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寄り添った商品開発を 将来不安高い若者の消費促す(三菱総研調査)

2018年3月17日
編集部

2018年3月17日(土) 配信

 三菱総合研究所はこのほど、20代若者の2011年から7年間の消費動向を探った。10年は長期失業者や大学生就職内定率が過去最悪を記録したが、17年12月の大学生就職内定率は86%と過去最高を更新。環境が変化し、消費意欲を阻害する要因は急速に回復している。一方で、暗い長いトンネルを抜けた先には高齢化社会という絶望的な構造上の問題が横たわっており、将来の生活不安は依然として高い水準だ。こうしたなかで、若者の消費を促すには「寄り添った商品開発」が重要という。
【飯塚 小牧】

 同社は定量と定性の2つの調査から構成する「生活者市場予測システム(mif)」で毎年消費者の動向を追っている。このなかで今回は、20代生活者約5千人の11―17年の変化を捉えた。

 20代は「今後日本社会で不安に思うこと」の設問に対し、11年は「景気低迷が続き、高い失業率や就職難が恒常化する」が55%と最も高かったが、17年は24%にまで低下。景況感は大幅に回復している。一方で、将来への生活不安は「とても不安」「不安」の合計が東日本大震災後の11年は64%、17年は58%で推移。6ポイント低下したが、依然として高い水準を保っている。

阿部淳一氏

 不安意識の高さは貯蓄へ向かっており、「貯蓄の目的」では20代男性、女性とも「老後の備え」の項目が最も伸長している。とくに女性は11年から7ポイント増の34%。これは「結婚」「住宅取得」(ともに17%)の倍の数値。人事部チーフプロデューサーの阿部淳一氏は「今の20代は結婚や住宅購入よりもずっと先の老後に視野を広げ、身動きがとれない状況」と解説した。

 将来不安は払しょくされないなか、消費動向には朗報もある。新商品に対する関心が15年を底に高まりだしたことだ。阿部氏は「企業のマーケティング革新努力の復権」と言及。近年、AI(人工知能)やITを駆使した家電製品などが発表されたことが好影響を与えているという。「若者の消費低迷は景気よりも『買いたいものがない』のが本音で、心に響く商品の開発が効果的」とし、「若者の○○離れというステレオタイプな理解で切り捨てるのではなく、若者に寄り添う商品開発が必要だ」と強調した。

 これまで○○離れの象徴とされていた、車の保有率やビールの飲酒頻度、海外旅行頻度などすべて上向いていることを示し、それぞれ若者向けの商品開発やブランディングが功を奏していると紹介。海外旅行については「LCC(格安航空会社)の存在が見逃せない」とした。各地の体験型メニューの充実などを理由に、宿泊を伴う国内旅行頻度も順調に伸びている。

 人口減少で絶対的な数は低下する反面、全世代のなかで、モノ消費やコト消費ともに最も意欲があるのが20代だ。「潜在的な消費パワーに注目したい。思わず財布の紐を緩める層なので、切り捨てずに一緒にマーケティングをしてはどうか」と提案した。

ミレニアム女性の本音2つのメリハリがカギ

劉瀟瀟氏

 ミレニアム世代は1980年代から2000年前後に生まれた世代で、日本には約2千万人、人口の約16%を占める。氷河期世代とも言われ、物心ついたときにはバブルが崩壊し、現実的なのが特徴だ。消費年齢に達しているため一番の注目世代だが、彼らの心をどう掴むかは世界共通の課題。なかでも日本の同世代は各国に比べ行動も考えも「控えめ」といわれる。プラチナ社会センター兼地域創生事業本部地域づくり戦略グループ研究員の劉瀟瀟氏は「本音を傾聴し、隠れているニーズをしっかり把握する必要がある」と語る。

 そのヒントになるのがmifの定性データでつくる「ペルソナ」。女性約51万件のデータをもとに所得、性格、趣味などを詳細に記述した各市場セグメントを代表する架空の顧客像を示す。

 今回は20―34歳女性をターゲットに、ライフコースで「独身女性」「DINKS(既婚共働き子供なし)女性」「DEWKS(既婚共働き子供あり)女性」「専業主婦」の4つに分類した。若者市場はセグメントに分けきめ細かく対応する必要がある。

 ここでのカギは「地味とキラキラ」「1人とみんな」の〝2つのメリハリ消費〟だ。まず「地味とキラキラ」をみると、例えば独身女性の地味消費は服に関心がなく、化粧品はコスパを重視するが、キラキラ消費は「デザインが可愛すぎる化粧品」などワンポイントだけ輝く商品に惹かれて購入するという。

 もうひとつの「1人とみんな」を見ると、DEWKS女性の1人消費は仕事と家事、育児の3立だからこそ、高級チョコレートなど自分への御褒美を追求する。一方、みんな消費は家族旅行を挙げる。

 また、すべてのセグメントで消費意欲として共通しているのが「国内の温泉旅行」という点は見逃せない。劉氏は「ライフスタイルはそれぞれ違うが、皆、癒されるために温泉に行きたいと思っている」と言及。「ミレニアル世代の女性は現実的すぎる反面、自分が納得できる理由があればお金をかける。心も財布も緩めるワンポイントの理由を提供すべき」とアドバイスした。

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