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「街のデッサン(201)」都市観光から見えてくる ワルシャワのバス停の少女国の史実 

2018年1月2日(火) 配信

バス停に立つ少女のファッションは

 街角のバス停で、本を読みながらバスを待つ少女がいる。ちょっと変わった服装をしている。質素な白いシャツに茶色のスカート、腕に赤十字の腕章。いまワルシャワでは流行のファッションなのだろうか。

 「レジリエンス」という概念が最近、社会学や心理学でよく使われている。手元にある関連の書籍を見ると、「折れないこころ」とか「復元力」という意味で使われている。ポーランドの諸都市を旅行していて、何度となくこの言葉、概念を反芻していた。

 ポーランドという国は、中欧の大国と言われているが、歴史上2度ほど地図から国名が消えた時代があった。近隣の国からの侵略を許し、国が占領されてしまったからである。悲劇的な運命を背負った国であるが、しかしその度に国民は侵略を跳ね除け、復活を果たした。ポーランドを巡ると、侵略と反撃・復興の刻印が街のいたるところで遺っている。例えば、ワルシャワ観光の目玉となっている旧市街の美しい歴史的街並みは、実は第2次大戦でドイツ軍に完膚なきまでに破壊された。私たちを感動させる建物のファサードは、破壊された街並みを完全に元の姿に市民自らが散乱した煉瓦を積み直し、再生したものである。そういった営為は、侵害され続けたポーランドの人々の復元力の源泉となった。

 第2次大戦は1939年、ナチス・ドイツ軍のポーランド侵略で始まった。1944年、ソ連赤軍の進撃作戦が効を奏し、優勢を保っていたドイツ中央軍は敗走する。赤軍はポーランド東部に進出し、ワルシャワのポーランド国内軍に武装蜂起を呼び掛けた。それに呼応して、国内軍約5万人が蜂起を開始する。これが「ワルシャワ蜂起」である。しかし、ワルシャワに駐屯する1万2千人のドイツ軍に対して国内軍は火器を欠いていた。期待していた赤軍の援軍も得られず(もともと、赤軍にその意思はなかった)、果敢に戦った国内軍は9月末に壊滅した。このとき、ヒットラーは徹底的にワルシャワを破壊したのであった。

 この日、月の10日は市民の祈りの日。ポーランド兵多数が殺害されたカティンの森事件の追悼式に向かった飛行機が墜落し、カチンスキ大統領以下96人が死亡した命日(2010年4月)。

 バス停に立つその少女を見て、ガイドのバシャさんが言った。「彼女は、実はポーランドの幾つもの歴史的悲劇を忘れない、という服装なのです。看護婦スタイルは彼女の復元への意思です。」

 

(エッセイスト 望月 照彦)

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

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