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「観光」が国策に ― 外客4000万人、6000万人へ国が動く

2016年4月11日
編集部

 「観光」が国策となった。人口減少時代に突入し、安倍政権が最重要課題と位置づける地方創生の「切り札」として、観光に大きな期待を寄せる。首相自らが議長を務める「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」は3月30日、2020年に訪日外国人旅行者数4千万人、30年に6千万人と大きな目標値が設定された。実現すれば、まさに世界有数の「観光先進国」となる。“国策にブレなし”と言われるように、余程大きな世界情勢の変化や天変地異が発生しない限り、政府はあらゆる手段を講じ、目標値に向けて優先的に突き進んでいくだろう。重厚長大産業全盛時代から観光産業が“日の目を見る”ことを夢見ていた世代にとっては、隔世の感を禁じえないはずだ。

 さて、この「観光ビジョン」には、3つの視点と10の改革が掲げられた。網羅的に課題と改革案が示されている。このなかで最も重視すべき点は、地方部(3大都市圏以外)の外国人延べ宿泊者数を「2020年には15年の3倍近い増加となる7千万人泊、そして30年には同5倍を超える1億3千万人泊を目指す」という部分だ。さらに、20年には地方部の比率を50%まで高め、30年には60%と3大都市圏を上回ることを目標に定めた。今後も大規模な国際空港を有する首都圏、関西圏、中部圏に外国人旅行者が集中することが予想されるが、目標達成には地方空港のLCC、チャーター便の受入促進が大きな課題となる。また、海に囲まれた日本は、クルーズ船の寄港がしやすい環境づくりが必要だ。さらに、LCCやクルーズ船の受入れ促進と一体で観光バスなど2次交通の整備が不可欠だ。「観光ビジョン」では、この観光バスの運転手不足などの課題解決への視点が弱いのが気になる。

 新経済連盟(三木谷浩史代表理事)は3月25日、観光政策提言を行った。こちらは国の「観光ビジョン」に比べ、よりラディカルな内容となっている。目標値も30年の訪日外国人旅行者数は1億人と、政府目標の6千万人を大幅に上回る。訪日外国人旅行消費額も30兆円と、政府数値15億円の2倍だ。

 提言では、訪日外国人の情報収集源のほとんどがインターネットであり、旅行先として日本を選んでもらうには「ネットによるマーケティングが極めて重要だが、デジタルマーケティングに配分される予算が不十分」と指摘。そのうえで、「デジタルマーケティング戦略の司令塔として、精通する民間人を政府CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に起用すべき」という提案は有効だと思う。また、単年度予算により継続的な情報発信ができていない状況も課題として挙げた。

 同提言では、外国人観光客の消費を促すことに関しては、キャッシュレス決済の促進を重視している。クレジットカードの利用により、浅草・仲見世商店街では客単価が1・6倍になるデータも引用し、現金以外の支払い手段受入の義務化を求めている。韓国ではキャッシュレス取引の売上高の2%を納付税額から控除する一方、カード決済拒否は刑事処罰の対象となる(加盟店)といった事例も紹介している。国は「観光先進国」へ舵を切った。しかし、注意すべきは、国策は追い風だけでなく、時に強引さもともなう。規制緩和などの政策へのチェックがこれまで以上に大事になってくる。

(編集長・増田 剛)

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