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「カジノ解禁」の動き活発化 ― 観光振興には多面性と懐の深さも

2013年11月21日
編集部

 カジノ解禁への動きが活発化してきた。超党派の議員で構成される「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)は、カジノ設置に向けた推進法案を今臨時国会に提出し、来年の通常国会での成立を目指している。

 カジノ推進派にとって、東京オリンピック開催決定は大きな追い風だ。カジノ導入に向けては2002年に自民党内で野田聖子衆議院議員が初代会長となって、カジノを含むIRについての勉強会がスタートしてから11年が経つ。そんななか、今年9月に2020年の東京五輪開催が決まった。今後多くの外国人が日本を訪れることが予想されるなかで、外客受入整備の一環として、ホテルや大型国際会議施設、飲食店、ショッピング施設などにカジノを含める「統合型リゾート」(IR)の必要性は、より現実味を持つ。

 カジノにも光と影の部分がある。カジノ設置の利点は、観光振興や税収効果、建設や運営にともなう雇用効果などがある。日本は現在、13年9月まで15カ月連続で貿易赤字である。加えて、来春の消費税増税により景気が冷え込めば、税収増加も難しい。外国人観光客を主な対象としたカジノ導入によって、税収効果を高めて行く考え方は十分に理解できる。

 一方、影の部分としては「犯罪の温床になる」といった、マネーロンダリング(資金洗浄)や青少年などへの悪影響を懸念する意見もある。貴重な指摘であり、一つひとつ検証しながら対応を考えていく必要がある。

 カジノは約120カ国で行われているという。カジノ設置の際には、国際的な競争になることは必至で、魅力と競争力のある施設でなければ意味がなく、国の厳しい免許制度のもとで「民設民営」を認める方針だ。

 シンガポールでは、入場料は自国民に対して7千―8千円を課している。これは、一定の抑止効果にもなる。また、カジノの入口で厳格なIDチェックを行うことで、未成年が入り込めないようにすることもできる。

 どこの国であろうと、賭博(ギャンブル)依存症患者は一定の割合で出てくる。スイスなど諸外国では、自己排除プログラムや、家族強制排除プログラムなどを有しており、本人や家族から「入口で入場を拒否してくれ」と事前に申告するシステムを取り入れている。IDチェックによる入場回数の制限も可能だ。

 運営事業者が儲かりすぎた結果、「カジノ王」が生まれないように、国や地方自治体の取り分と、民間運営会社の収益のバランスも重要な課題の一つだ。

 さらに、「現状では地下カジノが横行している。むしろ合法化し、国がコントロールした方が資金の流れが格段にクリアになる」という意見もある。英国では厳しい国のライセンス制度によって、反社会的勢力が入ることができず、上流階級の社交場となっているという。

 世界中でクルーズ旅行が人気を集め、市場が拡大しているなか、日本は伸び悩んでいる。世界的な観光クルーズ隆盛の流れから取り残されている現状の改善策として、カジノ導入の必要性を唱える声も大きい。

 日本を訪れる外国人観光客は、日本の伝統文化やアニメ、料理やショッピングなど目的はさまざまだ。世界中のカジノ巡りを楽しむ愛好者もいる。観光振興には多面性と、何よりも“懐の深さ”が必要だ。存外「案ずるより産むが易し」かもしれない。

(編集長・増田 剛) 

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