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好調なインバウンド ― 東京一極集中でいいのか?

2013年9月11日
編集部

 たまたま歩いた夜の東京・上野のアメ横の最深部は、「ここはどこの国か?」と惑うほど、多国籍化していた。外国人観光客が多いというようなレベルではなく、さまざまな外国人が風景・文化として根付いている印象だ。今、首都・東京の足元では、「日本の中の世界」が形成されており、草の根の部分から国際都市・TOKYOへ変貌しようとしている。「観光立国」を掲げる日本だが、一方で多くの観光地は、観光客が来ない現状を憂いている。日本の観光政策はどこか誤りがあるのだろうか。国内観光も、インバウンドも、東京は好調だが、地方は元気がない。観光においてさえも「東京一極集中」のかたちは、どう考えてもいびつである。

 日本政府観光局(JNTO)がまとめた7月の訪日外客数を見ると、ビザ緩和や、円安による訪日外客数の顕著な増加ぶりは、実績として現れている。7月1日から短期滞在ビザが免除されたマレーシアは前年同月比25・2%増、タイにいたっては同84・7%増と飛躍的に伸びている。ビザ緩和とは関係ない国も好調である。韓国は同28・6%増、台湾は48・7%増、香港は同65・7%増とすこぶる調子がいい。台湾は13年1―7月までの海外旅行者数は前年同期比5・5%増なのに対して、7月の日本への海外旅行者は50%近く伸びている。

 8月1日、4代目の観光庁長官に就任した久保成人長官は、今年の訪日外客数1千万人達成、さらには将来的な目標として2千万人を見据え、早くもビザ緩和が追い風となっている東南アジアに、集中プロモーションを仕掛けていく方針を示した。最大の訪日市場として捉えていた中国との関係悪化が続いている以上、対象地域を多面化していく方針だが、この方向性は決して間違ってはいない。

 今号(7面)から本紙提携紙である台湾「TRAVEL RICH(旅奇週刊)」の最新ニュースを毎月11日号で掲載する。旅奇週刊の国際市場部部長の劉厚志氏は、日本政府のビザ緩和政策を評価する一方で、外客誘致には、地方の航空便路線の普及や、クルーズの誘致などの必要性を強調している。現状のままでは、首都圏や関西圏の宿泊施設は潤ったとしても、それ以外の地方はどうだろうかと疑問を投げかける。劉氏は「山陰、山陽、四国、北陸、東北などに航空路線がつながっている台湾や韓国へのプロモーションをもっと仕掛けるべきではないか」と日本の観光庁にも提言している。

 インバウンド対象国の多面化を推進する反面、受入れ地域の多面化が遅れているのが今の日本の姿である。東京を訪れた外国人観光客を自分たちの市町村や、温泉地に引き寄せることも一つの方法論だが、それぞれの地域が、近隣地域と広域的な連携を築き、外国人観光客をダイレクトに誘致していく手法を、もっと真剣に、磨きをかける必要があると思う。

 国際的な旅行博で都道府県や市町村が単独でブース出展し、PRしても「アクセス方法がよく分からない」という海外の声をよく耳にする。つまり、「アクセスと一体化した観光PRでなければ、あまり意味を持たないのだ」という現実を直視しなければならない。だとしたら、劉氏の言う「海外との路線を持つ地域は、その利点を最大限に活用し、積極的にプロモーションすべき」との主張は傾聴に値する。

(編集長・増田 剛)

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