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強羅花扇 強羅花扇早雲閣 円かの杜 箱根の3館、新たな挑戦でブランディング

円かの杜のエントランス
円かの杜のエントランス

「円かの杜(まどかのもり)」開業から3年目迎える

 岐阜県高山市で「飛騨亭花扇」(全48室)と「花扇別邸いいやま」(全15室)を展開する花扇グループ(飯山和男社長)は、2009年に神奈川県・箱根温泉に進出。強羅花扇(全20室)、強羅花扇早雲閣(全24室)、最上級グレードの「円かの杜」(全20室)の3館がそれぞれのコンセプトでブランディングを進めている。“木の美学”や飛騨牛に代表される食材を追求する一方で、新たな仕掛けや挑戦、そして、日本文化を継承する要である人材教育と育成を地道に取り組んでいる。

円かの杜308号室「春蘭」
円かの杜308号室「春蘭」
強羅花扇の玄関口
強羅花扇の玄関口

人材教育や育成を地道に

 新宿区の保養施設を取得して09年に強羅花扇を開業。翌年には強羅駅前の老舗旅館を「強羅花扇早雲閣」としてオープンした。早雲閣の自家源泉は箱根の中で最も高い場所に湧き出ている。その独特の濁り湯を掛け流す早雲閣の湯は、隣接する花扇と共有している。

 14年12月には花扇グループの最上級グレード「円かの杜」が開業し、現在3年目を迎える。

 「旅館は日本の文化」などといわれるが、客室係やフロントなどスタッフが、しっかりと日本文化を身につけ、継承していくベースづくりが最も難しい。

 花扇グループ箱根3館の人材教育や育成を一手に担っているのが、女将の松坂美智子さんだ。

 「一度だけでなく、継続してお越しいただけるには、客室係やフロントスタッフの力がとても大きいと感じています」と松坂女将は話す。チェックアウトしたあとの時間などに、お客様と直接対面する客室担当者一人ひとりと「次につなげるために、何ができるか」など日々コミュニケーションを取っているという。楽天トラベルやじゃらんなどの口コミは毎日チェックしている。「すぐにでも改善できるもの、また時間はかかるが、取り組まなくてはならないものなどを判断し、決断するのが経営側の最も大切な仕事」と話す。

 飯山社長をはじめ、花扇グループは一体となって、東京オリンピックが開催される2020年後も見据え、人材を確保するために戦略を練って奔走している。飯山雅樹専務も「時代は変わっている」ことを感じている。「休暇制度やシフトなどを含め、労働環境の大変革をしていかなければ、今の若い世代に魅力的には映らない」と強調する。

 昨年7月26日には、箱根ロープウェイが再開し、8―11月まで通常の状態に戻った。しかしスタッフ不足の問題にも直面した。毎日満館になるほどの勢いを感じるなか、スタッフの出勤シフトに応じて部屋数を決めて予約を出している状態が続いている。これは箱根に限らず、全国の旅館に共通する問題だ。

再開した大涌谷へのロープウェイもにぎわう
再開した大涌谷へのロープウェイもにぎわう

 強羅花扇、早雲閣、円かの杜の各旅館10人ずつ計30人の客室係が最低限必要だが、数人ずつ不足している状況にある。

 松坂雄一取締役総支配人は「さまざまな人的ネットワークを駆使しながら、粘り強く取り組んでいます」と語る。その結果は徐々に表れている。テレビや雑誌などを見た若者から「ぜひ就職したい」という問い合わせもでてきている。メディアなども戦略的に活用しながら、毎年10人程度の新卒を見込む。

強羅花扇「千本格子の和風シャンデリア」
強羅花扇「千本格子の和風シャンデリア」
強羅花扇「早雲閣」の外観
強羅花扇「早雲閣」の外観
早雲閣の大浴場「結の湯」露天風呂
早雲閣の大浴場「結の湯」露天風呂

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 花扇グループが箱根に進出してから約8年、各旅館のそれぞれの個性を最大限活かすブランディングに取り組んできた。この3館の棲み分けは明確だ。

 「強羅花扇」の部屋タイプは同一。一方、円かの杜は部屋タイプが20室すべて異なるため、「自分の好きな部屋にゆっくりしたい」と予約の段階で部屋を指定してくる宿泊客が多い。一番くつろげる客室を選べるように意図して設計しており、そのようにプロモーションもしている。「ハードリピーターが多いのも特徴です」(飯山専務)。

 円かの杜では、雑誌とのタイアップ企画で「ディスカバー・ジャパンルーム」なども取り組んでいる。今年はさらなる仕掛けにも着手している。

 「ブックディレクターの幅充孝氏と一緒に、館内を本で彩るライブラリー(図書館)を計画しています。館内の至る所に『本がある風景』をつくり出し、くつろげるように椅子も置きます」(松坂取締役総支配人)。「宿泊客が滞在するなかで、『当館にはこのようなことを提供できる引き出しがありますよ』というスタンスです。いかに今の時代に宿を合わせていくかを常に考えています」と語る。1人の単価が5万円以上の高級宿には「特別感」が必要だ。押しつけのサービスやおもてなしではなく、あらゆる過ごし方のバリエーションを用意しておくことが大事という。円かの杜開業から3年目を迎える17年に、花扇グループは新たな挑戦を始めた。

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