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「観光革命」地球規模の構造的変化(204)脱プラスチックと観光

2018年11月3日(土) 配信

プラスチックによる海洋汚染が深刻化している

 環境省はプラスチックごみの削減を目指す「プラスチック資源循環戦略」の素案を公表した。2030年までに容器包装などの使い捨てプラスチックの排出量を25%削減するとともに、スーパーなどのレジ袋は20年にも有料化を義務づける方針である。

 環境省がこのような戦略を打ち出した背景には、プラスチックによる海洋汚染が世界的に深刻化しており、プラスチック削減が世界共通の最重要課題になっている状況がある。プラスチックは世界で年間に4億㌧生産され、毎年800万㌧が海へ流出している。とくに5㍉以下で回収が困難なマイクロプラスチックが深刻な海洋汚染を引き起こしている。これらのマイクロプラスチックが海に流出し、有害化学物質の運び屋になるとともに、それらを誤飲した海洋生物(魚、貝、鯨、海鳥など)を人間が食することで有害化学物質が体内組織に吸収される可能性が指摘されている。

 使い捨てプラスチックの1人当たり使用量は日本が米国に次いで世界2位。25年にはプラスチックが15年と比較して10倍になると予測されている。EU(欧州連合)は30年までにすべてのプラスチック容器をリサイクルし、使い捨てプラスチックを削減すると発表している。また数多くのグローバル企業が「脱プラスチック」の動きを活発化させている。

 脱プラスチックが世界的課題になっているため、6月にカナダで開催されたG7サミット(先進7カ国首脳会議)の際に「海洋プラスチック憲章」が策定された。プラスチックゴミが沿岸部や海に流出し、生態系破壊や人体への健康被害、沿岸部の経済社会へのダメージの発生を食い止めるために自国でのプラスチック規制強化促進をはかる憲章であったが、米国と日本だけが署名せずに批判された。

 来年夏にはG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)が日本で初開催されることになっており、脱プラスチックは主要課題の一つになる。開催国の日本はこの問題で率先して世界をリードすることが必要だ。プラスチックゴミは至る所で美しい景観を台無しにしているし、日本食で重要な魚介類の汚染問題も看過し難い。この際に旅行業界は声を大にして「脱プラスチック」運動を展開すべきであろう。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森 秀三)

コラムニスト紹介

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

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