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「街のデッサン(216)」マルセイユのポートツーリズム 都市港湾観光が次代の目玉

2019年3月30日(土) 配信

ドックスヴィレッジ、ポートツーリズムの目玉

 大型客船による地中海クルーズでは、必ず幾つもの港湾を巡る旅になる。今回のMSCメラビリア号の航海では、夕方出港して夜のうちに航海し、朝目覚めると次の港に着船しているというプログラムだった。従って、昼間デッキで寝そべって海原を眺め、遠く島影を発見するような遠洋航海風の楽しみを体験することはできなかったが、接岸した港湾と昼間の都市観光ができるというのは、また格別な楽しみになる。

 バルセロナから出港し、次の日の朝はマルセイユの港だった。実のところ、大型客船が接岸できる専用の埠頭が整備されている都市はまだまだ世界でも少数で、大概は貨物船の埠頭の一部を活用するような状況だ。これからは、豪華客船クルーズの隆盛の条件には、その豪華さに見合ったターミナル施設の整備がポイントになると思える。日本においても、世界中からクルーズの需要を受け入れるには、近接した観光地の整備と同時に、ポートターミナルの充実を世界に先駆けて整備する必要があると感じた。

 マルセイユは、世界中から交易商品や渡航者を集めたヨーロッパを代表する古い歴史を持つ港であるが、大型客船が発着する埠頭はやはりまだまだ未整備に見えた。船を降りた私たちが都市観光に向かうバス停は、3㌔も離れていて歩くのに難儀した。世界を旅するスタイルが船から航空機に移り、空港施設は素晴らしい発達を遂げているのに、シーポートは逆に衰退していくから、寂れた風景に晒されて歩くことは致し方ないと思えた。しかし逆に、寂れた港湾地域こそがこれからの先端観光の目玉になると思えたのは、街中観光の後に港湾施設を体感したからだ。

 まずは埠頭に隣接した空いた荷倉庫用地を開発して造られたアメリカ型SC(ショッピングセンター)に案内されたのであるが、私には200店のグローバルブランドショップが入居しているSCよりも、その前に存在する年代物の365㍍の長さを持つ古い建物の重要性に、直感的に魅かれていた。ドックスヴィレッジと名付けられた施設は、1853年に地元の開発業者が国の払い下げ用地を海事ビルにしたもので、その残存建築を新たに結成された企業体連合が1階を現地商店の集積したモールに活用し、6階までの上層階はITやコンテンツ、デザイン系企業にリースされ、さらにベンチャー企業のスタートアップ施設になっている。古い建物に伝統商業と先端的企業が群生する姿こそ未来だと、私は寂れた港湾の可能性を読み解いていた。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

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