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「民泊」解禁へ ― 旅館・ホテルは違いを際立たせるべき

2016年5月20日
編集部

 訪日外国人旅行者が急増し、東京や大阪、京都など一部大都市部でホテルや旅館などが不足していることを受けて、政府は住宅地でも“一定の条件”を満たせば、「民泊」を解禁する方針を固めた。規制改革実施計画に盛り込み、今月末に閣議決定されたあと「民泊新法」として、今秋以降に国会に提出する予定だ。国家戦略特区として規制緩和された大阪府や東京都大田区は1回の利用で7日以上の滞在が必要であるが、あまりに利用者が少ないため、滞在日数を大幅に減らすなど、「さらなる緩和へ」との動きも見られる。

 違法民泊による住民とのトラブルも各地で報告されており、1日も早いルールづくりが求められるなか、規制改革による“シェアリングエコノミー”を強力に推し進めたい政府と、空き部屋を有効活用し、利益を得たい不動産業界、旅館業法などの縛りがあるホテル・旅館が求める“イコールフッティング”の立場が錯綜し、もつれた糸のような状態になっていたが、ようやく新たな法律を整備する道筋が描かれた。これまでもウイークリーマンションやインターネットカフェなど新たなビジネスモデルが登場したときに、旅館業法に抵触する部分で激しい議論がなされてきたが、その都度新たな解決策が生み出されてきた。

 大手不動産会社で「ライオンズマンション」などを展開する大京は、民泊の事業化に積極的に乗り出す構えだ。一方、新規分譲マンション販売やすでに販売済みのマンションでも住民に配慮して「民泊に使用しない」と規定しているところもあるという。今までは旅行者は、旅館やホテルなど宿泊施設に滞在していたが、これからは普通のマンションにも外国人旅行者が滞在する社会となる。多くの地域は、商業エリアや文教エリア、工場エリアなどを棲み分け、住宅エリアは静寂や治安面での安全性などを第一に求める。千葉県の住宅地で保育園の建設を反対する動きによって開園を断念したという報道は記憶に新しいが、多くの住民は見知らぬ外国人観光客が滞在することに不安を感じ、ナーバスになる面があることは確かだ。日本に限らず、世界中で地元住民と旅行者との間で軋轢は生じている。

 東京・谷中で外国人旅行者を多く受け入れる澤の屋旅館は、周辺の地図を作ったり、地域全体で外国人旅行者を受け入れる環境づくりに腐心されている。このような努力や配慮を大手不動産会社が考えているか、どうも不安だ。また、価格設定はどのようにされるのだろうか。おそらく周辺のビジネスホテルなどと比較しても格安感を出すことが予想される。自社の利益最優先で、周辺住民や社会の不安を増大させるようでは、巡り巡ってマイナス面は大きくなる。

 民泊解禁によって、ホテルや旅館へどの程度影響があるのかは、現状でははかれない。しかし、民泊サービスと、ホテル・旅館はまったく異なるサービスである。民泊サービスとの違いを際立たせることが、ホテル・旅館のおもてなしの奥深さを認識してもらえるチャンスと捉えた方がいいだろう。現在、外国人旅行者の増加による稼働率上昇で、急激に宿泊料金をアップするビジネスホテルも見られるが、多くのビジネスマンも動静を見守っている。地道な努力で少しずつ支持を得ていくサービスが最終的には一番強いのだと思う。

(編集長・増田 剛)

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