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スポーツの秋 ― “泥くささ”に心動かされる

2015年10月11日
編集部

 “スポーツの秋”である。観光もスポーツと密接なつながりがあり、交流人口の拡大などにおいても、大きな影響力を持っている。また、2020年の東京オリンピックに向けて、スポーツの重要性はもっと増すだろうし、地域活性化にとっても、自分たちの誇りとなるスポーツチームが地元にあることも、とても大事になってくる。

 面白いのは、人それぞれに好きなスポーツがあるし、実際に自分がやっていた競技には思い入れが強い。それがマイナースポーツであれば、自己紹介で目立つことができるし、飲み屋での会話も盛り上がる。そして、スポーツは人を熱狂させる。地球の裏側まで弾丸ツアーで駆けつけるファンも多い。また、テレビ観戦でも、それがたとえ深夜であろうと「明日の仕事に差し支えてもいい」と開き直り、朝まで声をからして応援する。

 スポーツに魅了されるのは、すべての人の「人生と同じ」でなかなか上手くいかないところ。一瞬、一瞬が真剣勝負。もどかしくもあるし、敗北すれば苦い思いをし、悔し涙も流れる。それゆえに勝利したときには、歓喜の雄叫びを上げるほどに心を動かされる。

 チームプレーでは、脚光を浴びるポジションがある。サッカーなら常に得点を狙うフォワードだろう。一方、90分間全力で削り合うなかで、何度も何度もピンチを救い、チャンスにつなげる役どころがある。ボランチやディフェンダーだ。相手が強敵ならば、身体はボロボロだ。それでも相手に食い下がっていく。ワールドカップブラジル大会を制したドイツなどの強豪国は、精緻なパスで華麗にゴールを奪うイメージがある。だが、どんな強豪国であろうと、それほどものごとが上手くいくはずはない。アルゼンチンは、マラドーナやメッシなど才能豊かな選手が脚光を浴びるが、実に“泥くさい”サッカーをしている。日本が世界的にまだまだ強くなれない理由は、パスの精度や戦術なども言われているが、強豪国のサッカーと比べて“泥くささ”が足りないせいなのだと、いつも思う。

 かつてサッカー日本代表の香川真司がイングランドの名門クラブ、マンチェスター・ユナイテッドでプレイをしていたとき、同僚の世界的なフォワード、ウェイン・ルーニーが自陣のゴール前まで全力で転がり込みながら守ったかと思うと、すぐに立ち上り、今度はエースとして全速力でゴールを果敢に奪いに行く。笛が鳴るまで繰り返す姿に、泣きそうになった。

 ラグビーワールドカップで日本代表の活躍もあり、ラグビーがメディアに登場するシーンが多くなった。旅館業界でも全旅連青年部の桑田雅之部長が元ラガーマンだけあって、ひと際ラグビー熱が伝わってくる。ラグビーは、“泥くさい”イメージがある。実際、全身泥まみれになるからかもしれないが、なりふり構わないひたむきさが胸を打つ。泥くさいには「洗練されていない、野暮ったい、田舎くさい」などの意味があるが、私は泥まみれになった姿の比喩としての“泥くさい”という語感が好きだ。

 仕事が良くできる人は、大抵“泥くささ”を表面上には見せない。しかし、ルーニーのように、誰よりも走り回っている。その泥くさい部分がちらりと見えるときがある。その瞬間が、妙に人間くさく、そして美しい。

(編集長・増田 剛)

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