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〈旬刊旅行新聞6月21日号コラム〉「何故それはそこにあるのか」――本物は根源的な問いに回答できる

2021年6月21日
編集部:増田 剛

2021年6月21日(月) 配信

 
 人は美しいデザインを欲し、お金を払う。家具やクルマ、文具、服、食器などもそうだろう。その製品を「美しい」と感じる理由に、装飾と機能の両面の美がある。

 
 花瓶や壺などの装飾品ではなく、繰り返し使う道具(製品)であれば、たとえデザインが優れていても、使い勝手が悪ければ意味がない。機能を最優先に追求した究極型は美に至る。

 
 有名建築家が設計した美しい家屋や、ホテルは称賛される。だが、実際に使ってみて、オペレーション上の負担が大きかったり、宿泊客が滞在中に不便ばかりを感じたりしては、その評価は決して高くはならない。その意味で、一切の装飾が削られ、機能の本質を体現した実務的な製品に、感動を覚え、いつまでも愛情を注ぎたくなる。

 

 
 さて、ある時、旅行先でレンタカーを借りた。奇抜なデザインが売りの、かつて人気を博した小型車が待ち構えており、ワクワクして車内に乗り込んだ。

 
 しかし、何ということだろう。ダッシュボートの高さと、ドライバーズシートに座った位置がどうも合わない。視認性も居住性も悪い。

 
 また、レンタカーの契約書や保険などの書類が入ったクリアファイルをドアのサイドポケットに入れると、底が浅いために、柳のように、こちら側に折れ曲がって使い物にならない。

 
 さらに、センターコンソールのドリンクホルダーにペットボトルを置き、道路に出て軽くブレーキを踏むと、ホルダーの底が浅いため、ペットボトルが飛び出してフットブレーキの近くに転がり、ヒヤリとした。

 
 国内の主要メーカーの人気車種で「このレベル」だということに、愕然とした。「それらしいモノ」を何となく取り付けただけで、ドライバー(利用者)のことを考えていない思想の薄っぺらさに、寂しさを感じた。

 

 
 もしも、私がデザイン責任者であれば、必ずシートに座り、視界が優れているか、またペットボトルや紙コップを置いたときに転がったり、こぼれてしまわないかを確かめる。サイドポケットを作ったのならば、A4判サイズの書類がきっちりと収まるか、実際に試してみる。一つひとつを細かに実体験し、「使い勝手」や「運転しやすさ」を突き詰めていく。クルマが好きな人間なら、当たり前のことだ。

 
 デザイン重視の高級スポーツカーなら「実用性を犠牲にする」視点もあるだろうが、「小型大衆車」という工業デザインであれば、実用性と機能性が最も重要ポイントではないか。

 
 洒落たホテルの洗面台やトイレも最近多く目にするが、使い勝手が一番であるべきだ。

 

 
 嗜好性が多少関わる「装飾美」とは違い、「機能美」は普遍性が重要だ。精密機械などの製品は何千、何万回と同じ動作や操作を繰り返す。その過程で、膨大な実体験に基づく知恵の蓄積が研磨剤となり、奇抜さやムダを省いていく。やがて、あるべき姿(本質)としての「美」が造形される。優れた製品は配置や大きさ、角度など、利用者からのあらゆる問いに、すべて回答できる。「何故それがそこにあるのか」――。この根源的な問いに明確な説明ができないモノは、本物ではない。

 
 ムダのない機能美をたたえるデザインに、あえて説明が不要なチャーミングな装飾(遊び)を小花のように備えた製品が最高だ。

 

 (編集長・増田 剛)

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