日本一の星空ナイトツアー、冬季も企画、3万人集客へ(長野県・阿智村)

ブースで「ウインターナイトツアー」を再現
ブースで「ウインターナイトツアー」を再現
熊谷秀樹村長
熊谷秀樹村長

 「日本一の星空」のブランド化に取り組む長野県・阿智村(熊谷秀樹村長)は12月3日から17年3月31日まで、ウインターナイトツアーを実施する。12年8月から「天空の楽園 日本一の星空ナイトツアー」を開始。77日間で6535人を集客した。2年目は前年比130%増の約1万5千人、5年目の今夏は約10万人が参加している。今年は冬季にも星空を見てもらおうと、「ウインターナイトツアー」を計画した。

 11月11、12日に東京ミッドタウンで開いた「TREND EXPO TOKYO2016」内に展示ブースを出展。「ウインターナイトツアー」を再現し、企画の演出などを手がけるNAKEDが同ツアーの魅力をいち早く体験できる機会を提供した。

 11日には、熊谷村長が出席し、「長野県の最南端に位置する阿智村は人口6600人の小さな村。どのようにブランディングしていくかが喫緊の課題であり、なんとか観光で地域を盛り上げたい」とあいさつ。現在、年間130万人の観光客が訪れるようになった取り組みを紹介した。「昼神温泉には年間70万人がお越しになられているが、温泉地だけでは観光客の維持は難しい」と考え、「色々なところを見て、体験してもらう滞在型観光に取り組んできた」と話した。2006年に環境省から「星が最も輝いて見える場所」に認定されたことを受けて、「この冬も新しい企画をたくさん用意している。多くの人に実際に阿智村に来ていただき、きれいな星空を体験してほしい」と語った。今冬は、同ツアーに3万人の集客を目指す。

カーシェアと高速バス、連携へ社会実験を開始(国交省)

 国土交通省は11月15日、「高速バス&カーシェアリング社会実験」をスタートした。高速バス停周辺の駐車場にカーシェアリング車両を配備。高速バスとカーシェアリングの連携を強化することで、高速バス利用者の行動圏の拡大による観光振興や地域振興の可能性を検証する。

 実験に参加するのは遠州鉄道(斉藤薫社長、静岡県浜松市)とタイムズ24(西川光一社長、東京都千代田区)。

 行動範囲の拡大効果と、利便性向上効果、高速バス&カーシェア導入時の課題などを検証する。背景には、「カーシェア利用者の急増」と「レール&カーシェアの普及」がある。

 利用者はあらかじめカーシェアリング車両を予約し、高速バスに乗車。浜松インター駐車場で車を受け取り、観光地に出かける。浜松市には17年NHK大河ドラマ「女城主直虎」の主人公井伊直虎が出家した龍潭寺、出世城といわれる浜松城など史跡、城跡をはじめ多くの観光資源がある。同省は、浜松市で両交通手段の連携を強化させることで、高速バス利用者の行動圏が拡大し、観光振興などにつながることを期待する。

 同実験は2017年10月31日までの期間を予定している。

訪日客2000万人突破 ― 外国人旅行者を「穴埋め」と考える状況

 2016年の訪日外国人客数が10月30日に、累計で2千万人を超えた。1千万人を達成したのが13年のことで、わずか3年で2倍を大きく超えることになる。このままのペースで推移すると、今年は2400万人前後までいきそうだ。今後は、4年後の20年に4千万人という目標に向けて、国を挙げて突き進んでいくことになる。

 一方、11月8日に米国大統領選挙の投票、開票が行われ、共和党のドナルド・トランプ氏が劣勢を覆し、大統領就任を確実にした。今年6月に英国で行われた国民投票でEU離脱を決めたことに続く、世界的に衝撃を与える選択となった。どちらも僅差ではあるが、グローバリズムから、内向きのナショナリズムへの転換を映し出した。とくに欧米では移民の受入れや自由貿易などを推し進める一方で、さまざまな軋轢も生まれ、EU離脱や、トランプ氏勝利といった現象を生み出した。

 民主党のヒラリー・クリントン氏ではなく、トランプ氏が米国大統領に就任することで、世界の秩序や枠組みは、大きく変化していくだろう。

 日米同盟を基軸とした安全保障のあり方も、大きく変わる可能性がある。12月に山口県を訪れるロシアのプーチン大統領との北方領土交渉にも少なからず影響を与える。尖閣問題、あるいは朝鮮半島の不安定化も、今回の米国大統領選挙の影響を強く受けることは間違いない。

 今はインバウンド拡大で沸く日本であるが、移民問題についても今からしっかりと議論し、対策を考えなければ、いずれ国民を二分する大問題になっていくことが予想される。

 訪日外国人客が2千万人を突破した日本だが、一時期大ブームとなった“爆買い”は落ち着きを見せ始めている。また、東京や大阪などで異常なほど高止まりをしていたホテルの客室稼働率も僅かだが下降傾向にある。全日本シティホテル連盟が発表している客室利用率調査では、8月の東京は前年同月比4・7ポイント減の86・4%、大阪は3・6ポイント減の89・7%と、ともに高水準ではあるが90%台を割っている。

 都心部では百貨店の免税店売り場を拡張し、今もビジネスホテルの建設ラッシュが続いている。だが、ブームを追いかけている最中に、社会の動きが急展開するのが世の習いだ。日本のバブル経済の崩壊を目の当たりにしてきた経験から、異常な沸き上がり方をしている産業や現象を見るにつけ、「こんなお祭り騒ぎはいつまでも続くはずがない」という感覚が、哀しくも、染み付いている。

 懸案の民泊問題も、埋めることができないのに、建物を建て続ける建設業や不動産業、そして不動産賃貸業者が「穴埋め」的に、訪日外国人でお金儲けをしようという構図である。けれど、それは人口減少に加え、所得が増えないことや、休暇制度がまったく思うように進まないために行き詰った観光業界と同じである。縮小しつつある旅行市場の「穴埋め」として外国人観光客を受入れている状況と、なんら変わりない。もちろん、多くの外国人観光客が日本を訪れてくれるのはありがたいことだ。しかし、それら外国人観光客を、国内問題の行き詰まりの「穴埋め」的に考えて、国が観光政策を進めているのなら、民泊問題でもそうだが、やがて大きな軋轢や新たな問題を生むだろう。

(編集長・増田 剛)

社内カンパニー制導入、経営体制 大きく舵切り(HIS)

12年ぶりに社長に復帰した澤田氏(左)と、平林氏
12年ぶりに社長に復帰した澤田氏(左)と、平林氏

 HIS(エイチ・アイ・エス)は11月1日から新たな経営執行体制を敷いた。澤田秀雄氏はHISの社長に復帰。会長を兼務し、最高経営責任者(CEO)となる。現社長の平林朗氏は副会長に就き、新会社HISホテルホールディングスの社長や、新たに設置したM&A本部で本部長などを兼務する。多くの事業分野を抱え、小回りが利かなくなった経営体制を再編した。社内カンパニー制により決済速度を上げ、迅速な事業展開や、世界展開、次代の経営者育成もはかる。
【平綿 裕一】

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澤田氏が社長に復帰

 10月28日に行われた会見で、澤田新社長は「社内カンパニー制を導入し、権限と責任をしっかりと下に落とす」と強調した。多岐にわたる事業領域を分類。権限と責任を明確化し、素早い意思決定が行える環境を整えた。グループ全体の戦略の策定と実施を行う経営構造も創出。旅行事業を軸に置いた経営体制から、大きく舵を切る。

 澤田氏は「総合旅行会社はすでに古い」と持論を展開。数10年間続けてきた経営体制を再編し、世界で戦える経営体制を構築した。組織は大きくコーポレート部門(人事・総務・内部監査など)と旅行事業部門の2つに分けた。

 コーポレート部門は「連結グループ本部」の業務執行部署に位置付ける。旅行事業部門は「HISJAPAN」、インバウンド事業は「HIS訪日事業部門」としてそれぞれ、いわゆる事業子会社とする。連結グループは「海外の旅行事業」「テーマパーク事業」「ロボット事業」など多数の事業領域を分類し、各事業部門に経営執行体制を再編した。

 今後は「連結グループ本部」を常設。澤田氏と平林氏を含む業務執行取締役6人で構成する。連結グループの戦略策定などの重要事項を決定する「連結グループ戦略会議」を主宰。これによりグループ全体の統制、選択と集中、事業部門間の整合性をはかっていく。

 一方、新たに設置したM&A本部で、M&Aを主導し企画・検討・実施する。国内外問わずIT分野を中心に、500億円規模までを目標とした。これまでは社外からの引き合いが多かったが、今後は能動的に活用。拡大戦略の1つに据える。

 HIS100%出資の新会社、HISホテルホールディングスは(1)ホテルマネジメント契約の受託(2)M&Aの実施(3)自社による物件の取得――を通じ、今後5年間で100軒の運営を目指す。国内外に点在する既存のホテルも統合する構え。

 今回の再編は、ハウステンボスのグループなど本来の旅行事業以外が傘下に入り、連結業績に占める割合が増加したことが内部の主因となる。外部要因は国内外のオンライン旅行会社(OTA)の台頭や訪日需要の増加、異業種の参入による業界構造の変化などがある。

 とくに旅行事業は「今までの成功体験を捨ててゼロから見直す必要がある」(平林氏)とし、新たにグローバルオンライン事業を創出。「澤田と私で力を入れてやっていく」と強調した。

 2004年に一線から退いていたが、12年ぶりに社長の座に復帰した澤田氏。経営者育成については「今後3年から5年で30―40代にバトンタッチしていきたい」とし、新体制によって「将来の経営者が育ってほしい」と語った。

No.446 座談会「貸切バスの安全安心を」、業界の統一したコンセンサスへ

座談会「貸切バスの安全安心を」
業界の統一したコンセンサスへ

 2016年1月15日の軽井沢スキーバス事故を受け、利用者は貸切・高速バスに対する安全安心への関心を高めている。日本バス協会(上杉雅彦会長)は、11年から貸切バス事業者安全性評価認定制度を始め、協会会員に取得を促し、利用者に安全なバスの周知をはかってきた。一方で、認定制度が安全安心に資する制度として利用者に充分に浸透していない。これらを踏まえ、バス業界、国土交通省、旅行業界の各リーダーらが集まり、貸切・高速バスの安全安心、今後の展望について語り合った。

【司会進行=本紙社長・石井 貞德、構成=平綿 裕一】

 
 
 
【座談会参加者】
鶴田 浩久 氏 国土交通省自動車局旅客課長
富田 浩安 氏 日本バス協会貸切委員会委員長(日の丸自動車興業 代表取締役社長)
加藤 信貴 氏 日本バス協会貸切委員会副委員長(名鉄観光バス 代表取締役社長)
平野 利晃 氏 JTB国内旅行企画常務取締役事業部長

 ――貸切バス事業者安全性評価認定制度について、日本バス協会貸切委員会の富田委員長から説明をお願いします。

■富田:認定制度ができたきっかけに、2007年に大阪府吹田市で起きた貸切バスの重大事故がありました。それまではどこかで「どのバスに乗っても安全だ」と利用者も我われも思っていました。しかし、事故は実際に起きました。

 2000年の旅客自動車運送事業の規制緩和のあとで、かなり事業者が増えていました。当時は、事業者の間で安全の確保や認識についてばらつきがあったのです。利用者により安全なバスを選んでもらうため、認定制度は11年に始まりました。そのあと、12年に関越自動車道の高速ツアーバス事故が起きますと、運転者の過重労働防止のため、交替運転者の配置基準などがガイドラインで定められました。

 ――制度の基準や現状を教えてください。

■富田:我われは、(1)安全性に対して法令の遵守をきちんとしているか(2)事故や違反がないか③安全に積極的な取り組みをしているか――などを総合的に評価しています。基準を満たせば星の数(最高3つ)で認定、公表しています。有効期限は2年で、更新制となっています。認定事業者はその証である「SAFETY BUS」のシンボルマークを車両などに貼付できます。

 認定事業者は、16年10月現在では、全国1050事業者(日本バス協会会員の43・2%)、2万3588両(会員保有車両数の64・4%)となります。

 軽井沢スキーバス事故を受けて、旅行会社が認定事業者を使う流れが出ています。協会内の認定事業者は14年度から比べると、100%以上の増加をみせています。

 ――認定制度の課題を、行政と旅行会社の立場からお話いただけますか。まずは国土交通省自動車局の鶴田課長からお願いします。

■鶴田:軽井沢スキーバス事故を契機に、消費者庁が大々的に貸切バスに関する消費者の意識について調査を行いました。これによると、観光ツアーで貸切バスや高速バスを利用したことがある2500人のうち、およそ4分の3(74・1%)は「SAFETY BUS」マークや制度を知らないと答えました。マークと制度の両方を知っている消費者は、5・6%にとどまりました。

 一方で、9800円のツアーに参加しようした場合に、「同じ内容でより安全に留意したツアーに追加でいくら支払えますか」という質問がありました。1番多い回答は1千円(28・6%)でした。大事なところは、1千円以上追加で支払う人は、6割以上(63・6%)いたということです。

 つまり、消費者は1―2割追加で支払っても安全を確保する意向があるにも関わらず、4分の3は制度やマークを知らないということになります。このギャップを埋めることが必要だと思います。

 ――旅行会社からJTB国内旅行企画の平野常務はどのようにお考えでしょうか。

■平野:JTBは1千社強のバス事業者と契約していますが、昨年の時点で認定事業者は半数ほどでした。今年9月の認定によりさらに増えてはいますが、教育旅行も含めて、ピーク時に認定事業者のみでお客様のニーズを吸収しようとすれば、まだ一定の限界があると感じています。

 また、現状では保有車両の多い、複数の事業者が認定を失えば、認定事業者のみでの手配はかなり厳しい部分があります。

 1つの課題として、バスの安全やサービス面で、お客様は選択する基準を持ち合わせていないところだと思います。どうしたらお客様が選びやすいのかというかたちを、バス事業者と旅行会社の両業界で考えていかなければいけません。

 ――これらを踏まえて、協会として認定制度の課題や、対策などお話下さい。貸切委員会の加藤副委員長からお願いします。

■加藤:個々のお客様だけでなく自治体や学校関係者、旅行会社などに携わっている人の認知も少ないと感じます。周知活動をただ漠然と行うのではなく、ローラー式に自治体や学校関係者、旅行会社らに対して、再度周知をはかる必要があります。ここは、地道な努力をしていく以外に方法はないと考えています。…

 

※ 詳細は本紙1650号または11月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

訪日外客数2千万人に、3年で2倍、20年4千万人へ

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 観光庁は10月31日、訪日外国人旅行者数の累計が30日時点で、2千万人を突破したことを発表した。その後日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が独自に推計した結果、30日までの累計数は、2005万人に上り、2013年の1千万人突破から、3年で2倍の数字を達成した。

 今回、訪日者数が2千万人を突破したものの、観光大国フランスの年間8千万人以上という数と比較すると、まだまだ遠く及ばない状況だ。政府は、「明日の日本を支える観光ビジョン」において、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる20年に、訪日者数4千万人を目標に掲げている。現在、訪日者数の大部分が、アジア周辺地域が占め、景気減退や関係悪化などが発生した場合、訪日者数に直接影響を及ぼす可能性もある。残り4年を切り、アジアのみならず欧米からの訪日客をどこまで伸ばすことができるかが、目標達成のカギとなる。

 また、消費額を増やすことも重要だ。16年7―9月の訪日外国人旅行消費額は、9717億円と19四半期ぶりにマイナスとなった。中国人観光客による爆買いが下火になりつつあるなかで、前年に比べ、宿泊料金や飲食費の構成比が拡大しつつある。

 今後、地方への分散も視野に入れつつ、各地がその場所に長く滞在してもらうために、観光資源の磨き上げや、PR方法などに工夫を凝らしていくことが、20年に向けた、新たな一歩となるだろう。

【松本 彩】

四季と伝統を感じる旅、来春「四季島」運行へ(JR東日本)

四季島イメージ(提供:JR東日本)
四季島イメージ(提供:JR東日本)

 JR東日本は2017年春から、新たなフラッグシップに位置付ける「TRAIN SUITE(トランスイート) 四季島」の運行を始める。「四季島」は日本の古い国名「しきしま」をもとに命名。美しい四季と伝統を感じながらの旅を連想させ、時間と空間の移り変わりを楽しむ列車という想いを込めている。車内デザインは「和」を基調として和紙と漆、金箔のほか、沿線ゆかりの工芸品を使用した。

 上野駅を出発し日光と、函館、洞爺、青森、新津などを周り、上野駅に戻る3泊4日のコースなど3コースを設定。出発駅になる上野駅構内には、乗車客専用のラウンジ「プロローグ四季島」を新設する。また1泊2日コースで立ち寄る長野県の姨捨駅(おばすて)に夜景を楽しめるバーを整備するなど、新しい沿線の魅力も用意する。
(7面に関連)

 同社で17年5―6月出発分を販売したところ、募集件数187件に対し平均倍率6・6倍の1234件の応募があった。また、7―8月出発分では募集件数153件に対して、平均倍率6・2倍の941件の応募があり、運行前から非常に注目度が高い。

 詳しくは専用サイト(https://www.jreast.co.jp/shiki-shima/)まで。

姨捨駅整備イメージ(提供:JR東日本)
姨捨駅整備イメージ(提供:JR東日本)

ネーミング

 「ジュエリー・アイス」という言葉を最近聞いた。北海道の十勝川河口で厳冬期にだけ見られる氷塊だ。陽を浴びて美しく輝く氷は、昔から時期が来るとそこにあったはず。だが注目されたのは、数年前から。地元写真家の命名がきっかけだ。

 見ごろを迎える京都の紅葉。実相院の「床(ゆか)もみじ」も想像ふくらむネーミングだ。学生のころ、京都へ通ったが、そんな素敵な光景があるとはつゆ知らず。気になり記事検索サービスで調べたら、初出は06年だった。今夏は言葉に誘われ、「みどり」の方を見てきた。

 冬の金沢で、モノトーンの雪景色に映える群青色の壁。当コラムを書きながら、この美しさが伝わるいい名前がないかなと思う。名づけを待っている風景や場面はきっとあります。

【鈴木 克範】

正社員での採用率17・9%、早期退職と向き合う、PBL型卒論で就業力養成を

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香取幸一教授
香取幸一教授

 JATA研修・試験委員会は9月23日に行われた、ツーリズムEXPOジャパン2016において、「入社後の早期退職にどう向き合うか~ベテラン人事担当者が本音を語る~」と題し、ツーリズム・プロフェッショナル・セミナーを開いた。第1部では玉川大学観光学部長の香取幸一教授による基調講演「大卒正社員の3年以内の早期退職の実態とその対応策」が行われた。 

 近年、旅行業を希望する学生の数は年々増加している。若年層の採用率では、16業種中、第2位(生活関連サービス業、娯楽業)の位置につけており、一見採用率が安定している業界であるように思われる。ところが、産業別雇用形態の実態で見ると、正社員での採用率は、16業種中11位(17・9%)と、ほとんどの場合が、正社員以外での採用であることがわかる。

 早期退職者の主な退職理由として、若年労働者全体では、「仕事が自分に合わない」という理由が3位に上がっているのに対し、大卒者では「仕事が自分に合わない」が2位、「ノルマや責任が重すぎる」が5位と、業務に関連する退職理由が2つも入っているのが現在の状況である。このような現状に対して、企業側は入社後の、人事施策の一環として社員研修を行い、社員の定着に向けて施行錯誤しているが、入社後3年以内の退職が後を絶たない状況が続いている。

 香取教授は、入社後3年以内の早期退職が相次ぐ原因として、「内定を得てからの学業が、卒業要件を満たすための消化試合のようになっていることが問題である」と指摘。大学側として、卒業生の質の保証をはかるべく、内定取得後に就職先企業と連携し、内定者研修も兼ねたプロジェクトベースドラーニング(PBL、問題発見・解決型学習)型の卒業論文を導入し、在学中に就業力の養成に取り組むべきであるとし、「就活中に行った企業研究は、自分にとって都合のいいことだけを調べている傾向が強いが、PBL型卒業論文では、企業・大学・学生とでテーマ設定を行うため、企業の本当の姿が見えてくる」と改めてPBL型卒業論文の必要性について語った。

 第2部ではモデレーターをジェイアール東海ツアーズ社長の吉田修氏が務め、JTB、阪急交通社と、名鉄観光サービスの採用・人事担当者を交えたパネルディスカッションを行った。

指宿で地熱発電講演会、温泉枯渇や温度低下など危惧(泉都指宿の温泉を守る会)

多くの観光関係者や市民が詰めかけた
多くの観光関係者や市民が詰めかけた

 地熱発電開発問題で揺れる鹿児島県指宿温泉で、同事業を推進する指宿市に対し、事業の白紙撤回を求める「泉都 指宿の温泉を守る会」(会長=下竹原啓高指宿白水館社長)が11月1日、温泉専門家を招いての「地熱発電開発事例講演会」を指宿白水館敷地内の薩摩伝承館で開催した。

 守る会は市内の複数の旅館・ホテル、観光業者などで結成。「温泉は旅館、観光業者などにとって生命線。地熱発電事業の拙速が温泉の温度や自噴噴出量、噴霧量の低下、泉質劣化と枯渇につながりかねない」と訴え、市が計画する山川ヘルシーランドでの新規試掘、市が承認したバイナリー発電7件に対する許可取り消しと、事業の白紙撤回を求めている。

 市では拡大する反対運動の事態を重く見て、10月27日に豊留悦男市長が「計画凍結」を表明したが、守る会では事業の完全撤廃を目指して運動を強化している。

 講演会開催は、地熱発電に関する十分な知識と情報を得ることが目的。全国で拡大する地熱発電計画にも、警鐘を鳴らしたい考えだ。当日は市の担当者や旅館、観光業者、市民など反対、賛成両派の関係者約130人が参加し、専門家の講演を聞き、意見を交わした。

 講師では、日本温泉協会会長の大山正雄氏が「温泉と地熱発電との共生について」と題して基調講演。そのあとに、同常務理事で群馬県草津温泉の草津観光協会会長の中澤敬氏と同理事の遠藤淳一氏(福島県高湯温泉旅館協同組合理事長)が、それぞれ温泉地での地熱発電問題などについて説明した。

 大山氏は「マグマで水が温められ地上に湧出したのが温泉で、比較的浅いところで循環している」と温泉メカニズムを説明。「地下深度で温泉を取る地熱発電は、温泉の枯渇化や温度を下げる要因になる」と指摘した。

 具体的な事例として、経年的に熱水流量が増加し、蒸気流量が減少して発電能力が減衰する岩手県澄川地熱発電所や、鹿児島県山川発電所での温度低下と発電電力量減衰の経年変化、鹿児島県霧島地熱発電所建設前後のえびの高原噴気地熱地帯の変化などを紹介した。

 神奈川県湯河原温泉では温泉開発によって全体湯量は増えたが、各源泉の湧出量が減少したという実例を挙げ「一定量しか生産できない温泉を過剰に使えば問題が生じる」と強調した。

 そのうえで、「指宿で地熱発電なら名物の砂蒸し温泉も心配」と危機感を表明。指宿の地熱発電収支でも「売電収入より維持管理と人件費が上回り見合わない」と指摘。「温泉は観光と土産、農漁業などさまざまな産業が関わるが、地熱発電は無人化をまねき、地域発展への貢献が見込まれない」と断定した。

 中澤氏は過去に計画された地熱発電を中止させた経緯を紹介。「地熱発電は再生可能ではない。地下エネルギーを取ることは開発だ」と主張。「地域が地域の保護のために反対していくことが大事」と強調し、「指宿は全国有数の温泉地で、他の温泉地に与える影響も大きい」と訴えた。

 遠藤氏も「温泉は日本の宝。大事にしてほしい」と述べた。