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観光立国への“舵取り役”

2013年10月21日
編集部

 清水 一郎氏(しみず・いちろう)
1967年11月生まれ。愛媛県松山市出身。東京大学法学部卒業後、1990年運輸省(現国土交通省)入省。英国ケンブリッジ大学大学院修了、大臣官房総務課企画専門官、在英日本大使館参事官、航空局総務課企画室長、四国運輸局企画観光部長、大臣官房参事官(海事局)などを経て、13年7月から現職。

≪観光庁観光戦略課 清水 一郎課長、「日本人よ、旅行をしようよ!」≫

 今年7月1日、観光庁に「観光戦略課」が新設された。「観光立国」実現に向けた観光戦略の要に位置し、安倍内閣が進める成長戦略の柱の1つである観光行政の「舵取り役」として期待されている。初代課長に就任した清水一郎氏に、今後の重点施策や、7年後に開催が決まった東京オリンピックまでに取り組むべき課題、地域活性化などについて聞いた。
【増田 剛】

 ◇

 ――観光庁に新設された「観光戦略課」の役割は。

 今年6月11日に観光立国推進閣僚会議で決定された「観光立国実現に向けたアクションプログラム」と、閣議決定された「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」において、観光は安倍内閣の成長戦略の柱の1つとして、明確に位置付けられました。つまり、観光は日本経済の成長戦略のエンジンであり、これを確実に前進させるために、「観光戦略課」が設置されたわけです。

 とくに、2013年は、観光立国の実現に向けた取り組みを本格化した小泉政権のビジットジャパン事業のスタートから10年、観光庁の発足から5年という「節目の年」に当たります。この節目の年に大きな数値目標を掲げました。訪日外客数1千万人を史上初めて本年達成すること、そして、2千万人の高みを目指していきたいと考えています。

 観光行政は、出入国審査やビザの問題ひとつとってもさまざまな省庁に関わり、観光庁だけで対応できるものではありません。国土交通省内の各局、さらには各省庁、民間や自治体など多くの関係者が、それぞれが主体的に取り組んでいただくことが大事です。観光戦略課は「どの項目をいつまでに」「誰が実施するのか」といった行程表を作成し、うまくベクトルをそろえて、前に進めていく「舵取り役」だと認識しています。柔軟性とスピード感を持って取り組んでいきたいと思っています。

 ――「アクション・プログラム」について。

 観光立国実現に向けたアクション・プログラムの施策は、約90項目におよび、実に多岐にわたっており、(1)日本ブランドの作り上げと発信(2)ビザ要件の緩和等による訪日旅行の促進(3)外国人旅行者の受入れの改善(4)国際会議等(MICE)の誘致や投資の促進――の4つの重点分野を強化・促進していきます。

 「日本ブランドの作り上げと発信」では、ビジットジャパン、クールジャパンなどの取り組みを政府全体で計画を作成し、オールジャパンでの情報発信が必要です。また、海外のテレビ番組枠の確保などによって、日本のコンテンツを継続的に海外に発信していきます。訪日誘客のためのプロモーションも、外国人目線に立ったコンテンツの展開を強化、拡大していく予定です。

 「ビザ要件の緩和」については、今年7月からタイやマレーシア向けのビザを免除したほか、ベトナムやフィリピン向けのビザを数次ビザに、インドネシアの数次ビザに関わる滞在期間の延長も実施しました。ビザの緩和は即効性があり、実績を見ても、大きな効果が表れています。

 「受入れの改善」では、外国人旅行者を受け入れる際に、空港や港の玄関口での出入国手続きの円滑化は、日本を訪れた最初の印象に関わってくる問題として、とても大事だと思っています。そして、多言語による外国語表記の案内も、道路標識だけでなく、美術館や博物館、自然公園、観光地などの充実化が必要です。

 また、Wi―Fiを整備することにより、外国人旅行客に便利と感じてもらえる「旅行しやすい環境」に改善していきたいと思います。これらも“おもてなし”の重要な要素の一つだと思っています。

 「MICE」については、海外のキーパーソンを日本に呼び込むことで、専門家による知見を活用した潜在需要の掘り起こしとともに、誘致ポテンシャルの高い都市として、世界トップレベルの国際会議都市へと育成していかなければなりません。このような4本柱の施策の推進を通して、目標の達成に向け、観光戦略課として全力で取り組んでいきたいと思っています。

 ――2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まりましたが、日本の観光にどのような影響がありますか。

 オリンピック開催地決定のテレビ中継を見ていて、IOCのロゲ会長が「TOKYO」と読み上げた瞬間、7年後に「日本を元気にする」一大イベントが日本で開かれることに感動し、大きな感銘を受けました。今後さらに世界の関心が日本に集まることで外国人観光客が増えることが予想され、観光にとって非常に大きな追い風、チャンスになると感じています。

 「7年後」というのは長いようで結構短い。五輪が東京で開かれるからこそできる観光戦略があると思いますので、しっかり取り組んでいきたいと思います。

 ――清水課長は、在英日本大使館や英国留学など、英国での経験が豊富です。ロンドンは昨年五輪を成功させました。7年後の東京五輪に向けての準備に当たり、参考になることはありますか。

 私は3年前まで英国の大使館に赴任していましたので、ロンドンが五輪の準備をしている姿を見ていました。そのなかで一つ印象的だったのが、ロンドンのボリス・ジョンソン市長が、ロンドンを自転車に乗りやすい街にしようと、「サイクリングレボリューション(自転車革命)」を実行したことです。ロンドン市内に綺麗なブルーのレンタサイクルをそろえ、観光客も乗り捨てで使いやすいように整備しました。車道にもブルーの自転車専用レーンを整備し、五輪開催に間に合わせたのです。ちなみに、ロンドンでは、自転車は車道を走ります。歩道を走ることはありません。

 外国人観光客は日本を訪れるとき、「安全・安心」であることを期待しますが、日本に来てみると、歩道を走る自転車に対しては、「危険を感じる」という声もあります。観光庁だけでできることではありませんが、東京で五輪が開かれる7年後に向けて、議論の1つになるのではないかと思います。また、「安全・安心」と言えば、ロンドン名物のパブの中が禁煙になったというのも象徴的なできごとでした。

 また、ロンドンでは赤い2階建てバスや、ブラックキャブなどの車両が美しい街の風景に溶け込み、絵はがきになるほど有名です。バスやタクシーなど公共交通の車両そのものが世界中の人にロンドンを想起させる「街の顔」になっています。

 東京のバスやタクシーはどうでしょうか。公共交通は、単に目的地に着けばよいというだけではなく、「街の顔」を作っているという発想が大事だと思います。都内のバスやタクシーの色に統一感を持たせるだけでも、街の印象は変わります。ニューヨークはイエローキャブ、ロンドンはブラックキャブ。東京は何色だろう、と言うように。そうすることで、ロンドンの2階建てバスのように外国人観光客も「一度は乗ってみたい」と思うのではないでしょうか。

 ――地方の活性化について、どのようにお考えですか。

 五輪開催は、東京だけではなく、地方をいかに盛り上げるかが大事な点です。ある意味、五輪は地方にとっても、「大きなチャンス」だと思います。開催効果はオリンピック期間中だけではなくて、すでに五輪開催が決定した瞬間から、日本は世界で注目され始めています。五輪に関わることだけを見ても、事前合宿やプレイベントも行われます。東京が注目されるということは日本全体が注目されることであり、東京五輪を地方が利用する絶好のチャンスだと思います。

■ □

 英国人は田舎が好きで、ロンドンの都会で働く人も、週末になると美しい田舎でくつろぐ文化があります。海外から訪れた観光客もロンドンだけを観光するのではなく、趣のある田園風景が印象的なコッツウォルズのような地方を訪れることが多い。英国では田舎で生活する人たちのプライドが高く、生きがいや喜びを感じながら豊かな生活を送っています。そういう文化を根付かせている英国の文化の奥深さを感じます。

 日本は、インバウンド1千万人を目指すことはもちろん大事なのですが、そのためには、日本人がもっともっと国内旅行をして、日本の魅力を知り、日本自慢をすることが結局インバウンド拡大にもつながると思います。日本人が海外旅行をするからこそ、航空路線も拡充され、それがインバウンドにもつながると思います。

 私は「日本人よ、旅行をしようよ!」というメッセージを強力に発信したいと思います。とくに、シニア世代には、タンス預金をするのではなく、旅行を通じて元気になっていただきたい。それが日本の元気にもつながっていきます。また、海外に対して日本に来てくださいというだけでなく、日本人自らも外国に積極的に訪れるという「双方向」の関係が大事だと思います。

 私は愛媛県松山市の出身で、昨秋まで1年半ほど四国運輸局にいました。瀬戸内海の景色は、ずっと地元にいると、その良さに気づかないのですが、東京から久しぶりに戻ってみると、素晴らしさに驚きます。瀬戸内海のきらきらした海と多島美はエーゲ海よりも美しいと思っています。いわゆるゴールデンルートに次ぐ「エメラルドルート」と言っても良いのではないでしょうか。

 「しまなみ海道サイクリング」という「海の上を走るサイクリング」が10月20日に行われ、さらに来年秋には、外国人を含めて1万人規模の大会として行われる予定です。世界にも例を見ないイベントで、海外からも注目されています。

 来年2014年は、四国八十八カ所の弘法大師空海による霊場開創から1200周年、さらに、道後温泉本館開館から120周年、瀬戸内海国立公園80周年など、四国にとってメモリアルな年です。

 四国ひとつとっても「ラストミステリー」があります。日本のどの地域にも、これまで気づかなかった新しい魅力の発見があるはずです。日本各地にある魅力を“ブランド”として作り上げ、広く発信していくことが、これからの日本観光にとって大切なことだと思います。

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