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「観光革命」地球規模の構造的変化(213)地方創生と地方衰退

2019年8月3日
編集部:平綿 裕一

2019年8月3日(土) 配信

地域社会の復権を(画像はイメージ)

 第25回参議院選挙が終了し、与党が過半数を確保したが、自民党などの改憲勢力は憲法改正の国会発議に必要な全体の3分の2を確保できなかった。安倍首相にとっては憲法改正が最重要課題であるが、多くの国民には年金問題や雇用問題などが重要である。さらに旅行・観光業界は観光立国やインバウンド立国の成否が重要課題であろう。

 安倍政権はこれまで「地方創生」を最重要課題と位置づけ、さまざまな政策を講じてきた。5年前に日本創成会議が「全国の自治体の約5割が人口減で将来消滅する可能性がある」と問題提起したことがきっかけだった。その結果、東京圏への転入者数が転出者数を上回る「転入超過」を2020年までに解消する目標が掲げられたが、達成は絶望的だ。北海道内の自治体の場合には約8割が人口減で将来消滅する可能性が指摘されており、人口減に歯止めが掛からず、地域衰退がさらに深刻化している。

 いま世界的に地域社会の重要性が注目を集めている。シカゴ大学のラグラム・ラジャン教授は現在56歳のインド人であるが、世界銀行の政策顧問、国際通貨基金のチーフエコノミスト、インド準備銀行(中央銀行)総裁などを経て、シカゴ大学経営大学院教授に就任した逸材。ラジャン教授は「The Third Pillar(第3の柱): The Revival of Community in a Polarised World(対極的世界における地域社会の復権)」(Kindle版)を今年出版して世界の注目を集めている。世界的にグローバル化や技術革新などが著しく進展する一方、ポピュリズムや自国第一主義の台頭などによって民主主義の危機が生じる中で、危機打開のためには「国家」「市場」と並んで、第3の柱としての「地域社会」の復権が必要不可欠と論じている。

 世界的逸材は「地域社会の復権」を提唱するが、日本では与党も野党も「地方創生」に対して有効な政策を講じることができないままに「地方衰退」がさらに深刻化している。少子高齢化の進展と共に、年金不安、非正規雇用の増加、東京圏一極集中、貧富格差の先鋭化などに伴って「日本の美質」がさまざまな面で損なわれつつある。今こそ、日本全体で「地域社会の復権」を真剣に追求しないと日本の未来は暗くならざるを得ないだろう。

 

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

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