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〈旬刊旅行新聞1月11日号コラム〉冬の日本旅館を楽しもう 白い障子を開けると、風情ある雪景色

2020年1月11日
編集部:増田 剛

2020年1月11日(土) 配信

雪景色の四万温泉

 昨秋から年末にかけて、予定していた旅行や出張が相次いでキャンセルとなり、旅行とは縁のない日々を送っていた。

 
 人生、何事もそうであるが、旅行だって幾つも続けば、一つの旅に対しての感動が薄まる。これは悪い意味で「旅行慣れ」した状態である。せっかく旅行しているのに、神経が研ぎ澄まされていないために、おざなりの旅になるのはもったいない。
 
 けれど、4カ月近くもちゃんとした旅をしていない私は「檻の中の空腹な犬」のように落ち着きなく、仕事や生活をこなしていた。そして、ようやく年末に群馬県の四万温泉に旅行を決行したのだった。
 
 待望の1泊温泉旅行に心は踊った。もう旅行の仕方も忘れていたほどだ。クルマのハンドルを握り、外環道から関越道を走るドライブがこんなに楽しいものかと、その刹那を噛みしめながら走らせた。ただ、上空を見上げると真っ青な冬晴れの空が広がっているのに、目的地方面には灰色の分厚い雲が迫っているのが少し気になった。
 
 群馬県の名だたる温泉地に向かう玄関口である渋川伊香保インターチェンジで関越道を降り、伊香保温泉近くの水沢うどん街道で水沢うどんを食べた。わざわざ伊香保温泉までうどんを食べに行く行為自体が贅沢で、「自分にはこんな時間が必要だったのだ」と、窓の外の白い雪を見ながら思った。
 
 「ん? 雪?」外はいつの間にか、雪が降り始めていたのだ。私は冬のドライブ旅行では、必ず大雪とぶつかる。2011年のクリスマスイブには、和歌山県の高野山の宿坊で、膝が埋もれるほどの大雪に遭った。慣れないタイヤチェーンと格闘しながら、「絶対に生還してやる」と強い念力によって下山したことがあった。
 
 数年前に東伊豆の温泉旅館に宿泊したときには、11月下旬というのに駐車場のクルマに雪がどんどん積もっていくのを眺めながら、不安な夜を過ごしたことを思い出す。
 
 そして今回の旅も、雪との遭遇となった。雪が本格的に積もり始めた伊香保温泉を脱出し、一旦平地に戻ると雪は止んだ。だが、四万温泉は標高約700㍍に位置しており、冬タイヤを履いていなかった私はヘンな汗が体中から流れ出した。
 
 何とか四万温泉の旅館に着き、一安心した。畳敷きの広い和室の白い障子を開けると、風情ある雪景色が広がった。思えば、雪の温泉旅館で過ごす何気ない時間を夢見てきたのだ。浴衣姿で白銀の世界を見下ろしながら、ようやく夢が叶った気分になった。雪見風呂も堪能し、日本の温泉旅館の良さを心身ともに満喫した。「もし明日まで雪が降り続くのなら、もう一泊、小さな宿で過ごせばいい」と楽観的に考えていた。
 
 翌朝、雪は止んでいたが、とてもクルマを走らせられるような道路状態ではなかった。しかし、旅館を出る宿泊客のクルマが雪を踏みながら走ると、少しずつ道路の雪が解け始めた。バスの運転手に道路の状態を聞くと、「塩化カルシウムを撒いているので、大丈夫だと思いますよ」と教えてくれた。その言葉に背中を押され、四輪駆動車の雪道走破性を信頼し、安全運転で自宅に戻った。雪景色の温泉旅館で過ごす大人の旅の味を覚えた私は、次回はしっかりと冬タイヤを履いて、雪の温泉地をワイルドに味わい尽くそうと思った。
(編集長・増田 剛)

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