全旅連シルバースター部会、食品ロス対策マニュアル作成へ 軒数増加にも努める

2022年7月19日(火) 配信

渡邊幾雄部会長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長)のシルバースター部会(渡邊幾雄部会長、670軒)は7月14日(木)、東京都内で2022年度総代会を開いた。今年度はSDGsに対応した旅館・ホテル向けの食品ロス対策マニュアルを作成するほか、部会を周知し、登録軒数の拡大に努める。

 渡邊部会長は会員数が廃業で減ったことを報告。「改めて会員の増強に努めてほしい」と呼び掛けた。

 コロナ禍で宿泊業の業績が厳しいことにも触れ、「昨年に引き続き、楽天トラベルで登録施設限定の割引クーポンを配布してもらうなど、部会のネットワークを生かしたインターネット集客事業で、明るい未来を築いていきたい」と意気込んだ。

 また、「(今日は)食品ロスについての講演も実施する。(マニュアル作成に向けた)情報を得てほしい」と求めた。

 全旅連の多田会長は冒頭、安倍元首相が全国大会で講演予定だったことに触れ、「大変残念なことになった。心より哀悼の意を表したい」と話した。

多田計介会長

 全国大会ではホテル・旅館の課題であるSDGsの食品ロスをテーマにしていることから、シルバースター部会も渡邊部会長を中心に、この問題への取り組みが加速することに期待を寄せた。 

 来賓の厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課の小野陽介課長補佐は「厚生労働省では、日本政策金融公庫から資金支援などを実施できるようにした。活用して事業継続に役立てほしい」と呼び掛けた。

小野陽介課長補佐

 総会終了後には、食品ジャーナリストで、office 3.11社長の井出留美氏が「食品ロスを減らすために旅館・ホテルにできること」と題して講演した。

 食品の廃棄費用に税金が充てられていることや、焼却で発生する温室効果ガスの排出量が自動車と同じであることを強調。宿の問題として、「食事を1品でも増やし、ほかの施設と差をつけている」と指摘し、「お客に合わせて、量を調整してほしい」と述べた。

 そのうえで、披露宴で1テーブル・1シェフ制を採用し、利用客の好みの量を提供する星野リゾートなどの事例を語った。また、宴会での食べ残しを減らすため、開始後30分と終了前10分間着席する3010運動を紹介した。

観光中小個人連合会発足 政策提言や会員間の協業も 57事業主が発起人に

2022年7月19日(火) 配信

観光に関わる57の中小・個人事業主がこのほど連合会を立ち上げた

 新型コロナ禍により大きな影響を受けている観光産業に関わる中小事業者や個人事業主57社・人が発起人となり、このほど、「観光産業を構成する中小及び個人事業主連合会」(TIFS、発起人代表=岡田直樹・エフネス社長)を設立した。同連合会は、観光産業の健全な発展に資する政策の提言や、協業・共創、福利厚生の充実などを目的としている。

 設立の背景として、「国が観光立国を掲げているにも関わらず、政治家や官僚に、観光産業に関わる中小企業やフリーランスの存在が認識されていない」ことや、「いざというときに中小・個人事業主が望む行動・結果を出せる業界団体が存在しない」ことに危機感を抱いたとしている。

 観光産業に属する中小事業者・個人事業主(旅行会社、DMO、アクティビティ、宿泊事業者、添乗員、ガイドなど)で構成し、「観光立国を実現するためには我われが不可欠であることを政官界に認識してもらう」(同連合会)考え。

 また、「政策に反映してもらうためのロビー活動や、単独では実現が難しい福利厚生や、教育機会の創出、会員間での協業・共創による商機会の創出・拡大を当面の目標とする」と定めている。

 将来的には、各種補償金制度や、新たな認証制度も視野に入れて、「名実ともに観光産業内の中小及び個人事業主にとって、なくてはならない団体を目指していく」とした。

 暫定理事は次の各氏。


 ▽岡田直樹(エフネス社長)

 ▽三井紀代子(貴凛庁社長)

 ▽山本龍二(D.T.I.ツアーズ共同代表)

 ▽春山哲朗(ハンディネットワーク社長)

 ▽小野田金司(大阪観光大学観光学部教授)

 ▽村田洋一(ビュート社長)

第3回Attractive JAPAN Award、最優秀賞は「たびぞう」に

2022年7月19日(火)配信

最優秀賞に選ばれた「たびぞう」の提供プランイメージ

 地域ブランディング研究所(吉田博詞社長、東京都台東区)は7月19日(火)、第3回「Attractive JAPAN Award」を発表した。最優秀賞には、「サステイナブルなEVトゥクトゥクで天然記念物コウノトリ×玄武洞のキセキを巡る、城崎ぷちたび」を提供する、たびぞう(兵庫県豊岡市)が選ばれた。

 地域ブランディング研究所は、地域の文化・自然体験プランを取り扱う予約プラットフォーム「Attractive JAPAN」を運営している。同アワードは、同社が全国の着地型観光体験プログラムを提供する事業者や団体を表彰するもの。地域振興やサステナブルツーリズム、インバウンドに関わる専門家や同サイトスタッフにより、ウィズコロナの中で果敢に挑戦した取り組みを選出。今回、3賞の受賞を発表した。

 最優秀賞は、城崎温泉周辺の観光スポットをEVモビリティで巡るセルフガイドツアー。コロナ禍で団体旅行が減少するなか、個人旅行のセルフガイド形式にして感染症対策もでき、地図を見ながら独自のプランで周遊できる利点にもつながった。ニューノーマルな旅のスタイルとして先進的な体験プランの確立ができている点や、地域貢献度などが総合的に高く評価を受けて選出された。

 このほかの受賞者と代表プランは次の通り。

 【地域アイデンティティ賞】おおぎみまるごとツーリズム協会(沖縄県・大宜味村)「長寿の村で三線の音色と焚き火に揺られる地元おじいおばあ交流&滞在プラン」

 【サステナブル賞】こはく(石川県金沢市)「お家で見て、選んで即購入!明日のおかずを食の宝庫金沢で、ただいま大人気のオンライン近江町市場お買いものツアー」。

 なお、今回の受賞者には、7月下旬から8月に掛けて表敬訪問と併せて表彰イベントを行う。

「津田令子のにっぽん風土記(87)」「魅力満載の伊豆半島」~ 伊豆半島編 ~

2022年7月18日(月) 配信

堂ヶ島の夕日
NPO法人ふるさとオンリーワンのまち 監事 原口護久さん

 「ふるさとオンリーワンのまち」11番目の認定式がこのほど、東京・銀座6丁目のレストランバー「サンク」で行われた。NPO法人ふるさとオンリーワンのまちの監事を務める原口護久さんに、伊豆への想いを伺った。

 

 今回認定を受けたのは、原口さんも何度か訪ねたことのある南伊豆町の「郷土割烹 伊豆の味 おか田」。推薦件名は「南伊豆町の風土を活かした郷土料理の創造とお客さま第一のスマイルサービス」。

 

 20年ほど前に同業者との会合で修善寺温泉を訪ねた折に立ち寄ったという。「あのとき食べた金目鯛の煮付けは未だに記憶にあります。会議内容よりも鮮明にね」と笑う。それもそのはず。おか田は南伊豆という漁場を活かしながら、新鮮なうちに独自に開発した濃い目の煮汁で仕上げ提供している。県内外に多くのファンを有し「金目鯛のおか田」を世に知らしめている。

 

 南伊豆町の隣町・下田は、原口さんが興味を持つ歴史ドラマが散りばめられ、何度か足を運んでいるという。

 

 1856(安政3)年、タウンゼンド・ハリス総領事、通訳官ヒュースケンが下田に着任し、その年の8月に玉泉寺を日本最初の米国総領事館として開設したことは有名だ。境内に星条旗が掲揚されて以来2年10カ月、玉泉寺は幕末開国史の中心舞台となった。

 

 歴史好きを自称する原口さんは「幕末から開国の舞台となり、ハリスが初の領事館を開いた瑞龍山玉泉寺を訪ねたときは、感動しました。ハリスとお吉の黒船哀話もここで生まれたわけですからね」と語る。境内には、初代総領事館タウンゼント・ハリスの記念館があり、彼の遺品や当時の記録が陳列されている。

 

 「堂ヶ島の眺望のよさも日本を代表する風景ではないでしょうか。遠くに富士山が望め、沈む夕陽は言葉が出ないほどの美しさで、洞窟『天窓洞』をはじめ、雄大な自然を生かしたスポットをめぐるだけで気分爽快になれます。船でめぐることもできます」。 

 

 金山で有名な西伊豆の土肥温泉もおすすめと話す。土肥温泉は、400年ほど前の金山開発のころに発展した伊豆でも最大級の温泉地だ。海に面し、三方を山に囲まれ風光明媚な土地・温暖な気候は、若山牧水をはじめ多くの文人にも愛されてきた地。「まだ食べていませんが、最近は日本で唯一、土肥にしかない幻の白びわ狩りができると聞いていますので家族を連れて訪ねてみたい」と原口さん。伊豆への想いは尽きることはなさそうだ。

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

「提言!これからの日本観光」 「観光」と交通(機関)

2022年7月17日(日) 配信

 低迷していた「観光」もようやく復活の兆しを見せ始めた。コロナ禍前京都、鎌倉などの観光都市で市内のバスや電車などの混雑から市民の利用が難しくなり、日常生活にも支障するとして観光客の入市制限を求める声が挙がったのも記憶に新しい。両市民は観光再活性化に期待を寄せつつも混雑再発に心配していると聞く。

 「観光」による交通機関とくに市内バス、電車の混雑は観光シーズン休日をピークとする大きい波動需要の発生にその原因があるだけにその緩和は観光客、観光地、交通機関などの連携による総合的な対策が進まないとその緩和は困難であると思う。なぜなら京都を例にとると市内の主な観光スポットの人出は、春秋の観光シーズン休日とオフシーズンの平日の人出との間に数倍から十数倍にのぼる大きい差があるからだ。

 交通機関側では年間平均値を幾分上回る乗客数を基準に輸送力(便数、要員、車両)を準備するためピーク需要は完全に満たせない。仮にピークに合わせた輸送力を準備するとオフシーズンにはかなりの車両や要員などが遊休化する。鉄道など多額の設備投資を前提とする交通事業では、公私営を問わずこのようなピークに合わせた投資は不可能に近い。

 混雑緩和には需要を時期的時間的に平準化することが必要である。まず観光客が閑散期、閑散時間に観光の重点を移すことだ。観光地など受入側も閑散時の観光を提案したり、イベントなどの閑散期開催を進めるほか観光料金施策(閑散時割引など)も推進し、需要の平準化に取り組む必要がある。

 次に交通機関側についてである。京都のような市内に多くの観光資源を持つ都市では市内交通を観光シーズンの休日に限る臨時的対応として企(事)業別の枠を越えてそれぞれの特性を生かす連携により全体的な効用を高める「総合的観光交通システム」として機能させることを考えたい。

 市内各機関の運賃を統合、ゾーン運賃制とする。さらにシーズン休日に限り各交通事業者、自治体関係者、交通、警察関係者などからなる「臨時総合交通システム運営委員会(仮称)」を設け、一時的に運行調整を委ねる。主要駅、バス停、交差点などにテレビカメラによる交通量観測機器を設置、オンラインで委員会事務局各社に送信する。

 前広に主要観光道路の自家用車流入規制を発動し、交通渋滞の未然防止に努める。同時に観光スポットを結ぶ主要路線区間に限定し、バスの方向別総合輸送力を確保すべく予め登録した予備の車両を会社の枠を超えて緊急配車する、また車間調整を委員会からバス運転者に要請して混雑の発生を抑える努力を進めるなど臨時運行調整機能を発揮させる。

 そして、前記の情報システムにより後刻経費・収入・精算も行う。回送タクシー、自家用車の不使用時情報なども情報システムに入力。バス補完として活用する。このような関係者の連携協働によるピーク時限定の総合策を試行してはと考える。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

アジアゴルフツーリズムコンベンション 23年4月、宮崎で日本初開催(観光庁)

2022年7月16日(土) 配信

アジアゴルフツーリズムコンベンション2023が宮崎で開かれる

 観光庁は7月13日(水)、日本初開催となるアジア最大のゴルフ商談会「アジアゴルフツーリズムコンベンション(AGTC)2023」(IAGTO主催)が宮崎県で開かれることを発表した。開催日は2023年3月14~16日の3日間。

 AGTCは2012年からアジア各国で年1回開かれている世界各国のゴルフツーリズムの関係者が集まる商談会。旅行会社やゴルフ場、ゴルフリゾート、ホテルなどの関係者が約40カ国から参加し、3日間にわたって商談やゴルフ環境の視察を行う。

 21年4月に宮崎県での開催が決定していたが、新型コロナの影響により中止した。

 観光庁が行っている訪日外国人の消費動向調査によると、訪日外国人のゴルフ実施者は消費額や滞在日数が大きいことが分かっている。ゴルフ場周辺のさまざまな観光資源との組み合わせや、飲食、宿泊への接続の実現により、地域経済活性化を目指す。

コロナ疑い客拒否可能に 旅館業法5条改正案提出へ(厚労省)

2022年7月15日(金) 配信

ホテル・旅館の従業員や宿泊者の安全を確保する狙いだ

 厚生労働省の旅館業法の見直しに係る検討会は7月14日(木)、新型コロナウイルスに感染した疑いが利用客について、旅館やホテルなどの事業者側が宿泊を拒否できる旅館業法5条の改正案の方向性を取りまとめた。これを受け、同省は9月に開催予定の臨時国会に向け、改正案の提出作業を進める。ホテル・旅館の従業員やほかの宿泊者の安全を確保し、ウイルスの拡大を防ぐ狙い。

 現行法で宿泊を拒否できるケースは、伝染性の疾病に罹っていると明らかに認められる場合などに限られている。このため、発熱などの症状だけでは、利用を断れない。

 取りまとめでは、宿泊業者が感染の疑いがある人に、医療機関の受診や必要な感染対策を求め、正当な理由なく応じない際は、拒否できるとした。症状のない宿泊客でも感染対策に応じなければ、拒めるようにする。対策の具体的な内容は今後、検討していく。

 一方、2003年には、熊本県のホテルでハンセン病の元患者が宿泊を拒否されるなど、不当な差別事案が発生したことから、同省は事業者への努力義務に「従業員への研修」を加え、さらなる差別防止の徹底を求める。

海外旅行再開PJ始まる 全国8カ所の街頭でグッズなど配る(JATA)

2022年7月15日(金) 配信

東京駅で7月15日(金)に行われた街頭サンプリングのようす

 日本旅行業協会(JATA、髙橋広行会長)は7月15日(金)、海外旅行の需要喚起に向け、全国8カ所で「JATA 海外旅行再開プロジェクト」の街頭サンプリングを行った。海外旅行の市場の早期復活を願い、旅行会社や観光協会、航空会社が参加して、キャンペーンロゴ入りグッズを通行人に配った。

 街頭サンプリングは、東京、札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡、沖縄で同日に実施。

 JR東京駅・八重洲口コンコースでは、日本旅行やJTBなどの旅行会社が13社、全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)などの航空会社2社のほか、中国駐東京観光代表処、台湾観光協会、トルコ共和国大使館などの観光局や大使館も参加した。

大阪・阪急梅田駅でも行われた

 今回のキャンペーンについて、髙橋会長は「海外旅行から遠ざかっていた時期は長く、皆さんの関心の眼差しを感じた。潜在的な需要はとても高いのではないか。最近では国際航空路線が回復し、外務省による感染症危険情報レベルの引き下げが行われたので、いいタイミングにCPをできた」と語った。

 一方で、水際対策のさらなる緩和については、「PCR検査や入国者数上限が2万人など、厳しい制限が掛けられたまま。この2つの壁がなくなった瞬間に、一気に海外旅行の需要が爆発すると考えている。1日でも早くG7並みの緩和を」と強調した。

 また、7月14日(木)に国土交通省から全国旅行支援の見送りが発表されたことについて、「県民割・ブロック割が8月末まで延長されたが、県民割の経済波及効果は限定的なため、感染状況が落ち着いたら9月を待たずに早期の実施をしてほしい」と要望。加えて、少なくとも来年3月末までの長期の事業実施を求め、国へ提言を行っていると明かした。

 同CPは街頭サンプリングのほか、新聞広告・ポスターの掲載も行う。また、「#せかいたび」とハッシュタグを付けて投稿すると、海外旅行・国際航空券などの賞品が当たるツイッターキャンペーンなど、3方面から働きかけを行っている。

〈観光最前線〉「加賀パフェ」がリニューアル

2022年7月15日(金) 配信

店舗ごとにオリジナリティあふれるパフェを提供

 石川県加賀市で人気のご当地スイーツ「加賀パフェ」の2022年バージョンが完成し、7月2日から市内飲食店5店舗で提供が始まった。

 色鮮やかなゼリー(1層目)、はちみつ生クリーム(2層目)、野菜スポンジケーキ(3層目)、ポン菓子(4層目)、味平かぼちゃのアイスや温泉たまご(5層目)、さらには、加賀九谷野菜のトッピングや吸坂飴オリジナルソースと、地元素材をふんだんに使った5層のパフェで、リニューアルは2年ぶり。

 器は地元作家による山中漆器や九谷焼を使用。写真映えするデコレーションが施されたものなど、店舗ごとに食材や見た目が異なっており、食べ比べするのもあり。料金は全店統一で1千円(税込)。加賀を訪れた際は、ぜひ。 

【塩野 俊誉】

「鉄道開業150周年を契機に~寄稿シリーズ③」 亀沢修氏「小坂鉄道の遺産守り魅力発信」

2022年7月15日(金) 配信

旧小坂駅舎と再開を前に整備中の「ブルートレインあけぼの」
亀沢 修氏 小坂鉄道保存会総務企画局長、小坂町町史編さん室勤務

 2008(平成20)年4月、文化財保護担当から観光担当へと思いがけず異動となった。「保護ばかりでなく活用を前提に考え仕事せよ」とのお達しがあってのことである。新たに命じられたのは、この年休止となった小坂鉄道の観光活用方策の立案であった。

 

 秋田県北東端に位置し十和田湖を有する小坂町は、小坂鉱山が残した近代化遺産を観光資源として保存活用している町である。

 

 小坂鉱山は明治末期に鉱産額日本一の銅山へと発展。鉱山町としてにぎわう小坂と、奥羽線大館駅を結ぶ物流と交通の要として、1909(明治42)年5月に開業したのが小坂鉄道であった。しかし、100周年を迎えた09年4月に廃止となる。新たな金属リサイクル製錬施設の完成で、主要貨物である濃硫酸の製造を終了したことがその理由であった。

 

 一方で1994年の旅客廃止直後に、小坂鉄道の応援を目的に結成された「鉄道の日イベント実行委員会」の鉄道愛好家たちは、鉄道休止後も復活の日を夢見て活動を継続していた。私もその1人だったが、仲間との共同で旧小坂駅舎や軌道敷、保存車両の観光活用方策について企画を練り上げた。

 

 その計画に基づき所有者や関係者と協議を重ね、ついには秋田県や国の支援を受けられることが決まる。日本鉄道保存協会の米山淳一氏にはアドバイザーに就任いただき、指導を仰ぐこともできた。

 

 2014年6月1日、「〝レール遊びの複合施設〟小坂鉄道レールパーク」がグランドオープンの日を迎える。翌年には寝台客車を動態保存した簡易宿泊施設「ブルートレインあけぼの」も開業した。ディーゼル機関車運転体験など体験事業の企画・運営を担うのは、イベント実行委員会のメンバーに新たな仲間を加えて結成した「小坂鉄道保存会」だ。制服姿もりりしく〝魅せ鉄〟による車内放送も得意としている。

 

 レールパークは、保存会によるオモテナシ、国登録文化財の駅舎、動態保存車両や鉄道システムを活用した体験事業によって人気を集めてきた。ところが新型コロナの感染拡大によって、体験事業や宿泊営業は休止され、保存会は活動自粛を余儀なくされたのである。 その間、保存鉄道の宿命である老朽化した車両の不具合や枕木の腐蝕が見られるようになって、その対策も急務となっている。

 

 そして今、アフターコロナに向けた新たな取り組みも必要となった。大館までの軌道はほぼ全線で残され、「小坂鉄道・大館レールバイク」など廃線を活用した観光スポットも充実してきた。大館市との連携で、小坂鉄道の遺産を守り、その魅力をどのように発信するのか、町や保存会の力量が問われている。