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3つの“死活問題” ― 国の政策に翻弄される旅館業界

2013年9月21日
編集部

  旅館業界にとって目下、(1)改正耐震改修促進法(2)消費税外税表示(3)固定資産評価見直し――の3つの問題が“死活問題”として横たわる。

 このなかで、消費税の外税表示は、税金分やサービス料などの「込み込み」料金ではなく、しっかりと「外税表示」を行うことで、収益や利益の拡大が見込まれる案件だ。2017年3月末までの時限的な「特例措置」であっても法律で定められており、安売り競争ではない方向に導くためには、旅館業界の意識の徹底が求められる。

 全旅連の税制委員会は、宿泊料金1万円、エージェント手数料15%、消費税率8%で、消費税の価格転嫁による実質収入の違いについてシミュレーションを行った。これによると、外税表示の場合、旅館の実質収入は8500円、消費税を転嫁できなかった場合は7870円と、630円の差額が生じた。年間1億円で計算すると、630万円の利益の有無に関わる。今後10%、さらなる上乗せとなると「込み込み」料金ではとても持ちこたえられない。全旅連は約1万6千会員に外税表示の周知徹底へ、全国400カ所で勉強会を実施していく予定だ。

 外税表示のメリットとしては、「総額表示よりも安く自社のホームページに掲載できるため、料金比較サイトでも優位に立つことができる」と全旅連税制委員会は強調する。いずれにせよ、旅館は消費者に課せられる消費税を肩代わりする必要はない。3年5カ月という時限的な措置を恒久化するためにも、外税表示の徹底に旅館業界が一致団結することが不可欠だ。

 耐震診断、耐震改修費用については、地方公共団体の補助制度がまちまちであり、全国横一列の補助制度というのは難しい状況にある。どの自治体も財政難にあり、旅館の耐震診断・改修の補助金を出せる余裕のある地域は希少だ。しかしながら、和歌山県や奈良県、高知県、静岡県などは、県知事の理解もあり、3分の1の費用負担といった補助制度がすでに決まっている。和歌山県では、事業者負担部分に対する最優遇融資資金の創設など手厚い支援策を打ち出している。

 固定資産税の見直しも、旅館に重く圧し掛かる負担の軽減を求めるものだ。国が政策の柱として観光立国を目指す以上、観光事業者の負担を軽くすることは、とても重要な施策である。理解の深い観光庁の強い後押しもほしいところだ。

 商業施設や病院、旅館が耐震改修を実施した場合、2014年度から固定資産税を半減する方針を政府・与党が固めたと、日本経済新聞が9月14日の1面で報じた。11月25日に施行する改正耐震改修促進法では、耐震診断が2015年12月末まで義務化されたが、診断の結果が基準を満たしていなかった場合でも罰則規定や自治体から公表されるなどの措置はあるが、耐震工事が義務付けられているわけではない。政府は固定資産税の半減という「ニンジン」をぶら下げてでも、耐震改修工事を実施させ、地方の設備投資の活性化を目指しているようだ。

 旅館業界は固定資産税の負担減を数年来求めてきた。ミリ単位で前進する努力を重ねてきたが、別ルートで、それも耐震改修とセットという、予想もしなかった展開で大きく動き出す可能性が出てきた。複雑な気分だ。国は旅館業界をいいように利用しているような気がしてならない。

(編集長・増田 剛) 

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