22年度観光庁予算、46%減の222億円計上 国内交流需要を掘り起こす

2022年1月5日(水) 配信

22年度の観光庁予算は総額1426億円となった

 政府は昨年12月23日(木)、2022年度予算を閣議決定した。Go Toトラベル事業予算を除いた観光庁関係予算額は、前年度比46%減の222億5300万円(21年度予算は408億7400万円)。21年度経済対策関係予算の1203億円を加え、同35%増の総額1426億円を計上した。「新たなGo Toトラベル事業」や「第2のふるさとづくり」などで国内交流需要を掘り起こし「地域の足腰強化を支援し、稼げる地域を作る」考えだ。

 国際観光旅客税(出国税)の規模は、国際民間航空機関(ICAO)による航空需要の回復推計値をもとに、同庁と税務当局が協議を行い、充当額を同69%減の80億9500万円とした。

 東北の復興枠は、従来の「福島県における観光関連復興支援事業」に同66%増の5億円を充当。

 また、「ブルーツーリズム推進支援事業」の2億7000万円を新規予算に加え、同156%増の総額7億7000万円となった。事業例として、老朽化した海の家の改修や、ブルーフラッグ認証への支援を通じ、海の魅力を発信するブルーツーリズムの推進をはかる。

観光産業の回復へ、交流・変革の4本柱

 概算要求では「新たな旅のスタイル」、「魅力的な滞在コンテンツ」、「インバウンド受入環境整備」の3本柱を示していた。

 22年度予算の決定概要では、①国内交流の回復・新たな交流市場の開拓②観光産業の変革③交流拡大により豊かさを実感できる地域の実現④国際交流の回復に向けた準備・質的な変革──の4本柱に変更した。

①国内交流の回復・新たな交流市場の開拓

 国内交流については、「ワクチン・検査パッケージ」を活用し、平日への旅行需要の分散化対策を講じながら、「新たなGo Toトラベル事業」の実施で観光需要の喚起をはかる。Go To予算には、経済対策予算(20年度第3次補正予算計上額の2685億1700万円を含む)の1兆3238億5300万円を充てた。

 また、前年に引き続き、ワーケーションの推進や、新たな国内需要の掘り起こしとして「第2のふるさとづくりプロジェクト」の推進を行うことで、新たな交流市場を生み出す。

②観光産業の変革

 顧客管理システムや、非接触型チェックインシステムの導入促進などの取り組みにより、デジタル技術を活用した観光サービスの変革をはかる。このほか、新たなビジネス手法の導入支援を通じて、観光産業の高付加価値化を目指す。宿泊施設のバリアフリー改修支援などによる安心・安全の確保にも努める。

③交流拡大で豊かさを実感できる地域の実現

 前年に引き続き宿泊施設の改修や廃屋撤去に対する支援で、宿泊施設を核とした観光地の再生を行う。このほか、地域の幅広い関係者と連携をはかり、地域の稼げる「看板商品」を生み出し、高付加価値なコンテンツ創出を促進する。

 また、オーバーツーリズムの防止などの観点から、持続可能な観光に関する取り組みを強化していく。

④国際交流の回復と準備・質的な変革

 前年に引き続き、観光施設などでの多言語化や、WiーFi整備、キャッシュレス決済導入など、国際交流の回復に備えた受入環境の整備を進める。

 訪日客の受入環境整備緊急対策事業と、観光DX推進緊急対策事業には、20年度第3次補正予算を計上している。

 また、富裕層向けに高付加価値なインバウンド観光作りとして、地域と民間のマッチングによる宿泊施設誘致や、人材研修などを行う。

 「コト消費」を深めるために、城泊・寺泊などの支援を行い、体験型観光コンテンツの造成にも力を入れる。

 また、日本政府観光局(JNTO)による新型コロナの需要変化を踏まえた海外プロモーションも、継続して取り組む。

観光列車「雪月花」を貸切 ジャルパック×えちごトキめき鉄道の限定企画

2022年1月5日(水) 配信

えちごトキめきリゾート「雪月花」を堪能

 ジャルパック(江利川宗光社長、東京都品川区)とえちごトキめき鉄道(鳥塚亮社長、新潟県上越市)はこのほど、「えちごトキめきリゾート『雪月花』貸切列車に乗車!新潟2日間」を売り出した。出発日は4月23日(土)の限定。「雪月花」を同ツアー参加者で貸し切り、通常は定員44人のところ、最大24人の定員で、ゆったり車窓の旅が楽しめる。

 1日目は新潟県・上越地方を走るリゾート列車「雪月花」に乗車する。「all made in NIIGATA」を合言葉に新潟の工場で生まれたオール新潟産の観光列車で、調度品の一つひとつに新潟の技術が採用されている。車体には日本の原風景に調和する「銀朱色」が使われ、一度の乗車で海と山の景色が堪能できる。

 「雪月花」には、JALふるさと応援隊(新潟県)が一緒に乗車し、案内するほか、車内で「越後の旬の食材を使用した和食」を味わえる。宿泊は赤倉観光ホテルを用意。2日目は岩の原葡萄園で、オリジナルブレンドワイン造りを体験する。また、ブドウの木で焼いたステーキをメインとしたフレンチの昼食が楽しめる。

 旅行代金は東京駅発着で1人17万5000円から。申し込みはインターネットから2人以上で受け付ける。抽選応募式で、受付は2月13日(日)午後11時59分まで。当選者には後日電話連絡があるという。

 

JTB×JAL、さっぽろ雪まつりをオープントップバスで巡る

2022年1月5日(水) 配信

さっぽろホワイトイルミネーション(イメージ)

 JTBと日本航空(JAL)は、2月5日(土)~12日(土)開催の「第72回さっぽろ雪まつり」と「第41回さっぽろホワイトイルミネーション」期間中、北海道札幌市内中心部で屋根のないJTBオープントップバスを4日間運行する。

 今年はさっぽろホワイトイルミネーション大通会場が、さっぽろ雪まつり開催期間中に点灯する特別な年。開放的で視点が高いJTBオープントップバスから見える雪像とイルミネーションのコラボレーションを、屋根というフィルターなしで観覧できる。さらに、運行中はJAL客室乗務員で構成される「JALふるさと応援隊」が、車内で札幌市時計台やさっぽろテレビ塔、北海道庁旧本庁舎赤レンガ庁舎などの観光名所を案内する。

 バス乗降時は、JALふるさと応援隊と記念撮影も可能。出発前に札幌の地酒「千歳鶴の甘酒」を1本(190㍉)プレゼントする。

 旅行代金は2000円で、乗車時間は約60分。運行日は2月5日(土)、6日(日)、11日(金)、12日(土)に各日2回運行する。募集人数は各回30人(最少催行人員2人)。申し込みはJTB各店舗、JTBホームページで受け付けている。

JTAなど黒糖コスメ販売 沖縄黒糖の販路拡大を 

2022年1月4日(火) 配信

黒糖コスメ「Flapping sky BS」

 日本トランスオーシャン航空(JTA、青木紀将社長、沖縄県那覇市)と琉球エアーコミューター(RAC、金城清典社長、沖縄県那覇市)、JALJTAセールス(JJS佐々木政茂社長、沖縄県那覇市)は1月1日(土)から、沖縄の離島八島(伊平屋、伊江島、粟国島、多良間島、小浜島、西表島、与那国島、波照間島)の黒糖を使用した黒糖コスメを売り出した。

 黒糖コスメは、沖縄県の「沖縄黒糖販路拡大推進事業」の採択で誕生した商品。黒糖に新たな需要開拓が求められていることを知った、JTA・RACの機内販売チームとJJS商事部が商品の企画開発をスタート。黒糖に含まれるビタミンB群やミネラルが髪の保湿や健康に効果的であることが分かり、ヘアケア用品の商品化を決定した。沖縄県産のオクラともずくから抽出したエキスも配合し、髪に潤いを与える製品に仕上げた。商品化にあたっては、ポイントピュール(久米島町)が協力した。商品は、ヘアオイルとヘアトリートメントの2種類。

 JTA・RAC・JJSは、沖縄の黒糖が県内外や海外へ羽ばたいて欲しいとの願いを込め、商品を「Flapping sky BS(Brown Sugar)」と名付けた。機内や空港売店、オンラインショップ「Coralway」で購入できる。ヘアオイルは2200円(税込)、ヘアトリートメントは1800円(税込)。

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その9-袋田の滝と胎内観音&不動尊巡礼(茨城県・大子町) 再生力アップの巡礼  滝の飛沫浴でストレスケア 

2022年1月3日(月) 配信

 日本三名瀑といえば、和歌山の那智の滝、栃木の華厳の滝、茨城の袋田の滝です。今回はその1つである、東京からも近い、袋田の滝とその周辺の胎内観音&不動尊巡礼をご紹介いたします。

袋田の滝

 滝というのは、人間のマイナス感情であるイライラした感情を静めて、心身を浄化作用する力があるといわれています。滝の音や滝の持つ清らかな白さを鑑賞していると、乱れた感情が落ち着きを取り戻し、穏やかな境地に変化していきます。
 
 滝の音は「1/f(エフ分の1)ゆらぎ」というリズムで、人間の脳波や心拍数と同調するそうです。心が負の感情で包まれていたら、滝の持つ力を借りて、明日への活力を湧き起こしていきましょう。飛沫浴(ひまつよく)という言葉もあり、飛沫をたくさん浴びれば浴びるほど、ストレスや不眠症に効果的とのことです。
 
 また、仏教の禅に「本来無一物」(ほんらいむいちもつ)という言葉があります。これは、あらゆるものすべてを失ったとしても、生まれたばかりの赤ちゃんのときには、何も持たずに生まれてきたのであって、赤ちゃんのときのように、まっさらな状態に戻ったというだけの意味です。

 
 滝には、この「本来無一物」の意味のように、煩悩や執着も無くして、再スタートしていく力を授けてくれるのではないでしょうか。
 

 

 さて、袋田の滝へは、JR東京駅から特急ときわ、ひたちのどちらかに乗り、水戸駅でJR水郡線に乗り換えて、袋田駅を下車。徒歩40分、バス10分程度で到着。
 
 私の場合、袋田駅から、マイナスイオンたっぷりの自然と町中を歩いて行きました。歩いて行くことで、自分の改善したいこと、進むべき方向性などを思い巡らすことができて、その次の滝や巡礼のときに、答えが見つかるような気がしました。
 
 袋田の滝は、茨城県の奥久慈のシンボル的存在であり、現在は恋愛のパワースポットとしても有名です。久慈川の支流・滝川にかかる落差120㍍・幅73㍍、大岩壁を4段に流れ落ちる滝です。袋田の滝は、4段の滝になっているところから「四度の滝」とも呼ばれています。弘法大師・空海様が4度護摩修行を行ったことにも、由来されています。
 
 江戸時代には、水戸黄門の徳川光圀公も訪れました。
 
 四季それぞれの季節の自然を彩る美に囲まれた滝であり、西行法師が訪れた際、「四季に1度ずつ来てみなければ、真の風趣は味わえない」と絶賛していたようです。
 
 まず、滝の入口手前の茶屋街に、四度瀧不動尊(よどのたきふどうそん)の本堂があります。袋田の滝をお不動様が、強く守っていることを感じます。厳しい愛情で私たちの煩悩を断ち切って、良き道へと導いてくれるでしょう。
 
 袋田の滝に入り、トンネルを歩いていくとすぐに、胎内観音様にお目にかかれます。トンネルの中は、洞窟を想起させます。そして洞窟は、母の胎内を表すともいわれています。胎内観音様にお参りすることで、安産・子育てに良きものをもたらすのかもしれません。
 
 その先には、観瀑台があり、岩肌を4段に流れる、限りなく澄んだ純白の滝の存在感に圧倒されるでしょう。そこで、深呼吸をして、すべての負の感情を吐き出すと、より浄化できそうです。
 

四度瀧不動明王 拝殿

 観瀑台の終点に、四度瀧不動尊の拝殿がありますので、再びお参りしましょう。エレベーターで昇る新観瀑台の下の斜面には、奥の院が祀られています。滝と胎内観音様とお不動様のお力で、訪れる人たちに平安な心を授けてくれる力があると感じました。また、再生力といったものを全身に受け取ることができるような気持ちになりました。心機一転、何かを始めたい人には、最適な精神性の高い旅といえるでしょう。

 

旅人・執筆 石井 亜由美
東洋大学国際観光学部講師、カラーセラピスト。精神性の高い観光研究部会メンバー。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。

「街のデッサン(249)」 「人生ありがとうアワード」構想、国民皆旅行立国と動態経済の創造

2022年1月2日(日) 配信

部屋からの東京湾のビュー

 昨年の夏、私事になるが大病を体験した。築地の国立がんセンターで主治医に「このままですと余命半年」とご宣託を受け、胃のほとんどを切除したのだ。初めての経験、当初は仰天した。しかしすぐに考えを変えた。2週間ほどの入院予定、これは人生のご褒美、リゾート地への休養旅と考え初体験を楽しもうと考えたのだ。

 築地の立派なホスピタル(病院)はまさに高級ホテル。思い切ってホテルのスイートに見紛う13階の海に面した個室を押さえると、読み込みたかった本20冊と新調パジャマを携え凱旋した。7月末で東京五輪の最中、東京湾岸には競技施設が集中し熱き競技が行われているが、13階は静寂に満ちた別世界。7月28日、8時間にわたる執刀は名医のお陰で成功裡に終わり、その後は13階ロビーの美しい港の風景を楽しむ遊歩と読書三昧。国立ホスピタルはまさに高級リゾートホテルで、美人看護師に大切に介抱され望んだ以上の充実した時間を享受した。

 そこでの先端医療システムはホスピタリティに満ち、辛い病院生活とは無縁の愉楽ライフの発想転換で、自然に幾つもの構想が浮かんできた。その中の一つが「人生ありがとうアワード」だった。

 この構想の最大のポイントは、日本国民一人ひとりが人生の中で頑張って生きてきたことに対するアワード(ご褒美)がなんと政府から頂ける、というもの。コロナ禍、観光業界はGo Toトラベル制度が施行され、苦しむ中小のホテル・旅館や土産屋などが随分助かった。しかし問題も生まれた。制度終了後の価格破壊や、業界全体の本質的なイノベーションを阻害するなどということだ。このアワードはGo Toに対して、何割補助ではなく、生涯に一度か複数回(予算枠による)自分で行きたい目的地の旅行企画を立て、その費用を10~30万円まで、期間は1~3週間まで全面政府負担で実行できるアワード(お祝い)である。

 当然旅の企画内容が大切になるが、その相談は観光庁や自治体、旅行会社などが行い、関係機関で了解されたものにご褒美が提供される。若者たちへの10万円給付金の実施が進められているが、アワードでの旅行費用は貯蓄に回されることなく、給付された金額すべてが消費され地域の観光業界だけでなく飲食や交通、教育、地場産業関連会社に波及する経済効果は大となろう。世界で初の政府による国民皆旅行アワード事業制度は、真の観光立国の確立だけでなしに、経済や地域社会の動態化を生み出し、期待される新資本主義の柱となるだろう。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

〈旬刊旅行新聞1月1日号コラム〉オフピークの旅―― 老桜の傍で満開の姿を想像する境地に

2022年1月1日(土) 配信

 
 帝国データバンクが企業に対して実施した「2022年の景気見通し」調査によると、22・3%が「22年は景気が回復する」と見ている。18年(20・3%)以来の2割超えで、「旅館・ホテル」業は32・6%(前年比17・4ポイント増)を占め、他業界に比べても新年への期待は大きいようだ。

 
 他方、懸念材料として82・5%が「原油・素材価格の上昇」をあげている。

 
 観光業も原油高の影響を大きく受ける産業だ。旅館・ホテルは冬期には大浴場の加温、館内の暖房、水道料などの光熱費、送迎バスのガソリン代など、一つひとつが重く圧し掛かる。「いくらお客様に来ていただいても、旅館は利益が出ない」という声を何度も聞いてきた。

 

 
 世界は脱炭素社会に向けて、本格的に動き始めた。CO2削減のために、エネルギー消費における石油や石炭など化石燃料の比率を下げ、再生エネルギーが代替できるまでの間、「成長痛」の時期ともいわれ、当分原油高の状態が続きそうだ。

 
 このため、本紙では何とか旅館・ホテルの経営を圧迫するコストの削減にお役に立てないかと、新春企画として全国の主要旅館・ホテルを対象に、「省エネ」についてアンケート調査を実施した。48軒から有益な回答をいただいた。

 

 
 同調査では、全体の3分の2に当たる66・7%が何らかのかたちで「省エネ」に取り組んでいることが分かった。一の坊グループの「ゆと森倶楽部」(宮城県・蔵王町)では、排熱利用システムを導入。廃棄する温泉の熱で、シャワーなどで使用する水を加温している。「重油の年間使用量の17・4%に当たる2万5千リットルを減らし、約160万円を削減。二酸化炭素排出量は68㌧を削減した」(同館)という。

 
 このほかにも、多くの宿がさまざまな工夫をして光熱費の節減に取り組んでいる。なかでも「節水」は最多の30・4%の宿があげた。既に「節水シャワーヘッド」や「トイレの水の節水」などに着手している。

 
 一方、「取り組む予定はない」(6・7%)と回答した宿の主な理由としては、「費用対効果が不明」などがあった。本紙としては、22年はコスト削減の先進事例などを取材させていただき、具体的な数値なども示しながら「旅館・ホテルのコスト削減」を紙面の柱としたいと考えている。

 

 
 約2年に及ぶコロナ禍では、「密にならない」ことが観光業界のキーワードの1つだった。コロナの状況次第だが、いずれGo Toトラベルの再開や、インバウンドの受け入れも始まるだろう。そのときに、交通渋滞や観光地の混雑、旅館やホテルの満室なども予想される。

 
 新年を迎えるにあたり、私も22年の旅のテーマを決めている。「オフピークの旅」だ。既に取り組んでいるのだが、さらに極めたいと思っている。

 
 一例をあげると、旅の出発は早朝の3時台である。渋滞知らずのため、本州であれば、自宅の神奈川からどこでも夕方までに到着することができる(実験済み)。

 
 人気リゾート地には人っ子1人いない閑散期に過ごす。ダムには真冬にオートバイで行く。

 
 もっと言えば、花のない桜の老木の傍に佇み、満開の姿を想像する。私はもうそれで満足できる境地に達してしまったのだ。

 

(編集長・増田 剛)

津田令子の「味のある街」「しょうがの佃煮」――天安本店(東京都・佃島)

2021年12月31日(金) 配信

「天安本店」のしょうがの佃煮(100㌘)550円▽ 東京都中央区佃1ー3―14▽☎03(3531)3457または03(3532)3457。

 
 初詣でにぎわう佃住吉神社にほど近い東京都中央区佃島に、創業1838(天保8)年の天安本店はある。184年余りの間、佃煮発祥の地佃島にこだわり、この土地で製造と販売を続けている老舗だ。「天安」の商号は、初代「安吉」の安の字と「天保年間」の天をとり「天安」と命名したという。

 
 1603年、徳川家康が江戸幕府を開いたとき、生涯忘れることのできない献身的な働きをしてくれた佃村(現大阪市西淀川区佃町)の漁民33人を江戸に呼び、石川島に近い島を居住地として与え、故郷の佃村に因み「佃島」と名付けたという。彼らはこの地で白魚などの漁をしながら江戸城内の台所を賄うことで漁業権を与えられ時化どきにお菜に事欠き、また漁期には腐らない副食物が必要なことから、湾内で獲った小魚類を塩辛く煮込んで保存食を作ることを考えた。その後千葉から醤油が渡り塩煮から醤油煮に変わり佃島で作られたので佃煮と命名され江戸市中に売り出したと店の栞に記されている。

 
 創業当時から現在まで受け継がれてきた色々な素材を煮たときの最後に残る煮汁である「たれ」を味付けの基本とし、184年分のあらゆる素材の味が染み込んでいるのだ。この「たれ」が佃煮屋天安そのものだという人も多い。 

 
 風情のある店に入ると、奥では畳に座って進物用の箱詰めや発送の準備に一生懸命だ。ショーケースには天安昆布、あさり、しらす、あみ、えび、たらこ、うなぎ、きゃらぶきなど人気の商品がずらりと並ぶ。我が家の夕飯の定番・しょうがの佃煮が、艶っぽくきらきら光っている。佃煮は長持ちするので、ついつい多めに買ってしまう。隣近所へのお裾分け、遠方の方への御年賀にも「東京名物」として喜ばれる1品だ。佃煮は手を汚すことなく包から出して直ぐに食べられる。保存がきいて栄養面でもタンパク質、カルシウム、鉄分など、身体に必要なものが種々多量に含んでいる。

 
 お節とお雑煮に飽きたら、炊き立てのご飯とみそ汁と佃煮で、新年を過ごすというのも粋ではないだろうか。

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

長期滞在、リピーター創出へ 夜と朝のコンテンツを体験(ぬかびら源泉郷モニターツアー)

2021年12月30日(木) 配信

三股山荘の特別な朝食

 ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構(小川正人理事長)は11月20~22日、北海道・上士幌、ぬかびら源泉郷でモニターツアーを行った。

 環境省の「2020(令和2)年度温泉地活性化のための夜間・早朝の魅力創出業務」を受託したもの。

 朝は、地元でも大人気のカフェ「三股山荘」の特別な朝食を、夜はひがし大雪自然ガイドセンターによるナイトハイクを実施。朝と夜のコンテンツを充実させ、長期滞在やリピーター創出をはかることが目的だ。

 今回のモニターツアーのメインは、朝と夜それぞれの時間帯に実施されるコンテンツの体験。

 朝コンテンツは、地元でも大人気のカフェ「三股山荘」の特別な朝食を3日目に堪能した。上士幌町産「ホッカイコガネ」を使ったジャガイモのグラタンや、音更町産「あかね」のリンゴのコンポートなど、北十勝の味覚をふんだんに使用した品々が並んだ。

 2日目の夜には、ナイトハイクを実施。ひがし大雪自然ガイドセンターの河田充氏と上村潤也氏がぬかびら源泉郷の自然や星空、動物などを解説。暗闇の中で見る糠平湖や糠平川橋梁などは、昼とは違った印象を与えてくれた。

自然・鉄道遺産・温泉ぬかびらの魅力堪能

 ぬかびら源泉郷は1919(大正8)年に発見された温泉地。温泉の泉質は、ナトリウム・塩化物―炭酸水素塩泉(重曹泉)で肌が滑らかになるだけでなく、飲用することで胃腸病にも効くといわれている。

 宿泊した「糠平温泉ホテル」は1929(昭和4)年、糠平で2番目の宿として開業した宿。客室数は12室で、温泉は源泉掛け流し。食事はオショロコマや鹿、山菜など、ぬかびら近郊の山の幸を心行くまで堪能できるメニューが並ぶ。

 源泉郷には、温泉以外にもさまざまな見どころがある。2013年に開館した「ひがし大雪自然館」は、環境省と上士幌町が連携し合同で整備した施設で、「ぬかびら源泉郷ビジターセンター」(環境省)と、「上士幌町ひがし大雪博物資料館」(上士幌町)からなる。

 ぬかびら源泉郷ビジターセンターでは、大雪山国立公園の山々や東大雪地域の地形・動植物をパネルなどで紹介するほか、ヒグマやエゾシカ、シマフクロウ、オオワシなどの剥製を展示。高山や森林の自然をジオラマで再現したコーナーでは、キンメフクロウやエゾナキウサギの声を聴くことができる。

旧幌加駅跡

 1987年に廃止された旧国鉄士幌線の駅舎跡地に建つ「上士幌町鉄道資料館」では、路線図や工事写真、保線工具などが展示されている。また、同源泉郷から三国峠に向かう道の途中には、士幌線旧幌加駅跡や第五音更川橋梁跡などが残っており、遺構や残されたモノ、映像などから士幌線の歴史に触れることができる。

ハイテク牛舎で今後の酪農学ぶ

 今回のモニターツアーでは「大人の社会科見学」をテーマに、「酪農」についても学んだ。訪れた酪農牧場「ドリームヒル」は3600頭の乳牛を飼育する。

 1日当たりの出荷乳量約110㌧、昨年の出荷乳量は約3万3千㌧。同社は循環型農業を目指し、3年前から牛の排泄物を発酵させ、バイオガス発電設備で電気を生成している。

 生成した電気は電力会社への売電や自社の設備に使用。その際に発生する余剰ガスを使用し、ビニールハウスでイチゴやブドウなども育てており、収穫した果物は、同社が町内で運営する、ジェラート、洋菓子店「ドリームドルチェ」で販売するケーキやジェラートなどの原料に使用している。

ハイテク牛舎

 2020年春には、新設したハイテク牛舎2棟を新設し、ロボット搾乳機16基を導入。「自動給餌ロボット」や、牛のベッドメイキングを行う「自動敷料散布式ベッディングロボット」などを活用。これにより乳牛へのストレスが軽減されるとともに、人手不足の問題の解決や業務の効率化と労働時間の短縮をはかれるという。

クラブツーリズム 大阪歴博と包括連携 学芸員案内のツアー販売

2021年12月29日(水)配信

中村副本部長(左)と大澤館長

 クラブツーリズム(酒井博社長、東京都新宿区)はこのほど、大阪歴史博物館(大澤研一館長、大阪府大阪市)と連携協定を結び、新たに同館の学芸員が案内する歴史ツアーを売り出した。

 第1弾は、没後1400年を迎えた聖徳太子にスポットを当てた日帰りツアーで、昨年10月30日に「古代史1日学校in大阪歴史博物館」、12月11日には「難波を目指した太子道へ」前編を行った。1月22日には、「難波を目指した太子道」後編を予定する。

 両者は10月1日、「相互の人的、物的、知的資源を有効に活用した協働による活動を推進し、地域の活性化をはかること」を目的に、包括連携協定を締結した。同社が博物館と連携協定を結ぶのは今回が初めてとなる。

 同社の中村朋広取締役テーマ旅行本部副本部長は12月2日に開いた会見で、「歴史ものは当社でも人気のあるテーマだが、今回の締結で、さらに深化した歴史ツアーが可能となった。今後は、シリーズ化するとともに、大阪歴史博物館で所蔵する普段は公開されていない品々の特別公開なども行い、大阪の歴史的魅力を発信していきたい」と意気込みを語った。

 大澤館長は「歴史と観光はもともと親和性が高いもの。歴史を理解するには場所の存在が重要であり、現地への旅は不可欠。クラブツーリズムと我われの力を合わせることで、歴史の奥深さを、より知ることができるはず。今回の協定を機に、新しい歴史旅をつくり上げていきたい」と抱負を述べた。