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「街のデッサン(219)」ソフィアのメタポリズム 歴史と文明の新陳代謝に出会う旅

2019年7月6日(土) 配信

黒川紀章設計のホテルが健在

 この6月、ブルガリアとルーマニアの旅をした。バルカン半島を3回に分けて訪れ、この半島を構成する国々のほとんどを巡ったことになる。バルカン半島をヨーロッパの東端と考えると、今回の旅はヨーロッパの国々をも、ほぼ制覇した旅行になった。

 旅好きな私には、「登山家」が世界中の霊峰を制覇する夢を抱くと同じように、世界中の国々を訪れることが夢になる。まだまだ訪れていない国は、南アメリカやアフリカなどたくさんあるが、とりあえずは人生の大目標であったヨーロッパの国々への旅を完遂したことで、私なりの「旅行家」の気分を味わったことになる。

 その私のメルクマールとなった旅の最初の訪問都市はブルガリアのソフィアだった。このソフィアには、何か不思議な憧れがあった。

 ソフィアとは「叡智」の事である。それに若いころ読んだ五木寛之の「ソフィアの秋」というこの都市の郊外の村を巡る短編があって、おぼろげながらビザンツ正教や木板に描かれたイコンの世界への憧憬のようなものが、私の「ソフィア」には刻印されていた。従って、この街は行ってみたい都市の上位にあった。ソフィアもルーマニアのブカレストも日本からの直行便はないから、行きにくい国々だ。今回も、さる旅行会社が企画したこの2国を巡るツアーに便乗した。

 ソフィアの空港には早朝着いて、早速都市の郊外にある中世ブルガリア美術の最高傑作と評されるボヤナ教会や世界的に有名なリラの僧院を観光した。手の上に乗るほどの小さなボヤナ教会の静寂さや、森の中にすっぽりと隠れるように存在するブルガリア正教の総本山とされるリラの僧院の荘厳さに、私はすっかり心を奪われてしまった。

 夕方、ソフィアに戻り、今晩の宿となるホテルに到着した。鍵を渡され、部屋に入ると何かデジャブを感じる。気が付いたのは部屋の有様が日本のホテルと相似であることだ。実は、このホテルは1979年に建築家・黒川紀章が設計してホテルニューオオタニとして開業され、「ヤポンスキーホテル」と地元からも愛された建築であったのだ。私は、青年期にシンクタンクの社会工学研究所に出入りし、所長の黒川氏に目を掛けてもらった。何か、懐かしい想いがあった。その後、このホテルはドイツ資本に買収され、今は地元の資産家が所有するマリネラホテルとなっている。

 黒川紀章は建築のメタポリズム(新陳代謝)論を唱えたが、その理論は旅行家の視座にこそ有用であることを噛みしめていた。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

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