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〈旬刊旅行新聞12月11・21日号コラム〉2020年の観光業界を振り返る 観光業の文化・経済波及効果を再認識

2020年12月11日
編集部:増田 剛

2020年12月11日(金) 配信

2020年の観光業界を振り返る

 
 2020年がもうすぐ終わろうとしている。1年を振り返る時期となった。

 
 年初に中国の武漢で新型コロナウイルスが発生したというニュースが小さく出始めたころ、何となく嫌な予感がした。少しの期間、静まったように思ったが、「何となく」の嫌な予感は的中した。武漢から感染が中国本土全体、そして日本を含むアジア、欧州、米国、そして世界中へ、瞬く間に、爆発的に拡がっていった。ウイルスはこのように人を介して感染していくのだと思いながら、世界地図上に示される新規感染者数と死者数を眺めていた。

 
 日本では4月に緊急事態宣言が出され、東京の街並みも、これまで見たこともないような寂寥感を覚えた。4000万人を目指したインバウンドもほぼ皆無状態となり、行き交う人は皆マスクをするようになった。

 
 20年の最大のイベントとなるはずだった東京五輪も延期となり、多くの旅行会社や宿泊施設、バス会社、水上観光船なども休業を余儀なくされた。

 
 ロンドンやパリ、ニューヨークのように東京が都市封鎖になれば、本紙も発行できない状態になるのではないか、との不安を抱えながら、窓を開けたガラガラの通勤電車に座り、都心に向かった。東日本大震災の直後、余震が毎日のように続き、会社から帰宅できなくなるかも知れないと、鞄に2日分の着替えを入れて出勤していた、あの10年前の緊張感に似ていると、ふと思ったものだ。

 

 
 7月22日に、東京都を除いてGo Toトラベルキャンペーンが始まった。批判しようと思えばどこからでも、いくらでもできる事業だ。補償無き自粛要請が布かれた当時、“自粛警察”による犯罪まがいの嫌がらせが蔓延った。罪悪感を抱きながらの旅行は不幸である。他人の外出を監視し合うような、重苦しい空気から解放するには、日本では「国によるお墨付き」が必要だったのかもしれない。

 
 補償が十分でないなか、移動が制限されると、どうにもならない業種もある。

 
 会社の周りの飲食店は、コロナ禍で幾つも閉店してしまった。当然、職を失った人がたくさんいる。テレワークができない飲食業や、旅館などのサービス業は、感染による命の不安と、経済的な不安の二重の苦しみを味わう弱い立場だ。

 

 
 コロナ禍によって、観光産業が持つ経済的な波及効果の大きさを改めて認識する機会となった。批判の声の大きさに比べ小さな声だが、「助かった」人たちも少なからずいる。「GoToなどやらずに、苦境にある観光業だけに直接現金で支援すればいいじゃないか」との意見もあるが、例えば大手航空会社に大量の資金援助をしても、経済は回らない。観光産業の裾野は、目に映るすべてのものに広がっていると言ってもいい。

 
 人間が文化的に生きていくことの大切さも感じた年だった。こんな危機的な状況でも精一杯気を配って、野球や、映画、コンサート、演劇を観に行く人が好きだ。私自身も今年、日本中を回り、たくさんの思い出深い素晴らしい旅行をした。

 

 
 コロナによって重大な影響を受け続ける観光業界。新聞記者には「歴史的な瞬間の証人」としての使命がある。コロナ禍ではあるが、可能な限り実際に人と会い、現地に向かい、時代の空気感を伝えていきたいと思う。

 

(編集長・増田 剛)

 

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