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「トラベルスクエア」欧州で薄い日本人の存在感

2017年11月23日
編集部

2017年11月23日(木) 配信

美しい歴史的街並みのウイーン

 初秋、オーストリアの首都、ウイーンに行ってきた。基本は会議出席でこの町に5泊滞在、じっくりようすを見てきた。

 実は、その間に、ちょっと衝撃的と感じることがあったのである。

 5泊6日もいて、何度もウイーンの町を散策したのだけれど、その間に日本人の観光客らしき人にほとんど1人も出会わなかった。もちろん、日本人の団体客とすれ違うこともなかった。

 ウイーンの秋、といえば最も旅愁をそそるテーマではないか。ついこの間どこかの旅行雑誌に発表された世界で人気の都市ランキングで第2位に輝く街がウイーン(ちなみに1位が東京、3位が京都)だ。そんな魅力があるところなのに、日本人の姿が皆無。それが驚きだった。

 この数年間、パリ、ロンドン、ベルリンなどの都市に行く機会があったが、どこでも日本人の姿は見かけた。もちろん、バブル期のような、日本人団体客の圧倒的な存在感はないけれど、それなりに日本人の姿をあちらこちらで見かけたものだが、今回のウイーンにはそういう意味で驚かされた。

 一方、中国人観光客はいたるところにいる。美術館に入っても、中国語が響いてくる。名物の馬車に乗っているカップルにも中国の方が多い。日本人観光客ばかりというのにうんざりすることもあったが、ここまで日本人がいないと、おーい、みんなどうしたんだよ~、と言いたくもなる。

 3カ月ほど前、個性的なオーダーメイド型ツアーをつくっている旅行代理店の社長さんと会食の機会を得たが、今、欧州に行ってホテルやエアラインなどと仕入れの商談に出掛けても、有利な話は何もくれなくなったという。「理由? だって日本人来ないじゃない」と言われるだけ、と。テロが怖いから、という理由はあるのだろうが、それにしてもこの欧州旅行への参加率の低さはどうしたものだろうと思う。

 欧州への旅は韓国・台湾・ASEAN(アセアン)に比べれば割高につくので、テロを口実に、「また、今度にしよう」と買い控えが起きているのだと思う。それだけ株価が上がっても、こういうところに消費が向かわないところに、日本人の今の気分が反映しているのではないか。

 観光というのは、相互互恵じゃないといけないと思う。こちらからもたくさん出掛けるから、あちらからも来てくださる。それが健康的な姿だろう。こちらから出掛けない。来る人のみ大歓迎では、きつい言い方になるけれどまるで物乞いみたいだ。インバウンド景気に浮かれるだけでなく、国内旅行も含めて(ここが大事)、普通の庶民が気持ちよくいっぱい「旅」に出てこそ、本当の意味での観光立国ではないだろうか?

(跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健)

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年から跡見学園女子大学教授、現職。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

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