を見ても、身近な存在に感じていただいているようです。積極的な情報発信によって、「品質の良いものを提供していること」が伝わってきていることも大きな変化だと思います。

 内藤:不満とは「事前期待に対するギャップ」です。事前期待に比べて良ければ、「思っていたよりも良かった」と満足する。事前にきちんと情報を提供できていれば、お客は期待と、実際にやっていることを前もって合わせてしまう利点があります。

 ――生産性についてはどうですか。

 佐竹:当初は、宿泊単価の一番高い「だいこんの花」の日々計算される人時生産性が4営業所の中で一番低かったのです。ムダな労働時間がたくさんあることが悔しくて、スタッフに早く上がるように言ってもなかなか帰らない。それならば宿泊料金をもっと上げなければ追いつかないと思い、宿泊単価を上げていきました。人時生産性は、当初は4千円台から6千円台まで上がり、最高で9千円になるほどになりました。

 内藤:生産性と効率化はしばしば混同されます。効率化を一生懸命やれば、労働時間を減らすことはできます。この「人時生産性」というのは、単純に粗利益を労働時間で割っただけのものです。粗利益が増えれば、生産性は上がります。生産性を上げるということは、「売上が増える仕事をムダなくやる」ということです――。つまり、「売上が増える仕事ならどんどんやろうよ」「売上につながらないのならやめようよ」ということです。
 繁忙期には残業をして、閑散期には「早く帰る」など、しっかりとシフトコントロールをすべきだと考えます。「だいこんの花」は、その考え方がしっかりと定着していったのだと思います。
 単価アップ、生産性の向上へ、現場では何をやられたのですか。

 佐竹:お客様の夕食時間を聞かないことがスタートでした。また、デザートをロビーで提供することで、館内のサービスの時間を明確にし、労働時間をコントロールできるようになりました。それまでは作業の流れはお客様次第でした。今も「お客様第一」ですが、サービスを明確にし、全従業員がそれに沿ってお客様に説明できるように現場を整えていきました。最終的に、最低限の人数で館内の業務を正確に回せるようになりました。

 内藤:「松島一の坊」は、当時はまだ宴会をやっていましたね。

 川村:宴会、料亭、イタリアンレストランなどがありました。当時の調理人は18人ほどで結婚式、法事もありました。ランチも営業していましたので、「少ない人数ですべてを時間内で収めるにはどうしたらいいのか」と私なりに一生懸命考え、改善していました。「さらに良くしていくにはどうしたらいいのか」と悩んでいました。

 畠山:当たり前にやっていたことがすべて覆されました。買ったばかりの朝食ビュッフェ用の9マスプレートもすべてやめて、丸い陶器のお皿に変えました。食材の小ロット発注も始めました。それまでは心配なので大量に発注して、物をたくさん倉庫や冷蔵庫に抱えて安心したがる傾向にありました。
 小ロットで小まめに発注するようになって最初は不安でしたが、逆に日々発注することで欠品もなくなり、働くスタッフの気持ちが「小ロットのほうがいいよね」と変化していきました。
 夕食時間を聞かないのも、「お客様が並んだらどうするんですか」とマイナスの面を心配するスタッフもいました。何でもそうですが、身をもって感じることが次につながり、働くスタッフも楽しくなってくるのが大きく変わった点です。

 内藤:9マスプレートをやめたのは大変だったのですか。

 畠山:団体客がまだ多く、毎日300―400人の食事会場で、当時は朝食の洗浄室に6人スタッフがいました。台車でトレイを洗浄室に運んでいたのですが、台車をやめたら高齢のパートタイム社員も大変だなと思っていました。
 しかし、社員が小まめにバッシングするようになって、洗い場の棚も撤去し、少しずつ使いやすくするうちにスムーズな流れができるようになりました。今でも改善が良い方向に進んでいます。

 内藤:夕食は一時期2部制にされましたね。

 畠山:良かれと思ってやってみましたが、逆に大変でしたので止めました。お客様に時間を事前に聞かなければならないだけでなく、指定の時間に100―200人のお客様がどっと来られます。入り口に長い列ができ、「この時間に来いと言われたのに、何でこんなに待たせるんだ」と怒られました。スタッフは萎縮して謝り、悪循環ばかりでした。
 フリーに変えることで、お客様は自由な時間に絶えることなく来られるので、お客様に合わせてバッシングし、洗浄した皿をまた会場に戻す回転も実現する良い循環に変わっていきました。

 内藤:お皿が会場と食器洗浄機の間を回転するので宿泊人数よりも少ない皿数で足ります。9マスプレートを大量にそろえていたのは、まとめて洗っていたのでお皿が回転していないためです。
 以前のやり方では、バッシングしてもどこかに収納作業もしなければなりませんし、大型の食器洗浄機やそのための広い場所も必要になります。
 今は小さな機械で十分なので、食事会場の近くで食器洗浄できます。そうすることで、洗うとすぐに食事会場に戻す流れができます。さらにこの流れを強化するにはどうすればいいのか。
 それは、「皿の数をもっと減らす」ことです。そうすると表のスタッフは「皿がない」と慌てるようになり、「早く洗ってくれ」と洗浄コーナーに食器をどんどん持って来て、洗い終わった食器を表に持って帰ります。「お皿の数を減らして回転を上げていくこと」を考えることが大事です。
 多くの旅館はわかっていないのですが、食器洗浄で一番大変な作業は、洗った食器の棚入れです。とくに和食器は色々なサイズや形のものがあって、この作業さえなくなれば、ものすごくラクだと感じるほどです。丈の高い食器などは、重ねれば重ねるほど傾いて破損しやすくなります。だから、厨房、会場、洗浄の各コーナーを食器が淀みなく流れていくようにする工夫が大事です。

 川村:9マスプレートを止めたときに、仕入れ原価が不思議と下がりました。9マスあると、それほど食べたくなくても、埋めてしまう心理作用が働いて、すべて埋まるまで席に着かない。

 内藤:残食も減り、ロスを減らしたのですね。ロスはその食材だけでなく、それに投入した人件費や光熱費も一緒にゴミ箱に捨てることです。

 川村:お客様が来たら魚を焼くというようなことはやっていましたが、「魚を切っているのもお客の前でやったらどうか」との提案に、「なるほどな」と思いました。それが、料理長厨房ビュッフェ「青海波」の「お客様に、今一番美味しい料理を召し上がっていただきたい」というコンセプトにつながっています。
 朝食も以前はパートタイム社員を中心に料理を作り置きしていましたが、出来立てを出すように改善しました。ジャムの種類を何種類もそろえることで、お客様に選ぶ楽しみを提供しました。
 当時、調理場の労働時間の短縮は一番の悩みでした。出来立て料理を出すためのさまざまな改善を続けたことで、逆に出勤時間を遅くできましたし、実働時間は今では8時間を切っています。
 このような取り組みで最初にやったのは、やらなければならない仕込みと、やらなくてもいい仕込みを分けました。仕込み2割、お客様が来てからやるものを8割に変え、労働時間を短縮し、料理の新鮮さを重視しました。

 内藤:多くの旅館では、「在庫がなぜ悪いか」を理解しているようで理解できていません。在庫はどうせ使うことにもなりますし、それがあると慌てないので安心もできます。しかし、何かをどこかに保管すると、保管や運搬のための作業をしなければならない。保管すると品質上の問題が出てきます。色々なムダな作業を生み、現場の作業負担を増やしてしまう。そこで、こちらでは「冷蔵庫とラップのない旅館をつくりたい」をキャッチフレーズに改善を進めてきました。
 冷蔵庫が必要なのは、作業のタイミングが合わないからです。

 川村:おっしゃる通りです。以前は、魚屋さんが午前9時半ごろに運んでくる生ものを冷蔵庫にしまわなければならないので、その時間に合わせて出勤していました。
 そこで、魚屋さんと交渉して正午ごろに来てもらうようにしました。これに合わせて昼ごろに出社していますが、もっと遅らせて午後2―3時でも大丈夫だと思っていますし、これによってメイン厨房にあったたくさんの大型冷蔵はまったく使わなくなりました。
 心配なのかスタッフが早く来て作業してしまうこともあり、出来立て料理の提供を徹底していくことが課題でもあります。

 内藤:一の坊グループは、就業規則も変えました。

 高橋(勝):全体に浸透できているかと言われると、まだまだな部分があります。「ゆと森倶楽部」はあらかじめ短い勤務帯に設定し、そこからのシフトの延長で対応しています。「だいこんの花」は、勤務時間はそのままに、その中身を見直しています。作並温泉の「ゆづくしSalon」では、よりマルチ体制を進めていくことで、時間の短縮をしているなど、それぞれの営業所の特徴が出てきています。

 内藤:就業規則を変えると、働き方にも大きな影響を与えます。

 高橋(勝):いずれの営業所も、残業時間はほぼありません。週休2日を取れない週はしっかりと割増賃金を支払うことで対応しています。以前は変形労働時間制、みなし残業制でしたが、今はしっかりシフトを組むようにしたことで、みなし残業時間分を基本給に繰り入れました。

 ――今後の進化について、各館に伺いたいと思います。

 佐竹:「だいこんの花」は、シフトを作るうえで一番の目安としているのは、当日のお客様の人数に対してスタッフを何人配置するかという点です。昔からシフトは7時間45分で組んで、今もそうしていますが、この3年間に生産性を高めていった結果、7時間45分よりも短い時間で仕事が終わっていくようになりました。一時期は「早く終わったのだから早く帰る」ことを徹底していましたが、今は「早く帰るよりも、勤務時間7時間45分の中でお客様が喜んでもらえることを見つけて、仕事をやりたい」という声も出てくるようになりました。
 旅館の外に出て、地域のワイナリーとコミュニケーションを取ってPOPづくりをしたり、クラフト市に行って、ショップの商品を見つけてきたり。生産性を高めて空いた時間に、「お客様に喜んでもらえる仕事を作り出す」ことで、新しい宿の魅力を出していこうと考えています。

 三浦:「ゆと森倶楽部」全体を見て、料理で成功してきた部分は、ライブ感のあるステージをきちんと確立したことが、調理スタッフの大きな成長につながったのかなと思っています。料理だけではなく、サービス側も成長できるステージを準備してあげることが大事だと考えています。

 小野寺:「ゆづくしSalon一の坊」では自然の中でアクティビティーや地元の食材を使った料理を提供しながら、お客様と社員の両方が楽しめる環境を作っていきたいと思っています。

 畠山:「松島一の坊」では、スタッフが生き生きと働ける職場環境と、お客様とのつながりを大切にしていきたいと思っています。松島は観光地なので、全国から気楽に来ていただいて、地域にも愛される場所になっていけばいいのかなと思っています。
 食事はビュッフェ一つでやっているので、新しい提案やアイデアを川村料理長はじめ皆で一緒に考えています。少しずつ進化して、最終的には、皆が和んで「おうちに来たような感じになれば」と思い描いています。

 高橋(勝):各営業所で働き方の効率化や、客室単価を上げる努力、生産性を上げるさまざまな取り組みを行っています。休日の数も増え、繁忙期の年末年始に料理長が有給休暇を取得したり、休館日に合わせて海外旅行に行ったり、大きく変化していることを感じています。
 お客様に来ていただくことはもちろんですが、働くスタッフの幸せと会社の利益を実現して、それを社員に還元し、またお客様に楽しんでいただけるように投資していく。最大値を求めるのではなく、私たちに合った最適値を常に求めていくことが大切だと思っています。

 内藤:離職率はどうですか。

 高橋(勝):3、4年ほど前は10数人採用して年々少しずつ辞めていっていましたが、この3年で新卒採用者の離職者はゼロです。また、通年採用で常に門戸を開いていますので、これまで以上に個性的な人材が集まるようになりました。今後は一人ひとりがチャレンジできるように、運営に最適な人数よりも、全社的に従業員の満足度を高められる人員体制を目指しています。

 内藤:チャレンジとはどのようなイメージですか。

 高橋(勝):各人が自分の将来のビジョンを叶えるために持っている、「この店で挑戦していきたい」「こんな役職に挑戦したい」という気持ちを会社が支援し、トライできる機会を作っていく。人事異動や他店研修に行くなど、積極的に会社は支援していきます。

 ――高橋人事部長はどのような感想を持たれましたか。

 高橋(秀):「しよう」「つくろう」といった強い意思が大事だと感じました。「怖くてできなかった」「不安な部分があった」「変えたいけど躊躇していた」部分の意識が変わっていったことを感じています。これらの意識の変化によって、松島一の坊の「青海波」が生まれました。
 また、「魅力ある楽しい一の坊」を目指して、皆が意識を共有し、課題を解決していく社風が浸透してきているのを実感しました。

 ――「品質向上 働き方改革支援役」の工藤さんはいかがですか。

 工藤:私は一の坊に加えていただいて2年ほどですが、労働時間を圧縮できたことは大きな成果の一つであり、休みの取り方も大きく改善されています。年間休日数105日は全員が取得できています。2年前は、まだまだできていない部分もありましたが、皆さんが改革を進めてくれました。昨年は、作並温泉の「ゆづくしSalon一の坊」は社員全員が有給休暇3日以上を取得できました。今年は有給休暇5日間以上の取得を、全員で達成できるように取り組んでいます。

 内藤:生産性向上とは効率化で労働時間を絞っていけばいいというのが一般的なイメージとなっています。ムダを削り、長時間労働を短縮していくことは大事ですが、基本は、生産性とは「売上をどうムダなく作るのか」ということだけです。佐竹さんがおっしゃったように、「お客様が喜ぶことをもっとやろう」という考えが生産性向上にとって、もっと大事なことです。
 厨房では「仕込み」と言いますが、お客にとっては「調理」です。お客から見えるところでやることで価値ある作業に変えていくことができます。お客様、従業員、会社にとっても良いという 21世紀に求められる旅館経営モデルが一の坊グループでできつつあると感じました。

 ――ありがとうございました。

【全文は、本紙1774号または11月8日(金)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

CarstayとNTT東日本ら、NTTビルの駐車場を車中泊スポットとして提供 車中泊の課題解決を

2019年10月31日(木) 配信

車中泊スポットの一例

 Carstay(宮下晃樹社長、東京都新宿区)とNTT東日本(井上福造社長、東京都新宿区)、NTTル・パルク(浅野彰社長、東京都台東区)はこのほど、NTT東日本通信ビルの駐車スペースを車中泊スポットとして提供を始めた。3社は「車中泊の流行の兆しが見えるが、道の駅など休憩施設で宿泊による駐車スペースの長時間占有などの問題を解決したい」とコメントした。

 同取り組みでCarstayは、ウェブサイトで車中泊スポットを貸し出すシェアリングサービスを行う。NTTル・パルクは管理するNTT東日本の駐車スペースをCarstayを通じて提供する。

 第1弾として、NTT東日本が保有するNTT今市ビル(栃木県日光市)とNTT川治電話交換センター(同)の駐車場を車中泊スポットとして開設した。NTT今市ビルでは4台、NTT川治電話交換センターは2台のスペースを確保した。車中泊スポットの検索と予約、決済はCarstayから可能となっている。

 車中泊スポットの貸し出しと同時に、車中泊ツーリストの観光動機・動線分析と同スポットに求められるインターネット環境の調査も行う。

 このほか、carstayでは、同社が提供するサービスのなかで、仕事と生活を車の中で行う「バンライフ」に対応するため、仕事で必要なハイスペックなインターネット環境の整備を進めている。

 今後は日光市に端を発し、順次、ほかのエリアへも車中泊スポットの拡大を検討する。併せて、利用者の意向を踏まえた車中泊スポット環境の充実、高品質化による利用者満足の向上を目指すほか、地域の観光資源や周辺エリア、観光地を抱える自治体、観光協会などと連携し、新たな旅行体験や観光回遊の提供による地域活性化をはかる。

取り組み概要と各社の役割

Carstay  利用者と車中泊スペースのマッチングプラットフォームの提供 、周辺エリアの地域ならではの「文化体験」の紹介 、利用者のデータ収集

NTT東日本  車中泊スペースの提供 、車中泊スペースにおけるICT環境の提供・保守・運用、利用者のデータ収集と車中泊スポットの高品質化や地域連携に向けた分析

NTTル・パルク  車中泊スペースの運営・管理 、空き土地の利活用

NTT東日本と日光市の連携協定

 日光市とNTT東日本(栃木支店)は8月26日(月)、「強く・優しい・人が輝く日光」の実現に向けた連携協定を締結。「キャンピングカーなどを活用した宿泊の形を観光客に提供し、日光市各エリアの特徴を活かした新たな宿泊ニーズを誘引し、観光による経済の活性化」を目指している。第1弾としてこのほど、栃木県日光市にあるNTT東日本の保有不動産の駐車スペースを車中泊スポットとして提供を開始した。