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「女将のこえ221」小口 正子さん、四季彩一力(福島県磐梯熱海温泉)

2019年4月30日(火) 配信

四季彩一力 小口 正子さん

自分の居場所

 昨年100周年を迎えた四季彩一力。四季彩という冠を象徴するのは、5千坪の日本庭園・水月園だ。すべての客室は庭園に面しており、文字通り四季の彩を味わえる。 

 正子さんは佐世保の出身。夫で社長の憲太朗さんとは東京で出会った。大学入学日にサークル勧誘のチラシの山から見つけた一枚。これこそ、憲太朗さんが作ったものだった。それは、もともと正子さんの興味があったお能のサークル。謡、仕舞、囃子を各流派の宗家に師事し、お能の「型」を叩き込んだ。

 卒業後はイギリスへ。私立の全寮制の学校に教員として赴任した。英国労働許可証の期限2年間は、3年に延長された。全校生徒たちが「帰らないで」と署名活動をしたのだ。親元を遠く離れて暮らす生徒たちの心に、正子さんは人として寄り添ったのだろう。

 帰国後は佐世保で家業に入った。父から接客や経営のイロハを学び始めたころ、「福島国体で宮様が3組おいでになるから早く来てもらいたい」と、一力に嫁ぐ。異文化で戸惑いもあったろうが、居場所を探り始めた。

 17年前、憲太朗さんとブライダル部門を立ち上げる。この話になると正子さんの瞳が輝く。「一力にしかないお二人らしいブライダルを創造し、人生の節目節目に寄り添える場所になれたら。一力の歴史の中で、私たちの代から始まる生涯顧客を創りたい」。

 ブライダルの過程では、両家の関係性や空気を察し、思いやりの心得などを立場を超えてアドバイスすることもある。

 「お食事処でお客様のご挨拶を終えた後、新郎新婦から届くご相談メールを、夜遅くまでチャットのようにやりとりすることも珍しくありません」。まさにプロデューサーでありカウンセラーでもあるのだ。

 東日本大震災で福島が負ったものは計り知れない。県外の宿泊客は激減したと聞くが、一力にはほとんど風評を受けない、地元に根付くブライダルがあった。義母で女将の潔子さんからの「ブライダルをやっていてよかった。ありがとう」は、正子さんにとって忘れられない言葉になったのではなかろうか。

 「私にとって、女将は羅針盤のような存在です。『発信型の宿であれ』という女将の気概を、受け継ぎたい。旅館は日本文化を伝える場所。正しい型をわきまえることで、型破りにならない新しいことにも挑戦できる。いま学生の娘にとっても、私がそういう存在になれたらと思う。スタッフにも身近な存在でありたい」。ここが、24年かけてつくった正子さんの居場所だ。

 (ジャーナリスト 瀬戸川 礼子)

住所:福島県郡山市熱海町熱海4-161▽電話:024-984-2115▽客室数:75室(300人収容)、一人利用可▽創業:1918(大正7)年▽料金:1泊2食付18,000円~(税別)▽温泉:アルカリ性単純温泉▽ブライダル「ブラッサムガーデン」はオーダーメイドで神前式・人前式・教会式に対応。全館無料Wi‐Fi完備。

コラムニスト紹介

ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。

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「「女将のこえ221」小口 正子さん、四季彩一力(福島県磐梯熱海温泉)」への2件のフィードバック

  1. おもてなしは、大変満足しましたが、
    細かな気配りが出来てない。
    緊急時や対応が疎かと思います。
    大人だけの対応ではなく、これからの子供の対応にも、
    気を付けないと長年続いていくのは難しいかと。
    一流と聞いてましたが、今回利用しがっかりです。
    社員教育しっかり、行う事!

  2. 一歳児子連れでの泊まりでしたが、ホスピタリティが素晴らしく感動しました。皆さん笑顔で暖かく、気遣いのある接客です。また施設全体に清掃も行き届いており温泉もぬるっとした良い湯でした。良かったですよ。ありがとうございました。また行きます。

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