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【特集 No.490】ベンチャー×SNS “よそ者”が地域と旅を豊かにする

2018年4月20日(金) 配信

観光の本質は、地域のウチとソトの交流にある。日々の取材のなか、地方行政や観光協会、地域事業者は、旅行会社をはじめとしたソトに位置するものとの間に緊張関係を孕んでいると感じることがある。本紙のようなメディアや観光客もまたソト側にいるものだ。一口に受入体制の整備と言っても、一方のみの道理が通る関係性は返って不自然。互いを尊重し合う良い緊張関係なくして交流は成立しない。手始めに、共同体外からの“よそ者”が地域にもたらす可能性を考えた。【謝 谷楓】

需要を創るアイデアを呼び込む 共同体に足りない視点に注目

“よそ者”が、不足を補う

 インバウンドのFIT(個人旅行)化が顕著で、17年はパッケージ商品を含めると7割を超えた。3年前と比べ個人旅行は約10ポイントのアップ。団体旅行はその分だけ減った。国内でも事態は同様だ。3年前と比べ団体旅行(宿泊)は3・4%の減少、1人当たりの旅行支出(単価、約5万円)を顧慮すると、790億円のマイナスとなり、市場規模は縮小傾向にある。人の数は、各事業者の売上に直結する部分であるだけに、地域の観光を司る行政や観光協会らに対する期待は大きい。個人旅行者の需要を把握し、来訪を促す施策立案が求められている。主導的な役割を果たすために何をするべきか? ローカル地域(共同体)にない視点・考えを持つ“よそ者”をキーワードに考えた。

 目指すべきデスティネーションと、移動手段だけでなく、行為する主体である“よそ者”の存在がなければ観光は成り立たない。物理的移動が容易でなかった時代、旅という行為は、旅行者と受入側双方にとって思わぬ犠牲の生じる危険なものだった。一方、衝突を乗り越え得られた豊かさや文化もある。東アジア諸国では、服装1つとってもそれはかつての“よそ者”の持ち物なのだ。文化が成熟した現代、お金とアイデアという地域に足りないものを持ち込んでくれる存在として“よそ者”を捉えたい。

“よそ者”のことは“よそ者”に聞け

 個々の需要把握を怠っては、経済効果は望めない。団体旅行以外を取り込むということは、マーケティングなど、旅行会社任せにしていた作業を地域自らが行うことを意味する。来訪者の需要を知るには、同じ“よそ者”に聞くのが手っ取り早い。ICTとユニークなアイデアを持つ人が足りなければ、積極的に取り込むべきだろう。

 来訪者を呼ぶICTの筆頭格はInstagram(インスタグラム)だ。世界をターゲットにした観光誘致を無償で行える。本紙の取材に答えてくれた米インスタグラム社で公共政策を担当するパーカー氏は、中小規模の自治体に対するPR支援が可能な一方、地域を盛り立ててくれるアイデアマン(よそ者)らを呼び込めることが、インスタグラムというSNSの真価だと強調する。インスタグラムを通じ、地域に人が集まるインスタミートも活発だ。

 スタートアップ企業のテテマーチとSAGOJOは、最新技術の活用方法で豊富なアイデアを持つ。デジタルマーケティングと“旅人”という互いのアセットを組み合わせたサービス(Picruise)も注目だ。SAGOJOは、法人アカウントを開設し、“よそ者”と地域、企業のさらなるベストマッチングを実現する仕組みを整えた。役割を果たす際に活用したい。

多様性に富む〝旅人〟ネットワーク

“旅人”が地域課題に挑戦

スガタカシ氏

 インスタグラムに代表されるSNSの活用や、ドローンを用いた撮影・映像制作など、情報発信を担うツールはあまた存在する。SNSを軸としたデジタルマーケティングを強化すれば、ターゲットは自ずと明確化され、特化したコンテンツ制作を請け負う企業も多い。IT技術が進化するなか、観光を軸に交流人口の増加を狙う地方行政や観光協会がツールに困ることはない。恵まれた現状のなか、担当者に求められるのは費用対効果が高く、実効力のある予算の使い方だ。

 2016年に設立し、昨年エイベックスなどから数千万円規模の資金調達を行ったスタートアップ企業SAGOJO(新拓也代表)では“旅人”による課題解決をテーマに掲げ、地方行政や企業らと連携してきた。“よそ者”の視点を導入することで効力の高いソリューションを提供している。“旅人”とは何か? 同社取締役のスガタカシ氏は次のように説明する。

“旅人”を侮るなかれ 多様性に富む人材つなぐ

 「自治体や企業から仕事を受託し、インターネットを通じ不特定多数の人の中から適した人材を見つけ発注する。事業の仕組みはクラウドソーシングと似ています。特徴は、発注先を“旅人”に限定している点です。バックパッカーを連想しがちですが、地方や海外への移動機会を求めるフリーランスのライターやカメラマンも含まれています。コンサルタント従事者も……

【全文は、本紙1710号または5月26日以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

投稿データを収集・分析 施策生みやすい土壌をつくる

観光客の興味 関心を知る

三島氏(左)と松重氏

 国内延べ旅行者数は6億4720万人(2017年)。14年以降増加傾向にあり、消費額も21兆円と右肩上がりだ。宿泊と日帰りの消費額はそれぞれ0・1―2・6%の増加で、180―1300億円の経済効果を意味する。飽和状態ではあるものの、国内旅行が一大市場であることに変わりはない。地域事業者の収益アップを実現し、選ばれるデスティネーションとなるためには、競争力を高める必要がある。地方行政や観光協会にできることは何か? インスタグラムを活用した写真コンテストの運営をIT技術で支援する松重秀平氏(テテマーチ、上田大介代表)は語る。

 「注目を集め、来訪を促す。現在インスタグラムは、目的地での具体的な体験(コト消費)を情報化して発信できる唯一無二のSNSといえるでしょう。訪れるキッカケづくりには欠かせないものとなっています。競争力をつけるためには、踏み込んだ活用方法が必要です。提供するCMS“CAMPiN(キャンピン)”は地域の内外問わず、個々のユーザーが地域を盛り上げられる仕組みとなっています」。

 インスタグラムの投稿を通じ、観光客といういわば“よそ者”の地域に対する興味関心を知れる。“キャンピン”を導入すれば、ユーザーは指定のハッシュタグをつけるだけで写真コンテストに参加でき、導入団体・企業はインスタグラムと連動した写真コンテストのウェブサイトがつくり放題となる。常時、トレンドにマッチするキャンペーンを催せ、需要を把握できるのだ。4月から始まった栃木デスティネーション・キャンペーン(DC)を牽引する栃木県DC企画会議県央地域分科会でも活用されている。

 同事務局に使い勝手を訪ねたところ「プレDC時に引き続き、栃木DCと連動したキャンペーンでも利用している。スタートしてから2カ月、投稿数は700超、“いいね”数は5万6千を上回り、プレDC時よりも高いペースで伸びている。地元の方の割合も高く、さまざまな視点から県央地域の魅力発信につながっている」と高く評価した。成功事例がでる一方同社は、地域事業者の収益をアップさせるために行政らができることはまだあるとみる。

偶然を必然に変える

 「4月からは、アナリティクス面でも地域をサポートできるようになりました。フォロワー数やインプレッション数などが分かるインサイト機能(SINIS、サイニス)の提供を始めました。パソコンから操作できる仕様となっています。CSVファイルの出力などデータ分析に役立つ改良も施していきます」。

 インスタグラムを始め、SNSによるムーブメントは偶然起こる場合が多い。“濃溝の滝”を擁する君津市(千葉県)では、……

【全文は、本紙1710号または5月26日以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

ユーザーの力 PRに生かす工夫を 米インスタグラム公共政策マネージャー

ジョン・タス=パーカー氏

 3月、Instagram米国法人で公共政策マネージャーを務めるジョン・タス=パーカー氏が本紙の取材に応じた。日本やアルゼンチンなど、各国の観光局と協力関係にある同社。ローカル地域の行政や観光協会ら、中小規模の団体とも連携してきた実績を持つ。

 総ユーザー数8億人と広告媒体としての価値も高いが、インスタグラムの本質と真価は、ユーザー一人ひとりが主体となって流行をつくれることだとパーカー氏は指摘する。「インスタグラムには、観光誘致に役立つ仕組みがすでに備わっている。行政らは、投稿を促しユーザーの力をPRに生かす工夫を行うべきだ」。

 国内ではその発信力に……

【全文は、本紙1710号または5月26日以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

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