「街のデッサン(206)」リブラリア・レロの創造価値とは 「美の文化観光の時代」

2018年6月11日(月) 配信

天国の階段からは居並ぶ書籍が覗き見える

 リベルダーデ広場から、坂道をゆっくりと登っていく。両サイドに個性的なレストランやブティック、スポーツショップが並ぶ繁華な商店街が連なっている。ポルトガルで一番の高さのある尖塔を持つバロック様式のグレリゴス教会を仰ぎ見て、右側にさらに坂道を上り詰めていくと、小さな公園が開けていてその前の商店の一画に人々が並んでいる。ああこれだと思った。開店は10時からだと聞いていたが、すでに観光客や学生らしき若者たちが列を作っているのだ。その店に入るのには、なんと入場券を4ユーロ(約500円)で購入しなければならない。2軒先にチケット売り場があって、先頭はすでにその売り場に突入している。噂に聞いていたが、「世界一美しい本屋」が、こんなに人気のある店とは驚いた。

 ポルトガル国家の語源となり、エンリケ航海王子によってこの港を出港した船団が北アフリカの街々を攻略する大航海時代を先駆けた、ポートワインの発祥の地、ポルト。フランスから移植されたブドウの樹々が芳醇な果実を実らせるドウロ川の水源となる山村一帯から、その川の流れによって運び出されて河口の工場で醸造されたものが甘美な味わいを持つポートワインである。川岸の工場地帯からドウロ川の両サイドの丘陵に拓けた街も美しい景観を造形している。それらの美しく計り知れない価値を秘めたポルトのランドスケープを眺めていると、頷けることがある。大航海時代が終焉し、世界の数々の財宝を略奪してきたというイベリア半島の国々は、スペインもポルトガルも近代において長い沈滞の時代を過ごした。しかし、内に秘めた財宝とその陰に隠れて運ばれてきた世界中の文化は、ワインのように再発酵するのではないか、そしてそれがファッションやデザイン、文学のような美の世界で、沸々と芳香を放ち始めていると。

 いま世界中で噂になり、一度は行ってみたいと願望を誘うのはその美の芳香を放つ「リブラリア・レロ」である。私がポルトガルを訪れた理由の2つは、リスボンのファドを聞くこと、そして2つ目がこのレロ書店でお店と本たちを眺めることであった。レロ書店は1881年に創業された古い歴史を持つ。現在の店の原型をデザインしたのはフランスのデザイナー・エステーヴで、ネオゴシック様式の重厚な趣を持っている。1994年、倒産の危機にあったが、文化投資家アンテーロ・ブラーガらによって再生された。レロ書店の存在は、デジタル時代の文化観光に美しい光を投げかけている。

(エッセイスト 望月 照彦)

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

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