年間180日以下は妥当か? 民泊サービス 提供日数の上限設定

11回検討会のようす
11回検討会のようす

 提供日数の規制は必要か――。厚生労働省と観光庁は5月13日に10回目、23日に11回目の「民泊サービス」のあり方に関する検討会を開いた。11回目の検討会では、5月19日の規制改革会議において、年間提供日数の上限が「半年未満(180日以下)」の範囲内で適切な日数を設定する方針が示されたことを受け、「提供日数制限を設けると、ビジネスとして成り立たない」、「ビジネスとして採算を取るならば、簡易宿所の営業許可を取るべき」など意見が対立した。依然として無許可民泊が後を絶たず、状況を把握できていないなかで、果たして年間提供日数の上限という〝お約束〟は守られるのだろうか。
【松本 彩】

 一定の要件における、提供日数の制限については、これまでの検討会の中でも議論が交わされており、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、北原茂樹会長)からは、10回目の検討会の際に「民泊サービスの規制設計案に関する意見書」の中で、「30日を基本に1日当たりの宿泊人員についても条件を設けるべき」との要望が出されていた。

 同日の検討会では、北原会長から、5月9日に京都市が発表した民泊に関する実態調査の結果が報告され、市内の2702民泊施設のうち、少なくとも7割の1847施設が無許可営業を行っていることが明らかとなった。この結果を踏まえたうえで北原会長は「提供日数は何日だったら妥当なのかという議論については、事業者が提供日数を守っているかどうかを、どのように検証していくのか具体的に明記していかない限り、前には進まない」と主張した。

 規制改革会議の4日後に行われた11回検討会では、規制改革会議で示された提供日数「半年未満(180日以下)」について、構成員から「管理しきれないのではないか」、「家主居住型での180日の日数制限は妥当だが、家主不在型で日数制限となるとできなくなる」など意見が挙げられた。北原会長は、今回示された提供日数について「180日は完全にプロの領域」と述べ、改めて提供日数などを管理するうえでの、検証制度の必要性について訴えた。

 事務局からの回答では提供日数については、180日以下という方針をもとに、今後検討を進めていく予定だ。

国内宿泊旅行9.8%増、外国人宿泊者数13%に(16年度版観光白書)

 国土交通省がこのほどまとめた「2016年版観光白書」(15年度観光の状況・16年度観光施策)によると、15年の国民1人当たりの国内宿泊観光旅行回数は、前年比9・8%増の1・4回(暫定値)、宿泊数は同12・3%増の2・3泊(同)だった。今回の白書では「成長する世界の旅行市場を我が国の活力に~『世界が訪れたくなる日本』への飛躍~」をテーマに、強いインバウンド需要を日本の成長戦略や地方創生の礎にすることが重要であると捉え、諸外国の事例を参考にしながら、日本が目指すべき方向性について触れている。

 観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、国内宿泊旅行延べ人数は、同6・5%増の3億1673万人となった。増加の要因として、14年の消費税率引き上げによる落ち込みの反動増に加え、3月に開業した北陸新幹線や、9月のシルバーウイークなどによる影響が大きいとみられる。

 15年の延べ宿泊者数は同6・7%増の5億545万人泊と、初めて5億人泊を突破。そのうち日本人延べ宿泊者数は同2・4%増の4億3908万人泊、外国人延べ宿泊者数は同48・1%増の6637万人泊となり、延べ宿泊者数全体に占める外国人宿泊者数の割合が13・1%となり、初めて1割を超えた。また、15年の客室稼働率は、全国で60・5%と調査開始以来、過去最高を記録。大阪府の稼働率が85・2%と高く、現状として予約が取りにくい状態が続いている。

 観光庁の堀真之助調査室長は、日本が世界各国から訪れてもらえる観光地になるためのカギとして、「平均滞在日数を増やしていく必要がある」とコメント。また、「平均滞在日数を伸ばすためには、遠方から来てもらうことが重要」とし、今後はアメリカやヨーロッパなど遠方からの外国人旅行者の取り込みを目指す。

 なお、16年度の主な施策として、3月に取りまとめられた観光ビジョンにおいて打ち出された“3つの視点”(1)観光資源の魅力を極め、「地方創生」の礎に(2)観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に(3)すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に――を挙げ、主に20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた環境整備や、急増するインバウンドへの対策などに取り組んでいく。

今年は“ジャンプ”の年、140カ国、1500コマ予定

田川委員長(左)と見並副委員長
田川委員長(左)と見並副委員長

ツーリズムEXPO、9月22―25日開催

 日本観光振興協会と日本旅行業協会(JATA)は5月25日、東京都内で会見を開き、9月22―25日まで東京ビッグサイトで開く「ツーリズムEXPOジャパン2016」の概要を発表した。3年目の今年は “ジャンプ”の年と位置付け、世界最大級の観光イベントとしての事業基盤の確立と次ステージへの飛躍を目指す。実行委員会の田川博己委員長(JATA会長)は今回のキャッチコピー「旅は変える。人生を。世界を。」に触れ、「ツーリズム産業が人を動かし、地域を動かし、未来を変える原動力になっていきたい」と想いを語った。

 田川委員長はオリンピックイヤーの今年、20年の東京五輪に向けて日本への注目が本格化することを踏まえ、今回の開催意義を「『観光立国日本』から『観光大国日本』への道を拓く1ページになる」と述べた。ポイントとして(1)国内、海外、訪日の三位一体型の完成型を目指す(2)アジアでの旗艦イベントとして明確なポジションを確立する(3)ツーリズムレガシーの新しい芽を出す――の3点を挙げ、これを軸にそれぞれの事業を展開していくとした。

 また、見並陽一副委員長(日本観光振興協会理事長)は、「EXPOが世界の観光に関わる人々の共通課題や目的を模索、確認する場となるよう、今回はジャンプの年として大きな柱を確立したい」と意気込んだ。

 EXPOの中心事業の1つ、国際会議は昨年までの「国際観光フォーラム」から「ツーリズムEXPOジャパンフォーラム」と名称を統一。今年は「輝き続ける日本、そして世界―インバウンド4千万人時代の交流大国を目指して」をテーマに、基調講演やシンポジウムを開く。国内観光シンポジウムは「ガストロノミーツーリズムで地域を元気に」と題し、国内観光にも世界の潮流を取り入れるため、海外からの登壇者を迎える。

 出展数1500コマを予定する展示会は、国内から47都道府県、海外は140カ国・地域以上が参加する見込み。今回は国内の震災被災地やテロで落ち込んだフランスなど、需要回復のための取り組みを展開する。一般日には趣味嗜好性からの観光促進を狙い、「スノースポーツ&スノーリゾート」「道の駅」などの企画を予定する。また、交流会「JAPAN NIGHT」は、観光大国日本を象徴するイベントとして五街道の拠点となる「日本橋」で行う。

 なお、今年の入場者数目標は18万5千人。

 一方、来年以降のEXPOについて田川委員長は2年ごとに事業設計をする方針を示し、今後、日本が観光大国を目指すうえで「EXPOはツーリズム産業だけのものではなく、他産業との連携を広げていかなくてはならない」と言及。そのなかで、商談会はよりBtoBを強化していくことが必要不可欠だとした。

展示会向けパンフレット

 先月、旅館100選台湾プロモーションを実施した。詳細は次号にゆずるが、文具・ギフトの見本市「ギフショナリー台北」では、旅館100選の展示小間を構え、18旅館のパンフレットを並べた。
 肌感覚だが、大勢の来場者が最初に手にしたのは新潟県・ホテル双葉のパンフレットだった。全面露天風呂の写真と中央に「二十八湯」の文字。見た目の印象が強かった。デザイン重視は単体で美しい反面、並べて俯瞰すると埋もれる欠点もある。
 来場者への案内時は、じゃばら折りでさっと広げられるものが一番。素早く全体像を見せることができる。逆に一般的な中とじは使いにくい。
 書くと当り前だが、そうでないものが多かった。展示会や対面説明を意識したパンフレット制作を考えてもいいのでは。

【鈴木 克範】

日旅新社長に堀坂明弘氏

堀坂明弘氏
堀坂明弘氏

 日本旅行はこのほど6月30日付で、堀坂明弘取締役が新社長に就任する人事を決めた。丸尾和明社長は、代表権をもつ会長となる。

 堀坂 明弘氏(ほりさか・あきひろ)1979年3月慶應義塾大学経済学部卒業後、日本国有鉄道に入社。87年4月に西日本旅客鉄道に入社し、財務部経理課副長に就任。2008年6月執行役員総務部長、12年6月取締役兼常務執行役員総務部長、13年6月日本旅行取締役、14年6月西日本旅客鉄道取締役兼常務執行役員鉄道本部副本部長、鉄道本部営業本部長などを経て、16年6月日本旅行代表取締役社長兼執行役員に就任予定。
 
 
 

宿泊客数1割増へ、全国宣伝販促会議開く(来年4―6月 四国DC)

四国DC成功に向け機運を高めた
四国DC成功に向け機運を高めた

 JRグループと四国4県、四国ツーリズム創造機構などが共同で来年4―6月に実施する大型観光キャンペーン「四国デスティネーションキャンペーン(DC)」に向け、全国のJR関係者や旅行会社など約500人を集めた「全国宣伝販売促進会議」が5月11日、香川県高松市のサンポート高松などで行われた。

 四国DC実施は14年ぶり。「しあわせぐるり、しこくるり。」のキャッチフレーズのもと、周遊型観光などを提案し、全国からの誘客をはかる。

 冒頭、四国ツーリズム創造機構の松田清宏会長(JR四国会長)は「DCが決まってから、四国各地で新しい素材の開発や磨き上げに力を入れてきた。682の観光素材を用意し、このうち72が新しい素材。秋にはプレDCを実施し、JR大阪駅でPRイベントも行う。世界に向けて四国の魅力を発信していきたい」とあいさつした。

4県の知事らが魅力PR
4県の知事らが魅力PR

 観光プレゼンテーションでは、4県の観光情報のほか、DCに合わせ来年4月にデビューする観光列車「四国まんなか千年ものがたり」などPR。新観光列車は土讃線の多度津・琴平(香川)―大歩危(徳島)間で運行。「おとなの遊山」をコンセプトにした和のテイストの車内には、アテンダントが乗車し、食事サービスや観光案内など充実のおもてなしを行う。

 高知県では来年3月、高知城横に「県立高知城歴史博物館」がオープン。土佐山内家伝来の美術工芸品など歴史的に貴重な資料を多数展示する。

 会議後には、松田会長とJR四国の泉雅文社長、徳島県の飯泉嘉門知事、香川県の浜田恵造知事、愛媛県の中村時広知事、高知県の尾﨑正直知事による記者会見が行われた。

 DC期間中の数値目標について松田会長は「宿泊客数10%増を目指したい」と述べた。飯泉知事は吉野川クルーズや大歩危ラフティングなどを挙げ、「徳島はクルーズを提案したい」。浜田知事は「国内外のアートファンを引き付ける瀬戸内アートや食を楽しんでほしい」。中村知事は別子銅山や南予地域、しまなみ海道などを挙げ、「個性豊かな4県が結び付くことで四国観光に厚みが出る」。尾﨑知事は「高知城歴史博物館は6万点を超える山内家の資料などを展示する。来年3月からは志国高知幕末維新博も行う」と、それぞれPRした。

39カ月ぶりに減少、4月の外客売上高(日本百貨店協)

 日本百貨店協会がこのほど発表した2016年4月の外国人観光客の売上高・来店動向によると、調査対象の外国人観光客観光客誘致委員会委員店84店舗の外国人観光客の総売上高は前年同月比9・3%減の約179億9千万円と13年1月以来39カ月ぶりのマイナスとなった。

 外国人旅行者向け消費税免税制度で対象となる消耗品の売上総額は同56・1%増の約52億2千万円。消耗品を除く一般物品売上高は、同22・5%減の約127億7千万円。購買客数は同7・8%増の約26万人。1人当たりの購買単価は、同15・9%減の約6万8千円。

 免税手続きカウンターの来店国別順位は1位が中国本土で、2位が台湾、3位が香港、4位が韓国、5位がタイ、6位がシンガポールと続く。

 外国人観光客に人気の商品は1位婦人服飾雑貨で、2位化粧品、3位婦人服、4位食品、5位家庭用品となった。

効果的に日本PRへ、国際交流基金と相互連携(JNTO)

安藤裕康理事長(左)と松山良一理事長
安藤裕康理事長(左)と松山良一理事長

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)と国際交流基金(JF、安藤裕康理事長)は5月20日、「国際文化交流及び訪日旅行の促進に向けた相互連携に関する協定」を締結し、共同で記者発表を行った。今後JFの国際文化交流事業とJNTOの訪日旅行促進事業を連携し、より効果的に海外で日本をPRしていく。

 冒頭、JNTOの松山理事長は、3月30日に決定した観光ビジョンについて触れ、「JNTOはインバウンドの旗振り役として、インバウンドの果実を全国津々浦々にまで届けられるよう、観光の質の向上に努めていきたい」と決意を新たにした。

 JFは1972年に特殊法人として創設され、世界における日本文化の紹介と、相互理解の推進に取り組んできた。近年では〝文化のWA(和・環・輪)プロジェクト~知り合うアジア~〟として東南アジアとの交流の強化をはかっているという。安藤理事長はこのほどのJNTOとの連携について、「従来からの基金の強みである、日本の文化芸術の紹介と海外での日本語教育と、JNTOが戦略的に取り組んでいる若年層の訪日促進などの分野で有機的な連携をめざす」とし、お互いの強みを活かし、世界における日本への関心をより高めていきたいと語った。

 今回の連携では、(1)JFによる日本文化紹介などの国際文化交流事業と、JNTOによる対日関心層の訪日旅行促進(2)JFによる海外での日本語教育普及事業と、JNTOによる訪日教育旅行促進(3)2020年東京オリンピックとパラリンピックに向けての、国際文化交流と訪日旅行の促進に架かる連携協力――の3つが柱となっている。今年度の連携事業としては、9月にイギリス・ロンドンで開かれる「ロンドン・デザイン・ビエンナーレ」で、日本の存在感を高めるため、JFは日本公式主催者として、グッドデザイン賞などを受賞しているアーティスト・鈴木康広氏を派遣。同ビエンナーレにおいて、オブジェクト製作やアニメーション製作などを予定している。また、JNTOは欧州からの誘客強化の一環として、メディアを通じて、日本のアートやデザインをめぐる訪日旅行の魅力を発信していく。そのほか国際文化交流と訪日旅行の促進のために、ロンドン・ジャパン祭り(9月)や、世界各地で随時開かれる日本映画上映会・テレビ番組放映でも連携をはかっていく。

 日本語教育普及事業と訪日教育旅行促進のための取り組みとしては、9月にバリ島で東南アジア初開催となる「日本語教育国際研究大会」において、JFは海外における日本語の質をより一層高めるため、「JFにほんごネットワーク(通称『さくらネットワーク』)」を通じて、開催経費の助成を行っている。JNTOでは、訪日教育旅行者6万人達成に向け、同大会にブースを出展し、各自治体からの情報提供を行っていく。また合せて、JNTO本部に4月から訪日教育旅行の一元的窓口を設置し、訪日教育旅行の認知度向上をはかっている。

 さらにリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック期間中に、リオデジャネイロで美術・映像・公演事業の実施や、会期中設置されるTOKYO 2020 JAPAN HOUSEでの、次の開催地〝東京〟の観光魅力の発信など、定期的に各本部同士で意見交換を行い、国際文化交流の促進と、訪日旅行拡大を目指す。

LCC8社が同盟、乗り継ぎ予約を一括提案(バリューアライアンス)

設立発表会のようす
設立発表会のようす

 アジア太平洋地域のLCC8社は5月16日、世界初のLCCの多国籍同盟「バリューアライアンス」を設立した。世界の3分の1のエリアを網羅する加盟航空会社の路線ネットワークを生かし、最適な乗り継ぎルートや運賃などを一括提案していく。

 加盟会社はバニラエアとセブパシフィック航空、チェジュ航空、ノックエア、ノックスクート、スクート、タイガーエア・シンガポール、タイガーエア・オーストラリアの8社。8社で東南アジアと北東アジア、オーストラリア地域の160以上の就航地を有し、15年の利用者は4600万人以上という。

 バリューアライアンスはエア・ブラック・ボックス社(ABB、英国)が開発したシステムを導入。これまでは乗り継ぎで複数の航空券を購入したい場合、各社それぞれのサイトで航空券の予約、決済が必要だったが、今後はいずれかの加盟会社のサイトから出発地と最終目的地を指定するだけで、最適な便や運賃を選択し、ワンストップで予約、決済が可能になる。同サービスは数カ月以内に提供を開始する予定。

 今回の同盟についてバニラエアの五島勝也社長は、「バリューアライアンスが導入する技術で、当社が運航していないルートでもお客様は一度の予約・決済で乗り継ぎ手配を完了できるようになり、利便性が大きく向上する」と期待している。

風評被害を払拭へ、東京で元気な九州PR

九州の19自治体が「今こそ九州へ!」と観光プロモーション実施
九州の19自治体が「今こそ九州へ!」と観光プロモーション実施

 福岡県福岡市をはじめとした九州地方の19自治体は5月20日に東京都内で、「WITH THE KYUSHUプロジェクト 今こそ九州観光!」のプロモーションを行った。熊本地震の直接被害がない地域でも、観光客や宿泊客のキャンセルが相次いでいることから、元気な九州地方各地の現状を紹介すると共に、風評被害を払拭し、来訪を呼びかけた。

 各自治体を代表し、高島宗一郎福岡市長は、「自粛をすることが復興につながることは決してない。観光は命のように大事な生活のすべてなので、支援の1つとして九州に遊びに来てほしい」と述べた。

 来賓として登壇した観光庁の加藤庸之観光地域振興部長は、「観光は経済的な影響が大きいが、それに加えて人の交流も大切。国内外から九州へ行くことで、地元の人が笑顔を取り戻し、エールを送ることにもなる」と話し、「地元の人と協力し連携して、1日でも早く九州の復興に役立ちたい」と強調した。

 会場には九州に縁のあるタレントを呼び、終始和やかな雰囲気で行われ、笑い声が飛び交っていた。また、それぞれの自治体の代表らが特産品やイベント、観光名所などを紹介し、元気な姿を見せていた。