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丁野朗(ちょうの・あきら)氏 「文化財観光」の展望語る

「ガイド」が観光の付加価値、外客はディープな日本文化求める

さまざまな場所で魅力的な
観光地づくりについて講演
を行う丁野朗氏

 文化庁は、「文化財活用・理解促進戦略プログラム2020」を策定するなど、文化財の活用を日本の観光振興の1つの柱に据えている。「日本遺産」認定事業もその一環。日本遺産審査委員会で委員を務める丁野朗氏(日本観光振興協会総合調査研究所 特別研究員)に、文化財観光の現状と展望、日本遺産の可能性について話をうかがった。カギは「ガイド」と「日本文化」。同氏が考える文化財観光の展望や、日本遺産の活用をまとめた。
【後藤 文昭】

 未来のビジョンを形にすることの重要性

 地域の発展には、未来の地域ビジョンを共有するとともに、これらを形にする事業が不可欠である。日本遺産の認定基準の中には、「資源を活かした地域づくりの将来像と、実現に向けた具体的な方策が適切に示されていること」、さらには「地域活性化の推進が可能となる体制整備の必要性」が掲げられている。単に物語だけでなく、これを実現する事業が重要である。

 日本遺産や文化財の活用をはかるためには、「モノづくりへの展開」や「行政主導から、いかに民間事業に波及させるか」がポイントになる。日本遺産鎮守府4市(横須賀市・呉市・佐世保市・舞鶴市)は戦後70年にわたる連携のもとに「カレーフェスティバル」や共同プロモーションなどを手がけている。わかりやすい事業で「日本遺産」の用語を浸透させ、来場者の関心を引いている貴重な事例だと思う。面白く、画期的なストーリーであっても、目に見える事業を通じてストーリーが体現できていないと魅力が失われてしまう。

 認知度を高めることが課題

 日本遺産の認知度がどの程度あるのかは、一度世論調査をする必要があると思っている。とくに地元の人たちや教育関係者、旅行業者などへの認知度が上がっていかないと、外から訪れる人に日本遺産が浸透せず、本来の目的である“地域の文化ストーリー”が伝わらず、魅力が高まっていかない。地域住民に日本遺産のストーリーを理解してもらうことが重要で、時間はかかるが、最終的には国民の認知度が半数を超えるようになることが目標だろう。

 ガイドは点ではなく全体を語れるべき

 日本遺産にとってガイドは非常に大きな役割を持っている。このため、「日本遺産のストーリーを語れる」ガイドの養成が不可欠である。横須賀市では、「ベルニ―公園」や「記念艦三笠」などの個々の施設だけでなく、エリア全体を1つにつなげ、まち全体の歴史を説明し、魅力を高める努力をしている。さらに4都市のガイドが連携し、ほかの都市の案内もできるような交流事業も計画している。

 ディープな日本文化を掘り起す日本遺産

 日本の金物は精巧で、世界でも人気が高い。例えば兵庫県三木の金物は、大工道具として欧州ではよく知られている。海外ではよく知られているのに、日本人が気がついていないことが実は多い。日本人が道具や文化に疎くなったことも要因ではないか。各地域に古くから伝承されている祭りのなかには、部外者が入れないものが多いが、欧米人などが見ると虜になりそうなものが多い。

 今後は個人の海外旅行(FIT)、特別な目的に絞った旅行(SIT)を志向する外国人が、ディープな日本文化を見に来るケースが増えると予想している。何度も海外旅行に行く日本人が、ひなびた地方の小さなまちに、その国の本当の原型があると思うのと同じことだ。そう考えれば、日本遺産の可能性もディープな日本文化にあると言える。

 観光はありのままを見せるべき

 日本人は「もてなす」という文化行動を持っていた。しかし、最近の文化財施設や型にはめられた観光などでは、そのまま「おもてなし」を形にすることが難しくなっていると感じる。 

 反対に、にし阿波観光圏(徳島県三次市と美馬市、つるぎ町、東みよし町からなるエリア)では、山深い地域の住民がガイドの受け皿になっている。何か特別なことをしているわけではなく、普段のありのままの暮らしに、訪れた外国人は感動する。そこには暮らしの知恵と厳しさが感じられて、観光客を惹きつけているのであろう。

 観光が文化交流ではなくなりつつある

 観光は本来文化交流である。今はそこから外れている事例が多い。そこで、なるべく早くに、日本遺産のような文化財を楽しむ観光の仕組みづくりが必要だと痛感している。外国人観光客は旅慣れていて、よく勉強をして訪れる。今まで日本人の団体観光客相手に行ってきたやり方を少し変え、文化をみせることの本当の意味を考えて仕掛けを作らなければならない。

 日本には、地域文化の基層とその変遷、暮らし、文化の意味などを語れるガイドが非常に限られている。地域文化を多面的に語れる人が育っていかないと文化が経済にならない。ましてガイドを無償のボランティアに依存していてはダメだ。観光の付加価値はガイドの力量に拠るところが大きい。

 文化財のドラスティックな活用を

 文化財活用の点では、もっとドラスティックな展開がほしい。例えば、文化財指定の大寺院の庫裡は書庫であり、宿泊施設でもあったのだから宿泊できたらいいと思う。武家屋敷なども同じだ。旅館業法などの問題もあるが、早急に対応を進めてほしい。

 ただし、文化財の公開・活用は、「文化財の毀損」という大きな問題もはらんでいる。モラルに関しては規制や強制をするのは難しい。そこでカギになるのが、「旅育」ではないか。子供のときに親と旅行して、親から公共の場でのモラルや、文化財の価値などを教わることも必要だ。安易に複製品を使用するケースもあるが、外国人には気がつかれてしまう。昔からそこに住んでいた人や本物を知っている人にはすぐにバレてしまう。

 日本には物語が豊富にある

 日本遺産は、全国で100カ所の認定を目指している。大都市や北東北、北海道などの地域にはまだ日本遺産がない。これらの地域にも物語は豊富にあるので、今後、各地からのエントリーを期待している。

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