HIS、サウジアラビア政観と連携 旅行環境向上で送客強化

2023年11月13日(月) 配信

矢田素史社長(左)とアルハサン・アルダッバグAPAC担当プレジデント

 エイチ・アイ・エス(HIS、矢田素史社長)はこのほど、サウジアラビア政府観光局(STA、アルハサン・アルダッバグAPAC担当プレジデント)とサウジアラビアの観光促進に関する協定を締結した。旅行環境を向上させることで同国の観光促進と送客強化をはかる。

 具体的に協定書では、同国の豊かな文化や遺産、ユニークな体験、季節にあわせた多様な景観などを生かしたコンテンツ開発のほか、認知度向上や長期的な戦略的パートナーシップを構築することなどを盛り込んだ。

 矢田社長は「サウジアラビアの多彩な魅力を日本はじめとした世界に広め、誘客につなげたい」とコメントした。

 アルダッバグAPAC担当プレジデントは「サウジアラビアの魅力が高まり、世界有数の観光ハブを目指すことができる」とした。

高校生が考えるこれからの観光 北陸新幹線延伸開業、シンポジウム福井を開催

2023年11月13日(月) 配信 

北陸新幹線福井県誘客プロジェクトはこのほど、シンポジウムを開く

 日本旅行、西日本旅客鉄道(JR西日本)、福井県、福井県観光連盟で構成される北陸新幹線福井県誘客プロジェクトは、2024年3月23(土)~24日(日)の2日間、「北陸新幹線開業記念特別イベント サステナブル・ブランド国際会議2024 福井シンポジウム~高校生が考えるこれからの観光~」を開く。

 24年3月に北陸新幹線が金沢─敦賀延伸することをきっかけに、各エリアの観光プログラムを造成し、福井県の高校生が県外の学校・高校生に対して魅力を発信する仕組みづくりを行うことで、福井県が継続的に国内外の教育旅行が訪れる地域となることを目的としている。

 サステナブル・ブランド国際会議では、サステナビリティに対して先進的に取り組む企業や自治体、各界の第一線で活躍するイノベーターが集まり、相互交流する。

 同会議では、全国から選抜された高校生を招待し、グループワークなどで交流しながら自分の考えを磨き上げ、高校生の視点や感性ならではの意見を、社会や企業に直接提言できる次世代育成プログラム「サステナブル・ブランド国際会議Student Ambassadorプログラム」を開いている。

 北陸新幹線の延伸開業に合わせ、このほど、福井県での特別大会を開く。

 日本旅行は今年5月から、福井県内の高校5校に対して観光や地域学習の授業を展開した。福井県の高校生が、福井県のPRや首都圏の修学旅行生に対するコンテンツ開発を行っている。

国内外のファン創出へ 魅力掛け合わせ 体感ツーリズム造成(久慈市)

2023年11月13日(月) 配信

小袖海岸の夫婦岩

 NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の再放送で再び注目を集める岩手県久慈市で9月28~29日、モニターツアーが行われた。市が注力する「ロケツーリズム」と、取り組みが加速する「脱炭素」、2つの切り口でまちを紹介。「久慈市ファン」づくりに欠かせないまちの魅力が詰まった体感コンテンツ造成に向け、旅行者目線の声を収集した。加えて、「あまちゃん」をきっかけにまちを知った外国人の誘客を目指し、コンテンツの磨き上げに必要な情報を集約した。

◇  ◇

 モニターツアー初日は、三陸鉄道久慈駅周辺と小袖海岸を市内在住の貫牛利一氏の案内で巡る「あまちゃん」のロケ地ツアーで幕を開けた。ドラマで三陸鉄道久慈駅は駅舎外観が北三陸駅として使われ、ホームでは列車の開通式のシーンなどが撮影された。

久慈デパートとロケ地看板

 駅周辺には観光協会がある設定で登場した「久慈駅前ビル」や「あまちゃん」で使われた衣装やジオラマも見ることができる「久慈市情報交流センター YOMUNOSU」などもあり、作品の空気感に浸りながら、散策を楽しむことができる。

あまちゃんのロケ地を見学

 一方、主人公らが歩いた坂道や、オープニングでも毎回登場する白い灯台などドラマで見た風景が広がる小袖海女センター周辺では、美しい三陸の海の景観を堪能した。

 海のイメージが強い久慈市は、世界有数の「琥珀」の産地でもあり、約9千万年前の琥珀を宝飾品などに加工して利用している。

 「上山琥珀工芸」では、ドラマで琥珀採掘指導を行った上山昭彦氏が、坑道内の見学と琥珀アクセサリーの製作体験を行っている。見学する坑道は実際にロケが行われた場所で、上山氏が久慈琥珀の魅力と歴史、あまちゃんロケのようすなどを解説する。

先行地域の脱炭素事業を学ぶ

 2日目は、久慈市の新たな取り組みを視察した。「久慈地下水族科学館もぐらんぴあ」では、バックヤードツアーを体験。モニターツアー参加者の意見を参考に、一般向けプログラムとして内容を磨き上げるという。

 また同館が久慈国家石油備蓄基地建設時の作業用トンネルを利用した施設であることから、市の石油備蓄に関しても理解を深めた。

 「久慈バイオマスエネルギー」では、「脱炭素」の取り組みを学んだ。「脱炭素」は市が注力する取り組みのひとつで、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロを目標に政策を展開。22年には、環境省からカーボンニュートラルの取り組みを先行して進めるモデル地域「脱炭素先行地域」に選定されており、山形町エリアを対象地域に太陽光発電や木質バイオマスを活用した熱電併給システムの導入などの施策を計画している。

バイオマス熱利用の仕組みを学ぶ

 今回訪れた施設では、市内で出た製材時の端材や樹皮などを乾燥、燃焼させ、シイタケを栽培するハウスに熱を供給。余剰熱で製造した乾燥チップは温水プールや宿泊施設などで活用している。

まめぶづくり

 2日間にわたり久慈市の魅力を堪能したモニターツアーは、「まめぶ」づくりで締めくくられた。黒糖とクルミの入った小麦粉団子「まめぶ」を豆腐や揚げなどと一緒に醤油味の汁で煮込む伝統料理。まめぶの甘さと汁のしょっぱさが交互に楽しめる不思議な味が癖になる一品で、山形町エリアでハレの日に食べられていた。
 もともと久慈市内でもあまり知られていなかったが、ドラマで取り上げられたことで市内外の人々に浸透し、今では道の駅や市内飲食店で気軽に味わえる。

 一般参加者に加え、韓国の旅行会社2社も参加し、旅行商品造成に向け久慈の魅力を視察した今回のモニターツアー。

 参加者からは、「人が優しくて、食べ物もおいしくて、大満足です」「自然が豊かで、癒されるまち。まめぶの味が気に入ったので、家でもつくってみたい」「住んでいる人にも、あまちゃんに関わった人にも愛されているまちだと改めて感じた。バイオマス熱利用の取り組みを通じて、エネルギー問題も学ぶことができた」「田舎のまち特有の温かさがあり、日本でも珍しい水族館やバイオマス熱利用の施設などここならではの体験も多いのが魅力だと感じた」などの声が聞かれた。

 モニターツアー終了後、久慈市役所経済産業部商工観光課観光物産係の安堵城隼一主査は、「『あまちゃん』に登場する北限の海女やまめぶなどの観光資源を生かしたモデルツアーを実施し、従来からのあまちゃんファンのみならず、あまちゃんを知らない方や海外の方からとても喜んでいただいたと感じた。モニターツアーから得られた情報をもとに、さらなるコンテンツの磨き上げを行い、新たなプログラムを造成。『あまちゃんのファン』から『久慈市のファン』を生み出すことで、国内外の観光誘客・リピーターをつくり、地元活性の起爆剤としたい」と総括した。

 今回のモニターツアーは観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の支援を受け、地域活性プランニングが企画・監修プロデュースし、コンテンツ造成とツアー実施は、日本旅行東北が担った。

航空機の迫力全身で 非公開エリアをバスで巡る成田空港スペシャルバスツアー(グリーンポート・エージェンシー)

2023年11月13日(月)配信

FLYING HONU

 成田空港の非公開エリアを巡るバスツアーが人気を集めている。

 貨物地区や整備地区、滑走路の近くをスカイバスで巡る企画で、屋根のないバスを使用することで航空機の迫力を全身で体感できるのが魅力。

ランプセントラルタワー展望室から見る空港

 普段は入ることができないランプセントラルタワーの展望室から空港全体を見学する時間もあり、その特別感で多くの人を引き付けている。

 グリーンポート・エージェンシー(千葉県成田市)の実施する「成田空港スペシャルバスツアー」をまとめる。

◇  ◇

貨物地区

 「成田空港スペシャルバスツアー」は通常立入禁止のエリアを、日の丸自動車興業のスカイバス(屋根のない2階建てバス)で巡る企画で、「普段ではできない体験」をコンセプトとしている。同ツアーでは、ランプセントラルタワー内地上約44㍍の高さにある展望室から、空港全体も観察。制限区域内ではバスから降車し、航空機の離発着のようすも見ることができる。

航空機を色々な角度から

 ツアー中はバスガイドがフライトレーダーを常に確認し、特別塗装機や全日本空輸(ANA)のエアバスA380型機「FLYING HONU」などの特別な機体を最適な位置から見られるように柔軟にコースを変更するなど、参加者の満足度を高めるための仕掛けも用意。車内ガイドの内容にもこだわり、日の丸自動車興業のガイドの空港や航空機の解説を通じ、より深い体験へと昇華させている。

 「成田空港スペシャルバスツアー」は、新型コロナウイルス感染症の流行拡大によって成田空港利用者が激減している状況のなか、航空旅客以外の誘客をはかるために、成田国際空港(田村明比古社長)とグループ会社のグリーンポート・エージェンシーが中心となり企画された。

 スタートした2020年度は53本のツアーを実施し、約1700人を集客。参加者は航空機ファンからファミリー層まで幅広く、ツアーのために北海道や宮古島など遠方から足を運ぶ人もいるほどの人気で、今でも新たにコースを発売すると、即日完売となるという。

 グリーンポート・エージェンシーでは、通常のバスツアーに加え、空港関連事業社や周辺地域と連携したツアーも企画している。空港関連事業社や空港周辺地域を盛り上げることが狙いで、これまでに日本航空(JAL)国際線ビジネスクラスの機内食が楽しめる企画や、JAL成田航空機整備センターの特別見学などを組み合わせたツアーも行っている。

 周辺市町の観光資源の魅力の発信を目的に、香取市佐原の観光とセットになったツアーも実施している。

 同社は今後、「成田空港スペシャルバスツアー」を教育旅行に活用する考えも示す。

 航空会社と連携し、実際に運用されているチェックインカウンターを活用したアナウンス業務や案内業務体験、貨物事業者と連携した物流の仕組みを学ぶプログラムなどを通じ、空港従事者の減少の課題解決や、子供たちの職業選択のきっかけにつなげることが目的。教育旅行に加え、最終便や始発便を見送るツアーや、グランドハンドリングと組み合わせたツアーなど、高付加価値型のツアーも追求していく考えだ。

万博パビリオン起工式開く 次世代通信技術を発信へ(NTT)

2023年11月13日(月)配信

パビリオンのイメージ図

 日本電信電話(NTT、島田明社長、東京都千代田区)は11月10日(金)、2025年大阪・関西万博に出展するパビリオンの起工式を万博会場(大阪府大阪市)の建設予定地で行った。

 パビリオンは「NTT Pavilion“Natural”(仮称)」で、コンセプトは「感情をまとう建築」。3500平方㍍の敷地に4つの建物を作り、内部で次世代の通信ネットワーク技術「IOWN(アイオン)」を使ったさまざまな体験を提供する。

 外観は「布」をワイヤーで吊るし、緩やかに浮遊するデザインとなる。来館者の感情やふるまいによって「布」が動き、建物全体が感情を持った生命体のようになるという。

 起工式には島田社長をはじめNTTグループ幹部や2025年日本国際博覧会協会の石毛博行事務総長らが出席した。パビリオンは2024年12月に竣工する予定だ。

「ONSEN・ガストロノミーツーリズムコラム」 ニホンヤマネも暮らす森(埼玉県飯能市)

2023年11月13日(月) 配信

日干しされている木桶

 東京都内から約1時間、埼玉県飯能市は丘陵地の雑木林から山地の植林・自然林まで多様な樹林が分布し、源流域から中流域までの変化に富んだ河川環境が見られる場所です。また市域の75%を占める森林には、日本最古参の哺乳類とも言われている「ニホンヤマネ」やカモシカなど、さまざまな動植物が生息しています。

 こうしたことから市内には、エコツアーを実施している人、団体が多く、さまざまな切り口で飯能の豊かな自然や、文化、歴史を訪れる人に伝えています。
 豊かな自然を舞台にエコツアーを実施していることから、環境保全に力を入れている方も多く、人間と生き物の共生が体現されているのも飯能市の特徴です。

 私が営むやまね酒造も飯能産西川材で作られた木桶で酒を醸すことで、飯能の自然や生き物の命の鼓動を感じられるような自然派のお酒を目指しています。また酒などの売上の一部は、飯能の自然や生物多様性を守る活動資金に充てています。

 飯能市のエコツアーに参加し、豊かな自然の中に暮らす動植物や守り続けてきた歴史、文化に触れてみるのはいかがでしょう。晴れている日にお越しの際は、素晴らしい絶景の「名栗湖」もおすすめ。湖の近くではさまざまな動植物を観察することもできます。

 昔ながらの木桶仕込みの伝統的酒造りをするやまね酒造にお越しいただければ、木桶が日干しされているこの地域の昔ながらの光景も見られるかもしれませんよ。

【やまね酒造 代表 若林 福成】

日本修学旅行協会、2023年度版の教育旅行年報「データブック」発行 コロナがもたらした課題も掲載

2023年11月13日(月) 配信

教育旅行年報「データブック」2023

 日本修学旅行協会(竹内秀一理事長)は12月1日(金)、2023年度版の教育旅行年報「データブック」を発行する。

 新型コロナウイルスの拡大がもたらした課題や問題点のほか、今後の国内・海外修学旅行のあり方や、22年度に実施された国内・海外修学旅行の実態、修学旅行の歴史などをまとめている。

 同協会は「新学習指導要領にも対応した教育旅行のあり方も展望している」とアピールする。

 11月30日(木)までに申し込むと、通常頒布価格1000円のところを、特価800円(税込、送料別)に割り引く。

 問い合わせ=日本修学旅行協会 ☎03(5640)8061。

ベストツーリズムビレッジで4地域認定 美瑛町・奥松島地区・白馬村・白川村(UNWTO)

2023年11月13日(月) 配信

北海道・美瑛町(イメージ)

 国連世界観光機関(UNWTO)はこのほど、「ベストツーリズムビレッジ2023」で54地域を認定した。日本からは、北海道・美瑛町、宮城県・奥松島地区、長野県・白馬村、岐阜県・白川村の4地域が選ばれた。

 新たな観光立国推進基本計画では、持続可能な観光地域づくりに取り組む地域のうち、「ベストツーリズムビレッジ」を含む「国際認証・表彰地域」を25年までに50地域とすることを目指している。

 これまでに日本で認定された地域は、21年に認定された北海道・ニセコ町、京都府南丹市美山町を含め6地域となった。

 このほか、選出に至らなかったものの、取り組み内容の向上に向けた支援を受けられる「アップグレードプログラム」には、奈良県・飛鳥村が選ばれた。

 「ベストツーリズムビレッジ」は、持続可能な観光地域づくりに取り組む優良な地域を認定するプロジェクト。このPJに認定されると、ロゴマークが使用できるほか、選ばれた地域間で知見や経験を共有するためのネットワークに加入できる。

「観光革命」地球規模の構造的変化(264) 水族館・動物園の頑張り

2023年11月13日(月) 配信

 かつて動物園や水族館は動物を見世物(珍しい物や芸を有料で見せる)として扱うなど娯楽の要素が強かった。世界動物園水族館協会(WAZA)は2005年に、野生生物の保全のために動物園・水族館が果たすべき保全戦略を公表。気候変動や自然開発や外来種の影響などで毎年4万種の生き物が絶滅しており、生物多様性は危機的状況にある。WAZAは世界中の動物園・水族館に生物多様性の保全に向けての貢献を求めている。

 北海道小樽市の「おたる水族館」はいまバンドウイルカの繁殖に取り組んでいる。同館の5頭のイルカはすべて和歌山県・太地町の追い込み漁で捕獲されている。日本動物園水族館協会は15年に追い込み漁で捕獲されたイルカの購入自粛を決定した。

 そのため同館でも飼育しているオス3頭、メス2頭の生活環境を調えて繁殖に挑戦している。幸いメス1頭の妊娠が確認され、来夏には道内で初の水族館での出産が実現できそうだ。赤ちゃんイルカが誕生すれば、ファミリーでの多数の入館が期待できる。

 札幌市円山動物園では15年にマレーグマが誤った飼育方法で死ぬなどの飼育動物の事故が相次ぎ、動物園改革に着手。札幌市は昨年、良好な動物福祉の確保と生物多様性の保全を基本理念に掲げた動物園条例を制定。動物福祉への関心の高まり、生物多様性の危機的状況、動物園の社会的役割の変化などを踏まえた全国初の先進的動物園条例の制定だ。

 同園は18年にミャンマーから4頭のアジアゾウの寄贈を受け、準間接飼育用の新しい動物本位のゾウ舎を建設。動物のストレス軽減のために飼育員が柵越しに健康管理を行うシステムの導入だ。

 動物本位の飼育で繁殖を目指す環境を整えたところ、幸い雌ゾウが今年8月に赤ちゃん(雌、愛称タオ:ミャンマー語で「輝き」)を無事出産。9月中旬に親子を公開し、数多くの市民がゾウ舎前に並んで大人気を博している。動物園は単なる動物の見世物的施設ではなく、飼育動物の福祉に配慮すると共に、種の保全活動や野生生物保全教育などの面でも社会的責任を果たすことが期待されている。

 

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

商船三井とJTBがクルーズ市場拡大に向け協定 寄港地観光拡大や訪日客取り込みを

2023年11月13日(月) 配信

商船三井クルーズ・上野社長(左)、JTB・花坂専務

 2024年は第2のクルーズ元年――。商船三井クルーズとJTBは11月10日(金)、クルーズ市場の拡大に向けた連携協定を結んだ。両社は新たなクルーズの体験価値を提供するため、寄港地観光を拡大することや、新たな市場の掘り起こしとして、訪日観光客の取り込みなどを行う。同日に開いた会見で商船三井クルーズの上野友督社長は「日本のクルーズ市場に新しい風を吹かせていきたい」と意気込んだ。

 日本のクルーズ市場は、1989年に商船三井客船「ふじ丸」が日本初のクルーズ客船として就航したことからこの年を「クルーズ元年」とし、2019年にクルーズ人口は過去最高の約35万人を記録した。2024年は商船三井が新造船「MITSUI OCEAN FUJI」を投入し、25年以降も数船の新造船就航が予定されていることから、第2のクルーズ元年と位置付ける。

 クルーズ事業を特定重点マーケットと位置付けるJTBは今後、日本のクルーズ市場は約3倍の100万人規模まで伸びるポテンシャルがあると睨む。同社はクルーズ商品の販売だけでなく、着地事業やインバウンドへの取り組みで事業領域を拡大していきたい考え。同社の花坂隆之専務執行役員は「裾野を拡大したい。クルーズというと富裕層のイメージだが、若い世代にも挑戦してもらうため、ショートクルーズやワーケーションなどを用意し、気軽に乗ってもらえるようにしたい」と語った。

 これまでも両社は協業して商品開発などを行ってきたが、さらなる市場拡大のため、連携協定を締結した。第1弾として、商船三井クルーズが24年12月就航予定のスモールラグジュアリークルーズ船「MITSUI OCEAN FUJI」をJTBが全船チャーターし、25年1月に「JTB南米ワールドクルーズ91日間」を実施する。

 南米航路は商船三井グループの歴史の始まりの航路であることや、JTBの世界一周チャータークルーズ参加者のアンケートで約30%が南米方面を希望していたことなどから、コロナ禍明けの新しい船出にふさわしいデスティネーションと判断した。大型クルーズ船では寄港できない港への入港や寄港地受入体制の質の担保など、「MITSUI OCEAN FUJI」の特性を生かした航路で14カ国・2地域で19の港を巡る。

 12月上旬から全国10都市で説明会を開催する予定で、早期申込割引料金も設定する。旅行期間は25年1月9日(木)~4月9日(水)、通常の旅行代金は2人1室利用の横浜港発着で620万円~2850万円。