京都岡崎モニターツアー 京舞に能・茶の湯 岡崎独自の文化を堪能
2025年2月5日(水) 配信

かつての平安京の東側、ちょうど都市部と東山山麓の間に位置する京都・岡崎エリアは、平安神宮や南禅寺に代表される寺社仏閣をはじめ、各種美術館や京都観世会館といった文化施設、琵琶湖疏水沿いの四季折々の風景など、古都・京都の雰囲気を満喫できる人気のエリア。そんな魅力あふれる岡崎で、さまざまなスポットを巡りながら、岡崎ならではの文化に触れるツアーに参加した。
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ツアーは、京都市営地下鉄東西線「蹴上駅」から徒歩約7分の場所にあり、明治・大正時代の政治家、山縣有朋が1896(明治29)年に建てた別荘「無鄰菴」からスタート。「山縣の指示で作庭された庭園は、借景であるはずの『東山』をメインに捉えることで、素朴な里山の風景が感じられる自然主義的な庭園になっています」。指定管理で同施設を運営する植彌加藤造園の研究員、マイケル・シャピロさんが流暢な日本語で解説してくれる。この庭園は、琵琶湖疏水を引いてきた初めての庭園で、その後、各庭園への導入が広まる。のびのびと広がる芝の景色も、当時としては斬新な表現だったという。

庭園に面した母屋の2階では、京舞の観賞会が行われた。京舞とは上方舞の1つで、京都固有の特色を持つ舞踊のこと。当日は京都五花街の1つ、祇園甲部の舞妓、柚子葉さんが、京舞井上流の「萬歳」と「祇園小唄」の2曲を披露した。古都・京都ならではの趣ある空間で鑑賞する京舞は、まさに特別なひととき。参加者たちは、美しい庭園を背景にしての優雅な舞に大満足のようすだった。
昼食は、無鄰菴からすぐの「瓢亭」で松花堂弁当に舌鼓。南禅寺境内の門番所を兼ね、南禅寺総門外松林茶店(腰掛茶屋)として400年余りの歴史を有する同店では、名物「瓢亭玉子」をはじめ、懐石料理や朝がゆといった不易流行の京料理が味わえる。
昼食後は、琵琶湖疏水などを散策しながら、京都を拠点とする観世流シテ方の本拠地である「京都観世会館」へ。同館の能舞台では、会員能楽師による例会や各種公演が定期的に開かれている。
ツアーでは、最初に「能」の歴史や装束、能面などについて会員能楽師によるレクチャーを受けたあと、昔話でもお馴染みの羽衣伝説を基にした演目「羽衣」を観賞。その後は、会場を2階に移し、実際に能と囃子の体験を行った。
能体験では、能に欠かせない扇を手に持ちながら、基本の歩き方や所作を習ったほか、囃子体験では、多くの日本人が一度は聴いたことがある独特の音色が特徴の横笛「能管」の解説をはじめ、小鼓、大鼓、太鼓といった各楽器について、それぞれ囃子方から叩き方を教わるなど、参加者は普段、なかなか味わうことのできない文化体験を満喫した。

能文化の余韻に浸りながら、ロームシアター京都パークプラザ2階にある人気のカフェレストラン「京都モダンテラス」で一息ついたあとは、日本美術を集めた「細見美術館」へ。館内には、実業家、細見古香庵に始まる細見家三代が集めた神道・仏教美術や、琳派・伊藤若冲といった江戸絵画など、日本美術のほとんどの分野・時代を網羅した作品が展示されており、学芸員案内のもと、じっくりと堪能することができる。
さらに、美術作品鑑賞後は、最上階に設けた茶室で「茶の湯」を体験。抹茶を味わったあとは、茶室からオペラ鑑賞も楽しみ、岡崎ならではの魅力がぎっしり詰まったツアーを終えた。
ツアー事務局によると、今回のモニターツアーで出てきた意見などを踏まえながら内容をより精査し、今年春から、主にインバウンド向けに日帰りツアー「文化体験岡崎」を実施していく予定という。
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