「国内観光に数値目標を」、日商が観光振興策で意見書

須田寛氏
須田寛氏

 日本商工会議所(三村明夫会頭)はこのほど、今後の観光振興策に関する意見書「『新たな観光ビジョン』策定への期待」をとりまとめた。2月18日には日商観光委員会共同委員長の須田寛氏が田村明比古観光庁長官と、杉田和博官房副長官を訪れ、政府には「観光が地方創生、日本再生の“切り札”であり、地域や民間が観光により積極的に取り組めるように、とくに国内旅行の観光に関する具体的な数値目標を設定することが必要」とし、「観光立国への強い意思を明確にしてほしい」と訴えた。須田氏は同日、国土交通省交通運輸記者会で、同意見書の趣旨を説明した=写真

 国内観光を見ると、インバウンドは15年に過去最高の1973万7千人を記録する一方、国内観光消費額の約9割を占める日本人の国内観光市場は2006年の27兆2千億円から、14年には18兆9千億円へと大きく縮小している。

 これら状況により、今後増加が見込まれるインバウンドについては、「首都圏や関西圏など、特定都市・地域に集中する外国人旅行者を全国各地に分散・拡大が不可欠」とし、日商が昨年5月に提言した「交流拠点都市」(地域への旅行者の分散の核となる都市)を、政府が進める広域観光周遊ルートや、観光立国ショーケースで選定した都市のなかから指定すべきとの考えを示した。

 さらに、15年の訪日外国人数を見ると、中国499万人、韓国400万人、台湾368万人、香港152万人など東アジア地域からの訪日客が71・9%と大部分を占めるが、安定的な訪日外国人旅行者数と旅行消費額を確保するために、「欧米など多様な国からの誘客を進めることが重要」と指摘する。

 一方、長期的に減少傾向にある日本人の国内旅行を拡大するためには、季節的・時期的な需要格差への対応や、体験型観光の促進も含め、官民が一体となった「休暇取得キャンペーン」の実施などの取り組みの必要性を強調した。国内観光の課題としては、泊食分離や電子決算など、旅行者ニーズに対応した観光産業の経営革新を求めている。

 そのほか、安全安心の確保を前提とした新たな観光ニーズへの対応のための法制度の整備も今後の課題とし、具体的には(1)優良ランドオペレーターの登録制度の導入(2)地域限定旅行業の参入を促す旅行業法の登録制度の弾力化(3)多様な観光ニーズに対応した宿泊施設の整備促進に向けた旅館業法、建築基準法における構造・設備基準の見直し、民泊に関する法制度の整備(4)安全性を前提としたバス、タクシー事業者の再生と新規参入に対するルールづくり――などをあげた。

復興は次のステップへ、マーケティングの段階に、田村観光庁長官

 田村明比古観光庁長官は2月16日に開いた会見で、マーケティングを駆使した復興観光のステップアップや、ツアーオペレーターの規制の可能性など、これからの国内観光の展望や仕組みのあり方について語った。

 3月11日で5年目を迎える東日本大震災からの復興観光について、田村長官は「東北の観光復興は、観光庁と復興庁が二人三脚の連携で進めている。今回、増額された予算についても執行は観光庁なので、観光と復興を一体的に進めることができる」と今年の復興観光への期待を述べた。また、これまでの「復興」という心情にスポットを当てた支援から、「地域ごとの特性を活かし、データに基づいてターゲットを絞り、マーケティングする段階に来ているのではないか」と復興観光の次なるステップの方向性も示唆した。

 2月2日に日本旅行業協会(JATA)が観光庁に提出した訪日旅行に関する提言書についても言及した。提言のなかの1項目、ツアーオペレーター業の「品質認証制度」の活用促進については「ツアーオペレーターは訪日旅行の質の問題や、長野県・軽井沢スキーバス事故にも関係している」と述べ、今後のツアーオペレーターの規制の可能性を語った。旅行業法は消費者保護の観点からBtoCの取引を監督するもので、BtoBの取引を行うツアーオペレーターは業法外となる。「結果としてツアーの質や安全に問題が生じ、旅行者に影響を与えるのであれば、消費者保護の観点から議論があっても良い」と意向を示した。

 議論が進む「民泊サービス」問題については、「当面の対策に合わせて抜本的な制度の見直しを検討する方向で進めている。大きな方向性はビジョン会議でも出していきたい」と現況を述べた。

 訪日外国人観光客が注目されるなかで伸び悩む日本人の旅行需要についても触れ、「例年並みに戻ったがそれ以上のものではない」と評価したうえで、伸び悩みの要因は「旅行者個人の懐具合と旅行コストの兼ね合い」と推察、「とくに交通手段は国内旅行に関すればまだ高い」と述べた。合わせて宿泊施設の稼働率の好調から、宿泊料金の上昇傾向も関係しているとした。国内旅行の展望については「個人の所得や将来に向けた期待値が良くならなければならない。そうならないのであればLCCの普及など割安感のあるものがもっと出てきてほしい」と語った。旅館サービスの改善についても述べ、「一部の高級層のサービスは別として、旅館の宿泊体験がマンネリ化している感じがする。改善の余地は大いにあるので取り組んでいきたい」と述べた。

成長領域に先行投資、「ヒト・モノ・カネを集中」(KNT―CT中期経営計画)

戸川和良社長
戸川和良社長

 KNT―CTホールディングス(戸川和良社長)は2月12日、2016―18年度の中期経営計画を発表した。今後3年間は、成長領域と位置づけた「訪日旅行事業」「地域誘客交流事業」「スポーツ事業」への積極的な先行投資などを加速し、安定的な営業利益の確保を目指す。戸川社長は同日に東京都内で開いた会見で「成長領域に『ヒト・モノ・カネ』を集中させたい」と意気込んだ。

 中期計画の基本方針は(1)自立経営とシナジー効果の最大化(2)成長領域へのシフトおよび先行投資(3)新規事業・新たな収益源開発への挑戦――。

 成長領域の訪日事業は、各社の役割の明確化や全体の利益の最大化をはかるための組織づくり、FIT事業の拡大、訪日ランドオペレーター事業の強化などに取り組む。地域誘客交流事業は、着地ビジネス機能を持つ地域誘客と交流ビジネス拠点の設置や、自治体との人事交流を含めた連携強化など。スポーツ事業は、2020年に向けた五輪需要取扱いの最大化やバリアフリー、障がい者関連事業の拡大などに努める。

 戸川社長は「今年は年始から株安があり、為替変動があり読みにくい。海外の回復は難しいので訪日旅行の取り込みにかかってくるが、売上高の増収は見込める」と中期計画初年度の見通しを語った。

 経営目標は16年度の売上高が4318億円、営業利益が40億円、17年度が同4410億円、同45億円、18年度が同4510億円、同50億円。

ユニーク三輪車で市内散策

 能登半島の付け根、石川県羽咋市にある「ちりはまホテルゆ華」では、昨年春に導入した「ウォーキングバイシクル」が人気を集めている。立った姿勢のまま、足を乗せたステップを左右交互に踏むことで前進するユニークな電動アシスト付き三輪自転車で、浴衣やロングスカートなど服装にとらわれずに利用できることも女性には好評だとか。

 すぐ近くには日本で唯一、車で走れる海岸「千里浜なぎさドライブウェイ」があり、三輪車で海岸を走る観光客も少なくない。同館では市内散策も楽しんでもらおうと、市内の観光施設や飲食店と連携し、各所をお得に利用できる観光手形も販売する。

 派手さはなくとも、ちょっとした居心地の良さが感じられるコトやモノ。それが本当のファンを生み出していく。

【塩野 俊誉】

キッズコースター導入、新キャラクターショーも(志摩スペイン村)

約1500人を先行招待
約1500人を先行招待

 志摩スペイン村は2月12日、マスコミなどを対象に今期の見どころを紹介する内覧会を開き、新たに導入したアトラクションやキャラクターショーなどを披露した。今回は、ネットで募集した一般客や地元の幼稚園児など、約1500人の招待客も参加し、一足早く新たな魅力を楽しんだ。

 新アトラクションは、以前から要望の多かった幼児でも乗れるジェットコースター「キディモンセラー」。バルセロナのアートな世界とモンセラー山を、精霊サラマンダーに乗って疾走する。3歳前後(身長90センチ以上)から乗車できるので、家族みんなで楽しむことができる。乗車時間は1分15秒。

 5年ぶりの新作となるキャラクターショー「ドンキホーテのアー・べー・セー・デー・エスパーニャ!」は、スペイン語のABCに合わせて、ドンキホーテたちがスペインの楽しさや情熱を唄とコミカルなダンスで紹介する約25分のミュージカルショー。11月30日まで1日2回上演する。

 今年のフラメンコショーは、フラメンコの本場、セビーリャの春をテーマにした「フィエスタ・デ・セビーリャ」を上演。スペイン三大祭りの一つである「春祭り」や闘牛、聖週間などを、情熱的な唄と踊りで表現する。上演時間は約25分。期間は11月30日まで。

 このほか、4月22日には「キッチン」「航海」「闘牛」をテーマにした3Dトリックアートが体験できる新アトラクション「3Dトリックツアー」も登場する。

 今期の営業期間は来年1月9日まで。ゴールデンウイークや夏休みはナイター営業を実施。6月27日から7月1日までは休園となる。

 また、今期から大人パスポートが5300円、小人パスポートが3500円になるなど、入園料金が一部改定した。

ウェブ小説で誘客、堀江氏ら著名人が執筆(福岡県)

著者と小川知事(前列右から2人目)
著者と小川知事(前列右から2人目)

 福岡県は2月12日、福岡県を舞台にしたウェブ小説「ぴりから」の配信を開始した。誘客促進を視野に、同県を愛する7人の著名人がリレー形式で執筆し、毎週金曜日に1作品ずつ配信していく。これに合わせて同日、東京都内で完成披露イベントが行われ、同県出身で起業家の堀江貴文さんや直木賞作家の東山彰良さんなど、7人の執筆者と小川洋知事が出席。企画の概要や小説のあらすじなどを紹介した。

 「ぴりから」というタイトルは、各小説に、名物の辛子明太子のように“ぴりから”な格言が込められていることから付けられた。物語には「大宰府天満宮」や「炊き餃子」をはじめ、実在の場所やグルメなどの観光情報が盛り込まれ、小説と連動した県発行の観光ガイドブック「ふくおか本」も製作・配布を開始した。小川知事は「ウェブ小説を読んだあとは、ガイドブックを手に、ぜひ物語の舞台・福岡県へお越しいただきたい」と話す。

 著者はほかに、放送作家の鈴木おさむさん、小説「ビリギャル」著者で塾講師の坪田信貴さん、フリーアナウンサーの小林麻耶さん、読者モデルの田中里奈さん、コピーライターの佐々木圭一さんの計7人。堀江さんと東山さん以外は他県の出身だが、福岡ファンとして観光誘客を応援する趣旨に賛同し、短編小説に挑んだという。

 企画にも携わった佐々木さんは「観光動画ではない、ウェブを使った観光PRの新しい手法を目指した」とし、「小説を読み終えた人のみ、各著者のとっておきスポットが閲覧できる仕掛けも用意した。小説を楽しみ、実際に福岡を訪れてほしい」とアピールした。

大賞は「水戸芸術館」、イメージアップ大賞(茨城県)

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 茨城県のイメージアップにつながる活動や取り組みを表彰する「2015年度いばらきイメージアップ大賞」の表彰式が2月5日、東京都千代田区の都道府県会館で開かれた。今年度の大賞は「水戸芸術館」、特別賞の「ウラ大賞」には県非公認キャラクターの「ねば~る君」が選ばれた。

 水戸芸術館は昨年、開館から25周年の節目を迎え、同館長で世界的指揮者の小澤征爾氏をはじめ国内外で活躍する芸術家たちが活動を継続的に発信し続けている場となっている。また、子供たちへの教育プログラムや市民参加型プロジェクトなどの自主企画事業を積極的に実施しており、身近で多彩な芸術文化の発信基地として茨城のイメージアップに貢献している点が評価された。

 表彰式では水戸芸術館の小澤館長や、同館を運営する水戸市芸術振興財団理事長を務める世界的デザイナーの森英恵さんらが登壇。小澤館長は受賞のあいさつで、茨城とのゆかり話と感謝の言葉を述べた。受賞者には橋本昌茨城県知事から表彰プレートのほか、副賞の常陸牛、茨城県産のコシヒカリ、アクアワールド茨城県大洗水族館の招待券などが手渡された。

 大賞以外の表彰団体は次の通り。

 【奨励賞】2年連続どんぶり王座「友部サービスエリア(上り線)」▽ラムサール条約登録湿地「涸沼(ひぬま)」

5年かけ草創1300年祝う、西国三十三所が記念事業

厳かな読経が行われた
厳かな読経が行われた

 日本最古の巡礼所33寺院で構成する西国三十三所札所会(会長=鷲尾遍隆・石山寺座主)は1月26日、東京都台東区の浅草寺で会見を開き、2018年に草創1300年を迎えることを記念し今年から20年までの5年間、「西国三十三所草創1300年記念事業」と題し、特別行事を展開していくことを発表した。鷲尾会長は冒頭「1300年記念は奈良の長谷寺を開いた、徳道上人に由来したもの。石山寺での33年に1回の開白法要を事業の幕開けとし、5年間かけてお祀りしていく」とあいさつした。

 同事業は観音様の「慈悲の心」を多くの人に知ってもらうため、(1)慈悲の心を表したロゴマークの設定(2)各札所の特別拝観(3)月参り巡礼(4)徒歩巡礼(5)スイーツ巡礼(6)アメリカ人が巡る西国三十三所巡礼――の6つの柱を設定した。ロゴマークには「1300年前、観音菩薩が人々を救うために示した観音霊場」という西国三十三所独自のストーリーを具現化し、ハスの花に立つ観音菩薩が、三十三所のルートを身にまとい、人々を見守っているイメージをロゴマークに採用した。ロゴマークは、スイーツ巡礼に参加しているスイーツのパッケージに用いられるほか、旅行会社や各札所の名物菓子を製造販売している企業などにも無料で提供を行っている。

3番札所粉河寺の黒豆大福
3番札所粉河寺の黒豆大福

 女性や家族で楽しめる新しい巡礼の形として企画された「スイーツ巡礼」は、各札所で長年愛されている〝お寺スイーツ〟を食べ歩きながら、巡礼を楽しんでもらい、寺院を身近に感じてもらうために考案された。現在、各札所のスイーツ100種類以上が同巡礼に参加することが決定しており、今後さらに数を増やし、スイーツを通じた寺院への参拝のきっかけづくりを行っていく。

 会見当日は、僧侶33人による同事業の成功を祈念した読経も行われた。

観光業者がバス運行、限界集落の交通手段に(山梨・昇仙峡)

昇仙峡地域でバス運行を 始める村松資夫社長
昇仙峡地域でバス運行を
始める村松資夫社長

 山梨県甲府市北部の奥昇仙峡・黒平地区とその周辺で4月から、地元の観光業者による循環乗合バスの運行が始まる。同地域はシーズンには観光客でにぎわう一方、利用者の減少を背景に、冬季の路線バス運行が約2年前から一部区間で廃止。車を持たない高齢者などの地域住民や観光客などから、交通手段の利便性向上を求める声が上がっていたという。

 これを受け、昇仙峡で観光施設などを経営する「さわらびグループ」の村松資夫社長が一昨年、バス運行会社「昇仙峡渓谷オムニバス」を設立。住民など利用者からの電話予約を受け、バスを運行させる。高齢化や過疎化により社会的な生活インフラの維持が困難となる“限界集落”地域の交通手段を支える、新たなモデルケースとしても注目が集まっている。

 バスの運行ルートは、県営グリーンライン駐車場を起点に、北部の金櫻神社や荒川ダム駐車場などを結ぶ。冬季(12―3月)には、路線バスが運休となる南部の千代田小学校方面にも立ち寄る。14人乗りのマイクロバス(車種NV350)4台体制で対応し、専用の運転手も雇用する。乗車料は1区間当たり300円、4枚綴りのチケット利用で250円。

 ただ、ほぼ実費という乗車料収入だけでは事業の継続は難しく、村松社長は「市の地域公共交通会議の場でも、収支に対する声が多かった」と話す。そこで考えたのが、観光客にもバスを利用してもらう仕組み作りだ。

 昇仙峡は秩父多摩甲斐国立公園にあり、新緑の時期など、渓流沿いでハイキングを楽しむ観光客が多く訪れる。バスの利用料は同じく1区間300円、チケット利用で250円に設定。村松社長は「バスだからこそ行ける、黄金色の桜が咲く金櫻神社や紅葉や新緑がすばらしい野猿谷、秘境といわれる板敷渓谷など、まだあまり知られていないスポットにも案内できる」といい、徒歩でまわる散策コースにバスを組み合わせた、周遊観光の提案を目指す。

 バス運営費用の直接支援も募る。1口1万円で、支援者には御礼として、地元住民が作ったマタタビ酒や日本蜂蜜、新鮮な山菜、刺身こんにゃくなど季節の品が送られる。村松社長は「高齢者が多い地域住民の仕事の支援にもつなげていきたい」とし、「バスの運行が昇仙峡の新しい魅力を知ってもらう一つのきっかけになれば」と話す。

 問い合わせ=電話:055(251)8899。

ふくしま産業賞受賞、地産地消や保育園開設で(ホテル華の湯)

昨年7月に企業内保育園を開設
昨年7月に企業内保育園を開設

 第1回ふくしま経済・産業・ものづくり賞(ふくしま産業賞、主催=福島民報社)の福島民報社賞に福島県磐梯熱海温泉の栄楽館・ホテル華の湯(菅野豊社長)が選ばれた。地産地消の推進や県内の旅館として初めて企業内保育園を開設したことなどが評価された。

 同賞は福島の産業や雇用の創出、伝統工芸の発展など、県内の活力を高める業績や活動を顕彰しようと創設された。今回は県内89社・団体の応募を選考委員会で評価し、最高賞の知事賞(大七酒造)など25社・団体を選んだ。

 宿泊業としての受賞は栄楽館・ホテル華の湯が唯一。福島民報賞は知事賞に次ぐ表彰。食の地産地消を進め、県内食材の安全性、魅力を発信し復興に貢献したことや、企業内保育園を開設し女性の活躍を推進、人材確保の先進的な取り組みに力を入れていることなどから受賞が決まった。