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「街のデッサン(212)」猫たちが夢見る街・コトル 広場の隅のキャッツミュージアムとは

2018年12月9日(日) 配信

航海猫は今でも夢見る

バルカン半島を訪れる旅は、今回で2度目。4年ほど前にスロヴェニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナの3国を旅したのが最初で、しばらく前の民族紛争や内戦で疲弊した国土をイメージしていたが、意に反してどの国の都市も明るく、人々の応対は心に残るものだった。とくにアドリア海に面した港町はどれもが美しく、往時の繁栄の残滓さえ心地よいものだった。

 すっかり半島のファンになってしまい、2度目の訪問を画していたが、日本からはアプローチがしにくいと思えるモンテネグロ、アルバニア、マケドニアのギリシャに接した3国のツアーが出ていたので、時間を工面して参加した。9月初頭の暑さの和らぐ季節である。どれもが小国で、ヨーロッパとアジア文明に挟まれてオスマン帝国の侵略に翻弄された歴史を持っている。成田からイスタンブールに飛んで、そこで5時間を超えるトランジット。最初の訪問地は日本の福島県ほどのモンテネグロ。早朝の首都のポトゴリツァの空港に着くとすぐにバスで港町コトルに向かった。

 モンテネグロはその名前の通り、国土の殆どを黒い山々で覆われているが、コトルはその山々が迫る海岸に沿ったフィーヨルド状の複雑な湾奥に築造された城壁都市である。

 同じ城壁都市としては、お隣のクロアチアのドゥブロヴニクが挙げられるが、近年ではこのコトルに人気が集まっている。コトルは一時、中世のベネチアが交易の世界的センターとして隆盛を誇っていた時期の属領であったこともあって、この小さな町にも世界の文化や技術が集積していた。その文化や技術を狙って、オスマン帝国が侵略してきたが、旧市街地は峻嶮な山々と4・5㌔にわたる城壁がそれを阻んでいた。征服への圧力を撥ね退け、文明への門戸は開いているコトルは、時代の優秀な航海者を輩出し、造船センターでもあったろう。その世界を航海する船には、有能な航海者だけではなく、積み荷のネズミを捕らえる猫たちも活躍していた。帰還した猫たちは、コトルでは勇者だった。航海者の家々だけでなく、街路も帰還猫たちの自由な空間だった。

 コトルの街に入っていくと、その航海猫の子孫が今でも街角の隅々に、奥まった路地で揺れる海原の夢と誇りを胸にして、まどろんでいる。そう、コトルは猫の街である。小さな広場の一画に「キャッツミュージアム」を見つけた。世界の海を駆け抜けた航海者の夢の堆積だけでなく、勇者猫の夢までもこの街では博物館になっている。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

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