ガイドと旅行者つなぐ、マッチングサイトを開設(HIS)

トラヴィガイドが案内

 エイチ・アイ・エス(HIS)が訪日外国人旅行者と地域の地元ガイドをつなぐサービスを始める。6月29日にCtoCのマッチングサイト「Travee(トラヴィ)」を開設。地元ガイドの募集を始めた。「通訳案内士法及び旅行業法の一部改正法」成立を受け、施行前に受け皿を作った。深刻化する地方ガイド不足の解決に向け、新たな人の流れを生み出す。

 地元ガイドは「トラヴィガイド」として登録する。旅行者は目的に合うプランをサイト上から選び、ガイドと相互で合意したあとにマッチングが完了。旅行者は地域の文化や地理に明るいガイドに案内してもらえ、ガイドは空いた時間に副収入を得ることができる。

 サイトの特徴は「相手の素性が分かったうえでマッチングを行う独自の仕組み」(同社)。旅行者とガイド共に、プロフィールやレビューが公開され、相互に選択する権利がある。

 レビューが高いガイドに人が集まる傾向が強い。改正後にガイドの質の低下が懸念されるなか、評価が公開されることで「(ガイド)自らクオリティを保つ」(同)としている。

 さらにHIS公認の「トラヴィガイド」を認定する取り組みも進める。このほか面接や講習会などを行い、ガイドの質の担保をはかる。

 一方で今後は地方自治体と連携。地域通訳案内士を増やす取り組みや、地域独自の文化を体験できるプラン造成にも力を入れる。情報発信は39カ国で展開する旅行者向けサイト「hisgo」をはじめ、訪日外国人旅行者向けWebメディアと推進していく。

 これまで有償で行うガイドは、国家資格者のみだったが、改正後は誰でも行える。観光庁によると資格取得者は全国で1万9千人ほどいるが、4分の3が大都市部に偏っている状況だ。訪日外国人旅行者が地方へ流れているなか、地域のガイド創出が急務となる。

東京でめぐる越後の祭り

 東京・新橋の虎ノ門エリアにある複合施設「旅する新虎マーケット」は、7月5日―10月1日までの期間、2017年夏の章「夏疾風の物語 ローカル線でめぐる越後の祭り」を実施している。新潟の祭や食、ワークショップなどを通じて祭文化とものづくりの魅力を国内外に発信する。

 風土を生かした「祭り」をテーマに、越後のローカル線で巡ることができる新潟県の村上市、燕市、三条市、長岡市、十日町市の5市が出展。4棟の常設スタンドでは、各地域が誇るご当地グルメや日本酒などを堪能できるほか、テーマストアで各地域の工芸品や物産品を販売し、テーマカフェではテーマ連動の特別メニューも展開する。

 旅行先として魅力たっぷりの新潟。この機会にまだ知らない魅力にめぐりあえるかもしれない。

【長谷川 貴人】

民泊事業で提携へ、販売はホームアウェイ(楽天ライフルステイ)

握手する木村氏(左)と太田氏

 楽天 LIFULL STAY(楽天ライフルステイ、太田宗克社長)とホームアウェイ(木村奈津子日本支社長)は7月3日、民泊事業での業務提携を発表した。目的は、インバウンドの需要把握と来訪促進。住宅宿泊事業法施行に合わせ、楽天ライフルステイの国内民泊物件を、ホームアウェイのWebサイト上で販売する。地域への誘客を実現することも狙いの1つで、空き家の一棟貸しによる新しいリゾートコンテンツの創出も視野に入れる。

 ホームアウェイは、家主不在型の民泊物件仲介で強みを持ち、全世界で月間4千万人のサイト訪問者数を誇る。提携を通じ、物件選定や商品企画に役立つマーケティングデータを供給することとなる。「現在、国内物件数は1万弱、2020年までには10万件を目指す」と語るホームアウェイの木村奈津子日本支社長。家主不在型で一棟貸しという事業展開は、空き家活用を狙う楽天ライフルステイとの親和性が非常に高い。

 楽天ライフルステイの太田社長は、「物件のリノベーションや運用代行などは我われが担うことになる。新会社では、楽天トラベル(髙野芳行事業長)で培ってきた営業ノウハウを横展開していきたい」と述べ、民泊の仲介業でも、各地域に民泊コンサルタント人材を配備するなどして、民泊に関わる事業を統括できる仕組みをつくる構え。楽天市場や楽天トラベルに匹敵する規模まで、民泊仲介業をグループ内で育てていく。

 ホームアウェイの木村日本支社長は、「同じ旅行者であっても、どこに、だれと訪れるのかによって求める宿泊のサービスは違う」と、宿泊形態の多様化が、インバウンドの増加に結びつくと語った。

 なお現在、楽天ライフルステイは、親会社の1つLIFULL(ライフル、井上高志社長)が進める「LIFULL HOME’S空き家バンク」事業と連携し、各自治体が運営する空き家情報を集約している最中。データベースとして2017年夏に、サービスを開始する予定。

経費の3分の1補助、宿泊施設の外客対応支援(観光庁)

 観光庁はこのほど「宿泊施設インバウンド対応支援事業」の公募を始めた。今回は4回目でWi―Fi整備などに対する経費を3分の1(上限100万円)補助する。2015年度から始めて累計328の計画が認定されている。宿泊施設の受入環境を整備して、訪日客の訪問・滞在時の利便性向上をはかる。申請は7月31日まで。

 申請時には宿泊事業者が5者以上で組成する協議会などの設立が必要。協議会は現状分析を踏まえた取り組みや、訪客宿泊者数などの目標を計画する「訪日外国人宿泊受入体制拡充計画」を策定し申請を行う。最終的に国土交通省大臣が認定し、補助金の交付を決定する。

 補助対象事業は(1)Wi―Fi整備(2)トイレの洋式化(3)自社サイトの多言語化(4)クレジットカード決済端末整備(5)ムスリム受入マニュアルの作成――など。今回は客室部分の整備は対象外で、館内共有部分のみとなる。

 認定・公表は8月を目途に実施予定。

 詳細は観光庁ホームページか、同事業の事務局(電話:03―5253―8329)まで。

指宿白水館が創業70周年、祝賀会に450人出席


下竹原啓高社長があいさつ

 鹿児島県・指宿温泉の指宿白水館(下竹原啓高社長)の創業70周年謝恩祝賀会が6月18日、観光関係者など約450人を招いて、同館で盛大に開かれた。

 同館は、戦後間もない1947(昭和22)年に、故下竹原弘志名誉会長が鹿児島市内に12室の旅館「白水館」を創業したのち、1960(昭和35)年に指宿温泉へと進出した。

 ハワイアンホテル白水館として営業するなか、1989(平成元)年に本物志向の高級和風旅館を目指して名称を「指宿白水館」に変更。旅館の大幅なリニューアルを行い、現在に至っている。

 祝賀会で下竹原社長は、創業者の気概と創業時代の苦労などを紹介。ハワイアンホテルから本格的な和風旅館への転換では「旅館経営は、あらゆる日本文化の素材を駆使する芸術活動、という父の経営理念が庭園や和風建築、館内の壁画、調度品まで浸透している」と話し、創業者の想いを伝えた。

 また「父は20年前の国観連会長時代から少子化・高齢化の問題とインバウンド時代の到来を予測していた」と述べ、指宿白水館の今後の方向性については「花の棟の耐震補強工事を来年の大河ドラマ放送以降の19年初めに延期する」と発表。

 高単価のスイートルームやコシノ・ジュンコさんによるデザイナーズルームの改装計画などを説明した。

 さらに、南側敷地の露付のビラ・コテージ建設やAIを使った電気カート試験走行、セスナ機による鹿児島空港―指宿間のアクセス計画なども明らかにした。

 祝賀会では料理の達人として、神奈川県・鎌倉市で中国料理店を経営するりん・くんび氏が「食と職をおいしく食べる法」をテーマに講演した。

 ロビー階では創業者・下竹原弘志・サツ夫妻の胸像除幕式も行われた。

創業者夫妻の胸像

“300会員を目標に”、ノウハウ結集し協力を(日本観光施設協会)

西山健司会長

 日本観光施設協会(西山健司会長、191会員)は6月29日、東京都内で2017年度定時総会を開いた。会員拡大を喫緊の課題とし、300会員を目標に据えた。

 西山会長は「一般社団法人になって今年で4年を迎えた」と述べ、「日本の旅行スタイルも団体旅行から個人化へと移行している過渡期。今後、市場の変化にどのように対応していくかが問われる。約200会員のノウハウを結集し、協力することが大事」と強調した。

 今年度は、組織の確立と財政基盤の確保のために会員拡大を第一の課題に据える。また、「旅の駅」ブランドの向上に向けては、店舗ごとに研修教育の実施や、お客様サービスの向上、バリアフリー設備・AEDの設置などの取り組みを進めていく。

 さらに、「観光バス業界とは車の両輪」(西山会長)とし、料金改定や、安心・安全の問題など、さまざまな角度から検討を続ける予定だ。

外務省が安全対策示す、海旅添乗員に初セミナー

セミナーのようす

 外務省と日本旅行業協会(JATA)、日本添乗サービス協会(TCSA)は6月22日、外務省内で海外旅行添乗員を対象に「海外安全対策セミナー」を開き、144人が参加した。近年、世界各地でテロが多発するなど、海外旅行の安全に対する意識が高まっている。とくに、現場で旅行者を引率する添乗員は、緊急事態発生時の迅速な行動や関係機関との連携など重要な役割が求められることから、今回初めてセミナーを実施。外務省領事局が基本的な対応を示した。

 冒頭、JATAの權田昌一海外旅行推進部長は、昨年から日本人出国者数の増加傾向は続いている一方、大手旅行会社の海外旅行取扱高は比例して伸びていないことを報告。顧客がOTA(オンライン旅行会社)に流れている懸念を示した。そのなかで、「旅行会社が提供する旅として、添乗員の力で安心安全の旅を提供し、OTAとの差別化をはかっていきたい」と強調。「お客様の安全を担い、旅の楽しさを伝えるために学んでほしい」と呼び掛けた。

 TCSAの三橋滋子会長は「昨今、世界各地で予測し得ない事件や事故が起きている。日ごろ海外でお客様の安心安全に心を砕いている添乗員や関係者が、外務省から直接話を聞く機会はとても貴重なこと」とセミナー開催に感謝した。

 外務省の能化正樹領事局長は「海外旅行での安全対策の重要性がこれまでになく高まっている。旅行のプロである皆さんは、旅行者から安全対策の面でもプロでいてほしいという期待を受けている。我われにとっても頼りになるパートナーだ」と述べ、安全対策への理解を求めた。

 能化領事局長は近年、テロリストが一般人や観光客を含めたソフトターゲットを狙い始めており、日本人も対象になっていると警告。添乗の際にテロに遭遇してしまう可能性も示唆した。そのうえで、基本対応として(1)「たびレジ」への登録(2)海外安全ホームページからの情報収集(3)「海外安全 虎の巻」の利用――の3ステップを紹介。たびレジは外務省が発信する海外旅行者に向けたメールサービスで、必要事項の登録で現地の安全情報や緊急速報が送られてくる。「添乗の際には団体の人数を登録し、できれば参加者個人にも登録を薦めてほしい」とした。海外安全ホームページからはスポット情報のほか、海外でのトラブル対応を具体的に記した虎の巻も閲覧することができるため、積極的な活用を促した。

財源確保が最重要、中核となる人材不足課題(DMO調査)

 日本観光振興協会はこのほど、日本版DMO候補法人に現状を聞くアンケートを実施した。これによると、DMOの取り組みを進めるうえで、「安定的な組織運営のための財源確保」が最も重要だということが分かった。また、戦略の策定や活動を牽引する組織の中核となる人材の不足も大きな課題となっている。

 調査は3月までに候補法人123団体のうち、79%に当たる97団体から回答を収集。回答を参考に、昨年4月に同協会に設置したDMO推進室がどのような支援を行うか検討するのが目的。

 DMO候補法人の登録前に関係組織に事業説明を行ったかについては、55%が市町村や観光協会に周知や事前説明を行ったのに対し、主要観光事業者や観光関係機関への実施は28%にとどまった。また、人材確保やマーケティング戦略策定のためのデータ収集は8割の団体が事前に実施していなかった。

 財源確保のために検討しているものは、「収益事業」という回答が多数だった。そのなかでは、着地型商品や特産品、地域限定グッズの販売、コンサルティング広告収入などが挙げられた。

 人材については、どのようなノウハウを持った人材が不足しているかを質問。全体で59%の団体が「データ収集」の専門スキルを持った人材が不足していると答えた。次いで「人材育成」「財務・経営分析」が多く挙げられた。また、人材育成への取り組みは、研修・セミナー開催と参加支援、講演会の開催などが多かった。一方、日観振には、講師の紹介・派遣や教材の開発・提供、研修などの共同開催・支援などを期待している。

 これらを踏まえ、日観振は今年度、DMO職員らを対象に、DMO入門・初級研修やマーケティング専門人材育成研修、中核人材育成研修の開催などを行っていく。

【7月23日】アマガエル姿で舞男が妙技披露、龍ケ崎の撞舞 (茨城県龍ケ崎市)

龍ケ崎の撞舞1
高さ14メートルの柱の上で妙技披露

アマガエル姿で舞男が妙技披露、龍ケ崎の撞舞

 茨城県龍ケ崎市で7月23日、国選択・県指定無形民俗文化財「撞舞(つくまい)」が同市根町の撞舞通りで開かれる。高さ14メートルの柱の上で、アマガエルの姿に扮した舞男2人がさまざまな妙技を繰り広げる奇祭だ。

 撞舞は、市内にある八坂神社で毎年7月下旬に3日間行われる「八坂神社祇園祭」の最終日夕方から行われる。アマガエルの面を被り、唐草模様の衣装をまとった舞男が、柱の頂上で逆立ちなどの妙技の限りを尽くした曲芸を繰り広げて会場を沸かせてくれる。

 雨乞いや豊作祈願、厄病除けの意味があるといわれる撞舞は、舞男が頂上で四方に放つ魔除けの矢を拾うと1年間災厄を免れるとされている。

 問い合わせ=龍ケ崎市撞舞保存会(龍ヶ崎市役所商工観光課内) 電話:0297(60)1536。

 

民泊新法 早期施行目指す、「旅行業法改正とセット」望む(田村長官)

 田村明比古観光庁長官は6月21日の会見で、〝民泊新法〟の可決・成立を受けて「速やかな施行」を目指す一方で、旅行業法の一部改正法案との「セットでの施行」を望んだ。5月の訪日外客数は前年同月比21・2%増の229万4700人となり、5月として過去最高だと報告した。

 田村長官は訪日外客数が堅調に推移していることについて「2020年の目標に向けては、今年は非常に重要な年になる。引き続きさまざまな施策を講じて、今の勢いを継続させていきたい」とコメントした。

 ■民泊新法成立、1年以内に体制整備を

 6月9日、住宅宿泊事業法案(民泊新法)が参院本会議で採決され、可決・成立した。今後1年以内に政令・省令の制定、各都道府県における条例を検討し、早期施行を目指す。

 田村長官は「旅館業法の許可を受けていないものを含めて民泊サービスが急速に広がってきており、行政が把握できない状態が続いていた。無事に法案が成立してほっとしている」と胸中を語った。

 施行時期については、今後オンライン上での家主の届け出や、年間提供日数の確認ができるシステムの構築などを行っていくほか、各都道府県での体制基盤の整備や、諸手続きに関する条例などを定める必要があるため、「速やかな施行を目指しているが、体制を整えるのにそれなりの時間は必要になってくる」と述べた。

 なお、関連法案である旅館業法の一部改正法案は、本国会での可決・成立が見送られた。この件について「基本的には民泊新法とセットで施行したい。臨時国会が開かれるならば、そこの場で成立してもらいたい」と旅館業法の次期国会での成立を望んだ。

 ■今秋、事業者向けに説明会(通訳案内士法等)

 通訳案内士及び旅行業法の一部を改正する法律案が、5月26日の参院本会議で可決・成立となった。

 今回新たに創設された、ランドオペレーターの登録制度については、秋ごろを目途に全国各地で事業者向けの説明会を行うほか、ウェブ上での情報発信も積極的に行っていく。

 今回の規制緩和により、急増する訪日客に対応するため、無資格者でも有償でガイドを行うことが可能になる。新たなガイド誕生に期待が込められる反面、質の低下や、外国人人材の活用に伴う出入国管理法違反など懸念課題は拭えていない。

 田村長官は「悪質ガイドや悪質ツアーの取り締まりに関しては、関係省庁で連絡会議が立ち上がっている。どのようなケースが法に触れるのかなどを議論しながら、取締強化に向けて効果的な方法を検討していく」と回答した。