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入浴着着用“ウェルカム”のネットワークづくりを

2011年3月11日
編集部

 乳がんなどの患者さんは、温泉入浴をするとき、自然の心情として「タオルなどで身体の傷跡を隠したい」と思う。だが、現在は県条例によって浴槽内にタオルやスポンジを持ち込むことが禁じられているため、乳がん患者は温泉に行っても、人が少ない夜中にこっそりと入浴するしかない。また、自由貸し切り・24時間入浴可能など限られた条件の中から、温泉地や旅館を選ばなくてはならないのが現状だ。

 NPO法人J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)は、乳がんや、やけどなどによって身体に傷を負った多くの人たちが、以前と同じように家族や友人たちと温泉旅行に行ける環境づくりを目指している。

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 衛生管理上問題のない入浴着を着て、大浴場に入ることを歓迎する温泉旅館などが数多く名乗りをあげることで、各地域に幾つもの温泉のつながりができる。「乳がんを患ったことで心を閉ざし、ふさぎこんでいる全国の多くの女性たちにとって、自分たちを歓迎してくれる温泉旅館が広がることは、とてもうれしいこと」とJ.POSH副理事長・事務局長の松田壽美子さんは語る。

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 長野県・昼神温泉の17の旅館・ホテルは4年ほど前から、入浴着を着用しての大浴場利用を歓迎している。また、石川県・和倉温泉の女将の会も、昼神温泉の取り組みに強い関心を示して、視察を行ったという。

 「現状では入浴着での入浴がNOの温泉旅館も、YESに代わり、やがてWELLCOMEになることを願う」と松田さんは話す。

 J.POSHは、女性にやさしい温泉地や旅館が、全国各地域にネットワークを張り巡らす「温泉ウエルカムネットワーク」づくりに取り組んでいる。将来的には、政府公認のステッカーやロゴマークなどを作成し参加施設はステッカーやロゴマークを掲示することで、宿や温泉地全体のイメージが上がるという相乗効果が得られるネットワークを目指している。

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 今年1月17日には、総務省地域力創造グループ地域振興室長、厚生労働省健康局生活衛生課長、国土交通省観光庁観光産業課長が連名で、各都道府県・各政令指定都市・市などの局長宛てに「乳がん患者の方が専用の入浴着を利用して気兼ねなく温泉に入れるような観光地の拡大に向けて、民間団体の活動を支援し、潜在的な観光需要の喚起をはかる」ことを求める文書を送付した。関係省庁が連携して、高齢者や障がい者、乳幼児を抱える家族などすべての人々が旅行をしやすくなる「ユニバーサル観光」の推進を後押ししている。

 温泉旅行に行きたいのに「行けない」「行きづらい」人たちの潜在需要を掴んでいくことが、今後、温泉地の生き残りを左右するはずだ。

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 今のところ入浴着の需要が少ないため、1着4―5千円と、治療費などで経済的な負担の大きい患者にとっては、少し割高になっている。今後、女性にやさしい「温泉ウエルカムネットワーク」が全国的に広がることによって、水着のようなおしゃれな入浴着が出てきたり、入浴着を作るメーカーが参入し増えることも期待される。

 「温泉ウエルカムネットワーク」への登録申込み、問い合わせは、J.POSH 電話:06(6910)2900 (担当・松田壽美子)まで。

【増田 剛】

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