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「トラベルスクエア」5月の10連休に向けて

2019年1月26日(土) 配信 

 

5月の10連休に向けてサービス業は……

 
この正月の5日に横浜までコンサートを聴きに行き、その帰り道、僕の大学の卒業生が働いているホテルのレストランに立ち寄った。

 
 三が日は終わっていても、中華街は混み合っている。さぞかし、このホテルも忙しかったのだろうなと思いながら、テーブルに着いた。しかし、僕の席担当のサーバーさん、ぼんやりしていて、見るからにお疲れだ。

 
 卒業生が来てくれたのだが、彼女もやはりお疲れ気味。「大晦日から今まで休みなく働き詰めですから、みんな疲れ切っています。こんなことじゃ、いけないんですが」とけなげな弁明だ。

 
 ホテルやレストランの仕事は、人様が遊んでいるときに身を粉にしなければいけない宿命。でも、どんな繁忙期でも、きちんと休みを与えないと、油切れしてくるのは当たり前だろうに、そんなゆとりシフトも組めない現状なのだろう。

 
 こんなことでは5月の10連休が思いやられる。一般の人には福音かもしれないが、サービス業の人たちには、どうか。

 
 実際、ホテルや旅館の経営者と話をしていても、需要増はありがたいけれど、こちらの従業員体制の問題の方が深刻、と口をそろえて語ってくれる。お正月のラッシュでも精いっぱいのシフトで回しているのに、10連休ともなると、疲労で倒れる人が続出するのではないか、と心配ばかり膨らむし、これがきっかけで「やっぱり、接客の仕事は自分を壊しちゃう」とやめてしまう人が激増するのではないか、という危惧もある。

 
 政府はレジャー需要増だから文句あるか、ということかもしれないが、休みを増やす政策だけだと、ますます旅行需要の週末集中型が加速して、この業界がいちばん望んでいる平日と週末の繁閑格差の解消にならない。

 
 それに、そういうレジャー需要を支えるサービス業に従事する人たちの「幸せ」をどう捉えているのか。人様が楽しい時を過ごせるように、普通の人が休んでいるときに、働く方々の気持ちは貴重なものだ。何か報いる手立てはないものか。

 
 政府やお役所から、そういう大事な方々をねぎらう言葉の二つや三つ出てきてほしいと痛切に思う。だって、遊びたい人たちばかりじゃ、世の中、回っていかない。

 
 僕などは、そういう週末労働する方々には最低賃金を2割以上高くしていいと思っているほどだ。全業種に平等に値付けするのではなく、最低賃金だって、業界格差があっていいというのが暴論気味だが、僕の考え。そしてサービス業経営者には別途法人税の軽減を考えるとかする。

 
 そうでもしないと、人を遊ばせる仕事のステータスがいつまでたっても底辺労働であり続けてしまうのではないか。そこがいちばんの心配だ。

 

(跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健)

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年から跡見学園女子大学教授、現職。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

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