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「井川今日子のおもてなし接客術(36)」接客とおもてなしの違い

2019年4月14日(日)  配信 

相手の立場に立った会話が重要

ある日、会社の留守番電話にメッセージがありました。聞いてみると、企業名と用件は聞き取れたものの、肝心の名前を聞き取ることができません。

 取り急ぎその会社に電話をかけ、「観光文化研究所の井川と申します。先ほどこちらのお電話より〇×の件について留守番電話のメッセージを頂いたのですが、どなたか心当たりのある方はいらっしゃいますでしょうか」と問い合わせました。

 すると、電話口の担当者から「今わかるものがおりませんので、再度掛けなおしてもらえますか」と即答されてしまいました。

 なぜ確認せずに即答できるのかという疑問と、再度電話を掛けても、同じ対応をされては困ってしまうので、「再度電話を掛けてどうしたら良いですか」と正直に尋ねました。

 すると、自分の無茶苦茶な対応に気が付いて「もう一度御社名をお聞かせいただけますか」と聞かれたので、再度会社名を伝えました。ようやく、きちんと対応しようという相手の姿勢が見え始め、安心しました。

 その後「担当者は名乗っていませんでしたか」と言われました。「その部分だけ、どうしても聞き取れませんでした」と答えると、「確認いたしますので、少々お待ちください。保留音を流しても良いでしょうか」と応対してくださり、その後は問い合わせの方と直接話ができました。

 結果的には私の電話の目的は果たせたものの、この企業に対する私の印象は、残念なものであったのは言うまでもありません。

 残念なことは、電話口で初めに対応した「スタッフ」に対する印象ではありません。「企業」に対する印象ということを強調しておきます。

 今回の電話でのやりとりを振り返ると、スタッフの“接客”はしっかりしていたということです。いわゆる話し方や言葉遣いはとくに問題なく、むしろ良い位でした。

 それにもかかわらず「企業の印象を下げてしまった要因は何か」と考えると、相手のことを考えた対応や気の利いた対応が、欠落していたことでした。

 相手の気持ちを推測できれば、置かれた状況を把握しようとし、何を求めているのかを知ろうと考えるはずです。それを“面倒臭がる”から今回のような残念な対応になってしまいます。

 「基本」はできても、「応用」対応ができない。これが「おもてなし」を提供できるか、できないかの差です。顧客満足が得られるか否かは、やはり「おもてなし」が提供できるか、できないかに深くかかわります。

 電話対応は相手とのやり取りが周りから見えにくいため、不真面目なスタッフほど、手を抜きがちです。

 最近では、宿でも電話対応に録音機能を設け始めています。お客様とのトラブル防止が第一の目的であることが多いようですが、スタッフ教育に活用するのも一案です。

(おもてなしコンサルタント 井川 今日子 )

コラムニスト紹介

井川 今日子 氏

おもてなしコンサルタント 井川 今日子 氏

大学で観光学を学んだ後、船井総合研究所を経て、10年に観光文化研究所入社。全国の旅館や観光協会を中心に、女性の感性を活かした集客・固定客化支援で活躍中。商品戦略や販売促進、現場接客サービスなど多岐にわたり提案。

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