賛成派3府県、カジノ合法化へ議連と意見交換

(左から)坂本副知事、橋下府知事、松沢知事、古賀会長
(左から)坂本副知事、橋下府知事、松沢知事、古賀会長

 カジノを中心とした複合観光施設整備の合法化を目指す「国際観光産業振興議員連盟」(民主党・古賀一成会長)は12月16日、参議院会館で第11回の総会を開いた。今回は、同連盟が来年の通常国会の提出を目指している「特定複合観光施設区域整備法」について、3府県の知事らが意見を述べた。出席した神奈川県と大阪府、千葉県はいずれも大枠では賛同し、県内への誘致にも意欲的な姿勢を見せた。

 古賀会長は冒頭、「4月の中旬から開始し、11回を迎えた。大観光時代といわれるなかで明るい施策をと、超党派で一致して活動を進めてきた。来年の通常国会では当初から、波高いことが予想されるが、我われの地域主権の試みや広域行政の試み、国際ハブ機能戦略のビジョンは必ず活路を見出すと確信している」とあいさつした。

 会合では、まず神奈川県の松沢成文知事が法案内で区域を10地域と定めていることに、地域数は設定せずに柔軟に対応できるようにすることや地方への十分な収益の配分など、地域活性化をメインに位置付けることを求めた。また、オーストラリアのカジノ視察の経験なども語り、「先進国でカジノがないのは日本だけ。法律を作り、体制を整えれば弊害は必ず防げる。カジノは賭博場ではなくホテルやコンベンション、飲食などがあるエンターテイメントシティの1つの要素。より魅力的な都市を作り、世界中からお客様を集めるという発想で取り組まなければならない。議員連盟の皆さんにはできるだけ早く結果をだしていただきたい」と期待を込めた。

 一方、大阪府の橋下徹府知事は「国の成長戦略の位置付けの意識を国民全員に持ってもらう必要がある」と主張。「これは都市部の問題かもしれないが、闇の賭博場があるのは事実だ。法案の目的として闇経済や不法団体の排除をうたってもいいのではないか。とにかく、国民が納得するものを提示しなければならない」と意見した。また、基礎自治体の単位を県や市、広域地域にするかなど指定プロセスを明確化することなどを求めた。

 さらに、千葉県の坂本森男副知事が出席。千葉県では、成田空港緊急戦略プロジェクトのなかで、空港周辺のMICE機能強化の必要性を議論し、カジノを含めた複合施設の誘致も検討している。「外国人専用カジノ」も想定するが、収益性の問題などもあるという。一方、日本人利用を可能にした場合は依存症などの懸案事項がある。坂本副知事は「社会的に否定的な側面の縮小方法が大きな問題。懸念事項のなかで、利用者側の対応については地方自治体の手に余る」とし、依存症対策や入場規制などの具体策の提示と国の積極的な関与を求めた。

 3者の意見発表後は各議員や知事らが質問や意見を出し合った。古賀会長は「来年の上程に向けて、今日の意見も参考にしながら法案の修正をしていきたい」と語った。

予算確保へ折衝中、11年度はアジア1位へ

 観光庁は12月17日、第3回MICE推進協議会を開き、溝畑宏長官は冒頭あいさつで事業仕分けについて触れ、必要なものを確保するため折衝中であることをアピールした。そのほか、10年度の観光庁と協議会メンバーによるMICEの取り組みを紹介、11年度の基本方針「アジア1位を目指す」ことなどについて話し合った。

 溝畑長官は「シンガポールや韓国などがアジアで競争力を高めている。立ち向かうためにより一層、国・地方自治体・民間と一体になって取り組まなければいけない」と語り、事業仕分けで予算見送りとされたことに触れ「今まで以上に国をあげて取り組むために、必要なものを確保するよう最大限の努力中だ」と予算確保へ注力していることを報告した。

 日本は2009年の国際会議開催件数で世界第5位の538件。観光庁は09年度と10年度のこれまでの誘致に成功した国際会議を紹介し、誘致活動について報告した。
日本商工会議所観光委員会の須田寛委員長は、各地の商工会議所でのMICEへの取り組みを紹介し、観光庁へは「国際会議や国内の全国レベルの会議などの情報をもっと発信してほしい。会議があることを分かっていれば、サイドイベントなどもできる」と「情報共有の重要性」について要望を述べた。

 そのほか各団体が取り組みについて報告し、要望を伝えた。開催件数の多い展示会の位置づけやMICEの国民への意識定着、会場などのハード整備、ユニークベニューのアピール、中・長期的な視点と取り組みなどについて協議。官民一体の取り組みの推進、トップセールスの必要性、ハード面での活用などを11年度の課題に挙げた。11年度のスローガンは「アジア1位を目指し、MICEで日本を元気に!」が提案された。

 MICE推進協議会のメンバーは日本展示会協会、日本コングレス&コンベンションビューロー、日本経済団体連合会観光委員会、日本ホテル協会、日本旅行業協会、国際観光旅館連盟、日本商工会議所観光委員会、日本PCO協会、日本イベント産業振興協会、日本ツーリズム産業団体連合会、日本政府観光局、日本コンベンション事業協会。

秋のみの分散化も、3月までに修正案

 観光庁は12月16日に、ホテルニューオータニ(東京都千代田区)で「第2回休暇改革国民会議」を開いた。賛否両論さまざまな意見が出るなか、座長の新日本製鐵会長の三村明夫座長は、第3回会合が開かれる11年3月までに修正案を検討する方針を提案した。会議後の囲み取材で溝畑宏観光庁長官は、休暇分散化について秋だけの実施や5ブロック制の変更などを含め現行案の修正を検討する旨を話した。

 観光庁が提案する大型連休の地域ごとの分散化について、産業界、観光業界、教育業界、地方自治体関連など、各界の代表者が集まり意見を述べた。「準備期間をもったうえで実施し、そのうえで課題を修正していく」などの賛成意見が多いなか、中小企業からは資金決済停滞による資金繰りの悪化や全国にまたがる取引先との問題、銀行関連では決済の問題、教育業界からは全国中学体育大会や高校総体の実施・運営の難しさなど、根強い反対意見もあがった。

 内閣府が10月に行った3千人を対象とした特別世論調査では、休暇の分散化について賛成28・1%、反対56・1%という結果が出た。日本労働組合総連合会会長の古賀伸明氏は、調査結果に触れ「国民に根付いている春のゴールデンウイークは対象外にし、秋のシルバーウイークだけを社会実験として分散化し、さまざまな影響を見定めては」と修正案を提案。富山県の石井隆一知事からは秋のみの実施に加え「現行の地域を5ブロックに分けるのではなく、2、3ブロックくらいがちょうど良いのでは」との意見も出た。

 座長の三村会長と溝畑長官は会見後に囲み取材を行い、三村会長は「問題点の指摘には納得できるものも多く、56・1%の反対という結果も無視できないので、現行案そのままというのは難しい。秋の実施については反対意見は多くなかったのでは」と述べた。溝畑長官は「政務三役と相談しながら、実施時期、ブロック分け方法なども含めて修正案を検討しなくては」と話した。

JTB 2011年旅行動向見通し

「国内は“3連休増加”で微増」

 JTBがこのほど発表した2011年の旅行動向見通しによると、国内旅行人数は前年比1・2%増の3億200万人とわずかに前年を上回る見込み。

 一方、海外旅行は円高の継続や、羽田空港の国際化で近隣アジアへの旅行が増加することが見込まれ、同3・7%増の1730万人とプラスで推移する見通しだ。

「海外は羽田国際化で3.7%増」

 訪日外国人数も羽田空港の国際化により便数が増えた韓国、中国、香港、台湾といった東アジアからの旅行者の増加が見込まれ、同5・7%増の920万人と堅調な伸びを予測する。

 国内旅行は、土・日・祝日の3連休が前年に比べて3回も多いほか、10年12月には青森、11年3月には鹿児島まで新幹線が延伸することで、遠距離旅行が増加するとみている。

「訪日外国人は5.7%増の920万人」

 海外旅行は、1月には羽田空港からニューヨーク、2月にはロンドン、3月にはバンクーバー便が就航し、海外旅行の選択肢が増える。さらに、地方から羽田経由で目的地に向かうルートや、往路は羽田便の深夜便を利用し、帰路は成田空港を使うというルートも可能となる。LCC(格安航空会社)が乗り入れ空港を増やす動きもみられ、選択肢の多様化が一層進むことが予想される。

旅館業の職業能力基準策定、全体の人材力底上げが目的

 厚生労働省は、職業能力を客観的に評価するための「職業能力評価基準」で、新たに「旅館業」と「施設介護業」の基準を策定し、昨年12月24日から中央職業能力開発協会のホームページ(http://www.hyouka.javada.or.jp/)で公開している。これまでに42業種で同基準を策定しており、仕事に必要な技術・技能、知識について4つのレベルを設定し、業種別、職種・職務別に整理・体系化している。

 今回、策定した旅館業は、主に和風様式の構造や設備を整え、宿泊サービスを提供する施設が対象。経営環境が厳しいなか、集客力を強化しコスト削減が重要な課題になる一方、人材確保や教育体制の構築といった問題も抱えている旅館業界の活性化をはかるのが目的。サービス向上で旅館全体の人材力底上げを目指す。ホテル業の基準については2004年に完成しており、NPO法人などで活用されている。

 基準の策定については全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会と国際観光旅館連盟、日本観光旅館連盟との連携で、包括的な委員会を設置して検討。旅館業の主要な職種として4職種・10職務を対象にした。職種と職務の種類は職種の「接客サービス」がフロントと客室、宴会・食堂、販売の4職務で、「調理」は1職種1職務、「営業・マーケティング」は営業・マーケティング、予約管理の2職務。「旅館管理」は経営管理と衛生・環境管理、施設・設備管理の3職務を用意した。

 また、レベルは4段階を設定。レベル1(担当者)は担当者として定例的な業務を確実に遂行するために必要な能力水準を求めている。例えば「接客サービス」のレベル1では、快適なロビー周辺の維持や客室への案内などの能力細目があり、必要な知識は自旅館の宿泊約款や外国語などが設定されている。

 レベル2の役職イメージは主任、チームリーダーでレベル3は課長やマネージャー、ベテランスタッフ(スペシャリスト)、またレベル4は本部長や部長など。

2011年新春対談 地方から日本を元気に

地方から日本を元気に

第22回「全国旅館おかみの集い」運営委員長
有村 政代さん
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熊本県知事
蒲島 郁夫さん

 2011年の本紙「新春対談」は、熊本県知事の蒲島郁夫さんと、熊本県人吉温泉の清流山水花あゆの里女将・有村政代さんに登場いただいた。蒲島知事は高校卒業後、農協に就職。農業研修で渡米した後、ハーバード大で政治学を学び、東京大学の教授就任という異色の経歴を持つ。一方の有村さんは今年6月28日に福岡県福岡市で開く第22回「全国旅館おかみの集い」の運営委員長を務める。「地方から日本を元気に」をテーマに、女将や旅館文化、地域活性化、外客誘致など、2人は熱く語り合った。 【対談は本紙9面】

(司会進行=旅行新聞新社取締役関西支社長・有島 誠、鈴木 克範)

 

※ 詳細は本紙1406号または日経テレコン21でお読みいただけます。

JALグループ統合へ、国内、海外統一で効率化

 ジャルパック(大西誠社長、東京都品川区)とジャルツアーズ(同)は12月6日、両社の臨時株主総会での承認を前提に、2011年4月1日に統合することを発表した。国内、海外旅行の商品事業を統合し、経営基盤の強化や効率化をはかる。

 11年度の新商品は、国内・海外ともに商品ブランドを「JALパック」に統一。品質とブランド認知度の向上に努める。

 新会社名は「株式会社ジャルパック」で、存続会社のジャルツアーズが来年4月1日に商号変更する。所在地は現在、両社が入居する東京都品川区東品川2―4―11 野村不動産天王洲ビル。

営業益110億円増、大幅な増収益で黒字転換

 JTBグループの2010年度上期(4―9月)の連結決算によると、売上高は前期比5・4%増の6095億円、営業利益は同110億円増となる57億円(前期は53億円の損失)、経常利益は62億円(前期は39億円の損失)、当期純利益は23億円(前期は53億円の損失)と、前期を大きく上回り黒字に転換し、大幅な増収増益となった。

 円高による海外出国者数の増加、海外経済の好況による訪日外客数の増加、法人需要の持ち直しなどにより、中核である旅行事業は取扱額が同6・2%増、売上高が同5・6%増と、リーマンショック以前の水準には未だ達していないが回復基調にあることを示した。

 海外旅行は、新型インフルエンザの反動もあり、日本人出国者数が大きく伸長し、取扱額が同20・3%増、売上高が15・2%増、取扱人員が7・4%増の170万7千人となった。個人では、「JTBグランドツアー&サービス」や「JTBメディアリテーリング」などが好調。団体は、上海万博の取り組み強化や法人需要が回復し前期を大きく上回った。

 国内旅行は、旅行市場規模が縮小傾向のなかで取扱額は同1・9%減、売上高は同2・6%減となった。個人は、予約の間際化・直販化が進み、企画商品「エースJTB」宿泊単品販売が低迷。団体は、教育団体は前期を下回ったが、一般団体は堅調に推移し、取扱額はほぼ前年並みとなった。

 10年度下期は、羽田空港の国際化、東北新幹線や九州新幹線の全線開業などの機会を活かし、通期の業績予想では、経常利益80億円を見込む。

合格率37.1%にアップ、10年度総合取扱管理者

 日本旅行業協会(JATA)がこのほど発表した、2010年度総合旅行業務取扱管理者試験の結果によると、総受験者1万3351人のうち、合格者は4956人で合格率は前年度比11・6%増の37・1%と大幅にアップした。受験者数は同687人増、合格者数は同1727人増といずれも増加した。

 合格者の内訳は旅行業従事者が41・1%を占めトップ。次いで大学生が19・2%、旅行関係以外の会社員が13・2%の順。年齢別で合格者が最も多かったのは19―23歳の28・4%で次いで30―39歳の28・2%、24―29歳の27・8%と続く。最年少合格者は16歳、最年長合格者は72歳だった。

 受験区分別に見ると、「全科目受験者」は前年度から674人減少したが、合格者は497人増えた。合格率は8・6%上昇の23・7%。最も合格率が高かったのは、受験科目が約款のみの「国内旅行業務取扱管理者有資格者で、昨年度試験の『海外旅行実務』科目合格者」と「同資格者で、今年度総合旅行業務取扱管理者研修『海外旅行実務』の修了者」で93・8%だった。

 なお、今回の試験で「国内旅行実務」と「海外旅行実務」の科目合格者については、来年度に限り同科目の試験が免除される。今回の該当者は合計で1519人。

ANA楽パックで海旅開始、岡武社長「150億円を想定」

岡武社長(左)と片野坂本部長
岡武社長(左)と片野坂本部長

 楽天と全日本空輸(ANA)は12月1日、国内旅行サービスの業務提携を海外まで拡大し、「ANA楽パック」(海外)として、楽天トラベルの総合サイトで売り出した。ANAの国際線航空座席と楽天トラベルが取り扱う海外宿泊施設を自由に組み合わせるダイナミックパッケージ商品で、ANAが就航する11都市からスタートする。

 同日、両社は東京・汐留のANA本社で共同会見を開き、楽天トラベルの岡武公士社長とANA取締役の片野坂真哉営業推進本部長が出席した。岡武社長は、これまでの経緯として、2006年4月に共同出資会社「楽天ANAトラベルオンライン」を設立し、国内パッケージツアーを開始したことに触れ、「4年間で非常にいい関係が築け、目標とした数字も達成できつつある」とし、国内の成功を背景に海外でも満足度の高い商品展開をはかっていくことなどを語った。また、片野坂本部長は「10月31日から羽田空港の国際化で、合計9路線を就航し、幸先のいいスタートをした。地方から乗り継いで海外に行けるという羽田国際化のビジネスチャンスに、購買手段として定着している、インターネットを活用した海外旅行の分野に大きく前進できるのは、我われにとって非常な喜びだ」と述べた。

 商品の特徴は、ANAが運航する国際線・週約850便の航空券と楽天トラベルが扱う約5万9千軒の宿泊施設を一括で予約できることに加え、通常の旅行商品では50%のマイレージ付与率を70%に設定したこと(国内線乗り継ぎ区間は100%)。また、最大7カ月前から座席指定ができるのも大きな特徴の1つ。サービス開始時の発地は成田と羽田、中部、関西国際空港で着地は北京やロンドン、ホノルルなどの11都市だが、随時、ANAが就航する他都市についても取り扱いを拡大していく予定。

 今回の提携では、インバウンドの分野でも提携をはかり、第1弾として両社の多言語サイト間の相互リンクを開始した。

 今後の目標について岡武社長は「新事業は『5年でシェアの5%』が皆さんに周知される数字」と話し、それを踏まえて「150億円という数字を頭に想定している」とした。人数についても同じく5%が目安という。

 なお、海外商品のオープニングキャンペーンとして、2011年1月11日までに国内を含む「ANA楽パック」の予約・購入者を対象に通常よりポイント率が高いポイントキャンペーンや、30万円分の同商品が当たる懸賞なども展開している。