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〈旬刊旅行新聞9月11日号コラム〉箸で食べると美味しい 繊細で、舌の上で味が何層にも広がる

2019年9月10日
編集部:増田 剛

2019年9月10日(火) 配信

お箸で食べると美味しい

 今夏は、出張する取材が続いた。新聞記者の仕事は、取材を終えた時点では、まだ仕事のスタートラインに立ったに過ぎず、この秋は会社のパソコンの前で一つずつしっかりと、特集記事にまとめようと決心した。

 
 そんなわけで、先週は月曜から金曜日まで、取材に出ることなく、机に座ってパソコンの画面に映る文字と格闘していた。
 
 毎日、規則正しく机の前で記事を書き続けていると、昼食も規則正しくなった。こう書くと、健康的な食生活になったように受け止められるかもしれないが、そうではない。月曜日から金曜日まで、会社近くのコンビニエンスストアで、同じ弁当を食べ続けてしまった。
 
 同じものを食べ続けることは、自分ではよくあるのだ。
 
 20代のころに働いていた会社では、近くにカレー店があり、1カ月で、昼夜を合わせて32食を食べたことがあった。別に「記録を作ろう」といった野心があったわけでもなく、「気づいたらそこにいた」というだけだ。上京してすぐのころは、マンションの隣にあった定食屋さんで毎晩、肉野菜炒め定食ばかりを食べ続けた。
 
 食に対するこだわりが弱いのか、「今日は何を食べよう」と考えるのが面倒くさいのか、気づいたら同じものを飽きるまで食べ続ける傾向にある。
 
 だが、こんな私でも食事の際にこだわるものがある。それは、この料理を「何で食べるか」だ。
 
 私は今のところ、幸いにも、箸とフォークとスプーンを使うことができる。この3つから自分の好きなもので食べる選択が可能だ。
 
 例えば、牛丼や親子丼、そぼろ丼などは、スプーンが用意されている店もあるが、私は必ず箸で食べる。グラタンやガパオライスもスプーンではなく、フォークだ。コーンバターも、スプーンで食べると一掬いで口に持っていけるが、フォークで食べた方が美味しいし、場合によっては先端の細い箸で一粒ずつ摘まみながら食べた方が、さらに美味しく感じる。
 
 以前、イタリアの高級ブランド「ドルチェ&ガッバーナ」が上海で予定されていたファッションショーの宣伝動画で、アジア人女性がピザやスパゲティーを箸で食べようとして上手くいかないシーンを描き、「人種差別だ」と感じた中国で大炎上した。私がこの動画を見た率直な感想は、「滑稽さ」だった。
 
 「スプーンよりもフォーク、箸はさらに高度で複雑な指と脳の動きが必要である。その「箸を使う文化」のアジアを茶化したように映ったからだ。動画が何を表現したいのかが、どうしても理解できなかった。
 
 手や腕が自由に動かない人に、自動で口まで料理を運ぶ食事介助ロボットも開発されている。しかし、可能であるなら、人は自力で料理を自分の口に運びたいはずだ。私もそうである。なぜなら、その方が美味しいからだ。
 
 簡単にスプーンで掬って口の中に放り込むよりも、七面倒くさい箸の先端を駆使して口にする料理は、とても繊細で、舌の上で味が何層にも広がる。アジア人がフォークではなく、箸を選んだのは、きっと「その方が美味しい」と分かっていたからではないかと思う。箸を使うことによって、“より手の込んだ”美味しい料理を作ることが可能になったのだと誇りに思っている。
 (編集長・増田 剛)

 

 

 

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